ONE-PUNCH-MAN 一撃男と愛娘のユメ物語 作:叶夢望
ちょいちょいでユメがサイタマに甘える姿に癒やされればいいな、と思いそういう話を入れました。感想をお待ちしております。
ジェノスはサイタマとユメの弟子となる為に早速行動した。サイタマとユメが住むというこぢんまりとした小さな家の前に立ち、大きく息を吸い彼らを呼んだ。
「先生方!いらっしゃいますか!」
小さな家の扉が開き、そこにはイラついたサイタマの顔とあどけない表情を浮かべたユメがジェノスをあまり歓迎していなかった。彼らはジェノスを弟子にするつもりなんて毛頭無かった。
「マジで弟子になりたくて来やがったのか?えーと、ジェノスだったか?」
「はい!サイタマ先生!」
「あのさ、先生て呼ぶの止めてくんない?」
「師匠!サイタマ師匠ですね!分かりました!」
「や、分かってねぇだろ・・・ユメ?」
ユメの様子がおかしいと思ったサイタマはユメの顔を見たら、ユメは晴れやかな顔をして「師匠っ!」と大喜びの表情を浮かべて楽しそうにしていた。まさかと思うサイタマはユメに弟子に興味があるのかと聞くと、弟子には興味ないが師匠と呼ばれる事の興味があるのだそうだ。恐らくだが、ユメは大人になろうしている幼気な子供であり、大人扱いされるのが嬉しいだろう。
「ジェノスくん!立ち話も何だし入って入って!」
「はい!ユメ師匠!」
ユメは満面の笑みを浮かべジェノスの腕を引っ張り我が家のリビングへと案内するがサイタマは納得いかない表情を浮かべてジェノスを適当な所に座らせ、自分も適当な所に座り、ユメはお茶をジェノスに与えサイタマの隣に寄り添うように座っていく。ユメはサイタマに寄り添うのが嬉しくて楽しいからか目がトロンとなって無邪気な笑みを浮かべていた。そのユメの頭をサイタマは撫でつつ、ジェノスの話を聞く事にした。
「はぁ、まぁいい。それで弟子になりたいという話は一旦置いといてお前治っているな?何で?」
ジェノスは数日前にはボロボロになりまともに立つ事さえ出来なかったのだが、今のジェノスは初めて会った時の姿のままであった。ジェノスが言うには自分の身体が全て機械でありパーツの予備さえあればいつでも治せる事が出来るそうだ。
「それで先生はどんなパーツを使っているのですか?」
「パーツなんか使わねーよ。てかなんでオレを先生て呼ぶの?オレ達師弟関係じゃないじゃん」
「ユメ師匠は師匠と呼んで欲しそうなので使い分けとしてサイタマ先生は先生と呼ぶのです。そんな事よりも先生の肌色の装甲は一体なんですか?」
「ただのハゲ頭だよ?ジェノスくん。パパ、ハゲているから。若くしてハゲだから」
「コラぁ!ユメ!人前でハゲハゲ言うな!このぉ!」
サイタマは怒った表情を浮かべ、ユメの脇や脇腹を擽ってお仕置きし、ユメは最大の弱点を突かれ満面の笑みを浮かべ苦しそうに笑い声をあげていき、ユメは力果てて甘い吐息を吐き床に倒れてたのをサイタマは放っておいたがユメは床に倒れたままサイタマのズボンを引っ張り「パパぁ~ん、大好き~」と愛の告白しながらサイタマのパンツまで下げようとしたのでサイタマはユメの脇腹を片手で擽ってユメはまたも弱点をつかれ大笑いし顔は紅潮し、甘い吐息を激しく吐いていた。
「ちっ、で?」とユメのイタズラに腹が立ったので舌打ち交じりで聞く態度が最悪なサイタマにジェノスは静かに自分の過去について語った。
自分の住んでいる街・家族を暴走したサイボーグに奪われ、当時十五歳のジェノスも瀕死の重傷を負い、そんな中で偶然にクセーノ博士に出会い、みんなの仇を討つために身体改造手術を頼み込みサイボーグ化を成功させた。その暴走サイボーグを倒すべく様々な場所へ転々としたが、その暴走したサイボーグの居所は掴めなかった。
そして四年経った今もその暴走サイボーグに復讐する為に活動したが、なかなか居場所が掴めずに彷徨い続けた。その暴走サイボーグを探す事を諦める事は出来ず、せめて正義のサイボーグとして悪を滅ぼすと決めたジェノスは怪人をやっつけ自分の力を強くしていく事を決意した。
そのままでは弱いままかもしれない、だからもっともっと強くなってその暴走サイボーグを倒せるくらいの戦闘力を身につければと日々奮闘するしかない。そして、ある日の事サイタマとユメによる攻撃に衝撃を受けて弟子になるしかないと心に誓ったのだ。
「だからオレは強くならないといけないのです!先生!師匠!これはオレだけの問題じゃなく故郷やクセーノ博士の想いを背負っているのです。だから何としても強大な力が欲しいのです!オレが未熟なのは分かります!ですけどオレはーーーー」
「バカヤロウ!二十字以内に簡潔にまとめてから言え!ユメが寝ちゃったじゃねーか!一度寝たらなかなか起きねーんだぞ!」
サイタマの遮る声にジェノスはユメに視線を送り、ユメはサイタマの膝に頭を乗せて気持ちよさそうにスヤスヤと眠っていた。ユメの弱点は何個もありその一つとして長時間話を聞くと非常に眠くなりその間無防備になるのだ。
「でへぇ~・・・パパ、ヅラ被ってるぅ、似合ってなぁい。ムニャムニャ」
ユメは無邪気な寝顔を浮かべサイタマの膝にヨダレを垂らし寝言を言うのだが、サイタマにとってその寝言は腹が立つ言葉であり、お仕置きとしてユメの頬を何度も突きまくったのだが、ユメは無意識にサイタマの指を咥えてハムハムと舐めていた。
「はむはむ・・・ハゲの味だ~・・・すぅすぅ」
「どんな味だこのやろう!」
サイタマはユメの寝言にキレてユメの両頬をむにょおと伸ばしてユメは「むにょ~(もぉ)、むょむぁすまぁまぁあいむぇ~(のばさないで)」と器用な寝言を言っていた一方、とある深い森で生物の改造などを研究し、人類を絶滅させようと新世界の創造を目論む進化の家という大きな施設があった。その首領ジーナス博士は、試作品であるモスキート娘とモスキート夫が万全の状態だったにも関わらず一撃もしくは二撃で敗北したのを知った。
ジーナス博士の年齢は七十歳を超えるらしいが研究の成果によって二十代まで若返っており、自分のクローンを何十人も従えていて、人類という種全体の人工的進化という夢を持ち続けているが、それを社会に危険視され続けた事により人類に失望し、進化の家を創設したそうだ。
「全裸のハゲ頭とただの幼女か?コイツらがモスキート娘とモスキート夫をやっつけたのは信じられんが記録を見る限り本当らしいな」
ジーナス博士はモニターに映る全裸のサイタマとあどけない表情のユメの姿を目にして、彼らに興味を持ったのか被験体として進化の家に招待すべく、ジーナス博士が造った作品である実験に成功した動物を怪人にしてその怪人数体を彼らの家へと直行させる事にした。
そのサイタマ家ではジェノスが二十文字以内纏めた言葉をサイタマとユメに伝えるべく真剣な表情を浮かべていた。
「先生方の強さになれる方法を教えてください」
サイタマとユメは真剣な表情を浮かべ、ジェノスの決意を見定める。つらい目に遭う決意はあるのか、どんなにキツい修行にでも着いていける決意はあるのか、そして強くなる決意はあるのかをサイタマはジェノスに問うとジェノスは力強く「はい!」と肯定の意を表した。
「ーーっ!?高速で生命体が接近している!しかも数体だ!くっ!」
ジェノスは生体反応を示すレーダーらしき機械を搭載しているのか前屈みになり敵襲来を知らせるが、サイタマとユメは首を傾げ、何やってんだ?コイツと言わんばかりの顔をしていた。
すると黄緑色のカマキリのような人型の怪人が天井をぶち破りユメの目の前に現れた。ユメは涙目になり、いつしか泣いた。恐怖を感じた訳ではないのだ。たくさんの思い出が詰まった大好きな我が家を壊された悲しみの涙であった。
「ううぅ、ぐすっぐすっ、うわああああん!!!お家が!ママとパパとわたしのお家がぁぁ!うわああん!」
ユメは大泣きしてカマキリの怪人の両腕を掴み、左右同時に引っ張りながら思いきり外へと放り出し、怪人は真っ二つになりながら何処かに消え去っていった。
大泣きするユメにサイタマはユメの頭をそっと撫でて、外にいるのであろう数匹の怪人の前に立った。
「お前ら・・・覚悟は出来てんだろうな?」
サイタマは怒っていた。愛している妻サクラと愛する娘ユメとの思い出の場所を壊した怪人を許せなかった。そして愛する娘を泣かした罪も大きいものである。
サイタマはその数匹の怪人を一撃で仕留めた。一つの細胞や骨さえも粉砕する勢いで殴った。そして地中に居るであろう怪人の気配も感じ、地面を蹴ったら付近の地面は粉々になり地中に居たモグラのような怪人も粉々になった。ジェノスはサイタマの手助けをしたかったがそうは出来ず、ただその場に立ち尽くすしかなかった。
「サイタマ先生!ユメ師匠は泣き止んで疲れたからかお休みになられました!」
そう言うジェノスの背中に腫れぼったい瞼をして頬に涙の跡ができたユメの姿があり、ユメはスゥスゥと寝息を立てていた。ジェノスはユメを護る事がいっぱいいっぱいであったのでサイタマの助力とはならなかったが、ジェノスの行動は正しかった。
「そうか・・・ん?なんだ?あれは」
サイタマが向ける視線にジェノスもその視線を向けると、鋼で出来ているであろうサイボーグが存在していた。かつて街や家族を壊した暴走サイボーグの知り合いかと思ったジェノスは眠るユメを近くにあったベンチに寝かせて、鋼サイボーグ(仮)に尋問する事にしたが、その鋼サイボーグ(仮)はなかなか口を割らず、戦闘態勢へと移行した。
「ジェノスはアレをやるとして、だ。オレはアイツかな?」
サイタマはベンチで寝ているユメに視線を送った。その寝ているユメに忍び寄る虎のような怪人が爪を立ててユメに攻撃しようとしていた。
「ユメ!今助ける!連続普通のパンチ!」
サイタマは十メートルは離れている距離を一瞬で詰め寄り、虎の怪人を右拳のボディブロウによる連打でしとめた。一方ジェノスはアーマードゴリラと名乗る鋼サイボーグに苦戦しており、ジェノスは火炎放射や爆撃などの攻撃をするがアーマードゴリラの防御が堅くあまり効果は無かった。
「オ前ヲ破壊ス・・ガバッ!」
しかしジェノスの拳による物理攻撃により堅い鎧は難なく砕かれ、アーマードゴリラの素顔が晒されていた。名前の通り、ゴリラが鎧を着ていただけだったのでその怪人に尋問するとあるところに存在するという進化の家からやってきてサイタマとユメを捕獲しにきたと正直に答えた後、ジェノスの容赦ない攻撃によりアーマードゴリラは永遠に動ける状態にしたのだ。
「うし、行くぞジェノス。また訳分からん連中が襲ってくると思うから潰すぞ。明日はスーパーの特売日で忙しいから今日行くぞ。ユメはオレが担ぐ」
「はい!先生!」
サイタマはユメを自分の背中に覆い被せ、進化の家という建物へと走り去っていた。
一方進化の家の中にいるジーナス博士はサイタマとジェノスとユメが進化の家へと向かっているのをアーマードゴリラからの通信で知り、とりあえずは進化の家の全部屋にありとあらゆる罠をしかける事にした。進化の家は八階建ての建物であり、彼らが突入するとならば上へ上へと移動するはずなので準備万端に罠を確認し彼らを待つだけであった。
その待ち人であるサイタマ一行は走って進化の家の前まで到着していた。ユメはすでに目が覚めて切なそうな表情を浮かべていた。
「弁償してくれるのかなぁ?」
どうしても我が家を壊した怪人が許せなくて我が家の壊れた所を弁償してもらいたかった。どんな理由があれ、家族の大切なモノを壊す外道はサイタマも許せなかった。
「オレが何とかしてやるから元気だせ、な?ユメ」
「うんっ、わたし元気になる!」
サイタマはユメの頭をそっと撫でてユメは気持ちよさそうに目をトロンとさせ無邪気な笑みを浮かべるのをよそに、ジェノスは両腕を進化の家に向けて両手の手の平から巨大な爆撃効果をもつレーザーを出し進化の家を爆発させた。
「あれはフェイクのようですね。地下が本命らしいですサイタマ先生、ユメ師匠」
いきなりの爆発に驚いた表情を浮かべるサイタマとユメは中に居るであろう自分達の敵となる刺客達に申し訳無い気持ちを抱きつつ、地下への扉を見つけ彼らは地下へと進んでいった。
ユメの弱点は子供だからこその弱点が多いようです。
サイタマ娘にデレデレ、という訳ではないですが、ユメを思いきり甘やかす優しい父親となります。