戦国†恋姫~とある外史と無双の転生者~   作:鉄夜

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今回はちょっとした外伝みたいな感じなんで少し手抜きです。


番外編2

数年前

 

国を脱走し、飛騨との連絡手段を探していた龍海は立ち寄った街の宿で今後の計画を立てていた。

 

(出来れば忍を使いたい、

忍と言えば甲斐の武田だけど、繋がりなんてない。

ましてやこっちは国を裏切った謀反者。

信用してくれるかどうか・・・)

 

龍海は畳の上に仰向けになる。

 

「はぁ、鴨がネギ背負って来たりしないかなぁ。」

 

そうぼやいた時だった。

 

「失礼致します、お客様。

お客様にお会いしたいと言う方がお見えになってます。」

 

戸の向こうから、給仕の声が聞こえてきた

 

「俺に?

どんな人?」

 

「武田の者とだけ伝えろと・・・」

 

「・・・」

 

罠かもしれないと思った。

 

しかし、そうでは無いとしたらこれ程までの機会はない。

 

「いいよ、通して。」

 

龍海がそういった少しあと。

 

「失礼するでやがる。」

 

(やがる?)

 

多少乱暴な言葉とともに戸を開けて入ってきたのはとても小柄な少女であった。

 

しかし、見た目は少女なれどその身に纏う空気は武将のそれとそういなかった。

 

(どうやら罠とかじゃないみたいだね。)

 

少女は龍海の正面に座る。

 

「お初にお目にかかるでやがります、斎藤龍海殿。

拙者は武田典厩信繁、通称は夕霧でやがります。」

 

「これはこれはご丁寧に。

まさか武田の副将様自らお出でになるとわね。

それにいきなり真名を教えてくれるなんて、

随分と友好的じゃない。」

 

「警戒させるつもりは無いでやがるからな。」

 

「ふーん、そっかー。」

 

龍海はあぐらを組んで座り直し、夕霧と名乗った目の前の少女に問う。

 

「なんで俺の居場所がわかったの?」

 

「苦労したでやがりますよ。

アンタが美濃を出たって聞いて日の本のあちこちから情報をかき集めたでやがります。」

 

「なるほど・・・さすが武田ってところか。

それで?天下の武田が俺に何の用?」

 

夕霧は龍海の目をまっすぐに見て言った。

 

「単刀直入に言うでやがります。

斎藤龍海、武田の軍門に下るでやがりますよ。」

 

「・・・俺が?」

 

「姉上は貴殿の武勇を高く評価してるでやがります。

武田に加わってくれればそれ相応のもてなしはすると言っていたでやがります。」

 

「でも俺は・・・」

 

「そっちの事情は概ね把握してるでやがります。」

 

「・・・」

 

龍海の問うような視線に夕霧は答える。

 

「美濃に残してきた斎藤飛騨と立てている計画についても知ってるでやがります。

アンタは今、飛騨と秘密裏に連絡ができる手段を探しているはずでやがります。」

 

夕霧は二ィっと笑を作る。

 

「武田の力が必要じゃやがりませんか?」

 

しばらくの沈黙のあと、龍海はため息を吐く。

 

「負けたよ。

子供だと思って油断したけど、なかなか頭が切れるようだねお嬢さん。」

 

「お嬢さんじゃなくて、夕霧でやがりますよ。

夕霧もこれからは龍海って呼ぶでやがります。」

 

「そっか、よろしくね夕霧。」

 

2人は握手を交わした。

 

「ところでさ。

護衛の気配がしないけど宿に置いてきたの?」

 

「今回は夕霧1人でやがりますよ?

複数人で出かけたら目立つでやがりますから。」

 

「おバカ。」

 

「な!?」

 

龍海から放たれた言葉に夕霧は目を丸くする。

 

「軍の副将、それも女の子が護衛もなしに遠出なんて何考えてんの?

盗賊にでも襲われたらどうするの?

最悪犯されるかもよ?」

 

「万が一敵に動きを悟られたら厄介でやがりますし、盗賊くらい一人で追い払えるでやがります。

それにこんなちまっこい女襲う奴、いるわけねぇでやがります」

 

「いやいや、一部で需要があるからわかんないよ?」

 

「そんな需要クソくらえでやがりますよ。」

 

龍海は腕を組んで考える。

 

「・・・よし、決めた。」

 

「なにをでやがりますか?」

 

龍海はにっこりと笑っていう。

 

「甲斐に着くまで、俺が君を守るよ。」

 

「守る?夕霧を?」

 

「どうせ俺を連れていくつもりなんでしょ?

なら道中の護衛は任せてもらえないかな。」

 

真剣な顔をしてそう言う龍海に、夕霧は思わず吹き出す。

 

「ぷっ、あっはっはっは!

聞いてた通りの奴でやがるな、龍海は。

・・・こちらこそ、お願いするでやがる。」

 

「うん、任された。」

 

こうして2人の短い旅が始まった。

 

#####

 

「龍海。」

 

「なに?夕霧。」

 

「馬が一匹しかいないから仕方ないかもしれないでやがるが・・・これはどうにかならないでやがるか?」

 

二人は現在龍海が馬の轡を握り、前に夕霧を乗せる形で二人乗りし、移動していた。

 

「1人が徒歩より、こっちの方がいいでしょ。」

 

「それはそうでやがるが・・・子供扱いされてるみたいで嫌でやがる。」

 

「大丈夫だって、そんなの少ししかしてないから」

 

「少しはしてるんでやがるか!?」

 

「はははは。」

 

「そこは否定してほしいでやがる!」

 

「冗談だよ、冗談。」

 

「・・・本当でやがるか?」

 

「本当だよ。

夕霧はすごいと思う。

まだ若いのに御家やお姉さんの為に頑張ってるんでしょ?

そんなの普通はできることじゃないよ。」

 

「頑張ってるつもりではいるでやがる。

でも、夕霧はこんなナリでやがる。

姉上の役に立ててるか時々不安になるでやがるよ。」

 

「不安のない人間なんていないさ。

俺だってこの先、どうなるのか分かんないしね。

でも夕霧はその不安に立ち止まることなく進んでる。」

 

龍海は夕霧ににっこり笑って言う。

 

「こんないい女、俺だったらほっとかないけどね。」

 

「・・・////」

 

夕霧は顔を赤くする。

 

「龍海、人から女誑しって言われた事ねぇでやがるか?」

 

「俺が?なんで?」

 

「無自覚なのがタチ悪いでやがる。」

 

「?」

 

ため息を吐く夕霧を見て、龍海は首を傾げる。

 

#####

 

二人で旅を初めて数日後。

 

夜になり野宿をすることになった2人は焚き火を囲い龍海が捕ってきた魚を焼いて食べていた。

 

「うーん、美味い。

塩焼きにすればもっと美味しいんだけどなぁ。」

 

「美濃は魚が美味いんでやがるか?」

 

「うまいよー。

海が近くないから川魚しかとれないけどねぇ」

 

この数日、笑顔で故郷を語る龍海を何度見ただろう。

楽しそうに語るその口調からは、美濃へのあいが滲み出ていた。

 

「龍海は、美濃を本当に愛してるでやがるな。」

 

「当然だよ。

生まれ故郷が嫌いな奴なんているわけないじゃない。」

 

だが・・・それと同時に。

 

「じゃあなんで・・・国を捨てたんでやがるか?」

 

浮かんだ疑問を、夕霧は口にしていた。

 

「・・・」

 

答えを返さない龍海に夕霧は続ける。

 

「国を・・・龍興を守りたいっていう気持ちははわかるでやがる。

でもそれならなおのこと、国に残って守るべきだったんじゃねぇでやがるか?」

 

夕霧がそう言うと、龍海はフッと笑って言う。

 

「夕霧、君は本当に真っ直ぐだね。

出会ってまだ間もないけど、君が自分の国や家族をどれだけ大切に思ってるかよくわかるよ。

・・・でもね?」

 

龍海は自分の顔の横に2本の指を立てた状態で顔の横に手を持ってくる。

 

「君の理想とは違って、この世は二つの選択肢で出来てる。

悪い選択肢と、最悪の選択肢だ。」

 

「・・・どういう意味でやがりますか。」

 

「俺があそこに留まれば、兵の士気も上がって、結花も最後まで戦い続けるだろう。

その結果、戦に負けたあと結花は確実に殺される。

・・・最悪だ。」

 

静かに聞いている夕霧の横で龍海は続ける。

 

「仮に戦に勝てたとしても、あのままじゃ美濃は確実に滅ぶ、これも最悪だ。」

 

「・・・だから最悪を回避して、悪い選択肢を選んだんでやがるか?」

 

「そういうことだよ。」

 

「・・・後悔は・・・してないんでやがるか? 」

 

龍海は微笑んでいう。

 

「後悔がないって言うなら嘘になる。

出来ればあそこに残って美濃や結花を守り続けたかった。

・・・でもね、俺は久遠なら美濃をいい方向に導いてくれるって信じてるんだよ。

周りの人間はうつけだって言うけど、あの子は本当はすごい子だって俺は信じてるからさ。」

 

そう語る龍海の目は、真っ直ぐに前を見据えていた。

 

その目をずっと見ていたいと、いつしか夕霧はそう思うようになっていた。

 




龍海の言っていた言葉の元ネタが分かった人は俺氏と友達。

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