PHANTASY STAR ONLINE2 the story of ours 作:爆死したくない揚げ出汁豆腐
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零話 プロローグにはなりえない何か
あの人はどこだろう。
昨日まで楽しく私と話してくれていた、あの人はどこに行ったのだろう。
昨日まで笑顔で笑っていた、あの人はどこに行ってしまったのだろう。
あの人の姿が見えなくなって、どれくらいの時間が経ったのだろう。
ここにいても、あの人が戻ってこないことくらい、だいぶ前からわかっていた。
わかっていた、はずなのに。
私はこれからどうして生きていけばいいんだろう。
そもそも、私は生きていく必要があるのだろうか?
あの人のいない今、生きていく必要なんてどこにもないんじゃないだろうか。
私は、何度目かわからない同じ結論に今日も至る。
「また馬鹿なこと考えてないか?」
そう問いかけてくる声に私は冷静に答える。感情に左右されてそんなことを考えるほど、私は愚かではない。
「ソ、ソンナコトナイデスヨ」
「片言な上に敬語になってやがるぞ」
おかしい、どうしてばれてしまったのか理解できない。ここは話を変えてごまかそう。
「私は、これからどうしたらいいんだろう」
「知らん、そんなもの自分で考えろ」
「でも……」
「自分で考えて、自分で行動しなきゃ意味がない。そう教えてくれたのがあいつだったろう?」
そういわれて、私はハッとする。あぁ、そうだった。あの人から何度も、口をうるさくして言われていたことを忘れていた。それくらい今の私は呆けているのだと、ようやく自覚する。
「ありがとう」
「別にお礼を言われるようなことはしてない」
「でも、ありがとう」
「……ああ」
そう言って顔を背けるのは、照れているからだということを私は知っている。この人はお礼を言われることに慣れてない。だからそういうことをされるとどうしていいかわからなくなってしまうのだ。その結果として顔を背ける。普段の粗暴な物言いも、ただ素直になれないだけで、本当はとても優しい人だということを私は最近知った。
「お前全部声に出てるぞ」
「えっ」
「えっじゃねぇよ!その私に対する評価というか語りを間近で聞かされる私の身にもなれよ!」
「……ごめんなさい」
「ったく、気を付けろよ……気が付くとすぐ声に出てるんだからな」
「わかった」
ほんとにわかってんだろうなと疑ってくる。ずいぶんと信用がないものだ。
何の話をしていたんだろう、話を続けるうちに忘れてしまった。ああ、そうだ。これからどうするかだった。どうするかなんて決まっていたようにも思える。その答えは私が初めから持っていたものだ。ただ、私が逃げていただけだ。
でも、もう逃げない。あの人から受け継いだものを心に留めて、私は前に進む。進まなきゃダメなんだ。
「ねぇ」
「ん?なんだ」
「私……」
すーっと息を吸って吐いて、言葉を紡ぐ。その一言で私の人生が、大きく変わることがわかっていたとしても、そうしなきゃいけない。
「私、アークスになる」
「……そうか」
私―――レイの運命の歯車が、ここから動き始めたのだった……