ぼっちと鼠の情報戦   作:空気ゆーま

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06話『流星の赤マント』

SAOが始まって2か月近くが経った。

俺も攻略・昼寝・情報屋集会などと充実した生活を送っていた。

 

あったことといえば、はじまりの街に残ることを決めたプレイヤーにお金を払い、リトルペンネルの胚珠をアニールブレードと交換するクエストを受けてもらい、アニールブレードを受け取る。ということを繰り返して、今では胚珠を28個売って、残りをさっきの作業に費やしたため胚珠が0個。アニールブレードは自分のを合わせずに、10本できた。

中でも+6のフル強化をしてあるものは3本。まじで運がいい。

 

で、昨日アルゴに強化してない奴を1本売ったから9本。

胚珠は全部高額で売っていたため、たぶん俺はSAOでもっともの富豪だろう。

 

あ、そういえばボス部屋も見つけたから近々、金を持ってそうな奴に売るつもり。

 

で、今俺は迷宮区で流星を見ている。いや、今は3時だし洞窟内だから見えるわけないが。というかSAOで見れるのかすら知らん。

流星と言ってるのは、赤っぽいフード付きマントを着た女プレイヤーが放つリニアーのことだ。

恐ろしい速さで放つリニアーは俺を超えるであろう正確さで敵を貫いていた。

しかし、あれはゲームのセオリーじゃない。

残りHPが一桁の相手にスキルを使うのはオーバーキルで無駄すぎる。

まあ、流星のようなスキルを放つ美しい女性プレイヤーってだけでおっさん達には高く売れる情報になる。

何で美しいか分かるかって?

何となく雪ノ下と似てる気がしたんだよ。茶髪の時点で別人だけどな。

 

んっ⁉ 流星を放つ…めんどくさいから赤マントで良いか。

赤マントが突如、貧血でも起こしたようにバランスを崩す。そこに迫るのはモンスター、リンドコボルト・トルーパーの剣。

 

俺は思わず投剣スキル。シングルシュートを放つ。

飛んでいった小刀はコボルトの眉間に突き刺さり後ろに吹き飛ばす。

そのコボルトを下から切り上げ、ポリゴンに変える。

 

さて赤マントさんは…

後ろで座り込んでいた。スキルの乱用で疲れたのか。

今更だが、そいつは細剣、フェンサー使いだった。いや、そうじゃないとリニアー使えないけどね。

 

「お前、スキルを使い過ぎだ。オーバーキルで無駄になってる。死ぬぞ。」

 

俺は忠告のためにも口を開く。

 

しかし赤マントは首をかしげている。こいつ初心者か?

 

「オーバーキルは、相手を殺すときに与える過度なダメージのことだぞ。」

 

念のために伝えると、理解したように頷く。まじで初心者か。だとしたらさっきの動きは現実世界でフェンシングでもしてたのか?まぁ関係ないが。

 

「別にいいのよ。死んでも。どうせいつか死ぬ。遅いか早いかだけの違い…」

 

赤マントは言いながら立ち上がり、そのまま崩れ落ちた。

この層で状態異常はないから気絶か。この世界でも気を失うことがあるんだな。とりあえず運ぶか。ハラスメントに引っかかりそうだからしたくはないが仕方がない。

 

俺が赤マントに手を伸ばしたところで、

 

「何してんダ?ハッチー」

 

後ろから声がかかった。

まずい。悪いことはしてないが、してることはハラスメントコードに引っかかりそうなことだ。とりあえず平静を装って。

 

「ア、アルゴ、ゴ、何か用か…」

 

できませんでした。

 

「ハッチー。お前が男なのは分かるが、女の子を気絶させて襲うのハ…」

 

「ちげぇよ‼」

 

一番最悪な理解の仕方をしているし。

はぁ。なんかもう疲れた。

 

「こいつがいきなり倒れたんだよ。たぶん疲労だと思う。ハラスメントかかるから、安全地帯まで運んでくれ。ボス部屋のマッピングデータ売ってやるから。」

 

「おっ。やっと見つけたのカ。俺っちの弟子のくせに金とるんだよナ。よいしょっト」

 

アルゴが赤マントを背負う。

 

「敵は俺が倒すから、着いて来てくれ。」

 

「ホーイ」

 

俺たちは赤マントを安全地帯に運び寝かす。そこで俺たちは話をした。

ボスの話。キリトの話。そしておひげの話を聞き損ねた。本人曰く、

「なんか礼をする時があったら言うヨ」だそうだ。

 

足元がもそっと動き話を中断する。

 

「起きたカ?」

 

アルゴが話しかける。赤マントは起き上がり少し驚いた後一言。

 

「余計なことを。」

 

何言ってんのこいつ。まあ死んでもいいとは言ってたけれども。

 

「アルゴがお前をわざわざ運んだんだ。一応感謝しとけ。」

 

「あ、えっと、ありがと。」

 

赤マントは戸惑いながらも頭を下げる。

 

「死ぬのはお前の自由だけどナ、たぶん近い間にボスの攻略があるはずダ。」

 

アルゴがそういい俺を見る。俺に言えと?

 

「別に死ぬのは、100層まで行けるのか確かめてからでもいいんじゃねえか。第一俺には関係ないからな。んじゃ、俺もう行くわ。アルゴ、送るか?」

 

「頼むヨ。あんたも行くヨ。今日は街に戻ったほうがいいヨ。」

 

赤マントが頷く。じゃあ行きますか。俺は安全地帯から出て寄ってくるモンスターを軽くいなして首を飛ばしていく。疲れるからソードスキルは使わない。

 

第一層の攻略はまもなくだ。

とうとう俺たちの戦いが幕を上げる。

 


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