ONE-PUNCH-MAN 一撃男と愛娘のユメ物語   作:叶夢望

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ユメとジェノスがキングに出会う展開が繰り広げられます。もちろんオリジナル展開でございます。それとボロス編までやったら私のこの作品の投稿を終了しようと思います。


十五撃目 史上最強ヒーロー登場

巨大隕石落下から三日が経ったある日の朝、サイタマ宅で携帯電話を睨むとある三人は様々な表情を浮かべていた。まずサイタマ宅の主サイタマは鼻を垂らし「すげぇ上がってる・・」と何故か絶望顔で携帯電話で検索した公式ヒーロー協会ホームページを睨んでいた。どうやらヒーローランキングが三人とも上昇している様子だったが、サイタマはC級ヒーロー5位というランクを取得していた。彼はほとんど最下位となっていたはずで巨大隕石をぶち壊すという偉業をしたのにも関わらず一気にA級もしくはS級へと昇格するはずだったのにとジェノスにとっては信じられない結果であった。

続いてジェノスはS級16位となり、巨大隕石を壊した英雄とヒーロー協会から勘違いされていた。ジェノスの攻撃により巨大隕石が大きく亀裂が起きて、サイタマによる拳で壊れるキッカケが起こっただろうとヒーロー協会はそう決めつけられたから大幅にランクアップしたのだろう。そのジェノスの顔はその結果に不服があるらしく喜べないでいた。

何故ならば、サイタマが巨大隕石を一人で破壊したはずなのにそのおこぼれとしてヒーローランクが上がるというのは些か自分に腹が立つ。自分はなんて無力なんだろうと。

続いてユメは満面の笑みでニコニコとしていた。どうやらユメはA級14位となっており、それを喜んでいた。ヒーロー協会は小さな女の子であるユメの貢献を信じ切ってはいなかったが、バンクやジェノス更には数々の住民の証言があった。その住人であるヤンキー風の若い男性は後にヒーロー協会にこう語る。

 

「本当だってよォ!信じてくれよォ!他のヤツらも同じ事言ってるんだろォ!ったくよォ、いいか?俺らの住むZ市に巨大隕石が降ってきてよォ、それをS級ヒーロージェノスとC級ヒーローの・・・んぁーなんだっけ?とにかくよ、ものすんごくでけェ隕石をよォ、ぶち壊したんだろうが!・・・何?それは知ってるだと?まぁいいか、とにかくよ、ぶち壊した隕石はバラバラになってZ市全体に広がるように落ちようとしてたんだよォ!あのままだったらZ市の七割か八割は無くなってたと思うぜ?絶対によォ!だけどそうならなかった!ピンクっぽい服を着たちんちくりんの女のガキが隕石を素手でだぜ!?素手で壊したり投げたりとにかく大暴れでよォ、いい意味でだが。少しだけ被害があったみてェけどよォ、俺達は命と街が助かれば何でも良かったんだ!だから助けてくれてありがとうよって感謝しても感謝しきれねェ恩義が俺達にある!ならせめてあのピンクの服着た女のガキを認めてやれよ!まだガキだからとか女だからとか関係ねぇ!アイツは俺達のヒーローだぞ!だから俺達を助けてくれたあのヒーローをお前らが認めなくても俺達は認めるぜ!?そこんとこヨロシク!」

 

彼の口コミでユメの人気と貢献のニュースが広まり、ユメのヒーローランクが上昇し、今至るのだ。サイタマとユメは災害レベルの事を知らずジェノスによる説明を聞き、二人はなるほどと呑気な声で相槌を打っていた。

「先生や師匠ほどの強さならば関係無かった話でしたね」とジェノスは自分の師匠達の強さを実感した。今回の巨大隕石を全力で攻撃してビクともしなかったにも関わらず二人はそれがどうしたと言わんばかりに突撃した姿に尊敬していると「いや、当たり前だろ」というサイタマの言葉に眉をひそめてどういう意味なのかとサイタマに問いただすと彼は何てこともない表情を浮かべてこう伝えた。

 

「ヒーローが逃げたら誰が戦うんだよ?」とそれが当たり前だという顔で答えた。ユメはサイタマの身体に抱きついて「誰も戦わないんならわたしが戦うー!ねぇいいでしょ?パパー!」と駄々をこねるように戦いそのものを怖がらず無邪気に笑みを浮かべていた。サイタマは抱きついて甘えるユメの頭を撫でて「でへへ~」とだらしがない笑い声を出すユメに「しょうがねぇヤツだなユメ」と娘にサイタマは甘々な父親ぶりであった。

 

「な、なるほど!勉強になります!」

 

ジェノスはノートにサイタマとユメの言葉をメモしているのをよそにサイタマはパトロールへと向かう事にした。サイタマはどうやら街にどんな被害状況があるのか興味があるらしいので一人で街を回るというのだ。そんな彼を見送ったジェノスとユメは留守番する訳でもなく、ユメもヒーローとして活動したいのでジェノスと共にパトロールに出向く事にした。

Z市はサイタマが見る事になるのでジェノスとユメはB市やC市を見回る事にしたが思わぬヒーローと会う事となっていた。

 

「お前はS級新人の・・・いや、S級16位ヒーロージェノス、か?」

 

彼の名はS級6位ヒーローのキングである。キングは強面で片目に三本の傷跡があり、これはかつて災害レベル竜以上の怪人と繰り広げた死闘の証と言われている。

地上最強の男と称され、他のS級ヒーローからも一目置かれているヒーローである。ヒーローの王者という意味を込めてキングと命名され、ヒーロー協会の最大戦力として知られているらしい。

 

「お前は誰だ?見た事ない顔だ」

「俺の名はキング、名だけ覚えておいてほしい」

 

キングはジェノスに言うだけ言って帰ろうとしたが、ズボンの裾を掴みふて腐れた顔でユメは怒っていた様子だ。どうやらユメもキングと知り合いになりたいようでキングは強面の表情を変えずユメと同じ目線にするように膝を落とした。

 

「わたしユメよろしくね」

 

ユメは頬を膨らませて上目遣いでキングを睨むが誰にとってもそれは威嚇でもなくただの子供のワガママでしかなかった。そのワガママをどうにかしようとキングは雑にユメの頭を撫でてご機嫌取りを行いながら自己紹介をした。するとユメはにぱっと無邪気に笑みを浮かべて「でへへ~」とだらしがない笑い声をもらしていた。

 

「キングおじさん!これからはちゃんとみんなに自己紹介するように!あと笑顔で!お友達少なくなるよ!分かった!?」

 

ユメはビシッとキングに指を指し、可愛くて怒った顔をして声高らかに宣言した。見た目からして怖そうで強そうなキングに怖じ気づく事もなくしかも説教までされるなんて思いもしれなかったキングは僅かに、ほんの僅かではあったが笑みが浮かべていた。

 

「むふ、分かった。友達が少なくなるのは嫌だからな」

「ん!よろしい!なら帰ってよし!」

 

キングはユメとジェノスから姿を消し、先ほどのやりとりを見たジェノスはユメを何故か褒め称えていた。ジェノスが言うにはS級3位のヒーローであるキングを口先だけで心を開かせるユメの強さに尊敬したのだという。

その尊敬の意を表してくれたジェノスの言葉に嬉しそうにユメはだらしがない笑顔を浮かべ「でへへ~」と笑い声をもらしていき、ジェノスの手をギュッと握りしめて歩を進めていた。ユメの弱点の一つとして何度も人に褒められたら嬉しくなりその褒めた人に懐くという弱点があったのだ。もとより強いジェノスが気に入っていて懐いているから更に懐いてしまった。

 

「でへへ~、ジェノスくんの手、堅くてほんのり温かいからなんだか落ち着くなぁ」

「ありがとうございます!」

 

しばらくユメとジェノスは付近を手を繋ぎながらパトロールするとユメが見知った二人のヒーローがユメとジェノスの前に現れた。その二人とはA級29位からA級26位のヒーローへと昇格した黄金ボールとA級33位からA級28位のヒーローへと昇格したバネヒゲであった。

 

「お?久しぶりだなユメちゃんよぉ」と黄金ボールは口に棒付きキャンディをコロコロと転がしながら笑みを浮かべ、「素晴らしい成果お聞きしましたよ」とバネヒゲもカイゼル髭を伸ばしながら笑みを浮かべ二人はユメに近づき交流をした。黄金ボールとバネヒゲはユメの手を握っているジェノスを見て眉をひそめて少しばかり嫉妬の心を抱いた。何故そんなにイライラするのか分からなかったけどニコニコと笑うユメに安らぎを感じ、これまで起こった事件を報告しあい、ヒーローランクが上がった事を互いに褒めていた。

 

「やるじゃねぇかユメちゃんよ。ほれ、アメやるよ」と黄金ボールは棒付きキャンディを何個かユメに与え、ユメは「わぁい!ありがとっ!黄金ボールおじさん!」と無邪気に笑い黄金ボールから棒付きキャンディを貰う事が嬉しいのか「でへへ~」とだらしがない笑い声をもらしていた。その様子を見たバネヒゲは微笑みを浮かべ、「やはり子供好きだったのですか?ふふふ」というやりとりを見たジェノスは彼らの関係がどんな関係なのか疑問を持ち聞くことにし、一度だけ任務を行って仲良くなったという彼らの報告にジェノスはユメを交流が深いですねと褒め称えた。

 

「でへへ~、黄金ボールおじさんとバネヒゲおじさんは優しいから好きなんだよ。もちろんジェノスも好き!」

 

いきなり告白するユメに一同反応に一瞬だけ困った。だけど、子供が言う好きはLoveの好きではなくLikeの好きなのだろうと解釈し、三人はユメの事を好きだと答えた。しかしユメはLoveの好きという純粋な気持ちで伝えていたのだ。みんなは優しいし、みんなは褒めてくれるし、みんなは傍にいれくれるし、みんなは笑ってくれるし、みんなはちゃんと自分の事を認めてくれるから好きなのだ。サイタマだけは大好きでありそれはLoveという言葉では物足りない愛情であり、何だったら結婚したいと思うくらいに大好きなのだ。

 

「でへへ~、わたしみ~んな好き!」

 

一方、サイタマは自宅に帰るも二人が居ないので少しだけ虚しかった。だから話し相手としてサクラに相手してもらうようにサイタマは仏壇付近にあるお鈴と呼ばれる鉢状の直径7センチの鐘を鳴らし仏壇に手を合わせ、ポツリポツリと語っていく。

 

「よぉ、サクラ。お前と話すのは久しぶりかもしれんな。俺の話聞いてくれるか?・・・俺よ、街へパトロールに行ったらインチキだS級ヒーローのおこぼれでヒーローランクが上がったから調子に乗るなと虎模様のタンクトップと黒いタンクトップのヤツらが街全体に聞こえるように大声でその事を言われたよ。だけどな、俺は誰かに認められたくてプロヒーローになったんじゃねぇ。サクラ、お前の大切なものを守る為に、失わないようにプロヒーローになったんだ。そしてその理由は今増えたよ、俺自身がヒーローになりたくてヒーローになった、てな。C級ヒーローだろうが何だろうが俺は自分のヒーローランクを誇りに思っているよ。たとえ住民や他のヒーロー共に罵詈雑言やいろんなイジメされても俺はヒーローをやるよ、サクラ」

 

その言葉はサクラに届いたか分からない。だけど伝わったような気がしたサイタマは微笑んだ。その視線の先には微笑むサクラの遺影であった。彼らは二度と相見えないだろう。しかし、サイタマにはそこにサクラが居た気がした。だけど気のせいかもしれない、しかし伝えないといけない事がある。

 

「サクラとユメがいるこのZ市が好きだ。だからそれを守らないといかない。お前の夫としてお前の大切なもの全部守ってやる。だから心配しないでいいから天国で見守ってくれ」

 

そのサイタマの言葉はサクラに届いたのか、はたまた永遠に届かないのか定かでは無いがちゃんと伝えたのだ。大好きなサクラとユメを守る男としてサイタマはヒーローとなり続けるだろう。

 




ユメをA級14位ヒーローにしてしまいました。ユメの実力ならばS級ヒーローになるかもしれませんが、弱点が多すぎますので多分昇格させません。

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