「お仕事しゅーりょー。おつかれさまっ!」
製油所沿岸地帯から戻って来た俺達を山本は港で出迎えてくれていた。
「お疲れ那珂ちゃん。皆もお疲れ様」
「司令官、私達から報告に行くからわざわざ出迎えてくれなくても大丈夫だよ?」
「まあそう言って貰えるのは嬉しいけどよ、俺が好きでやってるんだから止めないでくれ?」
「だから貴方は司令官としての……まぁ、仕事はきちんとこなしているのなら別に良いですけれど」
まあ実際山本の気持ちも解らなくはないし、白雪も満更でも無いみたいだしこれ以上言うことも無いだろう。
「それじゃあ休憩入りまーす!」
そんな中マイペースに入渠ドックへ向おうとする那珂ちゃんだったが白雪はすかさず襟首を掴み引き戻した。
「えっ、ええっ!?なに?那珂ちゃん何かしたの!?」
「戦果報告がまだですよ、昨日も伝えましたよね?」
白雪は狼狽える那珂ちゃんを山本の前に突き出した。
「あ……えっ……と、敵前衛艦隊と敵主力艦隊を撃滅しました?」
「主力を撃滅したのは昨日の話です。今日は敵前衛艦隊と敵支援艦隊です」
「あ、そうだった。で、撃沈六。内白雪ちゃんが三隻撃沈でMVP、私と電ちゃんと響ちゃんがそれぞれ一隻ずつ撃沈しました。あとは……」
「こちらの被害報告です」
「あっ、そうだった!えと……」
旗艦って大変だなぁ……なんて人事の様に考えていたが、もしかしたら明日は我が身だった事を俺はすっかり忘れていた。
ちゃんと覚えておかないと。
「以上が今回の戦果報告となりますっ!」
「おう、わかった。そしたら先に損傷の少ない響と白雪から入渠して来てくれ、後の二人は先に補給を済ませてから二人が上がり次第那珂ちゃん電の順に入ってくれ」
「「了解っ!」」
各々が山本の指示通りに歩き出して行く中、俺は一人立ち惚けていた。
……入渠……か。
分かっている。自分が元男である事を明かせばこんな苦悩をする必要は無くなることは。
その代わり電ちゃんに軽蔑される日々を過ごす事になるかも知れないが。
ってそんなのは駄目だっ!やはり何とかやり過ごすしかないのか……
「響さん?何してるんですか、早く行きますよ」
「うぇっ!?あ、ああうん。そうだね、行こうか」
「?」
び、びっくりしたぁ……。
突如目の前に現れた白雪に驚きを隠せずつい飛び退いてしまった。
白雪はこちらを不審がっていたが、やがてため息を一つついて再び歩き出した。
これ以上疑われる様な事をする訳にも行かないので覚悟を決めて白雪と入渠ドックへと入って行った。
翌日、全艦召集が掛かったので俺は電と一緒に執務室へ向かっていた。
「新しい艦娘さんが来た見たいなのです、どんな人なのか楽しみですっ」
「そうだね、仲良くなれるといいね」
「はいっ!」
電ちゃんを余り不安にさせたくなかったので何も言わなかったが俺は少しばかり嫌な予感がしていた。
勿論転生者でない艦娘は根幹はいい子だとは思っているが、どうにも不安が拭い切れないまま気付けば執務室へと到着していた。
「響、電の両二名到着したよ」
「入っていいぞ」
山本の了解を得て中に入ると、既に全員集合しており山本の隣には新しく着任して来たと思われる艦娘が立っていた。
「よし、全員揃ったし早速だが自己紹介をしてくれるか?」
「はぁ〜い、ショートランド泊地第三基地から〇六〇〇付で第二鎮守府に配属になりましたぁ〜。天龍型軽巡洋艦龍田だよぉ?よろしくねぇ?」
猫なで声で続けられる自己紹介は無事に終わり俺の不安は杞憂だったかに思われた次の瞬間。
「といってもどうせ
なんと言うか……日常って何なんですかね?
シリアスにしないと気が済まない病気が発症しつつある今日この頃……(・ω・`)