第9話
良太「……」ケシケシ
JS事件から四年、良太はすくすく成長していた。……成長は止まっているが。
良太「はい」
店員「アチャ!また一等かい?良く当たるね」
良太「くじ引きハンターとは自分の事」
店員「アハハ!その通りだ、ほら一等の商品券だ」
良太「また、その内来る」
店員「待ってるよ~♪」
良太「お姉さんは…いた!」
良太はギンガの足に抱きついた。
ギンガ「良太?びっくりするでしょ?」
良太「ごめんなさい?」
ギンガ「クスッ♪怒ってないよ」
良太「お腹ペコペコ」
ギンガ「さぁ、帰ろうか」
ギンガは良太と手を繋いで帰った。
ギンガ「ただいま~」
ウェンディ「お帰りっす!ギン姉、良太」
ギンガ「ただいま。ほら、良太?ただいまは?」
良太「…ただいま」トテトテ!
良太はそそくさと自分の部屋に入ってしまった。
ウェンディ「アチャ~、今日も駄目っすか~」
ディエチ「お帰りなさいギンガ姉さん」
チンク「姉上よ、お帰り」
ギンガ「うん、ただいま」
ディエチ「こんな所でどうしたの?」
ウェンディ「いやっすね、良太がまだ打ち解けてくれないなって話を…」
ディエチ「あ~…」
チンク「仕方がないだろう。私達は本来襲った側の者だ。四年前と言っても簡単に変わるものではない」
ギンガ「人見知りも激しいしね」
ウェンディ「残念っす」
項垂れるウェンディ。
ギンガ「何か切っ掛けがあればいいのに…」
チンク「姉よ。焦らずに行こう。仕損じてしまっては元も子もない」
ギンガ「そうね。ディエチ、作るの手伝って」
ディエチ「うん」
ギンガとディエチはキッチンに向かった。
ギンガ「良太~♪ご飯だよ~♪」
トテトテ!トテトテ!
良太「ご飯」
ギンガ「さぁ、座って」
良太は自分の指定席、ギンガの隣に座った。
ギンガ「では…」
ギンガ達「いただきます」
良太「モグモグ」
ギンガ「美味しい?」
良太「モグモグ」コク
良太は黙々と食べていた。
良太「ごちそうさま」
良太は食器を片付けると部屋に戻った。
ウェンディ「うぅ…つれないっす」
ディエチ「何がいけないんだろう?」
チンク「やはり四年前の事を恨んでるのではないか?」
ギンガ「そうなの…かな」
そうなると、自分も恨まれてると思ってしまうギンガだった。
ノーヴェ「ただいま~」
ウェンディ「お帰りっす」
ノーヴェ「どうしたんだ?皆暗い顔して?」
チンク「良太の事をな」
ノーヴェ「あぁ…」
それだけでノーヴェは納得出来た。
ディエチ「何かいい方法ないかな?」
ノーヴェ「あったらとっくにやってるて」
ゲンヤ「おう、今帰ったぞ~」
ギンガ「お父さん、お帰り」
ゲンヤ「何だ?通夜みたいな顔して?」
ギンガ「あのね、良太の事」
ゲンヤ「良太がどうかしたのか?」
ギンガ「うん…四年前の事を恨んでいるんじゃないかって話をしてて」
ゲンヤ「四年前の事を?」
ウェンディ「いまだになついてくれないっす…」
ゲンヤ「それはねぇな」
チンク「なぜ言い切れるのだ父上?」
ゲンヤ「前に聞いた事があるんだよ…お前達に黙ってな。四年前の事を恨んでるかって」
ディエチ「そしたら?」
ゲンヤ「【恨んでない。お姉さんの事は事故みたいなもの。他の人達もお姉さん達が許してるなら恨む理由はない】ってな」
ノーヴェ「ますますわかんねぇな?なら何でなつかねぇんだ?」
チンク「もしや…」
ギンガ「チンク?」
チンク「私達は思い違いをしてるのではないか?」
ウェンディ「思い違いっすか?」
チンク「そうだ。良太がなつかないのは昔の私達のせいではなく、今の私達せいではないか?」
ディエチ「今の私達?」
ノーヴェ「チンク姉?どういう意味?」
チンク「父上の話では良太は過去を見てない。今の私達を見て拒絶してるのではないか?」
ウェンディ「今の私達をっすか?今の私達の何がいけないっすかね~…」
チンク「こればかり良太にしかわからない」
ゲンヤ「仕方ねえな。協力してやるよ。家族の問題だしな」
チンク「ありがとう父上」
ゲンヤ「今度の休み、皆でこれに行ってこい」
ギンガ「これは温水プールのチケット?」
ゲンヤ「良太を連れてってやれ。アイツこういう遊ぶところに行ったことねぇだろうからな。全員で行ってこい」
ディエチ「随分用意がいいね、お父さん」
ゲンヤ「これでも大黒柱だぞ?家族をちゃんと見てるつもりだ」
ウェンディ「ありがとうっす!パパリン♪」
ギンガ「じゃあ早速良太に知らせてくるね」
ゲンヤ「俺も少し探ってみるから心配するな」
ノーヴェ「わかった」
ゲンヤとノーヴェを混ぜて食事を再開した。
ゲンヤ「とは言うものの、どうするかな~…っとそろそろだな」
コンコン
ゲンヤ「入っていいぞ」
良太「打ちに来た」
ゲンヤ「おう!入れ入れ」
ゲンヤは八時になると必ず良太が囲碁を打ちに来るのがわかっていた。親子のささやかな団欒を毎日満喫していた。(本当は良太以外囲碁を相手してくれないからだが)
ゲンヤ「林檎ジュースでいいか?」
良太「うん」
良太は囲碁盤を置くと対面に座った。
ゲンヤ「今日は良太が先行だ」
良太「うん」パチッ
ゲンヤ「……」パチッ
良太「……」パチッ
ゲンヤ「…なぁ良太?」パチッ
良太「なに?待ったには早い」パチッ
ゲンヤ「ちげぇよ。チンク達の事だ」パチッ
良太「何?」パチッ
ゲンヤ「なんでお姉ちゃんって呼んでやらねぇんだ?家族だろ?」パチッ
良太「今は呼べない」パチッ
ゲンヤ「何でだ?」パチッ
良太「形だけの家族にお姉ちゃんって言葉は使いたくない」パチッ
ゲンヤ「形だけの家族?」パチッ
良太「そう。皆四年前の事を気にしすぎている。必要以上に、だから今がダメになってる」パチッ
ゲンヤ「なるほどな」パチッ
良太「捕らわれるなとは言わない。でもそれでビクビクして自分に近づいても自分は素直にお姉ちゃんとは呼べない」パチッ
ゲンヤ「そう言う訳か」パチッ
良太「もしあの人達を姉と呼ぶ日が来るとしたらそれは…」パチッ
ゲンヤ「それは?」パチッ
良太「あの人達が未来を掴み始めた時だと思いたい」パチッ
ゲンヤ「…そうだな」パチッ
良太「負けました」
ゲンヤ「勝率五分五分だな」
良太「次は勝つ」
ゲンヤ「おう、楽しみにしてるぞ」
良太「眠いから寝る」
ゲンヤ「そうだな」
良太「それから…」
良太が部屋を出る前に振り返った。
ゲンヤ「どうした?」
良太「今の話は男同士の秘密」
ゲンヤ「ハハ!わかった」
良太「お休み、お父さん」
ゲンヤ「ぶっ!良太ちょっと待て!」
既に良太は部屋出ていった。
ゲンヤ「なるほどな、俺も少し形だけの家族だったんだな…」
この四年間、良太はゲンヤをお父さんと呼んだ事がなかった。腹を割って話したからだろうか?ゲンヤを初めてお父さんと呼んだのは。