戦国†恋姫~とある外史と無双の転生者~   作:鉄夜

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真田丸見る
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「あれ?母衣衆って人数少ない?」
    ↓
「だとしたら構想上、白母衣衆って母衣衆ぽくないな。」
    ↓
「よし名前変えよう。」←今ココ

というわけで作中の白母衣衆を白狼隊に変更しました。
急な変更申し訳ありません。


それと今回、とりあえずやりたいことを詰め込みましたので、だいぶ長いです。


第六話

清洲、白狼隊の長屋。

 

「剣丞様、改めて自己紹介をさせていただきます。

私は、明智左馬助秀満、通称を彩華と申します。

以後、お見知りおきを。 」

 

「猿飛凛佐助!凛でいいよ!

よろしくね!剣丞様!」

 

彩華は頭を深々と下げ、凛は元気よく名を名乗った。

 

「ああ、これから色々面倒かけるかもしれないけどよろしくな。」

 

「はい、なんなりとお申し付けくださいませ。」

 

彩華はもう一度頭を下げる。

 

「そ・・・そんなに畏まらなくて良いんだけど。」

 

「剣丞、彩華はこれで通常運転だから。」

 

「頭でっかちだからねぇ、彩華は。」

 

「白様?凛?なにか?」

 

「「なんでもありません!」」

 

彩華は咳払いをする。

 

「それで剣丞様、協力すると言っておいて申し訳ありませんが、白狼隊はつい最近出来たばかりで、総勢は百と少ししかおりません。」

 

「いや、それでいい。

今回はできるだけ正規の兵を使わないようにしたいんだ。

こっちがそうしてるように敵からもスパイ・・・草が潜り込んでいたら戦の準備をしているのを悟られる可能性がある。」

 

「ふむ、ならこのままでいいかなぁ。」

 

白が納得しかけていると。

 

「はいはーい!」

 

元気よく手を挙げた凛に剣丞が尋ねる。

 

「凛、何か策があるの?」

 

「うん、要は情報が外に漏れなきゃいいんでしょ?

それならうちの部下を使って警備を密にすればいいだけの話だよ。」

 

「外に漏らさないって・・・できるの?」

 

「そういうの得意だよ、猿飛は。」

 

「で・・・でも、草が帰ってこなかったら、

それはそれで怪しまれるんじゃ・・・。」

 

不安そうなひよに、凛は自信満々で答える

 

「そのへんも大丈夫。

あっちの草に変装して嘘の情報を知らせればいい。」

 

「バレない?それ。」

 

「用心深い所ならまだしも、相手はちょっと兵が強いからって調子乗ってる斎藤だよ?

草の声や顔なんていちいち覚えてないって。

大丈夫大丈夫。

道具は使いようだよ、剣丞様。」

 

「つまりはそれでこちら側の情報を遮断して準備を進めるってことか・・・どう思う?剣丞。」

 

剣丞は腕を組んで考える。

 

「・・・なかなかいい策だな。」

 

「たしかにそれなら気兼ねなく兵を集め、

戦の準備を進められますね。」

 

白は二人の意見にうなづいて返すと、凛に言う。

 

「凛、お願いできる?」

 

「おまかせあれ!

・・・その代わりって言っちゃあなんだけど、

私達今回そっちの任務に専念するから、墨俣の地理の把握は別の人にお願いしたいんだよね。」

 

「地理の把握・・・か。

作戦を建てるには大事だからなぁ。」

 

「どこかに墨俣の地理に詳しい人でもいればいいのですが・・・。」

 

皆が悩んでいると、

 

「あ・・・あのー、お頭。」

 

ひよがおずおずと手を上げる。

 

「ん?どうしたの、ひよ。」

 

「私の友達に、墨俣の地理に詳しい子がいます。」

 

「本当に!?」

 

「はい!蜂須賀小六正勝っていう子なんですけど、このあたりの野武士の棟梁をやってる子です。

その子なら墨俣の地理に詳しいと思います。」

 

「野武士か・・・傭兵として雇うのもありかもね。」

 

「なるほど、地理の把握と人員の補充の両方ができますね。」

 

「とりあえずその蜂須賀さんには俺とひよが掛け合ってみるよ。」

 

「うん、よろしくね、剣丞。」

 

「それでは皆々様、とりあえずはそのように、お願い致します。」

 

5人は頷くと、1人1人部屋から出ていく。

 

彩華も出ていこうとするが、凛の方を振り返る。

 

「凛、自分の事を道具のように言うのはおやめなさい。

ひどく不愉快です。」

 

そう言って部屋を出ていった。

 

「・・・真っ直ぐだなぁ、彩華は。」

 

凛も続いて外に出る。

 

#####

 

剣丞は蜂須賀小六のところへ向かった

 

白は廊下を歩きながら、指示を出していく。

 

「凛、さっきの件よろしくね。」

 

「はいなー!」

 

凛は一瞬で姿を消す。

 

「彩華は戦に向けて習練を強化して、当日に抜かりのないようにね。」

 

「御意に。」

 

「私は久遠に掛け合って、白狼隊の人員補充の件、頼んでみる。」

 

「はっ。

よろしくお願い致します」

 

白は彩華に指示を出すと、そのまま清洲城に向かった。

 

#####

 

清洲城、評定の間。

 

「うむ、あいわかった。

人員補充の件、まかせておけ。」

 

「ありがとう、久遠。」

 

「それにしても、なかなか板についてきたではないか。」

 

「めんどくさくて仕方ないよ。

もう全部彩華に丸投げしちゃおうかなぁ。」

 

「そんなことをすればあとが怖いのではないか?」

 

「私に怖いものなどない。」

 

「ぬかせ。」

 

2人は笑いあった。

 

「そうだ白、お前は旗印はどうするつもりだ?」

 

「旗印?」

 

「あぁ、普通は家紋を掲げるものだが、お前や疾風にはそれがないだろう?」

 

「・・・いるの?」

 

「部隊の顔になるからな。」

 

「・・・考えてみるか。」

 

#####

 

夕方になり、剣丞達が再び白狼隊の長屋を訪れていた。

 

「剣丞、この子が例の? 」

 

「ああ。」

 

白の目の前にいる少女が、緊張した様子で言う。

 

「は・・・蜂須賀小六転子正勝(はちすかころくころこまさかつ)です!」

 

「私は颯馬白。

よろしくね、転子

そっちの仏教面は彩華ね。」

 

「仏教面で悪かったですね。

蜂須賀殿、明智左馬助彩華秀満と申します。

以後お見知り置きを。」

 

「ころで結構です!こちらこそよろしくお願いします!白様!彩華様。」

 

白は腕を組んでムスッとした顔で言う。

 

「硬いなー。」

 

「硬いですね。」

 

「硬い・・・ですか?」

 

「うん硬い、硬くてめんどくさい。」

 

「めんどくさい!?」

 

白のめちゃくちゃな言葉にころは驚く。

 

「とりあえず敬語を止めるところから始めてみようか。」

 

「む・・・無理ですよ!ただの野武士が一軍の将にタメ口なんて!」

 

「私は農民出の元浪人だよ。

気にすることないって。」

 

「は・・・白様はそれでいいかもしれませんけど彩華様は明智家のお出ですよね!?」

 

「確かにそうですが、住んでいた明智城も斎藤に奪われ、ほぼ滅亡しているようなものです。

お気になさらないでください。」

 

「うぅ・・・。」

 

白がじーっと見つめていると、ころは気まずそうに言う。

 

「は・・・白・・・さん。」

 

「さん?」

 

「白・・・ちゃん。」

 

「フフ、なに?ころ。」

 

「さ・・・彩華さ・・・ちゃん。」

 

「はい、ころさん。」

 

「凛もいるよー!」

 

「うわぁ!」

 

突然聞こえた声にころが驚いて顔を上げると、天井から凛がぶら下がっていた。

 

凛は一回転して着地する。

 

「猿飛凛佐助!ただいま!」

 

「そこは参上と言うところではありませんか?」

 

「凛、どう?首尾は。」

 

「とりあえずそれっぽいのは全部殺したよ。」

「うん、ありがとう、これからも怠らないでね。」

白は凛の頭を撫でる。

 

「凛、本当に助かるよ、ありがとう。」

 

そう言った剣丞の顔を、凛は何かを期待する目で見上げる。

 

剣丞は最初は分からなかったが、やがて思いついたような顔をして、凛の頭を優しく撫でる。

 

凛は気持ちよさそうに目を細める。

 

「凛は頭撫でられるの好きだからね。」

 

「そうなのか・・・。」

 

「剣丞様の手、ちょっとのごつごつしてるけど凜好きだよ。」

 

「あ・・・ありがとう。」

 

「剣丞、幼女にときめいちゃダメだよ?」

 

「ときめいてねぇよ!」

 

白の指摘を剣丞は必死に否定する。

 

「それで剣丞様、重要な作戦の方はいかがなさいますか?」

 

剣丞は墨俣周辺の地図を出す。

 

「川の中州の、この突き出た位置に築城するのが、一番イイ建築場所になると思うんだ。

で、今回の作戦の肝はこの長良川なんだ」

 

「長良川・・・ですか。」

 

「ああ。

佐久間さんとやらの失敗について、

色々と事情を聞いたところ、

築城の下準備中に美濃勢に襲いかかられて敗北って流れらしいんだよな。

だから俺は築城の下準備と、

あと防御用に柵やら何やらも先に作っておいて長良川の上流から川を下ってこう一気に墨俣に入る。

入った後は、

先に柵なんかで防御陣地を作って堀を掘って応戦準備を整える。

そうすりゃ柵の中で築城を進められる。」

 

「なるほど、そういう作戦ですか・・・白様。」

 

「うん、いいんじゃないかな。

あとは、囮を壬月あたりに頼んで、こっちに流れてくる敵を少なくするって手もあるよ。

別の方向からたくさんの敵が来てればこっちにかまってる暇はないだろうしね。」

 

「なるほど・・・後で久遠に掛け合ってみるよ。

それで白、城の建設はひよやころちゃん達に任せるとして、白狼隊には敵の迎撃を頼みたいんだ。」

 

「・・・始めるのはいつ?」

 

「準備期間が7日間くらい掛かるから、そのあたりかな。」

 

白は顎に手を添えて考える。

 

「あさってには兵の補充も済んでるから残り五日あれば修練もできるか・・・。

うん、任された。」

 

剣丞は心配そうに尋ねる。

 

「頼んでおいてなんだけど、大丈夫なのか?」

 

「うん、むしろチマチマ城建てるよりそっちの方が得意。

ね、彩華」

 

「はい、我らにお任せ下さい、剣丞様。」

 

「うん、それじゃあ頼むよ。」

 

「白ちゃんの戦かぁ・・・。」

 

ひよが顔を青くする。

 

「どうしたの?ひよ。」

 

「えっとその・・・白ちゃんの戦いって、基本皆殺し・・・みたいな。」

 

「え、なにそれ。」

 

少し引き気味の剣丞にころが言う。

 

「先日の盗賊退治でも盗賊を皆殺しにしたって聞きました。」

 

「えぇ・・・。」

 

剣丞は驚いて白を見る。

 

目の前の肌が白く、華奢な少女からは想像もできないからだ。

 

「何言ってるの二人共。」

 

白はニッコリの花のような笑顔を浮かべる。

 

「向かってくる敵に容赦や慈悲をかける必要がどこにあるの?

殺るなら徹底的に殺る。

それが颯馬の戦だよ。」

 

(この子久遠よりよっぽど魔王だ!)

 

驚いている剣丞に彩華が言う。

 

「この方は本来こういうお方なのです。

剣丞様もいずれ慣れますよ。」

 

「できれば慣れたくないなぁ。」

 

剣丞は苦笑いになる。

 

最後に、軍議の締めとばかりに、彩華が皆を見渡して言う。

 

「それでは各々方、抜かりなく。」

 

全員が頷くと、白は一人立ち上がる。

 

「で、剣丞、話は終わり?」

 

「え?あーうん、そうなるかな。」

 

「よし、それじゃあ。」

 

白はひよところの肩に腕を回す。

 

「一緒にお風呂に入ろう、拒否権はない。」

 

「ええ!?」

 

「ちょっと白ちゃん!?」

 

「凛も入るー!」

 

「お供します、白様。」

 

ひよところは、そのまま浴場へ連行されて行った。

 

「白って自由だなー。」

 

剣丞は一人呟いた。

 

#####

 

白達は湯船につかり、疲れを癒していた。

 

「はぁ、気持ちいい~。」

 

白が気の抜けた声を出す。

 

「あ〜生き返る〜。」

 

「あはは、凛ちゃんお婆ちゃんみたいだよ。」

 

「なんだとひよー、一番の若手捕まえて〜。

あ、でもこの中で言うとおばあちゃんっぽいの白様だよね、一番年上だし白髪だし。」

 

「あっはっはー、凛、今日の私は機嫌がいい。

沈めるのは20秒だけにしてやろう。」

 

「やめてください死んでしまいます!」

 

和やかに会話をしていると、彩華がひよに尋ねる。

 

「そういえば、ひよはどうして武士になろうと思ったのですか?」

 

「あ、それ凛も気になる、 ずっと農民やってる方が平和でいいのに。」

 

「私は生まれも育ちも貧乏だから、武士になって出世しておっかぁ達に楽をさせてあげたいの。

・・・それと、これは大それた夢なんだけど・・・。」

 

ひよは、真っ直ぐな瞳をしていう。

 

「私、妹を取り立ててあげて、一緒に泰平の世を築くのが夢なの!」

 

「泰平の世・・・ですか。」

 

「叶うといいね!ひよ!」

 

ひよの夢に、彩華は微笑み、ころは応援する。

 

「えー、凛はやだなぁ。」

 

「どうしてですか?凛。」

 

「戦がなくなったら、凛達みたいな奴はどうやって生きればいいの?

ねぇ、白様。」

 

「私は別にいいと思うよ?泰平の世。」

 

「「「「え?」」」」

 

四人の目が白に、集中する。

 

「なに、その疑問符は。」

 

「嫌だって・・・。」

 

「白ちゃんからそんな言葉が出るなんて。」

 

「凛より戦い好きそうなのに・・・。」

 

「信じられません。」

 

「あはは、確かに私は戦いが大好きだよ。

でも、それと同じくらい平和も大好きなんだ。

戦乱も平和も楽しめないと、このご時世つまんないじゃん。」

 

「・・・確かにそうだけどさぁ。」

 

「まぁ、凛が平和な世界で生きられないって言うなら私の娘にでもなる?

そうすれば平和になっても生きやすいかもよ?」

 

「え!?」

 

「な!?」

 

白がさらっと言った一言にひよところが驚く。

 

「白様、また考えもなしにそのようなことを?」

 

「まさか、思いつきで言っていいことと悪いことの区別くらい分かるよ。」

 

凛は湯船に首から下を湯船に沈めた状態でスーッと白に近寄る。

 

「・・・いいの?」

 

「うん。」

 

「お母さーん!」

 

「あ、そこはいつも通りで。」

 

「アッハイ。」

 

白は、凛の頭を撫でながらひよに言う。

 

「でも私ひよが心配だなぁ。

人って権力持つと人が変わるから。」

 

「そ・・・そんなことないよ。」

 

「・・・昔話をしようか。」

 

白は、静かに語り出した。

 

「ある所に、一人の男がいました。

男は百姓でしたが、いつしか武士になり、その後も出世して大きな城を持つほどになりました。

歳をとった男は、自分のやっていた仕事を養子に引き継ぎましたが、

ある日その養子がいろいろあって仕事から逃げ出し、終いには自害してしまいました。

怒った男は、家臣にこう命じました。

『奴の正室、側室、子供の尽くを処刑し、磔にせよ。』・・・っと」

 

「そんな・・・酷い・・・。」

 

ひよは話を聞いて怯えていた。

 

別の世界の自分のことだとは知らずに。

 

「その人はさ、元々はこんな性格じゃなかったんだよ。

明るくて元気で、皆が笑顔になる国を作るんだって言ってた。

そんな人でも権力を持つと、変わっちゃうんだよ。」

 

白はひよの目をまっすぐ見て言う。

 

「ひよ、君はこれから剣丞の下で働いて出世していくかもしれない。

でも、いくら偉くなったからって、自分を見失わないでね。」

 

「・・・うん。」

 

ひよもまた、白の目をまっすぐ見つめて答えた。

 

「でも、白ちゃんってすごいよね。」

 

唐突に、転がそう口にする。

 

「浪人から一気に部隊の隊長だもん。」

 

「うんうん!私ももっと強ければ戦場で活躍できるのになー。」

 

そう言ったひよところに彩華は言う。

 

「それなら二人共、いっそ白様に師事してはいかがですか?」

 

「白ちゃんに?」

 

「強くなりたいのであれば、それが一番手っ取り早いですよ。

白様は武芸百般、様々な武器、武芸に精通されておりますから、師事するには十分な方かと思います。」

 

「・・・うん!それいいかもね!ひよ!」

 

「そうだね!ころちゃん!」

 

「あれ、おかしいなぁ、私抜きで話が進んでるよ?」

 

ひよところは白に詰め寄る。

 

「私達白ちゃんみたいに強くなりたいの!」

 

「お願いします!師匠!」

 

「うん、弟子にするのは良いけど師匠はなしね?」

 

「「やったぁ!」」

 

はしゃぐ二人を見て、白は向こうの世界に置いてきた弟子のことを思い出していた。

 

(蘭丸、どうしてるかなぁ。)

 

ふと寂しさを感じつつ、目の前の2人を微笑んで見つめていた

 

#####

 

「剣丞様ー!」

 

「うお!?」

 

風呂から出て着替えた凛が剣丞に後ろから抱きつく。

 

「お・・・おい、急に抱きつくなよ。」

 

「えへへ、いやー。」

 

凛に続いて白と彩華も戻ってくる。

 

「すっかり懐かれましたね、剣丞様。」

 

「なんでこんな急に!?」

 

「凛は犬みたいな所あるからねぇ。」

 

「剣丞様優しい人の匂いするから好き!」

 

「訂正、完全に犬だこれ。」

 

剣丞は白と彩華の方に目をやる。

ほんの少し上気した肌が二人の色香を増している。

 

剣丞ついつい見つめてしまう。

 

「け・・・剣丞様、そんなに見つめられるとその・・・//////」

 

「あ、ご・・・ごめん!」

 

「剣丞エッチぃなー。 」

 

「う・・・うるさい!」

 

続いて、何故か落ち込んでいるひよとそれを励ましているころが戻ってくる。

 

「なぁ白、ひよなんで落ち込んでんの?」

 

「あー、まぁその・・・格差社会の現実を知った・・・的な?」

 

「はぁ?」

 

剣丞は分からず、首を傾げる。

 

「ころちゃん・・・仲間だと思ってたのにぃ・・・。

いつの間にあんな・・・あんな・・・。」

 

「ひ・・・ひよもまだこれからだよ!

胸なんてすぐ大きくなるって!

ね、白ちゃん!」

 

「育ち盛りの凛ならともかくその歳でそれだともう無理だと思うよ?」

 

「うわぁぁぁぁぁん!!」

 

「白ちゃん!」

 

「さすが白様、一片の慈悲もありませんね。」

 

その内容を聞いていた剣丞は一人納得する。

 

(なるほど、これは俺には分かんないや。)

 

「そんなに気になるなら、剣丞に聞いてみれば?」

 

「え?」

 

急に巻き込まれた剣丞はポカンとする。

 

「な・・・なんで俺なんだよ。」

 

「君が男の子だからだよ。」

 

「う・・・。」

 

「で、剣丞的に大きいのと小さいのどっちが好き?」

 

女子全員の視線が剣丞に集中する。

 

「え・・・えーっと、俺はみんな違ってみんないいと思うんだけどなぁ・・・。」

 

「はい誤魔化したー!今誤魔化したよ!」

 

「ちゃんと答えてください!剣丞様!」

 

剣丞は、白とひよに追い詰められる。

 

「か・・・勘弁してくれー!」

 

#####

 

日が経ち、出陣の時が来た。

 

「白様、参りましょう。 」

 

「うん、凛も準備はいい? 」

 

「うん!」

 

白達が庭に出ると、白狼隊の兵士達が整列していた。

 

彩華が声を張り上げる。

 

「皆のもの!これが我らの旗印だ!」

 

彩華の声とともに、凛が掲げた旗には、

白地の生地の真ん中に、赤い色で獣の紋様が描かれていた。

 

その旗を見た兵士から「おー!」と歓声が上がる。

 

「我らが御旗に掲げるは神を喰らいし狼の王!

この旗に誓い!主がため!国がため!

仇なす敵を喰らい尽くさん!」

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおお!」

 

兵士達から歓声が湧き上がる。

 

「白様!先陣はどうか拙者におまかせを!

斎藤など蹴散らしてご覧に入れましょうぞ!」

 

「いいえ!ここは拙者におまかせあれ!

我らが真の初陣!華々しく飾りとうございまする!」

 

兵の一人一人がいきり立っているその様子を、

 

剣丞、ひよ、ころ、そして見送りに来ていた久遠は遠くから眺めていた。

 

「結構な数が集まったなぁ。」

 

「桶狭間に参加していた兵士が、

白を『雷と共に降り立った戦神』と触れ回りおってな。

募集をかければ次から次へと。」

 

「それにしても、集まり過ぎだろう。

たった2週間でここまで集まるなんて、・・・どうしたんだろう。」

 

「・・・それはあやつが真の強者であるからだろうな。」

 

「え?」

 

「人は強き者に惹かれ、その背中を追いたくなる。

やがて強者に人は集い、一つになっていく。」

 

「一つに・・・」

 

ころが、驚いた様に言う。

 

「それにしても、凄いですね。 」

 

「あぁ、只者ではないと思ってはいたが、まさかここまでとは。

・・・私も、ああなりたいものだ。」

 

やがて白がほかの兵士を引き連れてやってきた。

 

「皆、お待たせ、そろそろ行こうか。」

 

「あぁ・・・それじゃあ行ってくるよ、久遠。」

 

「うむ、無事に帰ってくるのだぞ。」

 

剣丞とひよところは頷いて先に歩いていく。

 

白も後に続こうとしたが、立ち止まる。

 

「久遠。」

 

白は久遠の名を呼んで振り返る。

 

「私も、久遠だから従ってるんだよ。」

 

そう言って白は剣丞の後を追って歩いていった。

 

白の背中を見ながら、久遠は笑顔を漏らした。

 

「フフ、まったく、地獄耳め。」

 

#####

 

墨俣。

 

悠然とはためく一つの旗があった

 

血のように赤く染まった生地に、白字で『獅』と書かれているその旗印を掲げているのは、

疾風が率いる白獅子隊であった。

 

壬月が不思議そうにいう。

 

「まったく、良くわからんな、

なぜ姉妹なのに違う旗印を掲げるのだ?」

 

「元々俺達には家紋なんてねぇし、

姉妹だからって揃えなくてもいいだろ。」

 

「そんなものか。」

 

「そんなもんだよ。」

 

白獅子隊の兵士が、うずうずした様子で言う。

 

「お頭!まだ、斎藤は来ねぇんですか!」

 

「森一家もいねぇんだ!早く大暴れしてぇっすよ!」

 

その様子を見て、三若が言う。

 

「いや〜、血気盛んだねぇ白獅子隊は〜 」

 

「森一家と似た雰囲気を感じるよなぁ。」

 

「今にも飛び出していきそうだよね。」

 

と、そこに兵が報告にやってきた。

 

「報告!斎藤の軍勢が接近中です!」

 

「来たか・・・三若!そして白獅子隊!

我らの役目は囮だ!特に何も言わん!

派手に暴れろ!」

 

『応!』

 

疾風は大声を張り上げる。

 

「吼えろ野郎共!餌の時間だぁぁぁぁ!」

 

「うおおおおおおおおおお!」

 

白獅子隊が、疾風を先頭に一気に突っ込んでいった。

 

「雛!犬子!僕達も続くぞ!」

 

「「応!(お〜)」」

 

三若達も兵を連れて疾風たちの後に続く。

 

すこしすると、敵兵の群れが見えてきた。

 

疾風は刀を抜き、まず目の前の一人を攻撃を防ごうとした刀ごと斬り伏せる。

 

「白獅子隊隊長!颯馬疾風!推参!

首置いてけぇ!」

 

それをきっかけに織田軍と斎藤軍の戦闘が始まった。

 

「オラオラオラオラァ!かかってこいや斎藤のクソ兵共!」

 

「ビビってんじゃねぇぞこらぁ!」

 

「誰が逃げていいっつったオラァ!」

 

「てめぇら全員皆殺しだぁ!」

 

白獅子隊の兵達は口々に叫びながら敵を虐殺していく。

 

その様子を、和奏はドン引きながら見ていた。

 

「キ印だ・・・。」

 

疾風も次々と敵を切り飛ばしていき、

馬に乗っている敵の将らしき者を見つけた。

 

「見つけたぞ大将首・・・首置いてけ・・・首置いてけぇ!」

 

「ヒィ!お・・・お前ら!早く俺を守れ!」

 

兵達が将の周りに集まる。

 

それを見て、疾風が犬歯を剥き出しにして怒鳴る。

 

「大将が部下を壁にしてんじゃねぇ!」

 

そう言って飛び上がると、兵の頭を踏み台にして更に飛び、将に一気に接近する。

 

「ヒィ!」

 

()ったぁ!」

 

疾風の奮った一撃は馬の首と敵将の首を同時に撥ね飛ばした。

 

「貴様ァ!」

 

敵将を討ち取り、着地した疾風に敵が群れをなして襲いかかる。

 

「・・・ウザってぇ」

 

疾風が刀を構えると、刀が炎を纏う。

 

「出直して来い!」

 

疾風が刀を前に突き出すと、炎の渦が一直線にのビームのように敵を吹き飛ばしながら伸びていく。

 

「はえ?」

 

しかし、その先には敵と戦っている雛がいた。

 

「まずい!避けろ!雛!」

 

しかし、炎の渦は雛に当たる直前で横に曲がりうまく避ける。

 

「え!?」

 

まさかの事態に疾風は驚くが、まずはビックリして尻餅をついた雛に近寄る。

 

「雛!大丈夫か!?」

 

「もー、びっくりしたよ疾風ちゃん。

今度から気を付けてね。」

 

疾風はひなに謝ったあと、刀を見つめた。

 

(さっき、明らかに俺の意思に反応して軌道を変えたよな・・・。

この世界に来て、無双奥義は気を媒体に発動するようになった。

もしこの世界の法則に影響されてるとしたら・・・もしかしたら・・・。)

 

「疾風ちゃん!」

 

雛に呼ばれ周りを見ると、敵兵が二人を囲んでいた。

 

「考え事は後だな。」

 

疾風と雛が、背中合わせで刀を構えていると。

 

「うりゃああああ!」

 

犬子が槍を背中に背負い、丸太を持って突進してきた。

 

「せいや!」

 

犬子は不要になった丸太を敵に向けて投げて捨てると、槍を構える。

 

「雛ちゃん!疾風!無事!?」

 

「犬子!」

 

「さっすが犬子!いいところで来るねぇ。」

 

「ふふん、犬子に任せておけばもう大丈夫!

泥舟に乗ったつもりでいるわん!」

 

「ハハ、そりゃ沈む前になんとかしねぇとな!」

 

そして別の方向からも勇ましい声が聞こえる。

 

「うおおおおおおおおおお!」

 

和奏が自身の武器、絡繰り鉄砲槍を振り回し、敵を蹴散らしていく。

 

「お前らなんかに殺られるようじゃ、

僕は黒母衣衆筆頭にはなれてないんだよ!」

 

そう叫んで敵を吹き飛ばし、槍を地面に突き刺して棒高跳びのように飛び上がる。

 

そして、疾風達のそばに着地し、槍を構える。

 

「真打登場!

織田の四若!ここに集結!」

 

「あれ?和奏ちん、

なんか増えてない?」

 

「僕に犬子、雛、疾風、で四人だろ?」

 

「今さらっと疾風ちゃんいれたね。」

 

「細かいことは気にしない!

この四人なら負ける気がしないよ!」

 

「・・・そうだな。

よし!お前ら!行くぞ! 」

 

「応!」

 

四人は一緒に敵を蹴散らしていく。

 

「俺達も姐さん達に続けぇ!」

 

「うおおおおおおおおおお!」

 

白獅子隊やほかの兵士も、四人の後に続いて進撃していく。

 

その様子を壬月は後方で腕を組んで見ていた。

 

「まったく、囮どころか殲滅する勢いではないか。」

 

「あはは・・・」

 

壬月の隣で麦穂は苦笑いをしていた。

 

#####

 

一方その頃、長良川の築城現場では、城の建設が進められていた。

 

白がその様子を見て感心したようにいう。

 

「みんな手際いいねぇ、TOK○Oみたい。」

 

「今日まで色々と練習したからなぁ、

でもその喩えはどうなの?」

 

「でも凄いね、剣丞は。」

 

「何が?」

 

「普通異世界に飛ばされたってなったら戸惑って何も手につかない筈なのに、こんな作戦立てるなんて、よくやるよ。」

 

「・・・たしかに戸惑ったけど、

それで立ち止まってちゃダメだと思ったんだ。

こういう時こそ、前に進まなきゃな。」

 

「・・・やっぱりすごいよ、君は。」

 

そう言って微笑んだ白に、次は剣丞が問う。

 

「そう言えば白はどうだったんだよ。」

 

「なにが?」

 

「前の世界に転生した時どうだったんだ?

やっぱり初めて戦場に出た時は辛かった?」

 

「別に、それが戦国の世の常だしね。」

 

「それもそうか。」

 

「・・・それに。」

 

白は剣丞に微笑んで言う。

 

「人を殺すのは慣れてるから。」

 

「・・・それって。」

 

「白様。」

 

剣丞が言葉を続けようとすると、彩華が報告に訪れた。

 

「お客さん?」

 

「はい、三方向からこちらに向かってきています。」

 

「敵の数は?」

 

「物見の報告では400程だと。」

 

「あれ?割としっかり準備してきてるね。」

 

「戦の準備をしていると、情報が漏れたのではないでしょうか。」

 

「いや、そんなことないでしょ。

そのへんは凛がしっかりとやってるって、

ねぇ、凛。」

 

白がそう言って振り返ると、そこではいつの間にか現れていた凛が見事な土下座をしていた。

 

「すいませんでしたああああああ!!」

 

「・・・なに?その綺麗な土下座は。」

 

「この間のドヤ顔はなんだったんだよ。」

 

咎めるように言う白と剣丞に、凛は言い訳を始める。

 

「ちゃうねん・・・ちゃうねん。」

 

「なにがちゃうんですか?」

 

「初めて3日間はちゃんとやってたの!

でも4日目になってちょっと面倒くさくなって、連日これだけ殺ってるんだから大丈夫だと思ってちょっと手を抜いたらその・・・。」

 

「抜けられたんだな?」

 

「うん。」

 

剣丞の問いに凛は素直に頷く。

 

「なるほど、話はわかった。

・・・凛。」

 

「はい!」

 

「一週間おやつ抜き。」

 

「そんなぁ!」

 

白は半泣きになってる凛をスルーして、彩華に向き直る。

 

「彩華、こっちの数は?」

 

「200、ですね。」

 

「こっちの二倍の数かぁ。」

 

「どんな風に展開してる?」

 

「北と西から100づつと、東から200との事です。」

 

「ふむ・・・。」

 

白は顎に手を添えて考える。

 

「彩華、100を率いて北を守ってくれ。」

 

「御意に。」

 

「それと凛。」

 

「はい( ´・ω・` )」

 

「君も100を率いて西に向かってくれ。」

 

「わかりました( ´・ω・` )」

 

「成功したらおやつ抜きは撤回してあげる。」

 

「頑張ります!」

 

「それで白、東の200はどうするんだ?」

 

剣丞の質問に白は、

 

「私がやる。」

 

そう言った。

 

#####

 

墨俣城建設現場、西。

 

白狼隊と、斎藤軍の戦いが始まった。

 

「うおおおおおおおおおお!」

 

白狼隊の兵士達は、雄叫びを上げながら勢いよく進撃していく。

 

「ええい!織田の弱兵ごときになにをてまどっているか!」

 

敵の将が怒りで声を荒らげるが、

それでも白狼隊を押し返すことが出来ない。

 

「クソ!なんなのだこヤツらは!

一度退いて援軍を呼ぶぞ!」

 

敵将がそう叫んだ瞬間。

 

周りの木の上から弓矢が飛んできた。

 

「な・・・なんだ!?一体どこから射ってきている!?」

 

「忍です!忍が弓をギャ!」

 

報告しようとした兵士に弓が突き刺さる。

 

「クソ!これでは退くにも退けん!

我らを皆殺しにする気か!?」

 

「その通りいいいいい!」

 

声が聞こえて見上げると、小さな忍びの少女、

凛が空中で拳を構えていた。

 

凛は急降下し、敵が群がっている地点に拳を叩きつける。

 

衝撃で地面は爆ぜ、周りの敵は吹き飛ぶ。

 

「残念ながら君たちの冒険はここで終了です!

あ、降伏して投降するなら歓迎するって白様言ってたよ?」

 

「ふざけるな!誰が降伏などするものか!

忍風情がでかい口を叩くな!」

 

「・・・そっか、なら仕方ない。」

 

凛の拳を赤い気が、足を青い気が覆う。

 

「死んじゃえ。」

 

その言葉をきっかけに凛は突っ込んでいく。

 

そして正面の敵を殴り飛ばすと、後ろから襲ってきた敵に回し蹴りを放つ。

 

蹴られた敵はまるで刀で斬られたように体を両断される。

 

その後も凛は拳で砕き、足で斬り、敵を蹴散らしていく。

 

「なんだ・・・なんだこれは!

何が起こっているのだ!」

 

その疑問に答えるように、凛は楽しそうに叫ぶ。

 

「拳は鉄槌、脚は剣!

それが私の御家流、猿飛流操気術なり!

我が一撃に!二の打ち要らず!」

 

凛と白狼隊は敵を殲滅していき、残るは大将一人となった。

 

敵将の周りを忍が取り囲み、その輪の中で凛が敵将に近づいていく。

 

「ま・・・待て!降伏する!

殺さないでくれ!」

 

凛はニッコリと可愛らしく笑う。

 

「一度警告はしたよ?2度目はない。」

 

凛は拳を振りかぶると、

 

「さようなら。」

 

そう言って無慈悲に振るった。。

 

#####

 

一方、北の斎藤の軍勢も、もはや虫の息であった。

 

「クソ!なんだこいつら!」

 

「あんな目した奴ら見たことねぇ!

死ぬのが怖くねぇのか!」

 

「死ぬのがこわい?何を言ってるんですか?」

 

狼狽する斎藤の兵士達に、彩華は語りかけながら近寄る。

 

「ここは戦場、我らは兵士。

兵士が戦場に立つ以上、死を覚悟するのは当然のこと。

・・・あなた方ひょっとして、自分たちが死なないとでも思っていたのですか?」

 

「ち・・・畜生おおおお!」

 

「うおおおおおおおおおお!」

 

数人の兵士が彩華に斬りかかるが、それらを振るう前に彩華の居合によって切り捨てられる。

 

血を吹き出して倒れた兵達を見て彩華は、

 

「最初からその気で来ていれば、勝機はあったでしょうに。」

 

そう呟いてその場を去った。

 

#####

 

「えぇ!白ちゃん1人で200人!?」

 

驚きの声を上げたのは頃であった。

 

「うん、それでギリギリまで引きつけるから、もしも抜けられた時のために剣丞隊にはいつでも戦えるようにしてほしいんだ。」

 

「分かった。」

 

「まかせて!白ちゃん!」

 

「いやいやいや!剣丞様もひよもなんで止めないの!?」

 

「心配しなくても大丈夫だよころちゃん。

白ちゃんなら大丈夫だから。」

 

「大丈夫って・・・。」

 

心配するころを他所に、屈伸運動をしている白に剣丞は聞く。

 

「白、ギリギリって言うけど、どこまで引きつけるんだ?」

 

「とりあえずここから見えるところまで。」

 

「・・・本当にギリギリだな。」

 

「私は広い方が戦いやすいし、

それに新しい弟子達に、私の戦いをちゃんと見せたいしね。」

 

そう言って白が準備運動を終えると、忍が白の足元に跪き、報告する。

 

「白様、そろそろかと。」

 

「・・・そう。」

 

白はが両手を広げると、右手に蜻蛉切、そして左手には前田慶次の槍、豪気皆朱槍(ごうきかいしゅやり)が現れる。

 

少しすると、剣丞達にも見える場所に、敵の軍勢が見えてきた。

 

「ひよ、ころ、君たちは言ったね。

私のように強くなりたいって。」

 

「う・・・うん。」

 

「それがどうかしたの、白ちゃん。」

 

「2人に、師匠としてまず最初にこれだけは言っておく。」

 

白は目の前の敵を見据えながら、背後の二人に言う。

 

「私のようにはなるな。」

 

そう言って白は敵の軍勢に突撃していった。

 

そして一気に接近すると二つの槍を横に払い、まずは手始めに30人ほどを一気に切り飛ばして見せた。

 

後方から敵が襲いかかるがやはり斬り払われ、

続いて20人が物言わぬ屍となった。

 

続いて、四方八方から敵が斬りかかって来たのを頭上高く飛び上がり避ける。

 

そして空中で2本の槍を振り上げると、その穂先が赤い気を帯びる。

 

白が急降下し、槍を地面に叩きつけると、火山が噴火するように地面が爆ぜ、一気に50人ほどが吹き飛ばされる。

 

その後も聞こえるのは敵の悲鳴の声だけであった。

 

白は2本の大槍を操り、敵を殲滅していく。

 

「アレが・・・白ちゃんの戦い。

・・・すごいね、ひよ。」

 

「うん、私も間近で見るのは初めて。」

 

「まさに無双・・・だな。」

 

「ねぇひよ、白ちゃんは私のようにはなるなっていってたけど。」

 

「そもそもなれない・・・よね。」

 

「・・・多分そういう意味で言ったんじゃないと思う。」

 

「「え?」」

 

そうこうしている間に、敵は敵将一人だけとなっていた。

 

「な・・・なぜお前のような化物が織田にいるのだ!」

 

「私が化物?ちがう、私は人間だよ。

化物よりよっぽど恐ろしい、生きている人間さ。」

 

白はそれだけ言うと、将の首を撥ねた。

 

「圧倒的な力っていうのはさ、憧れられるか、恐れられるかの二択なんだよ。

さっきの奴みたいに、化物扱いしてくる奴もいる。

白は慣れてるからいいんだろうけど、

二人は耐えれる?」

 

「それは・・・。」

 

「正直・・・自信ないです」

 

「白はきっと、二人に辛い思いをして欲しくないんだよ。

わざわざ自分の戦いを間近で見せたのだって、

きっと自分のようになるのがどれだけ恐ろしいか見せるためなんだと思う。」

 

「白ちゃん・・・。」

 

「・・・」

 

二人は佇む白の姿を静かに見つめていた。

 

#####

 

「飛騨様!別動隊が壊滅したとのことです!」

 

「こちらも敵の勢いを押し返せず!壊滅寸前です。」

 

「(頃合いか)クソ!こんなところで死んでたまるか!鏑矢を放て!撤退するぞ!」

 

飛騨は鏑矢を放ち、兵とともに撤退を始めた。

 

その途中。

 

「・・・」

 

同じく撤退している詩乃とすれ違った。

 

飛騨は何も言わず通り過ぎようとする。

 

「これが、あなたの手に入れたものですか。」

 

その言葉に、飛騨は立ち止まる。

 

「龍海殿を、主を裏切ってまで手に入れたものが、これなのですか?」

 

詩乃の言葉に、飛騨は背を向けて振り返ることなく答える。

 

「私の主は龍興様だけだ、

龍海を主と思ったことなどない。」

 

そう言って飛騨は、詩乃から離れていった。

 

(もう少しだ、きっともう少しで終わる。

そうすれば詩乃、お前とも・・・きっと。)

 

#####

 

白は持っていた二本の大槍を消すと、剣丞達の元へ戻ってきた。

 

その顔や装束は、返り血を大量に浴びていた。

 

「あー、これ帰ったらすぐにお風呂入ろう。

服も洗濯しないとなぁ。

・・・彩華に頼んだらやってくれるかなぁ。」

 

「多分突き返されると思うぞ。」

 

「ですよねー。」

 

白は剣丞の元を離れると、ひよところの所へ行く。

 

「おーい、ひよころやーい。」

 

「あ、白ちゃん・・・って大丈夫!?」

 

「血がいっぱいついてるよ!?」

 

「あ、大丈夫、全部返り血だから。」

 

「そ・・・そうなんだ・・・。」

 

と、ひよは苦笑いをするが、先ほどの剣丞の言葉を思い出すと、ころと目を合わせ、二人で白の頭を撫でる。

 

「え?なに?なんで頭撫でんの?」

 

「別になんでもないよー。」

 

「気にしない気にしない。」

 

「・・・剣丞、二人になんか余計な事言った?」

 

白が聞くと剣丞はニコニコと笑いながら言う。

 

「別に何も、白は本当は優しい子なんだよって二人に話しただけだよ。」

 

「・・・剣丞。」

 

「なに?」

 

「君のように勘のいいガキは嫌いだよ。」

 

そんな会話をしていると。

 

「ひーよー!」

 

「うわぁ!?」

 

ひよの背後から凛が抱きつく。

 

「凛も頑張ったよー!

撫でて撫でてー!」

 

「あーもう、はいはい。」

 

ひよが凛の頭を撫でていると、

彩華も兵を引き連れて戻ってきた。

 

「これは・・・立派な城ができたものですね、剣丞様。」

 

「ひよが言ってたけどほとんどハリボテらしいぞ。」

 

「・・・なるほど、そういう手できましたか。」

 

感心する彩華とひよに頭を撫でられている凛に白が聞く。

 

「凛、彩華、首尾は?」

 

「バッチリだよ白様ー!」

 

「敵軍は撤退していきました。

一応物見を放ってはいますが、我々の勝利かと。」

 

「そう、それじゃあ後ででいいんだけど、あれ、片しといてくれる?」

 

白は大量の敵の死体を指さして言った。

 

「また派手にやりましたね。

別にいいですが、白様にも働いてもらいますよ。」

 

「うん、わかってる。

それじゃあ剣丞。」

 

「・・・本当に俺がやるの?」

 

「こういうのは総大将の役目だよ。」

 

剣丞はやりずらそうにしながらも兵士達に向かって叫ぶ。

 

「みんな!勝鬨を上げろー!」

 

その声と同時に兵士達が、「えいえいおー!」

と声を上げ始める。

 

それを白は満足そうに笑顔で見守っていた。

 

こうして、墨俣城は完成したのである。

 

斎藤軍との決戦は・・・近い。


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