ONE-PUNCH-MAN 一撃男と愛娘のユメ物語   作:叶夢望

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キングの話です。

そして次回で最終回となりますのが、ユメとガロウを戦わせようと思います。しかし、ガロウは強すぎるし、ユメでは勝てないでしょうが、それとなくいい勝負にしようかと思います。

原作版のガロウはリミッターが外れ怪人に変身して戦っている描写がありましたが、この作品ではそうならないかもしれません。もしそうなったらユメが勝てる見込みが皆無ですので、怪人ガロウ>>通常ガロウ>ユメという力関係だと思っていただけたら幸いです。


二十二撃目 史上最強のヒーローの秘密

M市付近に急に現れた怪人が居た。災害レベル狼であり、危険因子の出現であるという災害警報が住民達を困らせていた。その怪人は爬虫類を愛するあまり突然変異した元人間である。人間が怪人になるのは稀であるが、その怪人シタノビールはカメレオンのような怪物となり、女達に自分の子を作らせようとして舌をカメレオンのようにレロレロと長く伸ばしていた。そんな事させまいと一般人の大の男が五人ががりでも抑えきれないそこそこ手強い怪人であった。

 

「レロレロ!俺の子を作れー!女共ー!レロレロ!」

 

女に向かって舌を伸ばそうとした瞬間、シタノビールは嫌な気配を感じその気配の方向へと視線を泳がせるとS級7位ヒーローキングが周囲の人間に聞こえるほど ドッドッドッ という重低音が響きかせながらシタノビールを

片目に三本の傷跡がついた強面の顔で睨んだ。

キングはキングエンジンと呼ばれるそのドッドッドッという重低音を聞いて生き延びた怪人は居ないとまで言われており、キングのとてつもないオーラと威圧感、さらにこのキングエンジンによる恐怖で、シタノビールはキングが直接手を触れる前に戦意を喪失した。  

 

「す、す、す、スミマセンでした!もうしません!だから許して!頼む!」

 

シタノビールは土下座してキングに許しを請っていた。キングは戦わずして怪人を戦闘不能にしたのを住民達は喜んだ。さすが最強のヒーローだ、さすがキングだなどと褒め称えキングはその褒めを嬉しくないのかピクリとも表情を浮かべていなかった。しかし、住民達から慕われていて笑みすら浮かばないキングにある記憶が蘇ってきた。それはユメとの出逢いであり、笑わないと友達が少なくなるよと説教された事を思い出してほんの少し、ほんの僅かではあったがキングに笑みが浮かんでいた。

 

「むふ、俺なんかを応援してくれてありがとう」

 

キングのその言葉に住民達は驚いた。あの地上最強のヒーローと謳われるキングが謙遜し、更には自分達に感謝するなんて夢にも思わなかった。しかもいつも無愛想なキングが笑い声を出すのも初めて聞いた住民達はその貴重な体験に戸惑いながらもキングに応援の声を上げた。キングいつもありがとう、キング謙遜すんな、これからも頑張れなどなど応援の嵐はおさまる事がなく、キングは前へ前へ進んだ。応援の声はキングの姿が見えなくなってもおさまらず、キングは応援により背を押され、キングは帽子やフードを被り顔を隠してゲーム専門店へと入店した。

 

「すみません、新作の恋愛シミュレーションゲームのどきどきシスターズ初回限定版ください」

「はい、お会計五千八百円となります・・・はい、ちょうど頂きました。当店の購入特典としてどきどきシスターズのポスターとどきどきシスターズのヒロインがデフォルメキャラの姿をした5センチのフィギュアが付いてきます」

「何?最近そんなのが流行っているのか?」

「はい、お客様のお部屋などに飾っていただいてそれを眺めるのがファンとして喜びがあるそうです」

「ああ、そうなのか。貰える物なら貰っておこう」

「はい!ありがとうございます!またのお越しをお待ちしております!」

 

キングはゲームソフトと特典が入った袋を手に持ち、ゲーム店から出てウキウキ気分で自宅へと戻ろうとした姿をそのゲーム店の近場で買い物をしていたサイタマ、ジェノス、ユメが目撃していた。キングが帽子やフードを被り顔を隠しているけどユメが身長が低い分目線が常に上を向くので背の高い人の顔を見るのは当たり前であった。

 

「キングおじさん?ゲーム好きなんだ?意外だなぁ」とユメは呑気に言い、「キング?誰だっけ?」とサイタマはキングの存在を知らずに困った顔をし、「S級7位ヒーローです先生」とジェノスはサイタマにキングの詳細を伝えた。キングは地上最強のヒーローであり、サイタマやユメを差し置いて最強と謳われるという彼にジェノスは対抗心を燃やした。

そんなキングのもとにG4と呼ばれるある組織によって造られたロボット怪人であり、身長4メートルほどの大型ロボットでかつ防御面もありとあらゆる攻撃を一切受けないであろう銀色の大きな鎧を装着していた。そんなG4は巨大な刀をキングの顔に突きつけていた。

 

「貴様を殺しに来た!さぁ全力で戦え!これは我のAIの性能テストであり貴様の実力を測るものでもある!だからかかってこい!」

 

G4は人工知能で動いているロボットであり、キングにはロボットを作っているであろう組織には全然縁もゆかりとなく当然組織を知りもしない。突然の命の危険に戸惑いつつもそのG4にとりあえずトイレに行かせてくれと頼むとG4はそれを快諾したが、十分のみの制限時間が出された。それに一分でも遅れたら十人を殺すぞと脅しをいれてキングはコクリと頷くしかなかった。

その様子を影から見ていたサイタマ、ジェノス、ユメは強そうな怪人にキングがどう立ち向かうかが興味津々で見ていたが、ジェノスがいうにはG4は強力なパワーを持っていてジェノスより性能が高いかもしれないロボットだという事をサイタマとユメに伝えた。

 

「あれは間違いなく災害レベル鬼以上の強者で厄介な敵です」

 

災害レベル鬼は一つの街が確実に崩壊するほどの危機的状態であり、たとえS級ヒーローでも返り討ちにされる危機だ。そんな怪人を相手にするキングは公園の便所へと引きこもっていた。実はキング、無職でオタクで引きこもりなダメな29歳の一般人であった。キングエンジンと呼ばれる重低音は極度な緊張によるものであり、全然戦闘には役に立たなかったのだ。何故彼がS級ヒーローとなれたのかはたまたまキングが災害レベル鬼~竜の凶悪な怪人と出会い目を閉じている間に誰かが倒していたのだ。その災害に偶然五回ほど出くわし、S級ヒーロー認定されてしまい今に至ったのだという。

 

(ヒーロー辞めたくない!でも死にたくない!どうする!?どうする!?もう十一分は経ったはずだ!)

 

キングがトイレに引きこもってから十一分が経ち、キングが入店したゲーム専門店付近に居た住民をG4は巨大な刀で殺そうとしたのでジェノスはそれをさせまいと両腕を飛ばした。つまりはロケットパンチでG4の刀を壊し、G4の巨大な身体を宙に浮かせジェノスはG4にマシンガンブローと呼ばれる爆撃を仕込んだパンチを連打している。

 

「手を貸そうか?ジェノス」

「そうだよ、ちょっと危ないかもしれないよ?」

 

サイタマとユメは参戦しようとするがジェノスは首を横に振った。いつまでも師匠達に甘えているばかりでは強くなれないし、S級10位以内のヒーローにもなれないのでジェノス一人で戦う満々であった。なのでサイタマとユメは弟子の気持ちに賛同して自宅に戻る事にしたが、帰る途中走っているキングを目撃したサイタマとユメは走るキングを見つからないように尾行する事にしたけど、キングが何故居住地の方向に進んでいるのか理解しなかった。

 

「なんでキングおじさんがあんな所に?道に迷ったのかな?もしかして方向音痴?」

「とにかく着いていこうぜ」

 

サイタマの提案のもとユメもキングの後ろをこそこそと隠れながら歩く事数分後、キングはビルの二十二階に入ったのでサイタマとユメもこっそり地上から飛んでその二十二階の部屋に入った。

そしてサイタマとユメは目撃した。怪人と戦うはずのキングがゲーム機にディスクを入れてゲームをしている姿を。怪人はジェノスが食い止めているけど、もしもジェノスが居なかったらどうなっていたのか検討も見当もつかない。しかもキング、恋愛ゲームといういかにもオタクなゲームをやっている姿にサイタマとユメは驚くしかなかった。

 

「起キテお兄チャン、朝だヨー!」

「なんだこの声優・・・不老不死を企む変身が三回出来る宇宙一の帝王みたいじゃねぇか。ヒロインなのに声が女じゃねぇとか可笑しすぎるぞ」

「起きナイとお兄チャンを爆発させるゾ?あの地球人のようにナ。フッフッフッ」

「くっ、栗の兄貴の事かー!って、パクりじゃねぇか」

 

テレビに向かってキングがブツブツと独り言を言うのでサイタマはユメの目を塞いで、「しっ、見てはいけません」というような主婦みたいな行動をとった後、キングの目の前にずいっと顔を寄せた。キングは突然の変質者の訪問に驚いて彼らに何者なのか、それにどうやって来たのかを聞くと窓が開いていたから侵入出来たと言うのだ。

 

「こ、困るなぁ~!勝手に人の家に上がり込んだらダメだよ」

「キングおじさんお邪魔します、はい!これでいいでしょ?ていうかなんか雰囲気が違うような・・・?」

「遅いんだよねぇ~!ユメちゃん!それとあまり気にしないでね?俺は本当はこんなんなんだよ!ちょっと人が苦手、というか」

「ふぅん、それよりキングおじさんはキングおにぃちゃんと呼んで欲しいの?キングおにぃちゃん」

 

キングとユメはテレビをチラリと見てそれに映るお兄ちゃんと連呼する美少女が居るのでキングは慌ててゲーム機の電源を落とし、慌てて言い訳をする。どきどきシスターズを怒気怒気シューティングゲームと勘違いしてゲームソフトを壊れないようにそっと叩きつけた。その一方でサイタマは重なって積み上げているソフトの一本を取りだしキングにコレで遊ぼうぜとゲームを誘っていた。どうせ暇なんだからとサイタマの強引の誘いで渋々サイタマと一緒にゲームをやる事にして、ユメはサイタマの膝の上にチョコンと座り、サイタマはユメの身体を腕で包み込むように抱いたままプレイするが、どう考えてもやりにくそうだ。しかし、ユメは満面の笑みを浮かべて嬉しそうにしていたのでキングは気にしないでいた。

 

「キングお前めちゃくちゃゲーム上手くないか?」

「アクションゲームの大会があってそれに何度も優勝したからその影響かな?」

「スゲェな、現実でもゲームでも一等賞とか天才だろ。でも、なんでさっき逃げたんだ?今ジェノスが戦っているんだけど」

 

サイタマの言葉にキングは思わずコントローラーから手を離し、キングエンジンが発動してキングの胸からドッドッドッという重低音が響き、とんでもなく緊張した。S級ヒーローなのに何故怪人から逃げたのか?怪人から興味を失ったようにゲームを始めているのか?そういう問いがサイタマから出された。ユメもキングにどうして戦わないの?強いじゃないの?と次々に質問され、キングは答えなかった・・・いや、答えきれなかった。本当はただのビビりであり、オタクであると言ったら彼らはもちろんキングを慕っている住民達に何と言われるか分かったものではない。そんなキングにまたも悪夢が降り注ごうとしていた。

 

『緊急避難警報!M市上空に巨大怪鳥が出現しました!災害レベル鬼!災害レベル鬼です!建物から絶対に出ないように!繰り返しますーーー』

 

怪人の出現に絶望顔のキングはどうする事も出来なかった。何故ならば、その巨大怪鳥は今目の前に居て部屋に突っ込んできたのだ。その鳥のくちばしをサイタマとユメの手によって突っ込むスピードを落とし更には身動き出来ないように力いっぱい止めていた。

 

「わぁ!鳥さんだ!大きい!胸肉とか手羽先とかいっぱいありそう!おいしそ~!じゅるり」とユメはヨダレをだらだらと流し、「やめろユメ、なんか俺までこの鳥食べたくなるじゃねぇか」と父親による愛の説教を受け、ションボリと頭を垂らす彼らの行動をよそにキングは目の前に居る巨大怪鳥にただただ恐怖を感じるしかなかった。そしてその恐怖は限界を超えたので目を閉じてキングは叫んだ。

 

「俺はただの被害者だ!いつも逃げているだけでいつもは誰かがやっつけてくれた!それで勝手に史上最強のヒーローとか勘違いされてキングとなった!俺は喧嘩なんかしたこともないし、しようとも思わなかった!そんな何もかもが間違っている俺は嘘の塊だ!世間が憧れるキングなんかじゃない!今の鳥でションベン漏らす俺はヒーローなんかじゃない!」

 

キングが伝えた後ボキャッメキャッゴリッという鈍い音がした。キングは彼らに謝り続けた。B級のサイタマとA級のユメが巨大怪鳥に喰われたのではないか?だとしたら彼らを守れない自分を許してくれと目を開けるとそこには鳥の血でベットリとついたサイタマとサイタマによって返り血がつけられていないユメの姿があり、巨大怪鳥の姿は無かった。

 

「大丈夫か?」「大丈夫なの?キングおにぃちゃん」

 

そしてその声の主達に覚えがあった。数年前に災害レベル虎のタコヅメ男と名乗る大きなタコに襲いかかられていた。そのタコヅメ男の爪により左目に三本の傷が出来るほどの大怪我を負ってしまったが、一人の青年と幼女がボロボロになりながらタコヅメ男を撃破した事を思い出していた。

 

「目、大丈夫か?傷が深くなさそうだからゆっくり目を開けてみ?見えるはずだ」

「痛くなぁい?おにぃちゃん?大丈夫?」

 

キングはズキンズキンと痛む左目を徐々に開けるとジャージ姿の血まみれの若い男とボロボロなのに涙一つ流さない幼女が困っている表情を浮かべた姿があった。そんな彼らに名を聞くと、どうやら趣味でヒーローをやっているようだった。そんな彼らが今目の前に居るのでキングは謝罪した。サイタマ達の貢献を自分の物にしてすまないと、嘘ついてヒーローをやっていた事を正座して謝った。サイタマは特に怒ってはいなかったが、ユメは少し怒っていたようだった。ユメは嘘をつかれるのは嫌いであり、正直に話してほしかったのだ。

 

「キングおにぃちゃんはそのままでいいの?ヒーローはイヤなの?」

「っ!俺は嘘を通し続けるのは嫌だ!ヒーローを辞めたくない!みんなを失望させたくない!」

「だったら強くなればいいじゃない?わたし、まだ六歳だよ?だからキングおにぃちゃんも強くなれるじゃん」

「・・・え?」

 

キングは耳を疑った。自分が強くなれるだろうか?まだ六歳というユメと同じぐらいは強くなれるのか?そもそもその才能は自分にあるのか?だけど、ユメは強くなればいいというシンプルなアドバイスを送ったのでそのアドバイス通りにキングはこれから少しでも強くなる事を決意した。ユメは言うだけ言ってサイタマの手を握り、サイタマに帰ろうかと提案し、サイタマも帰る気満々であるので帰る事にしたので二十二階の窓から飛び降りて、普通に地面に着地して自宅へと帰っていった。


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