リリカル異世界決闘録   作:鹿島 雄太郎

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turn4「布教」

「説明は要るよな?ドクター」

 

そう言ってジェイルの方を向くとジェイルは

 

「是非聞かせてほしい。」

 

と答えた。

 

「じゃあ、基本的な部分を説明しよう。まずはデッキだ。これがなければ始まらない。上限は60枚、下限は40枚だ。」

 

そう言ってデッキをジェイル達に見せた。

 

「次にエクストラデッキ。これは0~15枚で、ここにはシンクロ・融合・エクシーズモンスターが裏側で入る。」

 

デュエルディスクの左端から何もない空間が現れる。

 

「見ての通り、俺にはそれがないがな。」

 

「次にモンスターゾーン、これは自分フィールドに5個ある。魔法罠ゾーンも同様に5個、フィールド魔法ゾーンは1個。ペンデュラムスケールは左右に1づつ、ここまではいいか?」

 

そう言って一度切る。

そして視線をジェイルに向けると

 

「大丈夫だ、続けてくれ。」

 

ジェイルはそう言った。

 

「モンスターは通常、1~12のレベルを持っている。」

 

まぁ、レベル11以上など早々ないがな。

とだけ呟くと説明を続けた。

 

「レベル1~4はリリース無しで召喚できるが、レベル5以上はリリース素材を必要とする。レベル5、レベル6は1体。レベル7以上は2体だ。」

「レベルは固定なのか…?」

 

桃髪の少女が顎に手を当てて疑問を投げ掛ける。

 

「あぁ、レベルを操作する効果を受けなければレベルは変わらない。」

「じゃあレベル4以下の召喚にはリリースが絶対いらないで必ず出せるのか…」

「何かテキストに召喚に対する制約がないかぎりは出せる。」

 

チンクはカードを1枚1枚ずらしてその中からあるカードを抜き出すとそれを見せて疑問を投げ掛けた。

 

「ならこれも出せるのか?」

「これはいいときに来たな…。じゃあ手札から以外の召喚方法についても説明しよう。」

 

というとデッキを取り替えて再び構えた。

 

「どうせなら実演っぽくな。」

 

デュエルディスクを起動し、デッキから5枚を引いた。

 

「俺は手札からゴブリンドバーグを召喚!」

 

そう宣言してデュエルディスクにカードを置くと、刃の後ろから飛行機に乗ったゴブリンが飛んできた。

刃は顔の向きをチンク達に向け説明する。

 

「通常召喚は普通、1ターンに一度しか出来ない。手札からモンスターを伏せるのも通常召喚にカウントされる。」

「じゃあもうこのターンは通常召喚を行えないということか…」

「ご名答、えっと…」

「ウーノ」

「ウーノか、覚えたぞ。…んで、話を戻そうか。このターン通常召喚はもう行えないが特殊召喚は出来るぞ。」

 

そういうと、モンスターのほうへ顔を戻した。

 

「ゴブリンドバーグの効果発動!ゴブリンドバーグが召喚に成功した時、俺は手札からレベル4以下のモンスターを特殊召喚できる!手札から聖鳥クレインを特殊召喚!その後、ゴブリンドバーグは守備表示となる!」

 

そう言ってデュエルディスクにカードを置くと、ゴブリンドバーグの飛行機に付いていたコンテナが割れ、中から鶴が現れる。

 

「聖鳥クレインが特殊召喚されたとき、デッキからカードを1枚ドローする!」

 

鶴が高らかに鳴くと、デッキの一番上のカードがドローを促すように出っ張る。

それを確認すると、その1枚を躊躇いなく引く。

 

「ん?時できると時するって何が違うんだ?あ、アタシはノーヴェだ。」

「いい質問だな、ノーヴェ。時できるは割り込みのない時に発動が選択できる任意効果だ。破壊された時に発動する効果があったとしても、間に別の処理があったら発動出来ないんだ。これを【タイミングを逃す】と言う。」

「となると時するも同じ感じか…?」

「いや、時するは少し違うぞ。これは割り込みがあったとしても発動する強制効果だ。」

「強制…じゃあ例え発動したくなくてもやらなきゃいけないのか…」

「鋭いな。効果が無効になってないかぎり発動しなきゃいけないし効果を使わなきゃいけない。」

 

さて、と前置きを入れると続けた。

 

「俺はゴブリンドバーグと聖鳥クレインでオーバーレイ!」

 

そう言って右手を大きく掲げると2体のモンスターが球状の物となって登り、床にできたブラックホールのような物に吸い込まれる。

 

「2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築…エクシーズ召喚!」

 

その言葉と共にブラックホールのような物から光が溢れだす。

 

「堅牢なる追撃の竜、今舞い降りて僕となれ!ランク4!蹴破れ、カチコチドラゴン!」

 

その口上と共に、身体に鉱石を蓄えた竜─カチコチドラゴンが現れる。

カチコチドラゴンの周りには、2つの球状の物体(オーバーレイユニット)が一定の軌道で回っている。

 

 

「これがエクシーズ召喚。同じレベルのモンスター同士を素材として行える召喚方法だ。」

「さっき言ったランクとはなんだ?レベルではないのか?」

「そう、エクシーズモンスターはレベルではなくランクを持っている。だが、レベル0と言うわけではない。」

「なるほど…レベルが同じモンスターを×ことで行えるのがエクシーズ召喚…」

 

ボディースーツの上から制服を着た女性が納得したように頷く。

 

「周りのあれは何ッスか?」

「周りの?あぁ、オーバーレイユニットか。」

 

少し息を整えるとまた説明する。

 

「さっきゴブリンドバーグとクレインが素材になったよな?あれが今のあいつらだ。オーバーレイユニットとなっているモンスターはフィールド上のモンスターとして扱わない。さらにエクシーズモンスターはオーバーレイユニットを使うことで効果を発動できる。」

「そんなことが…」

 

刃は手札をチラリと見るとまた説明し始める。

 

「次はペンデュラム召喚だ。けどその前に…」

 

そう言って刃は緑色のカードをデュエルディスクに差し込む。

 

「魔法カード、増援を発動!デッキからレベル4以下の戦士族モンスターを手札に加える!その効果でデッキからペンデュラムモンスター、閃光の騎士を手札に加える!」

「ペンデュラムモンスターとは魔法カードとモンスターカードの両方の面を持っているのか?」

「当たりだ。」

 

一旦サーチしたカードを手札に加え、もう1枚と共に前にかざした。

 

「俺はスケール7の閃光の騎士と、スケール2のフーコーの魔砲石で、ペンデュラムスケールをセッティング!これによりレベル6~3のモンスターが同時にペンデュラム召喚可能!」

「同時に!?」

 

青髪の少女─セインは声をあげて驚く。

 

「ペンデュラム召喚は1ターンに一度しか出来ない代わりに、スケールの間のモンスターなら手札から可能かぎり特殊召喚できる。」

「特殊召喚?ペンデュラム召喚じゃなかったのか?」

 

ノーヴェが疑念を刃に投げ掛けるとジェイルが答えた。

 

「"ペンデュラム召喚やエクシーズ召喚は特殊召喚のうちに入るから"ではないのか?」

「そう言うことだ。ついでに言うと、"捨てる"は"墓地に送る"のうちに入る。」

 

そして手札の2枚を掲げ、

 

「ペンデュラム召喚!レベル4、閃光の騎士!レベル4、チューナーモンスター!ゲリラカイト!」

 

スケールの間振り子が大きく揺れ、やがて振り子が円を描き出す。

その円からやがて2つの光球が降り立つ。

その光球は姿を変えた。

 

「ヒヒヒヒヒッ!」

 

1つは爆弾を抱えた凧に、

 

「フンッ!」

 

1つは光輝く騎士になった。

 

「これが…ペンデュラム召喚…」

「チューナー…モンスター…?」

 

その反応を横目で見た刃は視線をモンスターに戻して続ける。

 

「レベル4、閃光のの騎士に、レベル4、ゲリラカイトをチューニング!」

 

ゲリラカイトが光を放つと、緑色の4つのわっかとなり、その中を閃光の騎士が通り──

 

「シンクロ召喚!」

 

眩い光柱が溢れだす。

 

「仇打つ拳で天上天下を覆せ!レベル8、ギガンティック・ファイター!」

 

白い身体を持った巨人の戦士─ギガンティックファイターが地面を割って現れた。

 

「これがシンクロ召喚。チューナーとそれ以外のモンスター1体以上を素材としてできる召喚方法だ。」

「かっこいい…」

「あれ?閃光の騎士ってペンデュラムスケールにいたんじゃ…?」

「デッキに入れていい同名カードは3枚まで、後は分かるな?」

「なるほど…今素材になったのは2枚目の閃光の騎士か…」

「そう言うことだ。ペンデュラムモンスターがフィールドから墓地へ送られる場合、代わりにエクストラデッキに表側で送られる。」

 

チラリとジェイル側を見ると数人が頭を抱えている。

 

「何かいい手は無いものか…」

 

そう言ってディスクを停止させるとサブバックを漁りはじめた。

予備のデュエルディスクを2つほど後ろに投げ、あるものを取り出す。

 

「…ドクター。」

「なんだ?」

「機械を使ってでもいい、教えるのは得意か?」

「まぁ、出来るが?」

「…これを元にしてあいつらの頭に叩き込めるか?」

 

一冊の本をジェイルに見せると、ジェイルは頷いた。

 

「…なんで最初から出さなかったンすか?」

「あると思ってなかんでしょ。」

 

眼鏡をかけたボディースーツの女性がクスクス笑いながら答えた。

 

「そうだ、そこにあるデュエルディスクは使っていいぞ。なんなら複製してもいい。」

「いいのかい?」

「あぁ。俺には秘密がどうのこうの何てものは…な。」

 

結局のところ、その日は解散になった。




タイトルは初期設定では「講義」のつもりでしたが投稿段階で変更しました。

布教をしてから数週間、デュエルディスクの試作3号機が完成する。
そして少女たちはデッキと言う名の武器庫から、戦士を送り出して戦う。
少女たちはその戦いに、何を感じるのか…

次回「試闘」

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