剣と魔法の世界に転生するはずがB級パニック世界に来てしまった件   作:雫。

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「ここだ、射出場は!」

 

 混乱するナチ兵を時にはやり過ごし時には蹴散らしつつ緊急用らしき階段によるショートカットで射出場の前に辿り着いた俺たち。そこに広がっていたのは、いろんな意味で恐ろしい光景だった。

 

 窓越しに見える射出場の作業風景。

 

 生きたサメが拘束された状態でもがきながらベルトコンベヤーに乗せられて次々と射出場に搬入されてくる。運ばれてきたサメたちは、望む景色からして丁度山の中腹なのだろう、整備され偽装も施された崖に沿って居並ぶ、巨大な白銀色のフォークを砲台に据え付けたようなユニットに台座ごとセットされていき、そのまま仰角が調整される。

 

「全機仰角七十二度にセット完了!」

「全機、メタンハイドレードドライヴから電力伝導完了しました!」

「よし、サメ砲弾シャーグレネード、全弾発射!」

 

 号令と共に砲台フォークから眩い青白の光と同じく蒼白に輝く火花が撒き散らされ、室内から見ている俺たちも目を開けているのが辛いほどだ。

 

 そして閃光と共にサメを乗せた台座は加速、投げ出されたサメはそのまま滑るようにして空中に駆けだし、風を切り裂きながら放物線を描いて、街の方へ飛翔していった。

 

「これが……この事件の真相か」

「レールガンの原理ね。電力を使う訳だわ」

 

 毒ガスでも仕込んだ砲弾撃った方が効率良さそうだ。

 

「よし、まずはあそこの管制室を制圧しよう。ほとんどの人員は離れたところから遠隔で作業してるみたいだ。管制室の五人を倒せば、しばらくは占拠できる」

「で、その間にポッドを用意しておくって訳だな」

「ああ、ダニーはメカとか得意だし、ダニーとクレアにポッドの確保を頼みたい。俺とキャサリンで、管制室を占拠する」

「合点承知の助だぜ」

「了解、最後に暴れてやるわよ」

「わかった。発射台でまた会おう」

 

 俺たちは二手に別れ、それぞれの戦場へ向かう。

 

 俺とキャサリンはまず、管制室の扉前の死角に身を隠す。

 

「敵は五人か……よしキャサリン、俺が合図したら、銃を乱射しながらチェーンソーで手前の敵三人に斬りかかれ。その隙に俺は向こう側に突っ込んで奥の二人を倒す」

「わかったわ」

「よし、それじゃあ行くぞ……三、二、一、ゴ―!」

 

 号令と共にキャサリンは右手にチェーンソー、左手にサブマシンガンを構え、扉を蹴り開けて突入する。

 

「大人しくしてろナチ公!」

 

 管制室内の兵士たちも気付いて武器に手を伸ばすがもう遅い。キャサリンはサブマシンガンの弾丸をばら撒いて敵兵を牽制しながらエンジンを全力全開にしたチェーンソーを振りかざして、距離を詰める。

 

 ナチ兵たちは狭い室内での弾幕の中自らの武器で反撃の機会を得ることもままならず、キャサリンの接近を許してしまい、その凶悪なる刃に怯えて隊列を崩す。

 

 それでもキャサリンとある程度の距離を保った、奥の方にいる兵士は何とか機会を窺って武器を構えようとするが、そうは問屋が卸さない。

 

 俺は低い姿勢のまま床を蹴って弾幕の下に潜り込む形で奥の敵兵に肉薄し、まずは片方の敵兵の側頭部を木の棒で叩いて昏倒させた上で股間につま先をめり込ませて無力化し、掴みかかってこようとするもう一方には、まずみぞおちに木の棒の突きを見舞う。飛びかかろうとしていた自身の運動エネルギーもあって、急所のダメージが大きく一歩後退したそいつには更にネックハンギングで動きを封じながらヘルメットを引っぺがして壁に頭を打ち付けさせ、その意識を奪った。

 

「そこで寝てサメに喰われる夢でも見てろ!」

 

そしてそのまま、キャサリンと相対している敵兵三人に背後から襲いかかり、混乱を誘いながらキャサリンと一緒に無力化していく。

 

「なかなかやるじゃないライアン。ジョック連中にも勝てるんじゃないの?」

「単にこいつらが無能で予算削減されてるだけだと思うが……。まあ、ジョック連中に喧嘩を売るのは色々と面倒が付き纏うからな。その点ここでは敵か味方かしかいない、やり放題だ」

 

 ともあれ制圧は成功した。俺はクレアに渡されていた無線機を取り出し、ダニーたちを呼び出す。

 

「あー、こちらライアン。今、管制室を制圧した。そっちはどうだい?」

『ダニーだ。こっちも三番格納庫のポッドは見つけたぜ。だがこいつはオレの腕力にはちと重すぎる』

「コンベヤーにはもう載せてあるな? こっちの制御盤でやってみよう」

 

 制御盤の表示はドイツ語だが、何となくわからないこともない。とりあえず三番格納庫のボタンを選択し、その上でコンベヤー起動のスイッチを入れる。すると、対応する番号の書かれた山肌に口を開くシャッターが展開し、中から出てきた大型のサメより一回りほど大きいダチョウの卵に短い脚を生やしたような形のポッドがコンベヤーを伝ってカタパルトに向かうのが窓越しに見えた。

 

「よし、向かおうキャサリン」

「ええ、これで終わったのね……」

 

 ダニーとクレアはポッドがセットされ次第、すぐに乗り込んでいた。後は俺たちが乗るのを待つばかりだ。俺たちは管制室を出て、カタパルトに向かった。


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