ONE-PUNCH-MAN 一撃男と愛娘のユメ物語   作:叶夢望

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ユメと戦慄のタツマキが戦う展開が繰り広げられます。


十三撃目 二撃娘vs超能力

Z市ゴーストタウンに奇妙な噂が出ている謎の怪人を倒したユメは二人のA級ヒーローに褒められていた。はしゃぐようにバネヒゲと黄金ボールはユメの頭を撫でたり、良くやったと褒められてユメはだらしない笑みを浮かべデレデレと照れていた。

Z市ヒーロー協会支部もユメを呼んでバネヒゲや黄金ボールより少し多めの報酬を与え、ユメは嬉しそうに「ありがと!」と弾ける笑顔で喜んでいた。

 

しかし一人だけ不服を申し込んだ少女がいた。それは戦慄のタツマキであり、見た目からして弱そうで泣き虫そうなユメの姿を見て気に入らなかったのだ。

 

「ふんっ!何よ?あのガキ!たまたまA級ヒーローになってたまたま怪人を倒せたからっていい気にならないでよね!私の方がもっと効率よくそして確実に実行するわ!」

 

タツマキはヒゲ職員に向かって愚痴っていた。ヒゲ職員はタツマキの愚痴を耳に流し優雅にコーヒーを啜っていた。その様子にタツマキはイライラし、超能力でヒゲ職員のコーヒーをセンブリ茶というもっとも苦い生薬として知られるセンブリをお茶にしたものに変換させ、ヒゲ職員は盛大にセンブリ茶を吹き出した。

 

「ゴホッゴホッ!な、何するんですか!センブリ茶にするなんて最悪じゃないですか!苦っ!ものすごく苦っ!あり得ないですよ!タツマキさん!」

 

ヒゲ職員は吹き出したセンブリ茶を雑巾で拭き取っているのをよそにタツマキはヒーロー協会支部を後にした。目的はただ一つ、ユメに一言申すだけだ。あまりヒーローをナメるなよ、と。

 

一方、サイタマ宅でジェノスは何かをメモするようにノートにペンを走らせ、サイタマやユメの行動をチェックしていた。まずサイタマとユメは怪人を倒しに行く時やパトロールに出かける際、必ず亡きサクラの仏壇に手を合わせて微笑みながらいってきますと言っていた。家を出る事に疑問を抱いた。そのサクラという人物は誰か、それは大切な人なのか、そして何故それほど大切な人の前に微笑んで手を合わせているのか不思議でたまらなかった。だからジェノスはサイタマやユメにそのサクラがどんな人物なのか聞く事にした。

 

「ああ、この人はオレの妻でよ、三年前くらいに怪人に殺されちまった。しかも、オレの目の前で死んだ」

「っ!?先生ほどの強さを持ってしても護れなかったんですか!?どうしてです!」

「そん時はオレは弱くてよ、ユメも危なくて奇跡的に助かってよ・・いや、サクラがユメを助けてくれたんだ。自分の命を省みず、ユメだけでもと助けたオレ達のヒーローだな」

 

サイタマの話にユメは俯いた。あの時はユメは気絶していて目が覚めたら母親が死んだと聞かされた時は涙が枯れるほど泣いて泣いて泣きまくった。自分のせいで母親が死んでしまったと思ったら嫌で嫌で仕方なかったのだ。だけど、ユメにとってはサクラが自分の傍にいる気がしているのだ。もう二度と会えないかもしれない、もう二度と話す事もない、もう二度と大好きだと抱きつく事も出来ないが、それでもサクラの想いは託されているような気がしているので、サクラの死を乗り越えて今は大好きなサイタマにサクラの分まで愛情を注がなければ、サクラが化けてお尻ペンペンのお仕置きされ、サクラが怒るかもしれない。

だから、サイタマとユメはまた家に戻ってくるねとサクラに誓うように約束して、その約束を果たして帰ってきたらサクラがお帰りなさいと言っているような気がするから毎回怪人や悪党と戦う際にサクラと約束してその約束を絶対に守ってやらないとサクラが怒るからとジェノスに伝えた。

 

「なるほど!帰るべき場所へ帰る為に士気を鼓舞しているのですね!戦う前からすでに戦っていたと!さすがです!先生!師匠!」

 

ジェノスは嬉しそうにはしゃぎサイタマの話をノートいっぱいにメモしていた。そしてサイタマはジェノスにお遣いをしろと財布と買い物リストが綴られたメモをジェノスに預けユメもそれに着いていくというのでサイタマはそれを了承し、ユメは天真爛漫に元気よく「やった!」と喜んでいた。

 

そういう事でお遣いを頼まれたジェノスはだらしがない笑顔のユメの手を繋ぎ付近のスーパーへと向かう為Z市の繁華街へと歩んでいた。その光景を見た住民は後にこう語った。

 

「ええ、私は専業主婦でちょうどおかずとか色々と欲しい物がありまして買い物に出かけたんですよ。それでふと不思議な二人を見まして・・・後から気づいたんですけど二人ともヒーローなんですってね?まあ住民として安心しますよ彼らが居るおかげで街は平和になるのですから。それでねぇ、一人は機械のような人で何でもS級ヒーローですって!驚きよねぇ、そんな人でも普通に出歩いたら会えるだなんて嬉しいものですよねぇ、それに比べたらウチの主人なんかねぇ・・・あ、どうでもいい事でしたね?おほほ、コホン。それでもう一人の子は大変可愛いくてちっちゃな女の子でしてねぇ、ウチは息子ばかりであんな可愛い娘が欲しかったわぁ~・・・

あ、また話がそれましたね、失礼。その可愛い女の子も前に話した通りでヒーローでしてねぇ、しかもA級ヒーローですって!A級よ!?あ~んなちっちゃい女の子が、ですよ?ものスゴく頑張ってA級ヒーローになったかもしれないですけど子を持つ親としては、あまり関心しません・・・ですけど、あの子の笑顔を見ると今日も頑張ろう、という気持ちになりました。長くなりましたけど最後にあの子に一言を伝えたいですね、無理をしないで自分が出来る事だけ頑張ってね、と」

 

その専業主婦の口コミのおかげでユメがそこそこ有名となり、ユメの顔を見かけたら住民はユメに頑張れと声援されるようになり、ユメはそれに応えるように笑顔で手を振っていた。そんなある日の夕暮れ時となりパトロールから帰ろうとユメは我が家へと帰ろうと河川敷を通っていた時、ユメの前に戦慄のタツマキが現れていた。

 

「ちょっといい!」

 

タツマキは腕を組んで怒りの表情を浮かべユメの前に立ちはだかっていた。ユメはニッコリと笑って呑気にこんばんわと挨拶するが、タツマキは挨拶せずユメに近づいて顔と顔が近づくくらい近寄りメンチ切った。そのタツマキの行為に少し恐怖を感じたユメは身体を震わせた。

 

「な、なぁに?おねーちゃん誰?」

 

不安そうな顔をして上目遣いでウルウルと涙を少し浮かべるもタツマキはそんな事を気にせずユメに伝えた。自分達はプロヒーローなのだからちゃんと自分の仕事に責任を持ち、数人のヒーローと共に仕事をしたのならば自分のおかげで仕事が捗ったと自慢するのではなく、その場に居るヒーローの手助けがあってこその成果であると言うのだ。

 

「私はどんな仕事でも一人でこなせるけどね、あなたみないな子供がうろちょろとされたら他のヒーローが困るの。どうせあなた弱いのでしょ?」

「・・・どうしてそんな事言うの?おねーちゃん。わたし、弱くないよ?悪い人何人か倒したもん」

「黙らっしゃい!聞き分けのない子ね!私がお仕置きしるわ!それに懲りたらヒーロー止めなさい!」

 

タツマキはユメに向かって超能力を発動した。そのユメの身体に超能力の力により浮かび上がるはずだったがユメは身体をプルプルと震わせ眉間にシワを寄せて上目遣いでギロリとタツマキを睨んだ。

 

「やだ!みんなの為にやってるんだもん!偉いねって、頑張ったねって褒められるのが嬉しいんだもん!だからヒーローやるの楽しいんだもん!」

 

ユメは頬を膨らませて怒っていた。何故こんなに嫌われているのか知らないけど、ヒーローを止めろと言われたならその通りにする訳もないし、サイタマやジェノスそしてサクラが生きていてヒーローを止めろと言われてもユメはヒーローとして働きたかった。ヒーローとして必要とされるのであればそれに応えなければならないが、ユメにとってはそれは信用がなければ為し得ないものであり、その信用を裏切りたくはなかった。ユメの弱点の一つとして自分がやりたい事があればいかなる障害やユメの行動を反対する行為が行われても絶対に誰かが何をしてでも言う事を聞かないワガママになるのである。

 

「超能力サイコキネシス!」

 

タツマキは手を触れる事無く、意志の力だけで物体を持ち上げたり意のまま自由に動かす能力をユメに浴びせるもビクともせず、ユメは超能力には興味あるが、その超能力を使う相手に興味がないので超高速移動でタツマキの背後に回り二つの拳を突き出しタツマキの背中向けて攻撃した。するとタツマキは超能力を駆使してバリアを展開するも凄まじいユメの拳の威力で50メートルは吹き飛んだ。その吹き飛んだタツマキの背後にまた超高速移動で回り込み二つの拳を回しながらタツマキの頭上に向けて連続で叩き続けていく。

 

「お前なんか、お前なんか、嫌いだ!」

 

まるでグルグルパンチをして怒っている子供みたいな光景だが、ユメのその攻撃は凄まじくタツマキのバリアを難なく破壊し、テレポーテーションでその場から離れようとしたタツマキの脚にユメは両手で掴んだ。

 

「マジ駄々シリーズ!お前なんか絶交だー!」

 

ユメはタツマキの脚を両手で掴みつつハンマー投げのように身体を高速回転し、その速度は音速を超えた時、ユメは両手を離し遠心力によってタツマキは上空の彼方へと消え去っていた。

 

「ふんっ!もうおねーちゃんの事なんか大っ嫌い!べーっだ!プイッ」

ユメは空に飛んでいくタツマキに向かって下まぶたを引き下げ、赤い部分を出して侮蔑の意をあらわす身体表現をした後、そっぽを向いた。ユメは人懐っこく甘えん坊なのだが、嫌いな人物存在したらとことん嫌うという弱点があり、しかも大嫌いともなれば顔も見たくないくらいに嫌うのだ。

 

一方、河川敷付近の建物の屋上に移動して佇むタツマキはユメによる投げ飛ばしからテレポーテーションで難なく移動した。そのタツマキは睨むようにユメを観察していた。自慢の超能力を持ってしても倒しきれなかった自分の不甲斐なさとユメの強さにあり得ないという信じられない気持ちがタツマキの心と誇りが傷ついていた。

 

「ふん、手加減してあげたんだからね。本気出したらこの辺大変な事になっちゃうからね」

 

S級ヒーローとしてヒーローと戦って街を崩壊したならばヒーロー協会や民衆からどんな事を言われるか分かったものではなかった。だからそうならないようにタツマキは三割ほどの実力しか出せなかった。一方のユメはタツマキに本気の技を仕掛けたが、その技はとにかく離れて欲しいという自分と相手との距離を離す技であり、攻撃ではなかったのでユメは実力を無意識的に抑えていたのだ。

 

「もういいわ、私は新人潰しに来たわけではないし、何よりも忙しいわ」

 

タツマキは怒った表情を浮かべテレポーテーションでその場から消えていった。一方、サイタマ宅にユメが怒って帰ってきた様子にサイタマは怯えていた。ユメが怒るのはたまにあるけど、今のユメは激怒していてこれまでの怒りではない事にどうする事も出来ず、ユメは次の朝まで頬を膨らませてプンプンと怒っているのをサイタマはユメの近くにそっとプリンを差し出し、ユメはだらしがない笑顔を浮かべプリンと格闘するようにプリンを口に運んでは身体をクネクネと動かしプリンと戦い続けるユメであり、つまりはプリンの誘惑に破れたユメである。勝者、プリン




ユメが本気になれば戦慄のタツマキを倒せそうな気がしますが、引き分けにしました。結局ユメの戦闘力は戦慄のタツマキ以上だと思っていただければ幸いです。


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