ONE-PUNCH-MAN 一撃男と愛娘のユメ物語   作:叶夢望

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ボロスとの戦闘シーンを文章にするの大変難しいのでボロスの過去話を導入しました。もちろんオリジナル展開であり、ボロスの性格がちょっとおかしいところがあるかもしれませんがご容赦を。


二十撃目 戦うヒーローたち

「みなさん!ソイツは剣撃や打撃では効果がないようです!いったん退いて熱か何かでダメージを対策を練りましょう!」

とイアイアンは再生し続ける怪人と戦っているヒーロー達に叫んだ。しかし彼らは首を横に振った。

 

「ダメだ!俺は斬る事しか出来ねえ!それに俺に斬れねぇモンはねぇ!」とS級ヒーローアトミック侍が言い

「俺は殴る事しか出来ねぇよ!」とS級ヒーロー金属バッドが言い

「俺もだ、ごめんなイアイアンちゃん」とS級ヒーローぷりぷりプリズナーが言い

「老いぼれに新しい事が出来るほど器用じゃないわい」とS級ヒーローバングが言い

「あ!そうだ!再生する前に全部叩いたり斬ったりしたらいいんじゃない!?」とA級ヒーローユメが言い

五人のヒーローは人の話を聞かないタイプだったが、子供特有の発想力にS級ヒーロー達は声を揃えて「それだ!」と怪人の対処法を思いついて早速行動した。

 

「さすがだぜ!シンプルかつ大胆な作戦だぜ!お嬢ちゃんをA級ヒーローにするのは勿体ねぇぜ!」とアトミック侍は得意の剣術で怪人を切り刻み、「へっ!やるじゃねぇか!バカでも分かる作戦で良かったぜ!」と金属バッドは金属バッドで怪人を殴り続け、「可愛い顔して強いなんて妬けるぜ!」と全裸のぷりぷりプリズナーが拳で殴り続け、「やはり弟子にしたいのぉ」とユメを勧誘しながら怪人を流水岩砕拳で叩きのめしていて、「でへへへ~」とだらしがない笑みをユメは浮かべながら全員のフォローに回った。

 

怪人の一つの顔を破壊していくとビー玉のようなものから細胞が集まっているのでそれを金属バッドを破壊すると一つの怪人の顔が破壊された。恐らくそれが再生の核なので彼らはその核を壊す事に集中した。

 

一方、サイタマは上空に漂う巨大要塞に突撃し、中に居る宇宙人を数体一撃で倒しついでに船を壊し続ける事三十分が経っていた。サイタマはとにかく走っては船を破壊し、宇宙人を見つけては一撃で倒したりと大暴れであり、巨大要塞の搭乗員の一人はサイタマに向かって死にたくなければそこから逃げろというが、巨大要塞の中は巨大な迷路となっていてどこにいるかも分からないのでその旨を伝えるとその搭乗員は帰る道筋を教えるが、サイタマはその逆の方向へと進み、ボス部屋らしき大きな扉を見つけ、その扉を一撃で壊した。

 

「来たか侵入者」

 

そこには黒いタコみたいな宇宙人と一つ目で髪や耳がツンツンと尖っていて人型の宇宙人がいた。まず手始めにと黒いタコの宇宙人は宇宙一の念動力と呼ばれる超能力でサイタマにめがけて鋭利に尖っている石を数個投擲したが、サイタマにとっては何という事もなく小石遊びでしかなかった。

 

「なんだ、こんなもんか?超能力。ユメでも面白がらないな」

 

サイタマは石を手に取り、タコ宇宙人に投げてタコ宇宙人は倒れ、二度と目が覚める事がなかった。その様子を見た一つ目の宇宙人、暗黒盗賊団ダークマターの頭目であるボロスは笑みを浮かべた。サイタマの戦いは素晴らしい、自分の支配下である宇宙人達を簡単に倒したから興味を抱いた。しかし、ボロスはある事を思い出していた。宇宙中を支配しようと暴れ回り、誰一人として立ち向かってこなくなり、いつしか退屈な日々を送っていた。今から二十年前にたまたま立ち寄ったとある惑星の里に奇妙な占い師に出会ったのだ。

 

「あ~、キミキミ、ちょっといいかな?」

 

そのとある惑星の里を退屈しのぎで歩き回っていると後ろから話しかけられたのでボロスは何事かと振り返るとフードを深く被った人物が水晶玉を覗き込むように見ていた。顔は目玉がたくさん存在し木のような模様の顔をしていた。

 

「・・・なんだ?貴様は」

「え?ワタシ?ただの占い師さ。こう見えても結構有名な占い師なんだけど知らない?あ、もしかして旅の人なのかな?」

「ああ、宇宙船で惑星を転々して旅している者だ。で?俺に何の用だ?」

「もぉ、殺気が怖いなぁ。でね?今あなたが退屈そーにしているもんだから気になっててね。まるで何かに餓えているけどそれは満たされないみたいな。簡単に言うと美味しい物を食べてたけどその美味しい物がもの足らないように感じているのかな?」

 

ボロスは占い師の言葉に心当たりがあった。宇宙中を暴れ回っていた時どこか自分がはしゃいでいたような気がしていた。ボロスは戦いが好きで特に強者との戦いが刺激を与えてくれた。まさに戦いの為に生きるという気持ちがあった。しかし、今はその者は現れず、ボロスの名を知っている者がいればすぐに逃げるから戦いによる刺激が無くなって、ボロスはいつしか心が死んでいた。戦いが生ならばそれ以外が死である事は間違いなかった。

 

「俺を占え。金はないがな」

 

だから少しでも生きる可能性があればそれに賭けるまでだった。戦える事が出来るのであれば占いでも何でも使える物は使って生きるという刺激が欲しかったボロスは奇妙な占い師にほんの少し、ほんの僅かではあったが信用してもいいと思うようになっていた。

 

「いいよ、どうせ寿命で引退寸前だし金なんか貰ってもいい事なんか無いからね」

「すぐに死ぬのか?別にどうという事も無いが」

「クックックッ、老人が死ぬと分かってもそんなのキミにとって他愛が無いというのかな?ま、いいけどね」

「それよりも貴様の占いは当たるのか?当たらなかったら貴様とこの惑星は命尽きるぞ」

「わぁお、怖い怖い。でも安心してよ、絶対のぜ~ったいに当たるから。ワタシが若い頃から占いをしてたけど、今まで百発百中の占い師と呼ばれるほどの的中率があるよ。的中した占いの数はなんと五万を超えるよ」

「ほう、なかなかの手練れだな、俺の仲間になれ」

「さっき言ったでしょ?ワタシ寿命寸前だって。どんな仲間になれるか知らないけど、ワタシは近いうちにこの世からサヨナラしないといけないよ。そんな人を仲間にしたって仕方がないでしょ?」

「確かにな・・・だいぶ話が逸れたな、早く占え」

「あいよ」

 

占い師はボロスの姿が映し出された水晶玉を覗き、占った。するとある占い結果が現れた。ボロスが刺激するような対等する強い者が現れるという予言が出された。しかも今居る惑星から地球という惑星が結構遠いらしい。ボロスはどれくらい掛かるんだと聞き占い師はボロスが乗っているという宇宙船の最高速度を聞き出し、ボロスは正直に答えたので占い師は紙にペンを走らせ到着時間を計算してその答えが出た。

 

「細かい日数とか分からないけど、その地球とかいう惑星にはここからずっと東へと真っ直ぐに進んで二十年で着くよ。何かのトラブルが無かったら、だけど」

「ほう、占いの他に惑星の場所へのルートを知り、到着時間を計算出来るのか?俺の仲間になって欲しかったが、やはり無理なのか」

「クックックッ。残念だったね?ワタシがもっと若ければその願いを聞いてやれたかもしれないのに」

「ふ、その時は力尽くにでも仲間にしてやったわ」

「あれまぁ、怖いねぇ。じゃ、頑張ってね」

 

ボロスはその占い師の言う通りに真っ直ぐに進む事にした。戦いを求めるように、生きるという刺激を求めるように、退屈をしのぎで、気まぐれで、人の言葉なんか信じないボロスだけど占い師だけはほんの僅かに信頼して宇宙船をひたすら真っ直ぐ、真っ直ぐに進ませ、何事も無く進ませて二十年の月日が流れ、今至った。

 

「さぁ、王の俺に生の刺激を与えてくれ。その為に俺はこんな惑星にまで来たんだぞ」

 

ボロスは目の前にいるサイタマに挑発した。そんなサイタマはボロスの腹部を一撃入れ、ボロスは宇宙船の壁を破壊しながら5メートルは飛んでいった。ボロスの身体には本来の実力を抑える鎧があり、どんな攻撃を入れても傷一つつかなかった鎧がサイタマの一撃で砕かれたが、ボロスは不敵に笑った。今目の前にいる地球人の実力は本物だと身をもって痛感し、初めて占い師に心から感謝した。ありがとう、俺をあんな強敵と会わせてくれて。そしてやはり仲間にするべきだったと後悔しつつも、実力を抑える鎧が砕かれた事によって全力が出せる事が出来る。ボロスが全力を出すのは久方ぶりだった。ボロスが全力を出すと一つの国を滅ぼす時に、とばっちりで惑星そのものすら破壊してしまうから自分でも危険だと判断し、これまでずっと封印してきたのだ。

恐らくその封印が気にくわなくてボロスは退屈になっていたであろう。まるで首輪がついた犬が散歩出来ずに自由に外へ走り回れない気持ちのようだった。だけど、その首輪が取れたのだ。首輪が取れた退屈な犬はいったいどうなるか?それは決まっている。自由に外へ走り出すだろう。

 

「ヌゥゥゥオオォォォ!!」

 

ボロスは全力の姿となり、髪は逆立ち全身黒色に染まってサイタマと殴り合っている一方、宇宙船の中にある操縦室にとある宇宙人がA市に砲撃を撃つ準備を整えていた。もしもその砲撃をA市に放ったら地球に大きなヒビが入るほどの威力を持った砲弾であった。彼はその砲撃を発射するスイッチをポチッとなと軽い感じでスイッチを押した。すると巨大要塞からA市に向かって40以上の砲弾が地上に居る宇宙人やヒーロー達へと落ちてきたが、タツマキによる超能力でそれら全てを巨大要塞に返し更には瓦礫を巨大要塞に撃ち込んでいた。

 

「どいつもこいつも私が居ないとダメね。一度C級ヒーローからやり直したらどうかしら。一匹の怪人に出遅れるようじゃまだまだよ」

 

タツマキの挑発にイラついたヒーロー達は目の前にいる怪人を一斉に倒そうとしていた。アトミック侍と金属バッドぷりぷりプリズナーが素早い攻撃をする触手のような手に苦戦しつつも何とか動きを止めてバングとユメは師弟のようなコンビネーションで怪人の頭の中にある核を壊したが、その隙に怪人は一つの触手で彼らを思いきり殴りつけた。

 

「シルバーファング!お嬢ちゃん!」

 

アトミック侍の心配の声をよそにバングとユメは崩壊した家の壁や地面に何度も叩きつけられ、メキャッと音と共に大きなクレーターが広がるほど彼らは壁に激突した。他のヒーロー達は絶望した。バングはおろかユメはただでは済まない事は分かっていた。絶対的に死んだと誰もがそう確信せざるを得なかった。

 

一方ジェノスは空に浮かぶ巨大要塞を見上げて何か攻撃を試みようとしたがタツマキによる超能力で巨大要塞はみるみる壊れていくし、サイタマも巨大要塞に乗り込んでいるので特にやる事もなかったし、サイタマやユメならば本気を出せば勝てない相手は居ないだろうと確信していた。他のS級ヒーロー達はやる事がないからと帰ってしまうほどやる事がなかった。

 

「先生、師匠・・・」

 

ジェノスが心配していたサイタマはボロスとの戦いの最中であり、ユメは頬を膨らませてぷんぷんと怒っていた。どうやら怪人の触手による一撃をバングと共に一撃をくらう直前に触手を蹴っていたがユメによる二撃の強さで推進力が発生し、バングもろともロケットのように吹き飛んでしまったが何とか生きていた。

 

「ふぃ~、ユメちゃんがまさかワシまで巻き添いするとは思わんかった」

「むぅ、アイツが悪いもん。わたしのせいじゃないもん。それにバングおじーちゃんやられそうだったし」

「ほっほっほ、ならば礼を言わねばならんな」

 

生きていた彼らに驚いた表情をする怪人の隙を見逃さないアトミック侍は怪人を細切れにするほどの刀を素早く振り、二つの核が現れたのでバングとユメによる二つの核へ攻撃し、五つの頭をした怪人はようやく倒れた。

しかし、もっと厄介な敵が居る。それは上空にある巨大要塞であった。タツマキの超能力でもなかなか壊れないのでヒーロー達は為す術もなかったけど、一人のヒーローはそれに立ち向かった。それはユメである。

 

「あのものスゴく大きな宇宙船壊してくるね」

 

ユメの言葉に一同は首を傾げた。どうやって行くんだ?飛行機やそれに準ずる方法で空を飛べる方法があるのか?そもそもどうやって壊すんだ?いくつもの疑問がS級ヒーロー達に襲いかかるも、ユメはいきなり屈んだと思ったら空上空に弾丸のようなスピードで思いきり飛んでいった。

「行ってくるねぇぇぇーーー」と叫びながら飛ぶユメに一同は唖然の表情を浮かべ、反応に困っているしかなかった。

 

一方、サイタマと戦っているボロスは莫大な体内エネルギーの放出を推進力として生物の限界を超えた身体能力を引き出すメテオリックバーストを使う事にした。その力は強大な力と引き替えに無呼吸運動のように身体に負担がかかる為に非常に疲れるので、決着を早めにつかせたい切り札であった。占い師にこの地球という惑星に自分を生きるという刺激を与えるという占いを信じて、そして目の前にいる強者のサイタマを自分に刺激を与える事が出来ると信じて口から全エネルギーを放出して星の表面を完全に消滅させるほどの崩星咆哮砲というレーダー砲のような攻撃をサイタマに向けて放った。

 

「必殺マジシリーズ マジ殴り」

 

ボロスの崩星咆哮砲をサイタマは本気の拳で一撃を放った。


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