東方変守録   作:ほのりん

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前書き~

こんにちは!
お久しぶりの方はお久しぶりです!
いやはや前の投稿から25日も空くとは思いませんでしたね。すみません

さてさて今回は榛奈さん、少し本性が表に出かけてますよ
え?心じゃいつもこんな感じだって?
ぐうの音も出ませんね......

それでは今回もゆっくりしていってね!


第2章『強さへの憧れ』
第29話『強さに憧れ、焦る』


《?年》

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[???]

 

 

 瞑っていた目を開く

 すると無限に広がっていそうな青空と、緑豊かな自然が目に映る

 遠くには背の低い建物が密集した場所があった

 その近くには川が流れていて、畑や田んぼが並んでいる

 少し目を横に移すと、雲を突き抜けそうなほど高く大きな山がそびえ立っている

 その美しき幻想の風景に気を取られていると、蝉の合唱が聞こえてくることに気づく

 ミーンミーンと、短き命を謳歌しているのだろう

 ふと、喉の渇きに気づき、横にあったお盆の上から湯呑みを手に持ち、口に運ぶ

 少しぬるくなってしまったものの、冷たく美味しいお茶に一息吐く

 時折そよ風が吹き抜け、縁側に飾られている風鈴をチリンチリンと鳴らす

 此方に来て初めて出来た友人から初めて貰った美しい音色だ

 あれから一体どれほどの時間が流れたのだろう......

 私にとっては長い年月が経ったと感じるが、それ以上の時を生きているあの友人にとっては本当に一瞬にも満たない時間だと感じているのだろうな

 そのすれ違いが少し寂しいが、それもしょうがないのだと思う自分がいる

 そりゃそうだ。だって私は人間で、彼女は妖怪なのだから

 だからこそ私は彼女より長く生きていないし、彼女は私よりも長く生きている

 そして、彼女はこれからも生き続けるだろうし、これからもこの幻想を守っていくのだろう

 それに対して私は――

 

 

 

?「おーい、誰かいないのかー!」

 

 

 

 ――本堂から声が聞こえる

 どうやら客が来たようだ

 時折来る参拝客は勝手に参拝していくから私を呼ばないんだけど、さてさて一体誰が来たんだか......

 

私「はいはい、いるよ。素敵な賽銭箱は鳥居から入って正面だけど、それ以外に何か用?」

 

 そう言いながら顔を出すと、そこには年端もいかない金髪の女の子がいた

 その女の子は私を見つけると駆け寄ってきた

 

?「別に私は参拝しに来たわけじゃないぜ。それよりお前が此処の巫女か?」

 

私「うんそうだけど......」

 

 なんだか可愛らしい容姿に合わない男勝りな口調に戸惑う

 

?「ふぅん...... お前があの......」

 

 「あの」がどのかは分からないが、どうやら彼女は私を訪ねてきたらしい

 身なりから彼女が人里の人間だと分かるが、よく此処まで来れたなと思う

 何せ人里から此処までは飛べば早いが、歩けばそれなりに距離がある

 更には道は整備されているが、道中は妖怪に遭う可能性もある

 そんな中彼女はここまで無事に来れたんだ。感心したって良いだろう

 

 そこまで考えてふと頭に疑問が浮かぶ

 彼女は一人で来たのだろうか?親は何処にいる?もし勝手に一人で来たのなら心配しているのではないだろうか

 もしそうならこの娘を人里まで送らなければならない。このまま送り返してしまえば妖怪達の格好の餌となってしまう

 とりあえず彼女から話を聞いてみるか

 

私「ねぇ君。君は一人で来たの?」

 

?「あぁそうだぜ」

 

私「親御さんは?」

 

?「いないぜ」

 

私「人里にいるの?それなら早く帰らないと心配――」

 

?「死んじゃったんだぜ。二人とも」

 

私「...そっか。二人とも、いないんだね」

 

 こういう時、他の人ならもう少し別の言葉をかけてあげるのだろうけど、私には無理だ

 だって私も、今はいないのだから

 

?「でも悲しくないんだぜ。お父さんは私が産まれる前に妖怪に喰われたし、お母さんは私が産まれてすぐ死んじゃったから」

 

私「それなら仕方ないね」

 

 そうだ、仕方ない

 記憶にもない親など、見知らぬ他人と区別つかないのだから

 

私「今は何処で暮らしてるの?」

 

?「お母さんの従妹の家、夫婦とその息子がいるんだぜ」

 

私「へぇ、いいね」

 

 特に何とも思ってないが、そう相槌を打っておく

 すると彼女は不機嫌な顔になった

 

?「良くなんてないのぜ。夫婦は私のことを毛嫌いしてて仕方なく世話してるだけだし、アイツなんて手下を連れて私をいじめてくるんだ。だからあそこを出てきたんだぜ。あれ以上あそこにいたら気が狂っちゃうから」

 

私「ふぅん、そうなんだぁ......」

 

 人里の事情など、人里に暮らしていない私に分かるわけがないが、いつの時代もそういう人種がいるのは変わらないんだなぁ

 このことに人里の守護者は気づいているのだろうか

 

?「それでだっ!」

 

 そう彼女は表情を一変させ、少しだけ俯いていた顔を上げる

 

?「お前、魔法が使える巫女なんだろ?」

 

私「うん、そうだけど、よく知ってたね」

 

?「人里でよく言われてるぜ?『巫女なのに魔法を使う変人だ』って」

 

私「へ、変人......」

 

 あいつら...... 前々から嫌なやつはいると思ってたが、人里を守ってるのはハクタクだけでなく、私もなんだぞ......?

 あいつらはそのことを分かって言ってるのか......?

 あぁもうやる気無くすなぁもう......

 まぁ仕事だからこれからも守ってはやるけどさ......

 

?「ん?どうかしたのか?」

 

私「...何でもないよ。それで君の家出と私が魔法を使えること。どう関連してるの?」

 

?「ふっふ~、それはな......?」

 

 彼女はくるっと一回転しながら私から距離を離すと、私を指さして――

 

?「私はお前から魔法を教わって人里の外でも生き抜けるようになるんだぜ!!」

 

 ――と、そう自信満々に宣言したのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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榛奈side

 

 

 今年の夏は色々なことが起こった

 まず初めに紅霧異変

 霊夢たちがなかなか来なくて暇だったなぁ

 その次に起こった出来事『紅魔郷EX』

 その時に私の中に現れた正体不明の人格

 たった一か月ほどでこんなにも色々なことが起これるんだなぁと感心さえしてしまうほどだ

 そしてそんな出来事達から早数日

 私の中に新たな人格が現れたこと以外は特に変わったことは......

 あぁいや、いくつかあったか

 なんとフラン様が自分から外に出られるようになったのだ

 紅霧異変が終わった後も引きこもってらっしゃったのに、一体どんな心変わりをしたんだろうか

 とりあえず嬉しいので祝いの言葉以外特にありません

 そしてそんなフラン様にお友達が出来ました

 しかも一気に5人も!

 5人といえば皆さんお察しになられると思いますが、湖でよく遊んでいるチルノ、大ちゃん、ルーミアの3人に加え、ミスティアとリグルとも友達になったそうです

 “そうです”といった理由は私はその時図書館で勉強をしていたので実際に友達になったところを見てないからです

 ......フラン様に友達が出来るところ見たかった......

 まぁそんなわけでここ最近のフラン様はよく湖にお出かけなされるようになった

 そしてそれを私は親が子供の成長に対し喜ぶのと同時に寂しさを感じるような気持ちで送り出していた

 

 そしてそんな日常を過ごしているうちにある考えが頭の中を占めるようになっていた

 

 『私は弱いのではないのか』

 

 別にその考えは昔からあった

 だからこそ日々勉強やら特訓やらなんやかんやしているのだ

 そして前まではそれらを欠かさずやっていくことで強くなっていると思っていたし、実際強くなっていたと思う

 しかしここ最近は全くと言っていいほど変化がないのだ

 いつも通り走ったり筋トレしたり、その日によって様々だが色々なことをしていても、強くなった気がしない

 そのことに焦った私はつい先日、普段であればやらかさないような失敗をしてしまい、皆さんに心配をかけてしまった

 そのことを反省するも焦る気持ちは変わらない

 一体、どうしたらいいだろうか......

 

 

榛「はぁ......」

 

 

 

魔「(お、おいフラン。榛奈の奴どうしたんだ?さっきから溜息ばかりついてるが......)」

 

フ「(わかんないけど最近の榛奈、ぼーっとしたり溜息ばかりついてるよ。この間も掃除中、それで失敗しちゃったみたいだし)」

 

魔「(ふむ、久々に来てやったというのに見向きもしないで...... いっちょ話を聞いてみるか)」

 

 

 

魔「お~い榛奈~、この魔理沙様がわざわざここまで来てやったぜ~」

 

榛「.........」

 

魔「お、おい?見えてるか?聞いてるかー?」

 

榛「...はぁ......」

 

 

 

魔「...駄目だ。全く話にならん」

 

フ「うーん。榛奈は何に悩んでるんだろ......」

 

 

 

榛「はぁ......いでッ!」

 

 思考に浸っていると、突然頭の上を何かが落ちてきたような衝撃がきて、一瞬で意識が現実に戻ってきた

 思わず上を見上げると何もなく、下を見るとそれなりに分厚い本が転がっていた

 ...もしかしてこれが落ちてきたのか......?

 ...なんだろう...... ムカムカしてきた......

 

榛「あぁもう誰だよ!人の頭に本落とすやつは!」

 

小「ご、ごめんなさい......!」

 

榛「ん?あぁコアだったんですね、ならいいや」

 

 申し訳なさそうに出てきたコアに怒りが静まっていく

 何せもう諦めてるのだ。コアが咲夜さんみたいに完璧になることは無いね

 私なんてコアのせいで命なくしかけちゃったことあるし

 頭に本がぶつかった程度、別にどうってことはない

 

 

 

フ「は、榛奈が怒鳴った......」

 

魔「それほど悩んでるってことなのか......?」

 

 

 

榛「...はぁ...... よし」

 

 再び思考に浸ろうとするも気が失せたのでとりあえず気分転換でもしてみよう

 ここ最近は紅魔館から出てなかったし、ちょっと外に出てみようかな

 ついでに少し遠出してみるかな

 幻想郷の風景を見れば少しは落ち着くかもしれない

 

榛「そうと決まったら早速行動だ」

 

 私はそんな独り言を言い、外へと足を運んだ

 

 

 

フ「ね、ねぇどうする?榛奈は何か言って図書館から出ていっちゃったけど......」

 

魔「追いかけてみるしかないぜ。いくぞ、フラン」

 

フ「う、うん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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[紅魔館 門前]

 

 

榛「いい天気だなぁ......はぁ......」

 

美「おや榛奈ちゃん、いきなりどうしたんですか?溜息まで吐いて......」

 

 いつもなら仕事をサボって居眠りしているのに今日は珍しく起きていた美鈴が話しかけてくる

 ...なんだろう......ここ最近、会う人皆に同じようなこと言われてるよ......

まぁ会う人って言っても紅魔館の皆さんしかいないんだけどね

 魔理沙姉は最近来てないし......

 ん?そういえばさっき白黒の魔女服を着た金髪少女がいたような......

 ま、気のせいだろうな

 

榛「んー?いやぁ何でもないよー...... 少し悩み事がねー......」

 

美「そうですか。私でよければ相談に乗りますよ?」

 

榛「ありがとう、美鈴は優しいね」

 

美「いえいえ、当たり前のことですよ」

 

 その“当たり前”が出来ない人が多いのが現代なんだけどねぇ

 ま、いいか

 

榛「それでもだよ。美鈴の優しさが心に沁みるなぁ。でもごめんね、誰かに相談するほど大きなことじゃないから大丈夫だよ。それと少し気分転換も兼ねてその辺飛び回ってくるねー」

 

美「はい、行ってらっしゃいませ」

 

 その言葉に手振りで返し、箒に跨って空へ繰り出した

 さてさて、どこへ行こうかねぇ

 

 

 

美「...おや?妹様に魔理沙さん。お二人もお出かけですか?」

 

フ「う、うん...... ちょっとね......」

 

魔「榛奈の様子がおかしいからな。後をついて行ってみるんだぜ」

 

美「そうでしたか。...確かにここ最近の榛奈さんの様子はおかしかったですね。日課のランニングも前より何周か多くなってましたし......」

 

魔「うへぇ、あいつ、ランニングもしてんのか...... まあそれはともかく、ちょっくらフランと榛奈がああなってしまった原因を探ってくるぜ」

 

美「はい、わかりました。ではお二人とも、お気を付けて行ってらっしゃいませ」

 

フ「うん、行ってきます♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[幻想郷 上空]

 

 

 目の前には青い空、白い雲、緑あふれる自然

 久しぶりに幻想郷の空を飛んだのだが、やはり美しい

 外の世界の、所謂コンクリートジャングルと呼ばれる風景に見慣れている私にとってはいつ見ても、何回見ても感動出来る風景だ

 しかしその感動もほんの少しの間だけ

 すぐに思考は自身の悩みに持っていかれた

 はぁ...... ホント、どうしたらいいものかねぇ

 

 なあ、お前はどう思う?

 

――君がこれ以上強くなるにはどうしたらいいのかってこと?――

 

 うん、どうしたらいいものかねぇ......

 

――とりあえず私が言えることは君が今やってるトレーニングだけじゃもう限界だよ。それ以上は強くなれない――

 

 なっ...... ってことはこれ以上私は強くなれないのか?

 

――そもそもどうしてそんなに強さを求めるのか教えてよ。その答えによっては何か答えられるかもよ?――

 

 別に強くなりたいだけだよ。力が欲しい、ただそれだけだ

 

――...何事にも理由が存在する。君が強くなりたいのも何か理由があるからでしょ?それとも君自身も分からないの?――

 

 強くなりたい。強くなって...誰よりも強くなって皆を...大切な人たちを守りたい。ただそれだけだ

 

――ちゃんと理由が存在するんだね。でも君の守りたい人、例えば吸血鬼たちだね。あの娘たちは君に守ってもらうほど弱い存在かな?逆に君が守ってもらうほど強い存在だよね。なのに君は強さを求めるの?――

 

 だからこそだ。私は守られてるだけだなんて嫌だ。最低でも一緒に戦える程度でいい。だって守られる立場だといざというとき守れないから。大切な存在を失いたくないから.....

 だから私は強くなりたいんだ。大切な人を守るために...... 大切な人を失わないために......

 

――...君が強くなりたい理由は分かった。でもさっきも言った通り君が普段やっているトレーニングだとこれ以上強くはなれない―――

 

榛「それだったらどうしたらいいんだよっ!!」

 

 ......っ...!

 

――...焦りすぎだよ。少し落ち着いて――

 

 ...あぁ、すまん......

 

――いや、私も遠まわしに言い過ぎたね。こちらこそごめん――

 

 いやいいんだ。それより“遠まわしに”ってどういうことだ?

 

――さっき言ったでしょ、“今やってるトレーニングだけじゃ”ってさ――

 

 ...あっ、そういうことか......!

 

――そう、要はやる事を変えればいい。例えば走るだけなら重りを仕込んだ服とか重いものを引きずりながらとかね――

 

 そうか......

 つまり工夫が大事ってことなんだな

 

――そういうこと。でも、それだと少しずつしか強くなれない――

 

 ん?まぁそうだろうけど......

 その言い方だと他に一気に強くなれる方法があるのか?

 

――うん。あるよ――

 

 本当かっ!?ならそれを教えてくれ!

 

――教えても何も君はもうやってるよ――

 

 え?何のことだ?

 

――ほらよく言ってるじゃない。「私は魔法使いの弟子だ」って――

 

 あ、あぁ......

 パチュリー師匠のとこに弟子入りしてるからな。確かに私は魔法使いの弟子だが、それがどう関係してるんだ?

 

――もう...... そこは鈍いんだね。つまり誰かに教えを受ければいいんだよ。魔法使いからなら魔法を、巫女からは霊術を、妖怪からは妖術、武術家ならその手の武術をね――

 

 ...だが、そう都合よくいくか?

 まずさっきお前が言った技術を持ち合わせてる奴はいくらでもいるんだろうけど、その中で弟子をとれるほど強い奴はこの幻想郷でも多くはないし、そもそもとして弟子を取ってくれるかもすら分からないんだぞ?

 それに弟子をとってくれる奴がいたとしてもそいつが何処にいるか分からないし、私にその技術が合うかもわからん

 パチュリー師匠は私の魔法の師匠になってくれたが、それだって偶然その条件が揃っただけなんだ

 その方法は難点だらけだぞ?

 

――強くて弟子をとってくれる人...いや妖怪ならあてがあるよ。君が知らない人だけどね。その人なら君を強くできると思う。それに君には自覚がないみたいだけど君には人の技術(スキル)を盗む才能に恵まれている。その才能があればどんな技術も君のものにできる――

 

 いやそんな才能私には......

 

――じゃあ聞くけど君はパチュリー・ノーレッジの魔法技術を何年で得た?――

 

 えっと...記憶が戻る前を合わせるなら四年かな

 

――記憶が戻ってからでいいよ。記憶が戻る前なら基礎とかも含めてしまうからね――

 

 なら記憶が戻った状態でなら一年くらい...かな?

 

――その意味がわかる?――

 

 え?んー......どういうことだ?

 

――パチュリー・ノーレッジは原作知識で言うなら百年は生きているんだ。つまり君は百年もの時を生きた魔女の知識をたった一年未満で得たわけだよ――

 

 でもそれは前世での経験と知識があったからであって......

 それに私自身、魔力が少ないから理解はしても使えるかは別だけどね

 

――まあ確かに使えはしないけど理解出来ている。それは君が昔...... いや、この話はやめておこう――

 

 彼女は何を言おうとしたのだろう......

 もしかして私の前世のことだろうか

 もしかしたら彼女は私の過去も知っているのかもしれない......

 もしかして私が幻想入りする前のことも知っているのかもな

 知りたいような...知りたくないような......

 ...いや、過去に何があろうと今ここにいる私が今の私だ。別に知らなくてもいいよな

 

――そういえば君は十六夜咲夜の従者(メイド)技術(スキル)も得ていたよね――

 

 うん、フラン様の従者になったからね

 それも自分でなるって言ったんだ。咲夜さんほどとは言わないけど少しは従者として役目を果たさないといけないからね

 

――それで?そのスキルも会得してるんだよね?――

 

 いやまあ...得たといってもあくまで咲夜さんの劣化版だけどね。お菓子は別だけど

 

――その技術だってメイドが数年かけて、いや彼女には時を操る能力があったね。それで止めた時間も含めると十年以上かけているのかもしれないけど、その技術も一年ほどで、それも魔女の知識も会得もしながらだよね――

 

 まあ魔法と従者の仕事、それぞれの勉強を始めたのは記憶が戻ってから、フラン様に逢ってからだからね。館に籠って必死に勉強してたのが懐かしいよ......

 あの頃頑張れたのは日に日に強くなってるのを実感できてたからねぇ......実際に強くなってたし

 でも今は......

 

 今は...どれだけ頑張っても強くは......

 

――だからそのために話をしてるんだよ?ものすごい勢いで話がそれたけど――

 

 あ、あぁすまん。それでその心当たりのある妖怪ってのは何処にいるんだ?

 そもそも私は人間、相手は妖怪だろ?

 妖怪が人間を弟子として受け入れてくれるのか?

 

――それ言ったら君を拾ってくれたあの館の妖怪たちはどうなるの?――

 

 それは...ほらレミリア様は能力の副作用で複数の未来ともいえる運命を見て私を置いてくれたからさ

 咲夜さんもそんな感じに紅魔館に来たみたいだし、ぶっちゃけちゃったらレミリア様は私を最初、利用するためだけに紅魔館に置いてただけだからねぇ

 

――利用するだけのつもりが情が芽生えてしまった...ってことなのね。まあそれはともかく、心配は無用だよ。彼...男なんだけど彼は種族なんて気にしないやつだからさ。人間だろうと神だろうと彼はその人自身を見てるからね。ただ問題は場所だね......――

 

 ん?もしかして外の世界にいるやつなのか?

 

――いや幻想郷にいるんだけど...... でも正確には幻想郷ではないというか......――

 

 ん?どういうこと?

 

――.........――

 

 なぜだか口ごもっているこいつに疑問を抱く

 ただその妖怪の居場所を教えるだけだろうに

 まさかそいつに何か問題でもあるのか?

 例えば昔凄い悪いことをして身を隠していて、一部の人しか教えられないとか、風来坊で居場所が分かんないとか......?

 いやそこまでして強くならなくても...いやでも強くなりたい......

 そう考えていると、ようやく彼女が口を開いた

 

――...正確には幻想郷と呼ばれる場所にいるわけではないんだよ。かといって外の世界でもない......――

 

 ん?だったらあとは...魔界とか?

 

――いや違うよ。確かに幻想郷とも外の世界とも違うと言われれば魔界という選択肢は出てくるけど、でも三つとも全て地続きではない...... 彼のいる場所は幻想郷と地が繋がっているんだ――

 

 んー、そうなると冥界?

 いや冥界は天にあるから地は繋がってないな......

 じゃあ天界?

 いや冥界と同じだ

 ...そうか!三途の川か!?

 三途の川は幻想郷と繋がってるし、幻想郷ではないとそれなりに言い切れるし......

 

――いいや、残念ながらどれも違うよ。そもそも三途の川に妖怪は住めないと思うよ。てことでヒント、下にあります――

 

 “下”......?

 下...下...下......

 ...あっ!そうか!地底!

 

――お見事。そう、地底。人間に嫌われる妖怪の中でも特に嫌われている凶悪な妖怪たちの住み処。其処には鬼をはじめ、橋姫、土蜘蛛、釣瓶落とし、地獄鴉、さとり妖怪など、様々な妖怪がいるといわれている――

 

 うん、原作でいうところの『東方地霊殿』の舞台だから、さっきお前が言った種族に心当たりはあるが......

 まさかその誰かに教わるのか!?

 いや原作キャラだから嬉しくないわけではないけど...... でも絶対断られるぞ!

 

――いや“彼”っていったでしょう?つまり男、原作キャラじゃないよ――

 

 そっかぁ......

 少し残念な気分......

 

――残念で結構。それでどうする?地底に行って彼に弟子入りする?――

 

 んー、鍛えてくれるなら是非とも行きたいけど......

 でも地底だよな......

 紅魔館から遠いから行って帰ってくるって出来ないよな......

 そしたら向こうに住み込みになるわけだし......

 向こうにいる間に紅魔館に何かあって、皆さんに何かあったら......

 

――それなら修行の旅ってことで少しの間だけっていうのは?今からなら来年の四月か五月までさ――

 

 ん?なんでそんな時期が決まってるんだ?半年とか一年とかあるだろうに

 

――忘れたの?ほら少し前に紅霧異変があったから、その次は?――

 

 えっと...そうか!春雪異変!

 

――そう、春雪異変が起こるのは、正確には解決されるのは五月。だからその間、鍛えてもらったらどうかな?それまでの間はこれといって何も起こらないだろうし――

 

 そうだな......

 私としては行きたいって気持ちはあるけど、皆さんが許してくれるだろうか......

 

――ま、その辺は君が皆を説得するしかないね。それか黙って行くとか――

 

 それは駄目。黙って行くと皆さんに物凄く心配されるし、帰った時凄く怒られる。最悪クビになる可能性も否定できない。もっと言うなら殺されるかも

 

――それじゃ説得するしか他になさそうだし、頑張ってね――

 

 おう!これも強くなるためだ、頑張るぜ!

 

 っとと、頭の中であいつと喋ってるといつの間にか紅魔館から結構離れたところに来てしまった

 えぇっと?ここは何処だ?

 周りを見渡すと少し離れたところに木製の背が低い建物が並ぶ場所、人里が見えた

 下は木で鬱蒼としている

 どことなくジメジメしていそうだ

 ...ん?これは魔力?

 森中から魔力が漂ってくるが......

 もしかして此処はかの有名な『魔法の森』という場所か?

 瘴気だかキノコの胞子だかで満ちていて普通の人が入れば体調を崩すと言われていて人里で行ったら駄目と言われていたあの......

 確か魔理沙姉もここに住んでるんだっけか

 んー、悩みもある程度道が見えて焦りもなくなったし、様子でも見に行こうかなぁって思ったけど止めた

 魔理沙姉は魔法使いのわりにアウトドア派だからいない可能性が高いもんな

 それに加え私は魔理沙姉宅を知らないし、言ってしまえば時間の無駄になるかもしれないからな

 それじゃどうするか......

 このまま帰るのも味気ないし......

 

 そう考えててふと思い出した

 その昔、お母さんがまだ元気に生きていた時、つまり私が人里にいた頃、お父さんに連れられて来たあの男の人のことを

 確か霧雨商店で店について学んだあと、自分の店を開いたとか聞いているが......

 ...まあなんだ。今日は特に急ぐような用事もないし、お金はないけど、挨拶がてら寄ってみるかな

 

 私は箒の向きを変え、箒を握りなおすとその店を探すため気のままに飛び始めた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魔「ふう、危ねえ。危うく榛奈に見つかるところだったぜ」

 

フ「そうだね...... そういえばさっきいきなり怒鳴ってたけど一体どうしたんだろう......」

 

魔「さあな......確か「それだったらどうしたらいいんだよ」って言ったんだったか。もしかしなくても榛奈がおかしかった原因に関係することだろうな......」

 

フ「うん...って魔理沙!榛奈が何処か行くみたいだよ!」

 

魔「よし、尾行再開だぜ!」

 

フ「うん!」




後書き~

一応できる限り月に二回は投稿しようと思っています
あぁ、最初のころの毎日投稿が懐かしい......

それはともかく次回、新たなオリキャラ“は”出ません
感想、誤字報告お気軽にどうぞ!
それでは次回もゆっくりしていってね!

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