月と正義の魔法使い   作:ユーリ・クラウディア

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37話

衛宮邸道場地下

 

そこには麻帆良女子中3-Aの魔法関係者全員が集められていた。

 

「地下にこんな空間があるとは…」

 

「凄いアルネ~」

 

各自この空間についての感想を漏らす。

まあ、確かにこの空間は通常じゃ有り得ない空間であるため当たり前の事なのだが。

 

「それで?ここに呼んだ理由はなんだ?」

 

エヴァが不敵な笑みを見せながら問う。

 

「話の趣旨的に君はこなくても良かったのだがね…」

 

「何だと!!」

 

「師匠、落ち着いて下さい!」

 

「まあいい、修行場所の正当な提供代だ」

 

この話を出した時点でエヴァがついて来る事は分かりきって居た。

実際今回の話しにエヴァは必要ない。しかし、この話が終わった後の生徒達の精神ケアの為に彼女の存在は必要不可欠だ。伊達に年は重ねていない。

彼女は天邪鬼で素直じゃないが周りの事をしっかり考えられる。

 

「それでシロウさん何をするんですか?」

 

「全員集まったようだな…。それでは早速だが本題に入ろう。 これから君達には私の記憶のごく一部を見てもらう。本当は色々見て貰いたいのだが見過ぎると精神に異常をきたしかねない…なので私が厳選した物を見てもらう。そして見た後は心に余裕がなくなるだろうから話しを先にする…。」

 

シロウはそこで一拍置いて諭すように話し始める。

 

「君達は今分岐点に居る…。今まで通りの何も知らない平穏か、魔法と言う非現実に足を踏み入れ激動に身を委ねるか…。京都での戦闘で最後まで最前線にいた者は分かると思うが、今、時代は変化の兆しを見せている。今魔法に関われば必ず一瞬のミスが死に直結する事件に巻き込まれていくだろう…。私としてはわざわざそんな危険に身を晒す気が知れないのだが、君達はそれでもやると言う…。これ以上は言葉では君達は止められないだろう。だから好奇心に身を任せようとしている君達に最後の試練として私の記憶を見せよう。この正義の体現者と呼ばれた私の記憶の断片を…。白野」

 

「…」

 

白野は無言で魔法を発動させる。

 

 

 

 

***********

 

 

 

 

 

最初に出て来たのは5人が楽しそうに食事を取っている風景だった。

 

 

「これは、私の人生で一番幸せだった時間だ…。この時は厄介事が終わって間もない頃だったか…まあ、今の君達の状態だと思ってくれ。」

 

「え?でもシロウ先生の姿が見当たらないわよ…」

 

「ああ、言っていなかったね…私はそこの男だよ」

 

「え!だって…髪も…肌だって…」

 

「それは何時か機会があれば話す。今は関係ないからな」

 

 

そして場面は切り替わる。

 

 

 

「止めてくれ!!桜…どうやったら君は…!」

 

「フフフ、センパイったらまだ諦めてくれないんですか?いい加減私の物になって下さいよ。」

 

何処か暗い空間、士郎と一人の女性が対峙している。

シロウは傷だらけで髪や肌も一部変色している

 

 

 

「どういう事?かなり雰囲気は違うけどこの人はさっきの…」

 

「そう…彼女の名前は桜、私の後輩だ。詳細は省くが彼女は小さい頃に養子としてとある魔術師の家に訪れた。そこの家は人間として狂っていてね。虫を使った魔術を使うその家の者は彼女の体内に大量の虫を寄生させる事で彼女を魔術師にした。」

 

「む…虫を寄生させるって…」

 

「そう、口や女性にとって大切な場所から大量に…だ。私が彼女とあった頃は精神も安定してきていて気づけなかったが…」

 

よく見るとシロウの手には力が込められていた。

 

 

「桜!こんな事はもうやめてくれ!」

 

「さっきから同じ事しか言ってませんよ…センパイ」

 

「どうやっても…止まらないのか…」

 

 

「そして、その虫の影響で彼女の人格は急変した。実際にはもっと色々な要因があったのだがそれを話すと日が暮れてしまう…。」

 

 

「はい、センパイは私と街の人たち…どちらを選びますか?私を止めないと街の人たちが一人残らず死んでしまいますよ?」

 

「桜……」

 

士郎は干将・莫邪を投影する。

 

「これが…!これが最後だ…。桜止めてくれ…」

 

「止める訳ないじゃないですか。」

 

その言葉を引き金に士郎は飛び出す。

 

士郎は剣を振るうが黒い何かに弾かれる

影だ、桜は自身の影を操って迎撃していた。

 

そのからどれだけ時間がたっただろうか…そこまで長い時間じゃない。しかし生徒達は涙を流しながら剣を振るう士郎の姿に声を出せない。

 

そして士郎は黄金に輝く剣を投影する。

 

「ああああああああああぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!」

 

その剣戟を防ごうと影が殺到する。

 

勝利すべき黄金の剣(カリバーン)!!!」

 

その剣の光は影を消し飛ばし桜の心臓を突き刺した。

 

 

 

 

「せん…ぱ…い…」

 

「ゴメン…桜…」

 

「せんぱ…いの…夢でした…からね…止めて…くれて、ありが…とうごさい…ます。」

 

「桜…俺は…俺は!!」

 

「自分…を……責め…ないで…ください…悪いのは皆…私…なん…ですから、だから…あや…まるのは…私の…ほうです…その…剣…だ…て…本当…は使いたく…無かった…はずです」

 

桜は魔術で一時的に延命して言葉を届ける。

 

「せんぱ…い、悲しま…ないでくだ…さい、私は…だい…じょうぶですか…ら」

 

桜は手を士郎の頬に伸ばす。

 

「桜!」

 

「愛して…ましたよ………」

 

桜の手から力が抜け目から生気が間然に抜けた…

 

「あ゛あ゛あ゛あああああぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!!!」

 

 

 

「これは極論だ、魔法に関われば友を…家族を…愛する者を手に掛けなければならなくなる事だってある。」

 

 

そこからは目まぐるしく描写が変わる。

死徒の大群との死闘

戦場のド真ん中

盗賊団のアジト

そして世界との契約

 

 

その中で共通している事は3つ

1つ、人を助けている事

2つ、何時も戦っている事

そして3つ目は何時も助けた相手に責め立てられている事

 

 

「これが私が正義の体現者と呼ばれた所以だ。いいか、この世の中それが正しい事でも他者から見たらただのテロリストだ。此処まで見せたのは全て事実で極論でそんな極論だらけの俺の人生だ。これを見てもまだ平気で魔法を覚えたいと言うなら俺はもう止めない。その好奇心を、秘密を知る事で得る優越感を、二つ抱いて溺死しろ。」

 

 

 

***********

 

 

 

気付けば記憶の世界は消え去り元の場所に戻って居た。

 

 

「さて、しばらく考えると良い。今日は此処で解散だ。」

 

シロウは何事も無かったようにその場を後にする。

白野もその後を追って出ていった。

 

「「「「……」」」」

 

暗い顔をして俯く面々。

この場で平常心を保てているのは戦場を経験しているエヴァと龍宮くらいだろう。

 

「小娘たちには少々刺激が強すぎたようだな」

 

「流石に中学生に見せる物では無いと私も思うね」

 

「そう言っている割にはお前は平気そうだな」

 

「分かって居るだろう?」

 

「フッ、帰るぞ茶々丸」

 

「私も行くとしよう…」

 

この二人の帰宅を境にポツポツと少しずつ他の面々も動き始める。

 

その中夕映だけが全く動く気配が無かった。

 

 

 

***********

 

 

 

 

「私は最初のアレを見せると思ったんだけど。予想が外れちゃったな。」

 

白野はシロウ見せるのが始まりの地獄の方だと思っていた。

 

「アレは精神の負担が大きすぎる。子供の頃とは言え私も心が完全に壊れたのだぞ…」

 

「確かに…」

 

「それに今回の目的は彼女達に覚悟をさせる事だ。魔法の危険性とそれによって起きる不幸の可能性を感じてもらうにはアレくらいが丁度いい」

 

「なるほどね~」

 

 

二人がそんな話をしていると

 

「居るのだろう?出てきたまえ。茶くらいは出すぞ。」

 

シロウがそう言うと影から龍宮が出て来た。

 

「タッツミー?どうしたの?」

 

「いやなに、偶々話が聞こえてね。失礼だが盗み聞いてしまってどうしようと思っていた所だよ。それで、重ね重ね失礼なのだがそのアレって言うのに興味が出てしまってね。出来れば見せてもらえないだろうか?」

 

龍宮がそんな事を言ってくる。

 

「精神が壊れるぞ…」

 

「私も幾つか戦場を経験していてね。ある程度は大丈夫さ」

 

「……良いだろう」

 

シロウは少し考えてから承諾した。

 




白野単体では記憶関係の魔法は技術不足で使えないのだが今回はかなり高価な媒介を用意しているので問題はないという設定になっています。

今回の話しは元々最初の地獄絵図だけを見せる予定だったのですがそれでは他作品とのダブりが加速するのとどう考えても生徒の精神が持たないので変更しました。
ただ一人くらいは知っている人が居ても良いじゃんと思って耐えられそうなタッツミーに出しゃばっていただきました。
色々捏造が激しい回ですがまあ気にせんでください。
そして5人が食事をしているシーンは迷いましたがセイバーに退場してもらいました。
イリヤの扱いも非常に迷いましたがまあ個人的に居て欲しかったんで取り敢えず居てもらいました。

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