暗殺なんて面倒な教室   作:東風吹かば

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はじめましての方も、そうでない方もこんばんは。

東風吹かばと申します。どうぞよろしくお願い致します。


一学期の時間
ムーンクラッシャーと序盤から現れたラスボス


 月というものは確かに三日月も美しい。が、私としては満月の方が好きである。故に、言わせてもらおう。

 

 「月が破壊されたってどういうこっちゃ!?」

 

『お前らの担任が()っちゃったンダロぉガ』

 

 「いやそれはよく知っとるけど、そういう問題じゃないし! わかって言ってるだろマキナ……」

 

 今でも思い出せる、あの日。

 

 エンドのE組、そのスタート(正確には三年生の、か)を切ったのは衝撃的な話だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そもそもの始まりは、雪村先生が退職されたということからだった。

 

 

 

 

 

 

 直接聞いたわけではない。ただ、マキナが言ってたのだから事実だろう。

 

 雪村先生は何か暗い事情を抱えていたと思う。生徒(私達)の前では明るく振舞っていたが、影のある美人な人だった。

 

 さて、では新しい担任はどんな奴なのかとワクワク想像しながら座っているとガラリとドアが開き……出てきたのは、黄色い宇宙人的なナンカだった。

 

 「初めまして。私が月を()った犯人です。来年には地球も爆る予定です。

 君たちの担任になったのでどうぞよろしく」

 

 ロボットか?

 

 初めに思ったのはそんな言葉だった。まあ身近すぎる身近に人工知能(マキナ)がいるから仕方ないことだろう。

 

 「マキナ、あれ、ロボ?」

 

 いつも通り超小声で尋ねれば、素早くヘッドホンから声が返ってきた。

 

 流石は腐っても世界一の人工知能。

 

『イヤ違う。スキャンしてみたが……オレにもわかんねぇ様な造りになってンが、元は人間だナ、ありゃあ』

 

 あれの元が人間? いかにも地球を侵略しに来た金星人って風貌で!? 

 

 いや、別に火星人でもいいが。なんで金星にしたんだか。やっぱあの真っ黄色から連想しちゃったのかな。

 

 

 「防衛省の烏間というものだ。諸君には唐突過ぎる話だと思うが、申しわけない。

 ひとまず、ここからの話は国家機密だと分かって欲しい。さて単刀直入に言おう。

 

 この怪物を君たちに殺してほしい!」

 

 烏間さんとやらには申し訳ないが、私はいきなりやってきた役人の言葉など信用できない。

 

 「マキナ。調べて」

 

『言われなくてもモウやってる。ちょっと待テ』

 

 本当に少ししか待ってないのに眼鏡型ディスプレイには次々と資料が映し出される。

 

『簡潔に言やぁ、ホントの情報らしいナ。殺せば賞金百億円。各国首脳が狙うお尋ね者。最高速度はマッハ20。来年の3月には地球をも爆破する、らしいぜぃ』

 

 チラリと金星人(仮称)を見る。

 

 あれの元が人間なら、何か違法な人体実験の元生み出されたとしか考えられないな。

 

 「人体実験の末路としか思えないけど……どんな実験やったかとかデータある?」

 

『流石にブロックが硬ぇんだヨ。まあオレは世界最高の人工知能だしぃ、こンくらい出来ちゃうンだけどなぁ』

 

 「はいはいマキナすごいスゴイ。で?」

 

『おぉ、出た出タ。ンー、反物質の体内生成かぁ。ア、これ以上はお子様の閲覧禁止ダ』

 

 パッと閉じられたウィンドウの中で、柳沢誇太郎というおっさんだけなんとか見れたが、ただの性格悪そうなおっさんだった。

 

 こんな情報要らない。ほら何か暗い過去とか、叶わなかった悲恋とか絶対あるはずだし。気になる。

 

 「えー、見せてよ!」

 

『モウチョイ大人になったらナ』

 

 「マキナの方が私より6歳も年下でしょうが」

 

『開発期間入れればオレの方が年上ダロ』

 

 本当に口ばっか達者だ、この人工知能は。

 

 「マキナのばーか。今度母さんの職場(研究所)行って本体の秘密ファイル見てやる! エロ画像とか入ってんでしょ、どーせ」

 

『お前ごときの(スキル)でハッキングできねぇヨ。まあせいぜいやってみろヤ』

 

 前にマキナの本体をいじってたらロックがかかってるファイルを発見したのだ。きっとエロ画像とかエロ動画が入ってるに違いない。

 

 絶対にロック解除してやるんだから! そしてぎゃふんと言わせるんだもんね。

 

 

 

 「──────さん、富森さん!」

 

 「あ、ごめんね奥田さん。ちょっとぼーっとしてたや」

 

 口を動かさずに声を出す練習はもう嫌なほどしたから大丈夫とは思うけど、奥田さんに聞こえてなかったよね。一応マキナは国家機密らしいし、何より不思議ちゃんとは思われたくないんだけどなぁ。

 

 ま、大丈夫か。さて、前から何か回ってきたらしいけど。

 

 銃とナイフ? 玩具っぽいけど、物騒だなぁ。

 

 「これであの金星人をホントに殺せるのかな?」

 

 「ど、どうでしょう……で、でも私は運動が苦手なので、あまりお役に立てなさそうです」

 

 「私も運動は苦手だよ〜。一緒だね」

 

 というか金星人で通じた。やっぱ金星人っぽいよね、あの先生は。

 

 にっこり笑うと奥田さんもはにかみつつも笑って返してくれた。かわええのう。

 

 

 さて、金星人とか暗殺とかは置いといてゆきちゃんと帰ろう! もう今日は疲れたんだ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねえマキナ、母さんや父さんにこのこと言っちゃダメだよね」

 

『国家機密ダロ? 黙っとくのが安全ダ』

 

「でもマキナは知っちゃってるけど……」

 

『オレは問題ないサ。それより親に何か聞かれてもちゃんと黙ってろヨ?』

 

「はーい(ちぇ、つまんねーの)」

 

『(こいつ、つまんねーとか思ってるんだろうナ……いやまあ日本政府と敵対しようとオレは構わねぇけどヨ)』

 

 

 




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