「頼む!君の力があれば私は…!」
「…お前の意志は分かった。」
「なら!」
ジェイルは顔を上げるがそれを─
「だが条件がある。」
刃は遮るようにいった。
「…言ってくれ。条件はなんだ?」
「簡単だ。衣食住と作戦時以外の安全の保証、さらにプライベートの尊重。できるか?出来るなら力を貸そう。」
ジェイルは少し笑みを浮かべて頷いた。
「あぁ、保証するさ。夢を叶えるためならいくらでも約束しよう。」
刃は手をさしのべ、
「そうか…なら、よろしく頼む。」
と、いつもの無表情で言った。
「よろしく頼む。」
といい返し、ジェイルは手を取り握手をした。
そのときだった。
刃のショルダーバッグから光が溢れだした。
「…!?」
「なんだ!?」
刃はショルダーバッグから光を発していた物体を取り出した。
「デッキが…光って…!?」
ひとりでにデッキのカードが周囲に飛び回った。
マーダー・サーカスピエロが、
ダーク・グレファーが、
闇魔界の戦士ダークソードが、
異次元の妖精が、
ジェイルの周囲を飛び回り…
「カードが…書き変わった…!?」
「これは…」
やがてそのカードがジェイルの目の前で止まった。
そのカードの束─デッキは、淡い光を放って浮いていた。
「カードが意志を持つというのは聞いていたが…まさかこれほどとは…」
そう感嘆としていると、ドアが開いて数人が入ってきた。
「ドクター!今の光は…!?」
「おまえは…うわっ!」
それと同時にカードがよりいっそう光を放つと入ってきた
そのデッキも同様に少女達の前で淡い光を放って浮かんでいた。
「これは…?」
チンクが目の前のデッキを手に取ると淡い光が消えた。
「カードが選んだ
「デュエリスト?」
蒼い髪の少女はそう聞き返すと、刃はそれに応えた。
「あぁ、
「でもたかがカードゲームッスよね。何でそんな大層な言い方なんすか?」
赤髪の少女が手を頭の後ろで組ながら疑問を投げ掛けた。
「…たかがカードゲームと侮るなよ?赤髪の…」
「ウィンディっす。」
「ウィンディ。これは"たかがカードゲーム"で片付けられるものじゃない。実際、"たかがカードゲーム"で死んだ人間だって、表舞台から姿を消した人間だっている。」
「…そうなのか?」
ジェイルが口を開いて聞いた。
「…あぁ。」
それに対して刃は、顔に影を落として一言だけ答えた。
──突然変わった刃の雰囲気に、侮りの言葉は出なかった。
「…聞いてはいけないことを聞いてしまったようだな…」
「いや、いいんだ。それに、過度な悪用さえしなければいたって安全だ。」
「…そういえば火上、お前が腕につけていた機械はなんだったんだ?」
チンクが話題を変えようと話を振る。
「…刃でいい。」
「なら刃、あれはなんだ?」
「あれはデュエルディスクという機械だ。」
「デュエルディスク?」
「あぁ、そうだ。名前から察する事ができるが、それを使えばカードのモンスターが質量を持って実体化する。さらにデュエルモードなら決められたルールの上でデュエルする事ができる。」
「質量を持って実体化…ッスか??」
「そういえばさっきのあのモンスターも私のナイフを防いでいたな…」
「なるほど…。っと、皆は見たことなかったな。」
ジェイルは刃に目配せすると少し後ろに下がって鳩尾の少しまえ辺りに腕を構えた。
するとデュエルディスクがガシャガシャという音と共に変形し、くの字に折れた紫の板らしきものが現れた。
そしてデュエルディスクの右端から右手でカードを5枚抜き取ると、その5枚を左手に持たせた。
ジェイルが頷くのを確認した刃は、5枚のカードから1枚を抜き取り、モンスターがかかれている方を前に向けた。
「俺は手札から、イグナイト・ドラグノフを召喚!」
そう言ってディスクディスクにカードを表向きで置く。
すると床から炎が吹き出し、その中からドラグノフが飛び出す。
「ハァッ!」
ドラグノフが構えた状態で刃の前にとどまった。
「とまぁこんな感じだ。」
「もっと強いのがいるのだろう?」
「まぁそうなんだが…今はルール的に出せないわな。」
「ルール?」
「あぁ、デュエルのルールだ。」
彼は信用した味方にデュエルを教授する
そう、ついに彼女たちは力を手にする
その力は救いか、それとも…
次回「布教」