ONE-PUNCH-MAN 一撃男と愛娘のユメ物語   作:叶夢望

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昆布インフィニティと戦う回です。オリジナル展開があります。
注意、作中では昆布インフィニティをワカメマンと表記しますので気にしないでください。


十二撃目 二撃娘vs昆布怪人

「俺はヒーローだぞ!C級ヒーローなんだぞ!信じろよ!この虎野郎!」

 

サイタマはそう叫び激怒していた。ヒーローである自分がタンクトップタイガーによって悪者扱いされていて、しかもサイタマがヒーローという真実を知らない様子であり、逆にタンクトップタイガー付近に居た住民達はタンクトップタイガーの存在に気づき本物のヒーローが現れたとざわめいていたのだ。その様子をタンクトップタイガーは誇りに思っていた。タンクトップタイガーを知っている者が居るというのはそこそこ名が知られているという事実に他ならないからだ。

それにユメはA級ヒーローだがまだまだ新人であり、名は知られていないし、ただの可愛い女の子にしか見えなかった。その子が自分をA級ヒーローだと言ってもなかなか信じる訳にもいかないだろう。

 

「失せろ虎野郎、爆裂手裏剣」

 

ソニックは懐から手裏剣を取り出し、タンクトップタイガーに向かって爆薬が仕込んである手裏剣数枚を投げ込んだ。タンクトップタイガーは戦闘不能となり、その場に倒れ住民達はパニックになっていた。C級10位のヒーローでも一般人よりは強いのに、その彼が一瞬でやられたから驚くのも無理は無いだろう。しかし、一人の少女だけ無邪気にはしゃいでいた。

 

「わぁ!火遁の術だ!すっごぉい!かっこいい!」

 

ユメだ。ユメは目を輝かせて満面の笑みを浮かべ、キャッキャッと笑い、ソニックの腹に抱きついてもっと他に術を見せろと注文し、ソニックはその注文を無視してひっつくユメを放っておく事は出来ず、ユメの首にクナイを押しつけた。つまりはソニックは人質をとったという訳だ。

 

「サイタマ!コイツがどうなってもいいのか?お前はヒーローとかいう下らない肩書きを得たようだな?お前が戦わざるを得ない状況を作った!さぁ!戦え!」

 

ソニックの行動に住民はパニックとなった。近くに居るヒーローはどこだ?早く助けないと小さい女の子の命が危ないと騒ぎ始めていた。その人質のユメは首付近にあるクナイを見て顔を上げるとソニックが自分を殺そうとしている事に気づいた。ユメは自分に突きつけられたクナイを素手で摘まみ、お菓子でも砕くようにクナイを粉々にした。

 

「な、なにぃぃー!?くっ、ならば雷神手裏剣!」

 

ソニックは懐を探り手裏剣を数枚持ち、電撃を帯びた手裏剣をサイタマやユメ、街に向けて投げては爆発し、街は滅茶苦茶となっていた。サイタマは普通に避けて傷どころか汚れ一つもついていなかった。ユメはようやくソニックの身体から離れてサイタマの横にポケーッと突っ立ってソニックから奪った煙幕玉や竹、巻物を興味津々の様子で目を輝かせて忍者ごっこをして遊んでいた。

 

「街を滅茶苦茶にしやがって!この悪党が!」

 

サイタマは暴れ回るソニックの背後に素早く移動し、一撃で戦闘不能にし、近くにあったヒーロー協会支部へと連行し、ヒーローとして成果を上げたのである。だからサイタマはヒーローとして堂々と胸をはってヒーローサイタマと宣言出来るのであろう。

 

「ふむ、音速のソニックか・・・暗殺など数々の凶悪事件をやった悪党か・・・それをサイタマくん一人でやるとはスゴいな」

 

ヒーロー協会支部の作戦室にて、サイタマが捕らえたという音速のソニックをとある牢獄にぶち込んだヒゲ職員はソニックがかつてやった事件をファイルにまとめ、とある事件に目を移す。それはZ市郊外にあるゴーストタウンと呼ばれる廃墟の街であり、人が住むような場所では無いが、そこに奇妙な噂が流れていたのだ。何か知らんがとにかくヤバいというフワフワとした噂があったのでヒゲ職員は数人のヒーローをゴーストタウンの調査の依頼を頼み彼らはそれを了承した。

 

「ねぇ、私もそこに行こうか?」

 

ヒゲ職員の前にいきなり現れたのはフワフワと浮かぶ小さな少女であった。その少女はヒーローであり、その名は戦慄のタツマキと呼ばれておりS級2位という強者の称号が与えられており、服装は黒いドレスコートで、天然パーマがクルンと回転のかかった緑髪が特徴の28歳の女性である。タツマキは超能力の使い手であり、出来ない事は絶対に無いと豪語していた。

 

「S級であるタツマキさんに押しつける仕事ではありません。調査任務ですので、B級もしくはA級ヒーローに任せる仕事なのです。ですから、その彼らの仕事を奪ったらその彼らに仕事を与えられる事が少なくなってしまうのです」

「ふぅん、あ、そう。私が調べた方がもっと手っ取り早いのにね?あなた達ってホントにバカね」

 

タツマキは任務が出来ないと分かったらテレポーテーションでヒーロー協会支部からどこか姿を消し、ヒゲ職員は深くため息を吐いていた。しかし、ある事を思い出したヒゲ職員はヒーロー名簿のファイルを取り出し、パラパラとページをめくり、ある人物の名と顔の写真が載っていたページを発見し思わず嬉しさで身震いした。

 

「そうだ、そうだった。あの子もA級ヒーローだし、このZ市に住んでいるから連絡が取りやすい!だからあの子も呼んでみよう。何か知らないけど、あの子ならやってくれるかもしれないという期待がある」

 

ヒゲ職員は思わず走り出し、ある人物に電話をし、ゴーストタウンの調査に協力しろと電話の主に伝え、その人は元気よくハッキリと答えた。

 

『うん!わたし頑張るよ!おじさん!』

「ああ、頑張ってね?ユメちゃん」

 

ユメはゴーストタウン調査を引き受ける事にしたので我が家から出る時桜色のバトルスーツを着ているとサイタマやジェノスに何しに行くんだと聞かれユメは満面の笑みを浮かべ、お仕事と元気よく報告した。サイタマは羨ましそうに指をくわえていて、ジェノスはさすが師匠と褒め称え、ユメは元気いっぱいにサイタマ、ジェノス、サクラの遺影に行ってきますと伝え、三人はユメを見送った。

 

そしてユメは今回の調査の待ち合わせとして駅前に集合との事でその駅前へと到着すると、二人のA級ヒーローがユメを待っていた。一人はバネヒゲA級33位のヒーローでありカイゼル髭でタキシードを着用した中年男性である、レイピアを愛用するヒーローであり、ヒーローネーム通りにレイピアをバネのように扱い、凄まじい速さの突きが射程距離と貫通力を持ち合わせている特攻タイプのヒーローである。

続いて、もう一人はA級39位のヒーロー黄金ボールは頭に白い手ぬぐいを被り、口元には棒付きキャンディをコロコロと転がし顎にヒゲが生えている渋めの男性であり、武器は形状記憶弾金という発射するとミサイル状に変形する鉄球をスリングショットで発射し怪人を翻弄する頭脳タイプのヒーローだ。

 

その彼らは互いに相棒と呼び合う仲であり、大体の任務は二人で済ませていたのだ。そんな彼らの前にまだ幼い子供がニコニコと微笑んでお待たせ、だなんて言うものだから驚きを隠せない。彼らは三人で調査にあたれとヒーロー協会から直々に命令を下され、一人は待ち合わせ場所に来るからソイツと共に行動しろと言われたのだが、その一人のヒーローが幼気な子供だった事は知らなかったのだ。

 

「わたしユメ!おじさん達は?」  

「ワタクシはバネヒゲ、こちらは黄金ボールです。以後お見知りおきを」

「うんっ!よろしくね!」

 

バネヒゲと黄金ボールは目の前・・いや、目線の下にいる小さな子供がA級ヒーローだとは思いもしれなかった。無邪気に笑っているユメにバネヒゲは膝を落とし、ユメの目線に合わせて静かに語った。

 

「ユメさん、危ないと思ったらワタクシや黄金ボールに任せてください、約束ですよ?」

「うん!約束!だけど、わたしはいっぱい頑張るっ!」

 

ユメは弾ける笑顔を浮かべた。その笑顔を見たバネヒゲと黄金ボールは同時に健気な子だなと思いを馳せ、ユメを護る様にバネヒゲと黄金ボールはユメを挟むように歩いていた。

しばらく歩かないといけないのでバネヒゲは自慢のカイゼル髭を手で伸ばしながらZ市の情報をまとめて、それをみんなに確認するように静かに語った。

「さて、このZ市は十年前から年々怪人や悪党の数が上昇していているそうで、その危険を感じた住民達は中心街へと大移動してゴーストタウンと呼ばれるようになった街を捨てて、今やそのゴーストタウンのライフラインは途切れたのです。しかもそのゴーストタウンにそれらの怪人の親玉が居るかもしれないという噂が流れているようです」

 

その話を聞いた黄金ボールはユメに分かりやすくまとめるように整理してあげた。

「街にはバケモノみたいなのが居てそれをみんなが怖がって逃げたからいつしかその街がゴーストタウンとなり廃墟になった、てわけだな。分かるか?ユメちゃん 」

「うんっ!分かった!とにかくその悪いヤツを見つけたら倒せばいいんだね?黄金ボールおじさん!」

「ふっ、そうだ、良く出来ました、っと」

 

黄金ボールはユメの頭をワシャワシャと雑に撫でるも、その雑に扱われた新体感が楽しいのか嬉しいのかユメは満面の笑みを浮かべて「でへへ~」と笑い声が漏れて黄金ボールもそれにつられ笑みをこぼしていた。その様子を見たバネヒゲはニヤリと黒い笑みを浮かべ黄金ボールをバカにしているようだった。

 

「黄金ボール・・あなた子供が好きだったのですか?初めて見ましたよ?その優しい顔」

「っ!?ちっ、見てんじゃねぇよ。それよりもうすぐ着くぞ?Z市の立ち入り禁止区画によ」

 

黄金ボールは少し顔を赤くして目の前にある立ち入り禁止という看板が立て掛けられているフェンスの前へと到着し、三人はゴーストタウンの調査を行う事にした。そのゴーストタウンはまさに人が居ない街であり、建物や道路あらゆるものが壊されていてとても人が住める環境ではなかったのだ。

調査を行う事約十分経ったその時、奇妙な気配を感じたバネヒゲと黄金ボールは辺りを見渡しキョロキョロと落ち着かない様子にユメは首を傾げて何やってんのと言いたげな表情を浮かべていた。そんな中、バネヒゲと黄金ボールは何者かの影を見つけそれを全力疾走で追いかけた。ユメはその二人に着いていくがユメは走っているというより、競歩しているような姿であり、二人はそんなユメの姿にギョッと驚いた表情を浮かべていた。

 

「ユメさん速いですね?そのまま着いてきてください」

「うんっ!分かったバネヒゲおじさん!」

 

バネヒゲと黄金ボールは更にスピードを上げて謎の影を追いかけてようやくその姿が三人の目の前に現れていた。その怪人は人と同じような姿をしているがワカメがビッシリと生えていて、所謂ワカメマンと呼ばれそうな怪人が現れた

そんなワカメマン(仮)に黄金ボールはパチンコを取り出し形状記憶弾金という発射するとミサイル状に変形する鉄球をスリングショットで発射した。

 

「くらえ!黄金の回転エネルギーを!」

 

しかしその攻撃をワカメマンはワカメで弾き、ワカメを伸ばして黄金ボールの身体に巻き付こうとしていた。それをさせまいとバネヒゲはレイピアをバネのように伸ばして素早い攻撃を試みるも、ワカメで弾かれたがワカメマンによる攻撃を防ぐことに成功させた。

 

「なるほど、そのワカメは鉄のように固く、しかも触手のように自由自在に動かしますか・・・黄金ボール!連携で仕留めるぞ!」

「おうよ!協力奥義だ!」

 

バネヒゲと黄金ボールは連係攻撃を試みた。黄金ボールは十以上の形状記憶弾金の鉄球をあちらこちらに撃ち壁や地面などにバウンドさせワカメマンの逃げ場を無くすように攻撃範囲を広げ一歩も動かせない状況を作り出した・・という敵の考えを読んだ上でその複数の鉄球はワカメマンの背や横腹に向かうように軌道を変えた鉄球はワカメマンを襲いかかろうとしていた。その数ある鉄球に気を取られるであろう隙をバネヒゲはレイピアをバネのように伸ばし、ワカメマンに向かって攻撃した。

 

黄金踏無暴威(ゴールデントムボウイ)!!」

 

しかしワカメマンによる素早いワカメ攻撃でバネヒゲのレイピアと黄金ボールのパチンコを破壊し、為す術も無くワカメ攻撃を何度も何度も身体に直撃していた。鉄のように固くそれでいてしなる攻撃は激痛を伴うのであろう。二人は死を覚悟していた・・ある一人の影が助けるまでは。

 

「パパ労いシリーズ!これ買ってあげる!」

 

ユメは音速を超えるスピードを出しながらワカメマンのワカメを引きちぎり、全てのワカメを採ったらワカメマンはただのマンとなり、ユメはトドメと言わんばかりにマンの腹部を二撃いれた後、マンは吹き飛び近くの大きな建物を壊しながらどこかに消え去っていった。

 

「昆布もあった!ラッキー!」

 

ユメはワカメマンから採れた昆布を素手で持ち幸せそうな顔を浮かべていたそうだ。




黄金ボールとバネヒゲの合体奥義はオリジナル展開であります。(多分)

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