月と正義の魔法使い   作:ユーリ・クラウディア

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9話

「シロウ、あれってどう思う?」

 

「ん?あれとは最近噂のあれの事か?」

 

「うん、タイミング的に見て間違いなく彼女よね…」

 

「だろうな。」

 

夕食を食べながら最近噂になり始めた厄介事の種について相談する

 

「吸血鬼か」

 

「元の世界の吸血鬼より良心的な生態で涙が出るよ…、死徒には生前煮え湯を飲まされ続けたからね。」

 

そう、吸血鬼だ、と言っても、前の世界に居たものに比べたら、天と地、月とスッポンだ。

 

「そうね、そしてこの学園で吸血鬼と言えば彼女しか居ないわね。」

 

そして、その吸血鬼とは…

 

 

「「エヴェンジェリン・A・K・マクダウェル」」

 

 

そう、私のクラスメイト、エヴァこと、エヴァンジェリン・A・K・マクダウェルだ

 

闇の祝音(ダーク・エヴァンジェル)』元世界最高額賞金首にして、最強の魔法使い。今でこそ、封印のせいで殆ど人間と変わりはしないが、本気になればそれなりのことが出来るだろう。仮にも最強を名乗っているんだ、魔法無しでも戦かえると見るべきだ。

それに、魔力察知能力は異常だ、この世界に来て魔術の使用を制限したのは他でもないエヴァがいたからだ。

全く、此れだからうちのクラスは凶悪だ。

 

「狙いは十中八九ネギ先生ね。」

 

「ああ、大方封印を解くのにネギの血が必要なのだろう。」

 

「どうする?」

 

「そうだな…、ネギのこれからを考えて出来るだけ手出しはしない方が良いだろう。」

 

「まあ、これからもっと厄介な事が起きそうだしね、経験は大事よね。」

 

「取り敢えず認識外からピンチの時だけ援護する方向で良いだろう。」

 

「了解……、さて、夕食も食べ終わったし、そろそろ向こうも動き出す頃合いね。よし、夜の散歩と洒落込みましょう。」

 

 

こうして二人は夜の街に繰り出していった。

 

 

 

**************

 

 

side.ネギ

 

 

 

 

「貴方が吸血鬼ですか!」

 

暗い夜道に幼く、それでいてしっかりした声が響く。

 

「おや、随分遅い登場だな先生。」

 

「僕の生徒を襲うのを止めてください!」

 

フードを被っていて相手の顔が見えない。

 

「そいつは無理な相談だ…、いや、お前の血を死ぬまで飲ませてくれるなら止めてやろう」

 

「うっ…」

 

ネギが怯えたように一歩下がる

流石にネギもそこまでの覚悟はまだ無い。

 

「なんだ、つまらん、その程度の覚悟もないのか…興覚めだ。貴様の血、頂くぞ!」

 

吸血鬼が飛びっかかって来る、

咄嗟に顔を手で庇い目を閉じた時、それは、起きた。

 

 

「っっ!?」

 

何かがぶつかる音

吸血鬼が距離をとる

 

目を開けると

吸血鬼は辺りを見回すと

 

「認識外からの狙撃だと!」

 

自分の足元に先端がコルクで出来ている矢が有ることに気づいた、

 

「あそこか!チッ、捕捉した瞬間身を隠したか!」

 

どうやら誰かが助けれくれたらしい。

 

「ネギ!」

 

「アスナさん!」

 

呼びかけられて振り返るとアスナさんが走って来ていた。

 

「大丈夫!?あんたが吸け…てエヴァ、あんたが吸血鬼だったの?」

 

さっきの狙撃された時にフードが取れていたようだ。

そして、その正体が、自分の教え子であることに気づく。

 

「チッ、貴様か、まあいい、今回は引こう、次は満月の夜だ、それまで精々震えて待つが良い!」

 

そう言ってエヴァはさって行った。

 

「ちょっと!待ちなさいよ!」

 

その言葉は夜に一人木霊しただけだった…、

 

 

 

 

 

**************

 

 

 

side.白野

 

 

 

 

おー、やってるやってる。

 

ネギがエヴァと対峙ている、近くに誰か倒れているが顔が見えない。

 

「矢張り、今のネギでは手も足も出んな。」

 

「まあ、しかなたいんじゃない?天才なんて言われても10歳、突発的な事には弱いわよ。」

 

私達は今、現場から約3.4Kmほど離れたビルの上に居る。

私はシロウの投影で作った特製の双眼鏡を覗きながら行く末を見守る。

 

そして、エヴァがネギに襲い掛かる

その瞬間隣で弓を構えていたシロウが矢を放つ。

 

「HIT」

 

「ふむ、こんなものか」

 

おっと、気づかれた

 

「それじゃあ退散しましょう。」

 

「了解だ」

 

急いで建物に身を隠す。

 

「もう少し早く明日菜が来ていれば此方も手を出さずに済んだのだがな。」

 

「仕方ないよ、来てくれただけでも、幸運だったわ」

 

「ふむ、そうだな」

 

ただ矢張り一般人を巻き込むのは気が進まないな…

 

「気にするな白野、あれは本人も気づいて居ないがトラブルメイカーになりえるポテンシャルを秘めている、今の内から、場慣れさせるべきだ。」

 

顔に出ていたようだ

 

「うん…、それじゃあ、帰りましょう、多分次の満月まで大人くしてるだろうから、此処からは、ネギのメンタルケアが中心ね」

 

「心得た、私もそれと無くフォローしておこう。」

 

 

さて、厄介事は始まったばかりだ。

 

 

 

**************

 

 

 

side.エヴァ

 

 

夜空を飛行しながら先程邪魔してきた者について考えていた。

 

あの距離から弓での狙撃、尋常じゃない。

アーティファクトか?

いや、何方にせよ久しぶりに面白くなりそうだ。

封印が解けた暁には、必ず探し出して、遊び倒さなければな。

 

「クククッ、クアッハッハッハッハッハ!」

 

それが、パンドラの箱であることなど気づきもせず、高揚した気分に身を任せ意気揚々と帰路につくのであった。

 

 

 

 

吸血鬼があの二人の正体と怖さを知るのは、まだ少し先の話し。

 

 

 

 




シロウが使った弓と矢は家から持って来た物で投影品ではありません。
あと、双眼鏡も家で投影したものです。

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