俺ははじまりの街に転移されていた。
おそらくさっきの光は強制転移だったのだろう。
周囲を見渡すと何千、いやもっとか?の人。うっ、気持ち悪くなってきた。
周囲の人が騒ぐ声の中、その一つが耳に刺さる。
「ログアウトできねーじゃねーか‼」
は?だってここに。俺はメニューを操作していく。そしてβ版の時いつも押していたボタンが、そこにはなかった。
サービス初日でこんなミスをするはずがない。となるとこれは。
Warningという表示と共に空が赤く染まる。それと同時に深紅のローブを身にまとった、巨人が出た。
「運営の仕業って訳か。茅場晶彦」
茅場晶彦。SAOの開発者にして天才粒子物理学者。
「ようこそ。私の世界へようこそ。」
「プレイヤー諸君はすでにメインメニューにあるログアウトボタンが消滅していることに気付いてきると思う。しかしゲームの不具合ではない。これはSAO本来の使用である。」
「諸君はこれから城の頂きを極めるまで自発的にログアウトすることはできない。また外部の人間によりナーヴギアの解除または停止が試みられた場合」
「ナーヴギアの信号素子が発する高出力マイクロウェーブが諸君らの脳を破壊し、生命活動を停止させる」
は?死ぬってことか。だったら俺は二度と小町と会えないと。それは無理だ。
「この情報は外部世界ではマスコミからすでに告知されている。しかしそれを無視し家族友人らがナーヴギアを解除を試みた例が少なからずあり、すでに213名のプレイヤーが現実世界から永久退場している。」
200人。少なくない数字だ。そんな数の人の死に、俺の頭は真っ白になる。周りの騒ぎすら頭に入ってこない。
俺はさっきまで、ぎりぎりの戦闘をしていた。残り
HPが一桁になることもあった。
388/388、この数少ないHPが残りの俺の命。
「帰らねえ訳がねえだろ。小町、待ってろよ。」
だんだん頭がクリアになってきた。
「諸君らがこのゲームから解放される条件はただ一つ。アインクラッド最終部。第百層までたどり着き、そこに待つボスを倒してゲームをクリアすればいい。その瞬間生き残ったプレイヤー全員をログアウトさせることを約束しよう。」
周囲ががやがやと騒ぎ出す。
「ふざけるな‼βテストでも6層までしか行けなかったって聞いたぞ。」
ふざけてんのはお前だ。6層までしか行けなかったのは、6層で俺が攻略を止めたからだ。
「最後に私からささやかなプレゼントを用意した。この世界が現実という印だ。アイテムストレージを見てみたまえ。」
その声に習い周りの人が手を下に振る。俺も確認すると、
初期武器にアニールブレードそれと数少ないポーションそして、
「手鏡?」
それをオブジェクト化すると鏡が輝く。目を開けると鏡に映ってたのは俺だった。
いや、これで知らない人だったら驚きだが。問題はそこじゃない。
腐った眼とアホ毛。そして、目を除けばかっこいいと言えるだろう、顔。
現実世界の俺だった。
「以上で、SAO正式サービスのチュートリアルを終了する。諸君の健闘を祈る…」
赤いローブの巨人が崩れ去るように消える。
悲鳴が聞こえるが、躊躇している場合じゃない。
俺の戦い方で、潰してやる。
まずは、真っ黒のフード付きマントを買い顔を隠す。同時に装備も整えた。
数少ないアイテムでNPCの鍛冶屋に行き、アニールブレードを1段階強化する。
残りのお金で、ポーションを買い漁る。
それでも余ったお金で予備の片手直剣を一本買う。残りは貯金だ。
俺はアニールブレードをさらに強化するために、周りのモンスターをすべて切り裂きながら、ホルンカの街に旅立った。