戦国†恋姫~とある外史と無双の転生者~   作:鉄夜

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最初の頃とオリキャラの設定がだいぶ変わったので、1話のあとがきを削除しました。

いつか、飛騨のオリジナル要素も含めてまとめて紹介したいと思います。


第十話

飛騨は大きな傘を被り、清洲の街の中を歩いていた。

 

(さて、信長と話すにしてもまずは連絡手段を見つけないとな。)

 

そんな飛騨の前に野蛮そうな男が3人立ち塞がる。

 

「おい姉ちゃん、ここらじゃ見ねぇ顔だな。」

 

「俺たちと遊ばねぇかぁ?」

 

「なんなら町を案内してやるぜ?」

 

飛騨は男達を一瞥して言う。

 

「いや、結構だ。」

 

飛騨が踵を返して歩こうとすると。

 

「おいちょっと待てよ!」

 

男の一人が飛騨の肩を掴もうとした。

 

その瞬間飛騨が男を一本背負で投げ飛ばし倒れた男の腹を踏みつけ気絶させる。

 

「てめぇ!」

 

殴りかかってきた男の攻撃を横に避け、こめかみに鋭い後ろ回し蹴りを食らわす。

 

「くそ!」

 

最後の男が刀を抜いた時。

 

「グッ!?」

 

その喉元に、飛騨が刀の先を突きつけた。

 

「先を急いでいるんだ、邪魔をしないでもらおうか。」

 

男が恐怖で膝から崩れ落ちる。

 

すると、

 

「おい!なにやってんだ!」

 

背後から白い装束を着た男達が駆け寄ってきた。

 

「やべぇ、白獅子隊だ!」

 

「白獅子隊?」

 

襲ってきた男の言葉に首をかしげていると、

白獅子隊の兵士達が飛騨の目の前までくる。

 

「おい、何もんだあんた。」

 

「別に怪しいものじゃない。」

 

飛騨はなんとか場をしのごうとする、

 

「・・・そんな状態で言われてもなぁ。」

 

「・・・え?」

 

飛騨は改めて状況を整理する。

 

目の前には倒れている男と膝をついている男が3人。

 

自分は刀を抜いている。

 

この状況で怪しいのは・・・

 

(明らかに私じゃないかー!)

 

「まて!これは違うんだ」

 

飛騨は急いで刀を納め、弁解しようとする。

 

だが、

 

「助けてくれぇ!この女が急に襲ってきたんだ!」

 

「な!?」

 

男の発言で更に状況が悪くなった。

 

「何があったか知らねぇが、取り敢えず隊舎で話を聞かせてもらおうか。」

 

白獅子隊士が、連行するために飛騨に歩み寄る。

 

(まずい・・・まずいまずいまずい!

今この状況で捕まるわけには行かない!

どうする・・・どうすればいい!)

 

隊士が飛騨の肩に触れた。

 

(・・・もう、どうにでもなれ・・・)

 

「・・・すまん、許せ。」

 

「あ?なにガハッ!?」

 

飛騨の膝蹴りが、隊士の顎にクリーンヒットした。

 

(強行突破だ!)

 

膝蹴りを食らった隊士が地面に崩れ落ちると、

他の隊士が腰から木刀を抜く。

 

「てめぇ!ここが信長公のお膝下と知っての──!」

 

「知ったことかぁぁぁぁぁ!」

 

「グギャ!?」

 

兵士の顔面に、シャイニングウィザードがめり込む。

 

その後、背後から襲ってきた兵士の腹に蹴り。

 

サマーソルトで宙返りをしながら蹴り。

 

蹴り、蹴り、蹴り。

 

「おいおい、足癖悪すぎだろ。」

 

兵士の一人がそう言いながら背中に背負っていた槍のように長い木の棒を構える。

 

(これだ!)

 

「うおおおおお!」

 

こちらに向かってきた飛騨に兵士が突きを放つとひだはそれを避け、棒を上から踏みつける。

 

「な!?」

 

そのまま綱渡りのように棒を駆け上ると兵士の顔面を踏みつけ、背後に周り、そのまま逃走した。

 

「くそ!逃がすなぁ!」

 

白獅子隊士達が飛騨を追って走っていく。

 

#####

 

「どこ行きやがったあの女!」

 

「お前はあっちを探せ、俺はこっちだ!」

 

自分を探す兵士を飛騨は建物の影に隠れて見ていた。

 

(・・・くそ!どうしてこんなことに!

これでは思うように動けん。)

 

飛騨が様子を伺っていると、

 

「むぐっ!?」

 

背後から何者かが飛騨の口を抑え、路地裏へと引きずり込む。

 

「むーっ!むーっ!」

 

飛騨も抵抗するが、引きはがすことが出来ない。

 

「飛騨殿、落ち着いてください、私です。」

 

「むぐ?」

 

飛騨は声の主の顔を確認する。

 

「お前は・・・」

 

「お久しぶりです、飛騨殿。」

 

飛騨は嬉しそうに飛びつく。

 

「彩華!彩華じゃないか!

久しぶりだなぁ!元気だったか。」

 

「飛騨殿も壮健そうでなによりです。

足癖が悪いのは相変わらずのようですね」

 

彩華がそう言うと、飛騨は気まずそうに顔をひきつらせる。

 

「み・・・見られていたか・・・。」

 

「まさか強行突破するとは思いませんでした。

それで、なぜ清洲に?」

 

彩華が尋ねると、飛騨は真剣な顔付きになる。

 

「彩華、折り入って頼みがある。」

 

#####

 

清洲城の天守閣で、久遠は不安そうに地平線の先を見つめていた。

 

そこに疾風が現れる。

 

「殿、こんなところにいたのか。」

 

「疾風、何か用か?」

 

「ああ、街で見慣れないやつが騒動を起こしたらしくてな、一応報告をと思ってな。」

 

「うむ、苦労。」

 

疾風に返事をすると、久遠は再び外を見つめる。

 

その横に立ち、一緒に景色を眺めながら疾風がいう。

 

「心配か?剣丞の事。」

 

「な!?何を言っている!?//////」

 

「あはははは、わかり易いなぁ殿は。」

 

「ぐぬぅ、貴様ら姉妹で我をからかいよって!」

 

「悪ぃ悪ぃ。」

 

疾風は笑うと久遠を安心させるように言う。

 

「大丈夫だよ、姉貴が傍にいるんだから。

それにひよところも姉貴に鍛えられて前よりだいぶ強くなったしな。」

 

「・・・そうか。

お前が言うなら安心できるな。」

 

疾風は切なげに雲を見つめながらいう。

 

「いい男だよな、剣丞。

真っ直ぐな目をしててさ、弱いくせに根性があって、他人のために無茶してさ。

・・・自分の道をまっすぐ進んでる。」

 

言葉を漏らす疾風の横顔を久遠はオドロキの表情で見つめる。

 

「疾風、お前まさか剣丞のこと・・・。」

 

「その先は言いっこなしだぜ、殿。

あいつの嫁はアンタなんだから。」

 

「・・・お前はそれでいいのか?」

 

「いいんだよ、俺みたいなのは剣丞に相応しくないしな。

だから・・・好いた男の背中を守れる、それだけでいいんだよ、俺は。」

 

「疾風・・・。」

 

「それに俺は殿や姉貴みてぇな綺麗どころじゃねぇからな。

アイツに相手がいようがいなかろうが、結果は変わんねぇよ。」

 

「・・・疾風。」

 

「なんだ、殿。」

 

疾風が久遠の方に顔を向けると、

 

ビシッ!

 

久遠が疾風の額にデコピンを喰らわせた。

 

「いてぇ!な・・・何すんだよ殿!」

 

疾風が額を抑えながら涙目で久遠に訴える。

 

「お前の姉の代わりにやったまでだ。

そんなことだからお前はいつまで経っても白に勝てんのだ。」

 

「ね・・・姉ちゃんは関係ねぇだろ!」

 

「いいや、ある。

白が自分を低く見るような事を言ったことがあるか?」

 

「それは・・・。」

 

痛いところを突かれたのか、疾風は黙ってしまう。

 

「自分を卑下するような奴が強くなれるわけがなかろう。

真の強さを求めるなら、まず自分に対する理解を改めろ、愚か者。」

 

「うぅ・・・。」

 

久遠の説教が効いているのか疾風は小さく唸る。

 

「なんか殿・・・説教が姉ちゃんにそっくりだなぁ・・・。」

 

「丁度いい、お前とは一度ゆっくり話がしたいと思っていた。

そこに座れ、腹を割って話そう。」

 

「なんかすげぇ長い説教が始まる気がすんだけど!?」

久遠が疾風に詰め寄っていると、

 

「久遠様、疾風様、お取り込み中のところ申し訳ありません。

少々宜しいでしょうか。」

 

彩華が横から話しかけてきた。

 

「ほ・・・ほら殿、彩華がなにか用事があるみたいだぜ?」

 

「・・・まぁ、今日はこのくらいで勘弁してやろう。」

 

疾風はそっと胸をなでおろす。

 

「それで、彩華。

我らに何か用か?」

 

「正確には久遠様に用事があるのですが・・・そうですね、疾風様の耳にも入れておいた方がいいでしょう。」

 

そういった彩華に、2人は真剣な顔付きになる。

 

「その様子だと、穏やかじゃねぇ事みてぇだな。」

 

「・・・して、なにがあった?」

 

久遠が聞くと、彩華は静かに口を開いた。

 

#####

 

白狼隊隊舎。

 

その中の一室で飛騨が正座をして彩華の帰りを待っていた。

 

「失礼致します。」

 

彩華が襖を開けて中に入ってきた。

 

「久遠様はお会いになるということです。

夜まで此処で待っているようにと。」

 

「・・・そうか。」

 

「それと・・・飛騨様。」

 

「なんだ?」

 

「刀をお預かりします。」

 

「・・・そうか。」

 

飛騨は抵抗することなく刀を腰から抜き、彩華に差し出した。

 

「ご理解が早くて助かります。」

 

「敵国の将に会うというのだから、当然の配慮だろ。

・・・世話をかけたな、彩華。」

 

「いえ、私は恩を返したまでですから。」

 

「恩?」

 

彩華は、飛騨にニッコリと微笑みかける。

 

「今私がこうして生きているのは、飛騨殿と龍海様のお陰ですから。」

 

「・・・そうか。」

 

最後に彩華は、失礼しますと言って部屋から出て言った。

 

「・・・立派になったものだな。」

 

飛騨は1人、ポツリと呟いた。

 

#####

 

夜。

 

飛騨が待機していると、部屋の襖が静かに開く。

 

そこには神妙な顔つきの久遠、その後ろに疾風が立っていた。

 

「久しいな、飛騨。」

 

「・・・お久しぶりでございます、久遠様。

そちらの方は?」

 

「白獅子隊隊長の颯馬疾風だ、

流石に敵国の将と殿を二人っきりにする訳にはいかねぇからな。」

 

「左様でございますか。」

 

久遠と疾風は飛騨の目の前に座る。

 

「我が屋敷に招こうとも思ったのだが、

あそこには結菜が居る、兄の敵を目の前にすれば、何をしでかすかわかったものではない。」

 

「・・・」

 

「無論、我もその事について思うところがない訳では無い。

・・・だから。」

 

久遠は持っていた扇子を飛騨に突きつける。

 

「あの日、何があったのか、包み隠さずすべて話せ・・・要件はそれから聞こう。」

 

その気迫は、いくら嘘を並び立てようが意味の無いことを分からせるには十分だった。

 

「・・・分かりました。

話しましょう、全てを。」

 

#####

 

飛騨がこと詳細を話すと、久遠は腕を組んでしばらく黙り込む。

 

そして、大きく溜息を吐いた。

 

「いかにも博打好きな兄上の立てそうな策だな。」

 

「納得すんのかよ、殿。」

 

「ああ、こんな無茶で無謀で運任せな策、

思いつくのは兄上くらいなものだ。

・・・それで飛騨、お前の要件とはなんだ。」

 

飛騨は、真剣な顔付きで言う。

 

「私達は、近々稲葉山城を龍興様に返還いたします。

その際、私と詩乃・・・竹中半兵衛は追っ手に追われる事になるでしょう。

武の心得がある私と違い、半兵衛は軍師。

体力には期待できません、運よく逃げおおせたとしても、いずれ捕えられてしまうでしょう。

・・・そこで、どうか久遠様には、半兵衛を救ってやってほしいのでございます。」

 

飛騨の言葉に久遠はしばしポカンとする。

 

「・・・飛騨、お前はその為だけに殺されてしまうかもしれないのに敵地に足を運んだというのか?」

 

「・・・はい。」

 

「私はてっきり、龍興の救出に手を貸せとでも言うのかと思ったぞ。」

 

「久遠様達のお手を煩わせる事を、龍海も望んではおりません。

それに・・・この命一つで友が救えたなら、

私は本望です。」

 

「・・・デアルカ」

 

久遠は一瞬フッと笑うと、すぐに顔を引き締める。

 

「あいわかった、竹中半兵衛は織田が責任を持って面倒を見よう。」

 

「ありがとうございます!」

 

飛騨は深々と頭を下げる。

 

「それと・・・龍興救出の件だが。」

 

その言葉を聞いて、飛騨は頭を下げたまま顔を強ばらせた。

 

「・・・こちらとしては、干渉するつもりは無い。」

 

「・・・は?」

 

それ故に、この言葉には間抜けな声を出して下げていた頭を上げてしまった。

 

「兄上には我も恩がある。

それに・・・国のため、己が大義のために死ぬ奴は数多いが、

友のために死のうとする馬鹿はそうおらん。

・・・そして私は。」

 

今度ははっきりと分かるようにほほ笑みかけると、久遠は言う。

 

「そんな馬鹿が嫌いではない。」

 

「久遠様・・・ありがとうございます!」

 

飛騨は再び頭を下げる。

 

「姉貴にバレたら小言言われそうだな、殿。」

 

「バレないようにするから大丈夫だ。」

 

疾風にそう言うと、久遠は飛騨に向き直る。

 

「だが約束できるのは、直接的な下知は下さんということだけだ。

ウチの兵と遭遇した場合はしらんぞ?」

 

「それだけで十分でございます。」

 

「そうか。

・・・最後に聞かせよ、なぜ兄上の策にのった?

その策が無謀な事くらい、お前ならわかっていただろう?」

 

「・・・また馬鹿だと笑われるかも知れませんが。」

 

飛騨は顔を上げ、久遠に微笑みかける。

 

「私はどうやら、惚れた男のためならなんでも出来てしまうようなのです。」

 

「・・・デアルカ。」

 

久遠は静かに立ち上がる。

 

「我はもう帰る、疾風からも話があるらしい。

・・・それではな。」

 

飛騨は部屋から出ていった久遠を、頭を下げて見送った。

 

「・・・それで疾風殿、話とは?」

 

「その前にかたっくるしいのはやめにしようや、飛騨。」

 

「・・・わかった、颯馬。」

 

「疾風でいいよ、そっちの方が呼ばれ慣れてるからな。

でだ、話を聞いちまった以上、白獅子隊もその件には干渉しないってのが一つ。」

 

「ああ、助かる。

色々面倒をかけるな。」

 

「気にすんな、袖擦り合った仲だしな。

で、もう一つだけど。」

 

「・・・?」

 

飛騨が首をかしげていると疾風は要件を告げる。

 

「朝、ウチのもんと何かあったか?」

 

「すいませんでしたああああああ!」

 

飛騨は綺麗な土下座を疾風に披露した。

 

「ウチのもんが褒めてたぞ、あんなにいい蹴り久々にくらったって。」

 

「本当に済まない!捕まるわけにはいかなかったし!

あそこはああするしか無かったんだ!

本当に済まない!」

 

飛騨が必死に謝ると、疾風は笑って言う。

 

「安心しろ、裏はもう取った。

襲われそうになったのはあんたの方なんだろ?

その件について咎めるつもりはねぇよ。」

 

「そ・・・そうか。」

 

「それでだ、あんた今夜はどうすんだ?」

 

「彩華が泊めてくれるそうだ。

それで早朝には清洲を出るつもりだ。」

 

「そうか・・・なぁ、飛騨。」

 

「ん?なんだ?」

 

疾風は少し悩んだが、思い切って聞いてみることにした。

 

「自分より身分が上の相手に告白するって・・・怖くなかったのか?」

 

疾風の様子に全てを察したように飛騨は言う。

 

「お前の好いている男は身分で相手を決めるような奴なのか?」

 

「そうじゃない!・・・そうじゃないけど・・・」

 

「・・・私も最初は怖かったさ。

断られたらどうしよう、私なんかがあいつに相応しいわけが無い、なんて思ったりしてな。

だから身分の差を逃げ道にしたりした。

・・・今のお前と同じだ、疾風。」

 

「・・・」

 

真剣な顔で話を聞いている疾風に、飛騨は続ける。

 

「だがある日開き直ったんだ、

『気持ちを伝えるくらいいいじゃないか、やってやる!』ってな。

まぁそれからもヘタレてなかなか言い出せなかったが。」

 

飛騨は疾風の方に手を置く。

 

「疾風、私達は武士だ。

いつ死ぬかわからん。

だから後悔のないように、伝えたいことは伝えておけ。

私が言えるのはそれだけだ。」

 

「・・・分かった。」

 

疾風は立ち上がる。

 

「ありがとう、飛騨。

少し気持ちが楽になったよ。」

 

「ああ、運が良ければまた会おう。

・・・がんばれよ、疾風。」

 

「ああ、そっちもな。」

 

飛騨は去っていく疾風を見送った。

 

#####

 

翌日、早朝。

 

飛騨が白狼隊の隊舎を出ようとすると、彩華が玄関に立っていた。

 

「彩華、どうかしたか?」

 

「どうかしたかではありません、

刀をもって帰らぬおつもりですか?」

 

「あ、すまん。

色々ありすぎて忘れていた。」

 

「まったく、たまに抜けているのは相変わらずですね。」

 

「う・・・うるさい、放っておけ!」

 

「ふふふ・・・飛騨殿、これを。」

 

彩華は飛騨が持ってきた物とは別の刀を差し出す。

 

「これは・・・。」

 

「やっとこの刀をあなたに返すことができます。」

 

「いいのか?」

 

「私には別の刀がありますし、

この子もあなたの腰に戻りたがっているはずです。」

 

「・・・そうか。」

 

飛騨は刀を受け取ると鞘から抜いた。

 

刀の側面には天に登る金色の龍の模様が彫られていた。

 

飛騨は刀の峰の部分を自らの額に当てがうと瞳を閉じる。

 

「久しいな、飛龍(ひりゅう)

長い間待たせて済まなかった。

・・・また一緒に戦ってくれ、相棒。」

 

飛騨はそう語りかけると、愛刀を腰に収めた。

 

数年ぶりに懐かしい重みを腰に感じながら、

優しく微笑む。

 

「刃こぼれなどは、鍛冶屋に頼んで直していただにました。

・・・存分に戦えるかと。」

 

「・・・ああ、ありがとう、彩華。

色々世話になった。」

 

「滅相もございません。

ご武運を、飛騨殿。」

 

「ああ、行ってくる。」

 

飛騨は力強くそう言うと、扉を開けて出て行った。

 

#####

 

馬を走らせ、飛騨は急いで稲葉山城に戻ってきた。

 

「詩乃、戻ったぞ。」

 

「お帰りなさいませ、ご無事で何よりです飛騨殿。」

 

「ああ・・・って何かあったのか?

頬が赤いぞ?」

 

「じ・・・実は・・・。」

 

詩乃は飛騨の不在中にあった事を話した。

 

「会ったのか、尾張の天人と。

それで珍しく年相応に照れているという訳か。」

 

「もう!からかわないで下さい!

・・・それで、そちらの首尾の方はいかがですか?。」

 

「上々だ、しっかり約束を取り付けてきた。」

 

「そうですか・・・ではいよいよ。」

 

「・・・ああ。」

 

二人はお互いに力強く頷きあった。


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