追記
サブタイトル変更し忘れてましたので修正致しました。
申し訳ありませんorz
とても長く感じた二日間の休暇が終わり、気持ちを新たに電と二人で執務室へ向かうその足取りはとても軽やかだった。
過程はどうであれ山本は白雪の事を意識し始めただろうし、何より昨日は電と深雪の二人と部屋でのんびりと過ごせたんだ。それまでの疲れと相殺しても余りある癒しを貰ったよ。
ああ、そう言えば下着の事をこっそり深雪に聞いたら
奴には近々罰を受けてもらわねばね?
とまあそんな感じで意気揚々と執務室の扉を叩いたのだけれど。
「司令官、失礼するよ」
「あぁ……」
中から聞こえて来たのは山本の気の抜けた返事だった。
俺は不思議に思いながらも扉を開けて部屋に入るとそこには椅子に深くもたれ掛かり天井を力なく見上げる山本の姿があった。
どうかしたのかと思い辺りを見回すといつもと違う事に気付く。
作戦会議や周知の際は誰よりも先に執務室に来ていた彼女の姿が無かったのだ。
「あれ?司令官、
「!……あぁ」
山本は一瞬身を震わせるが何事も無かったかのように先程と同じ返事を返す。
まあ今ので俺が席を外したあの後に何かあっただろう事は解ったけど果たして何があったのだろうか。
探ろうにも山本がこんなんだし白雪もまだ来てないし……。
俺は何気なく電の方を見つめてみる。
ああ、やっぱり可愛いなぁ……どうせ何も出来ないし白雪が来るまでこのままでいっかぁ。
「……響ちゃん?」
おっと、思った以上にまじまじと魅入ってしまっていたようだ。
「あ、えっと……少し考え事をしてただけなんだ」
恥ずかしそうに顔を背ける電の姿が堪らないが不審に思われるのも不味いので前を向き直り誤魔化した。
「そ、そうでしたか。私はてっきり那珂ちゃんが言ってた通り響ちゃんが……いえ、何でもないのです」
「そ、そうかい?」
「はい、大丈夫なのです」
電が何か言っていたような気がするけどこっちも余りつつかれると宜しくないので俺は何も聞かなかった事にして他の皆が集合するのを待つ事にした。
暫くして那珂ちゃん、
「おっはよーございまーすっ!」
「響、電、おはよう!」
「おはよう那珂ちゃん、長門」
「お二人共おはようなのです!」
「あぁ……」
二人が来ても相変わらず上の空の山本を見て二人は一様に首をかしげた。
「てーとくぅ、どうしたの?」
「人を呼び付けといてなんだコイツ?」
「恐らく昨日何かあったんじゃないかな?取り敢えず彼女が来るまで待ってみようよ」
「う〜ん……よく分かんないけど分かった!」
「まあ、響がそう言うなら……」
状況は分かっていないようだがそれでもどうやら納得してくれたようだ。
更に待つこと五分、執務室の扉を開いたのは白雪……ではなく龍田とその腕にいつもの様に抱き着くザラの姿だった。
「お待たせしました〜ってあらぁ?白雪ちゃんはまだ来てないのかしら〜」
「またお姉様に気に掛けられてぇ……白雪さんめ……」
龍田が他の娘を気にしているのが余程気に入らないのか歯軋りをしながら白雪に対して妬みを募らせていた。
それはともかくとしても流石に遅いな。
休み明けで気が緩んで……なんて深雪なら有り得そうだけど白雪に限ってそれは無いだろうしもしかして何かあったのか?
「司令官、ちょっと────」
「おそくなりましたぁっ!!」
白雪を呼びに行こうと振り向いた直後、大きな音を立てて開かれた扉から現れたのは肩で息をしながら扉に手を付いた深雪であった。
「み、深雪っ!?そんなに慌てなくても……って白雪は一緒じゃないのかい?」
「それが……」
白雪と深雪は同じ部屋で寝起きを共にしているので一緒に来ると思っていたのだけれどどうやら白雪に何かがあったらしい。
「……どうしたんだい?」
「実はな……白雪の奴、一昨日の夜から今さっきまで一睡もしてなかったらしいんだよ」
「…………え?」
「朝起きたら目の下真っ黒でフラフラしながら支度をしてたから慌てて布団に横にして寝かしつけて来たんだけど、意地でも行こうとするから説得に時間が掛かっちゃって……」
一昨日の夜から寝てない!?確かに昨日の食事時も白雪が出てこないって言ってたけどまさか一睡もしてないなんて……本当にあの後何があったんだ?
気にはなるが今回集まったのは今後の予定についてのミーティングであって山本を問い詰める為ではない。
俺は気持ちを切り替え現状の改善に努めよう。
「……分かった、それじゃあ白雪には後で深雪から伝えておいてくれ」
「お、おうっ!深雪様がバッチリ伝えるぜ!」
「うん、それじゃあ司令……官?」
「う"……ちょっと白雪の様子を……」
「その前にやるべき事があるだろう?」
「だ、だけどな……?」
席を立ち白雪の元に行こうとする山本。
それ自体は良い傾向ではあるが提督としての責務は果たしてからにして貰いたいものだ。
どうやらそう考えているのは俺だけではないらしい。
あーだこーだ言いながら扉へと歩き出す山本の両腕は
「え、ちょっ!?べ、別に様子を見に行くくらい良いだろ!」
「おいこら、仕事も放棄する口実にした挙句折角寝付いた白雪さんを起こす気かテメェ?」
「ただの寝不足なんだから心配しなくて大丈夫でしょ〜?今行っても迷惑以外の何物でもないわよぉ?」
「うぐぅ……言われてみれば……」
正論を突き付けられた山本はよろよろと机にもたれ掛かった。
「まあ、そういう事だからお見舞いは後にして今はミーティングを始めようよ」
「……ああ、済まない。それでは今後の予定について話そう。まず────」
山本は白雪の事が終始気にしているようだったがミーティング自体は概ね順調に行われた。
今後の予定としては暫くは遠征と鎮守府正面海域での練度向上をローテーションで行い、貯めた資材で建造を行い南西海域へ向けての戦力向上を図ることとなった。
ミーティングが終わりそれぞれが出撃や遠征の準備に戻って行った。
秘書艦である俺は山本と共に二日間の間に溜まった書類と向き合っていた。
「なあ、白雪の所に行ってきても良いか?」
山本が唐突に尋ねて来たので俺は時計に目をやると短針は八の所を指していた。
俺は山本の方を向き笑いかけてこう言った。
「駄目だ」
「ええっ!?」
何を驚く事があるのだろうか?
まだミーティングが終わってから一時間、つまり白雪が眠りに付いてから二時間も経っていないのだ。
龍田と長門に言われた事をもう忘れたのかこいつは。
「ちょっと、ちょこっと覗くだけだから!」
「……女の子の部屋を覗きたいなんて、そんな行為認めると思うかい?」
「いやっ、そ、そういう事じゃなくて!」
「冗談だよ、でも行くなら白雪が充分に休んでからにしてくれないか?」
「う……それもそうか……」
そう言って項垂れる山本を見ていた俺は何故だか言い知れぬ苛立ちを感じていた。
何故だろう……思惑通り山本は白雪を意識し始めた、それでいい筈なのに……。
いやいやいや、きっとこれはリア充に対する爆発を望む気持ちに違いない。
流石に口にする訳には行かないが心の中で叫ぼうではないか!
リア充爆発しろぉぉっ!!
……うむ、苛立ちは収まらなかったがすっきりしたので良しとしておこう。
つうか良く考えたら電ちゃんと同じ部屋で生活してる俺も十分にリア充してるよな…………ごめんなさい爆発したくないです。
「ど、どうした響?」
「へ?い、いいやっ!?何でもない!大丈夫さ、少し考え事をしてただけだから」
「そ、そうか?なら良いけど。響もあんまり無理するなよ?」
「え?あ……うん。私は大丈夫だよ」
ふぅ、どうやら顔に出てしまってたようだ。
変に怪しまれるような事は極力避けたいというのに……。
きっと俺には役者の才能は無いのだろう……それはどうでもいいか。
そんな事より先程まで苛立っていたのが嘘のように気持ちが落ち着いているしこれなら気持ち良く仕事が出来そうだ。
俺は書類に向き合うと気合いを入れ直して業務を再開した。
そして昼前にあらかた片付けると執務室を出て午後からの遠征の為に工廠へと向かった。
その後の山本の動きは知らないが後日深雪から聞いた話だと部屋にお粥を持ってやって来たらしい。
まあ、後は二人に任せとけば大丈夫だろう……うん。
さて長い休暇が終わり鎮守府本格始動です!
次の艦娘はどんな娘なのでしょうか!
未だに2-1というこの鎮守府は大丈夫なのだろうか!
次回をお楽しみに!!!