ノロノロト…ヤクタタズノ…ジョウシンコ…ガ…シズメッ!!
「ムダダ、ヤクタタズドモメッ!」
「きゃあっ!?ま、まだ……やれます!」
「「白雪ちゃんっ!!」」
「フン、ザコニシテハヨクタエタホウダナ」
「全く……こんな場所に出てきておいて良く言えますね」
ただ、皮肉にも的を得ているという事実に白雪は苦笑を禁じ得なかった。
重巡棲姫と相対してから五時間強が既に経過しているが、その間誰一人として大破せずに来れたのは傍から見れば奇跡的とも言えよう。
だが、敵を撃破出来ない以上その奇跡も何時までも続きはしなかった。
「(大破ですか……私一人で撤退するのも厳しいですね)」
重巡棲姫の長射程連装砲の直撃を貰ってしまった白雪には単艦で撤退する力は残されていない。
だからと言ってこれ以上この場の戦力を割くわけにも行かなかった。
そうして思考を巡らせ続けた白雪だったがやがて一つの答えへと帰結する。
「ふぅ……皆さんは撤退を開始して下さい」
「白雪さん!?重巡棲姫が追っ掛けてくるからそれは出来ねぇんじゃ……」
「ええ、ですので私が殿を務め
「「えぇっ!?」」
「い、いくら白雪さんが強いからって流石に無理があるって!」
七世の言う通り大破した駆逐艦一隻がまともに戦った所で中破すらしていない重巡棲姫を沈める事など不可能である……そう、
皆が疑問を持つ中、龍田だけは今までの記憶から白雪が行おうとしている事を予想出来ていた。
「
「そうですね、今は衝角は有りませんので錨で代用します。後は魚雷を全て起爆させれば可能かと……」
沈められる……そう予想していた白雪であったが龍田にはそれが不可能であると分かっていた。
初めて着任した鎮守府で先に着任していた姉の天龍が同じ様に特攻し、そして散っていくのを目の当たりにした龍田だからこそ白雪が決死の特攻を覚悟した事も、それが無意味である事も知っていたのだ。
「……無理ね。まず辿り着けない、そしてよしんば出来たとしても沈める迄には至らないわぁ〜?」
「それでも、足止め位ならできます!」
「だ〜か〜らぁ〜、足止めにもならないって言ってるのよ〜?
「なっ、龍田さん貴女まさかっ!?」
この時、白雪は龍田の決意を理解してしまった。
「本当は最初から解ってた……それでも我が身可愛さにここまで来てしまったのだけれど……」
(龍田、チビ共を連れて鎮守府に戻れ。)
(天龍ちゃんはどうする気なの?)
(勿論、こいつの足止めだ。上手くいきゃ止めを刺せるだろうよ)
「……貴女のお陰で大切なものを思い出せたわ〜。だからもう大丈夫よ〜?」
龍田は最後に白雪に向けていつもの貼り付けたような作り物の笑顔では無く心からの微笑みを見せた。
「(白雪ちゃん、天龍ちゃん……ありがと)」
龍田は心の中でそっと呟き、そして覚悟を宿したその瞳で仇敵を確りと見据え吶喊した。
「さぁて、死にたい艦はどこかしら〜?」
吶喊する龍田!そこに突如現れた無敵キャンディ!
無敵キャンディを手にし勝利を掴むのは龍田か!重巡棲姫か!はたまた桃色の悪魔か!
決戦の火蓋は落とされた!刮目せよ!君は世界改革の立会人となる!
次回「無敵キャンディ争奪戦!」
この次回予告は全てフィクションであり、実際の作品の内容とは一切関係ありません。