ONE-PUNCH-MAN 一撃男と愛娘のユメ物語   作:叶夢望

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タイトル通り巨大隕石回です。メタルナイトをだしませんので気にしないでください。


十四撃目 巨大隕石襲来

A市ヒーロー協会本部に不穏な空気が流れていた。実は地球にしかもZ市に巨大な隕石が降ってくるという知らせが送られてきて、本部の職員は大慌てになっていた。

その巨大な隕石が地球に直撃したその市は破壊される威力と考えられていて、厳重体勢でS級ヒーローを呼ぶ事にした職員はそのヒーローに連絡をとる事に成功した。

所変わってZ市ヒーロー協会支部は近くに居るS級ヒーロージェノスを呼び、ジェノスは支部へと到着し、それを待ちわびたと言わんばかりにS級ヒーロー3位のシルバーファングと呼ばれる本名バングがジェノスを歓迎した。そのバングは逆立った髪型と立派な口髭、太く釣り上がった眉、鋭い目つきが特徴的な強面のご老人で、御年81歳を迎えるお爺さんだ。

細身で膝腰の曲がった年相応の外見であり、その傷だらけの肉体は長年にわたる研鑽で鍛え抜かれており流水岩砕拳という拳法の達人だそうだ。

 

「キミがジェノスくんか?ワシ、バングよろしこ」

「ああ。それよりも他のS級ヒーローの連中はどうした?このZ市に危険な事が起こると聞いたが?」

「ふむ、他の連中は遠くて来れないし、色々と大変な任務があるらしくての。この協会は空っぽで誰も居ない。ワシらだけだよ、ジェノスくん」

「何故だ?S級ヒーローを何人も呼ばないといけない一大事なんだろ?なのに誰も居ないのは有り得ないだろ」

「まったくその通りなのじゃが・・・S級ヒーローを呼ぶほど協会が焦った時は無理難題でやっかいな処理をしろと言う時じゃ。だから他の連中はめんどくさがって来ないんじゃ」

「俺はその無理難題な事を知らない。このZ市に何が起こるんだ?」

「災害レベル龍の災厄じゃ、なんでもこのZ市に巨大な隕石が降ってくるらしい。ワシらじゃどうにも出来んほどのデカさかもしれん」

 

バングが話す災害レベルとは脅威度によってランク分けされ、高い方から順に、神・竜・鬼・虎・狼となっている。主に怪人の強さを表す意味で使われており、巨大隕石などの自然災害にも災害レベルが適用される。

神は人類滅亡の危機、龍はいくつもの町が壊滅する危険性があるほどの危機であり、今回の騒動はその龍のレベルだ。

 

「今回ばかりはどうにも出来ん。さっさと大切な人と避難しろ」

「・・・それは不可能だな。俺の知っているあの二人だけは何が何でもこの地に残るだろう。どんなに危険でもこの地は守るだろう。守るべき場所がそこにあるから彼らは逃げないだろう。何が来ようとも、それがどんなに怖かろうとも、決して諦めない彼らは抵抗するだろう。そして、その抵抗は何気ない明日へと続く事を願っているからだ」

 

ジェノスは深く目を瞑りサイタマやユメの姿を思いだす。彼らはこの地を、あの小さな家を大切にしているのだ。怪人に家を壊されて大泣きするユメが大切に思っているであろうZ市が破壊されたらどんなに泣き叫ぶのかジェノスそしてサイタマでさえも分からなかった。ただそうなる前にジェノスは巨大な隕石に立ち向かうとジェノスはバングに伝えた。絶対に諦めないという気持ちでZ市を大切に想う彼らの為に戦う事を誓った。

 

「ほっほっほ、なるほどの。ジェノスくんもその知り合いも強いな。ワシも守らればならん場所があるんじゃ。小さい道場じゃが、数少ない弟子もいる事じゃ。だからワシも少しだけ抗ってみようかの?いいかね?ジェノスくん」

「ああ、分かったが俺の邪魔するなよお前」

「お前じゃねぇ、バングさんと呼びなさい」

 

彼らは外へ出て巨大な隕石を相手にする事を誓い、隕石落下時点付近へと向かっていった。一方その頃、Z市は大パニックとなり、サイレンで緊急避難警報が流れその警報が災害レベル竜と聞いた住民達は車で逃げようとするも、交通機関が混乱となり、渋滞となって逃げ切れなかった。

 

『緊急避難警報発生、災害レベル竜です。隕石落下まで後20分となりました。落ち着いて避難してください。繰り返します。緊急ーーー』とアナウンスが流れるZ市上空に赤く光る隕石が見えてきた。Z市住民は絶望して空を見上げていた。20分そこそこじゃ逃げ切れない渋滞の列であり、命を失うと覚悟していた。

それをさせまいとジェノスとバングは隕石落下予測付近へと走りジェノスは新しいパーツを腕に装着した。そのパーツは今の腕で放出される炎の力を3倍以上高めてくれる装備であり、それを放出したら街の半分は壊れてしまう兵器であった。それを興味津々な様子でバングは観察していた。

 

「ほう、合体か?いや、装着したのか?ジェノスくん」

「どちらでもいい!それよりもあの巨大隕石を破壊するぞ!」

 

ジェノスは上空に両腕を挙げて巨大隕石に向かって本気で炎を放出した。しかし全く効果が無いのか巨大隕石はどんどん落ちていく。ならばとジェノスは全ての出力を出し切る為に自分の動力源とも言える心臓のような機械を胸から取り出し、腕の接続部に装着し更に威力を高めてゆく。その威力は街一つくらい簡単に破壊出来るほどであったが、巨大隕石は落ちていくばかりであった。

 

「くっ!ダメか!クソ!」と悔しがるジェノスに朗報があった。「いや、僅かだが押していっている!」というバングからの知らせでジェノスはそのままの出力で巨大隕石を炎で押してゆくが、「あ、やっぱ気のせいじゃった」という老いぼれの勘違いによって「このクソジジイ!」という怒りで炎の威力を高めていったが、ジェノスはオーバーヒートを起こしたのか、活動停止となっていた。

 

一方、サイタマ宅ではサイタマとユメはバトルスーツを身に纏い、サクラの遺影に手を合わせて我が家から出て行った。彼らの目的はこれからくるであろう巨大隕石の破壊を止める事であった。

 

「ユメ!絶対に何とかするぞ!」

 

サイタマはこのZ市を絶対に守りたい一心である。Z市でサクラに会い、やがては恋に落ち、そして結婚した。更には自分達の愛の結晶ユメが産まれ、三年間楽しい思い出を作り、Z市はいつしか自分にとって宝物になった。ユメもサイタマと同じ気持ちであり、大好きなZ市で大好きな父親と好きなジェノスそれにお気に入りのソニックとまた楽しく過ごしたい気持ちが士気を高めた。絶対に、絶対に守るから心配しないでね、また遊びに行くからね、また面白い事しようねと約束しながらユメは戦いにいったのだ。守りたい物がたくさん、本当にたくさん出来たから何が何でも助けてあげなきゃダメなんだ。

 

「わたし、頑張るからね。パパ、ママ」

 

そして大好きな母親の居場所を守らないとサクラに怒られてしまうような気がしていたから頑張るんだ。そして頑張ったご褒美として頭を撫でてもらってよく頑張りましたと褒めて貰うのがユメにとって一番の報酬だ。ユメの弱点の一つとしてユメは褒められたい一心で頑張り屋さんとなり落ち着かない子にもなり絶対に諦めない心を持って物事を進める弱点があった。だけど、その弱点はユメにとっては強みでしかなかったのだ。だって、まだ幼い子供であり、父親を溺愛する甘えん坊の女の子に過ぎず、それを弱点とは思わなかったからだ。

 

そしてサイタマとユメはオーバーヒートして倒れているジェノスの近くまで辿り着き、ジェノスは「先生・・・師匠・・・」と弱々しく情けない言葉を発した。サイタマはそんなジェノスを労うように肩をポンと手を添えて「よくやった」と褒めていた。そしてサイタマは上空から落ちていく巨大隕石を眺めながら「おお、でけぇ」と呑気に呟いていた。

 

「おい爺さん、ジェノスを頼んだぞ。ユメ、オレがあのデカい石壊すけど粉々になると思うから出来るだけその粉々の石を壊すか何とかしてくれ」

「うんっ!わたし頑張る!だからパパも頑張ってね!」

「ああ、いってくる」

 

サイタマはユメの頭をそっと撫でて、ユメはだらしがない笑みを浮かべ「でへへ~」と笑い声を発していた。そしてサイタマは落下してくる巨大隕石に突っ込んだ。一方バングは目の前にいる小さな女の子に疑問を抱いていた。彼女もヒーローなのか?それにジェノスによる核攻撃のような攻撃でも巨大隕石を壊せないのにあんな小さな子供に何が出来るのか検討もつかなかった。いや、そもそも何も出来ないでいるはずだ。

 

「お嬢ちゃん、誰なのかな?」

「私はユメ!A級ヒーローだよ!スゴいでしょ!飛んでいったあの人はわたしのパパ!パパはC級ヒーローだけど!ぷぷぷー」

 

ユメは両手を腰に当てて胸を高らかにし、ふんすと鼻息を立てて顔をあどけない笑顔をバングにみせた。つまりはどうだ参ったか、といいたげなユメである。

 

「ほぅ?A級ヒーローか、なるほどの。ワシはS級3位のシルバーファングというヒーローネームの者じゃが、バングさんと呼びなさい」

「うん!バングおじーちゃん!」

 

ユメは満面の笑みを浮かべてバングと知り合いとなり、ユメとバングは空にいるサイタマへと目を移した。するとサイタマは巨大隕石を一撃で壊した。そして壊れた巨大隕石は複数の隕石となり、Z市全体へと散りばめられようとした。

 

「パパ労いシリーズ!あとはわたしがやるー!」

 

散りばめられようとした複数の隕石を出来る限り拳で砕いたり、隕石を打ち返して隕石を隕石で壊したりと複数の残像を作りながら隕石と格闘するが、数個の隕石は建物や道路に落ちてZ市の半径50メートルの範囲を破壊するが、その変わり死傷者はゼロに抑える事に成功した。

 

「や、やりよった!?被害はあったがそれでも小さいものじゃ!何者なんじゃ!?あやつらは!?」

 

バングは彼らがやった行動に目を疑わせた。先程飛んでいった小さな子供の父親らしき人物が一撃で巨大隕石を破壊した。ジェノスの攻撃でもビクともしないあの堅くて大きな隕石を一撃で壊すなんて有り得ない。それにバラバラに散りばめる小さな隕石群を小さな女の子一人で何とか対処出来たのだ。

 

「ジェノスくん・・・彼らはいったい、何者なんじゃ?どうしてあれほどの実力を持ってしてもS級ヒーローじゃないのじゃ?」

 

バングは聞かずにはいられなかった。ジェノスは彼らを知っている口振りであったし、しかも先生と師匠とジェノスがそう言っていたような気がしていた。バングは年老いて聴力がやや弱いのでジェノスが彼らの弟子だと確信出来なかった。

 

「黄色いバトルスーツを着ていらっしゃるお方がサイタマ先生と桜色のバトルスーツを着ていらっしゃるお方がユメ師匠だ。先生と師匠がS級ヒーローになれなかったのは先生を認めていないからC級ヒーローとなり、師匠はヒーロー協会に気に入られたかどうか知らんがA級ヒーローになれたらしい」

「な、なんとっ、適当なヤツらじゃ!ヒーロー協会の目は節穴なのか?まったく呆れたものじゃ。それよりもジェノスくんの師匠なのか?サイタマくんはともかく、ユメちゃんと言ったかな?その子の弟子なのか?」

「ああ。師匠は見た目からして弱々しいお方かもしれんが、それでも俺よりは強いんだ。その強さを知りたくて弟子にしていただいた」

 

ジェノスの言う通りユメにはいくつもの弱点があった。一つや二つどころではなく、十や二十・・いやそれ以上なのかもしれない。だけどユメはその分強くなった。大切な物や大切な人を守り通す為に、そしてそれらを失わないように努力した。僅か六歳の可愛い女の子かもしれないけど、どのヒーローよりも弱点が多すぎるかもしれないけど、ユメはただの頑張り屋さんに過ぎず、その彼女の弟子になれば自分も何者にでも負けない何かが手に入るかもしれない。ジェノスはそれにすがるように、また弱点の多いユメを守るように傍にいたかったのだった。その小さい手を、小さい身体を、小さい命を弟子として守るべき力にならないと、とジェノスは決意したからだ。


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