ハイスクールD×D ~それは現か幻か~   作:DDX

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最近どうも難産だ・・・・・

それはともかくとして。今回から朧やレイナーレの事情をイッセーたちが知るお話となります

長くなりそうなので何話かに分けるつもりです

それでは本編どうぞ



第62話

コカビエルとの激闘から数日経ち、俺はレイナーレを伴ってオカ研の部室に来ていた。イッセーやリアス達にもろもろの事情を説明するためにだ。数日待ったのは、あの事件の事後処理が色々とごたついていたからだ

 

部室の中にはオカ研のメンバーと、なぜかソーナとクァルタもいた。ソーナはまだわかるが、なぜクァルタがここに?

 

「すみませんリアス部長。ソーナ会長はまだいいとして、なぜクァルタがここに?先のコカビエルとの戦闘で共闘したとはいえ彼女は教会の人間。いわば部外者ですよね?」

 

「彼女はもう教会の人間ではないわ。私の二人目の騎士(ナイト)として悪魔に転生しているの」

 

「教会の戦士が悪魔に転生?」

 

「神がいないと知って破れかぶれになってね。悪魔に転生したんだ」

 

クァルタのこの発言に、俺はあきれ果てた。そりゃショックだったていうのはわかるが、いくらなんでも短絡的すぎるだろう。これまでと生き方がまったく変わってしまうんだからな。まあ、選択したのはクァルタ自身。本人がそれでいいというなら構いやしないが。

 

「それよりも、本題に入りましょう朧、そしてレイナーレ。あなたたちの事情、色々と聞かせてもらうわよ?」

 

リアスがそう告げてきた瞬間、皆の表情が険しくなった。表情から読み取れる感情は怒りや悲しみ、疑惑といった負の感情だ。まあ、当然だろうな。なにせ、実質俺は皆のことを騙していたようなものなのだから。少しでもその負の感情を取り払うためにも、きっちり話はしておかなければならないのだが・・・・・その前に言っておかなければならないことがある。

 

「リアス部長、話をする前に一つだけ言っておきます」

 

「何かしら?」

 

「俺は皆に対して情を抱いています。好きか嫌いかでいえば好きだし、何よりこのオカ研で過ごす日々を楽しいと感じていました。だから・・・・・どうか何を聞いてもレイナーレに危害を加えないと約束してください。俺は皆を殺したくないんです」

 

リアスの目を真正面から見据え、レイナーレを抱き寄せながら俺は言う。リアスたちの表情は先程より険しくなっている。木場やクァルタに至っては剣を出して構えているほどだ。まあ、脅しともとれることを言っているので仕方がないとは思うが。

 

だが、脅しと取られようともこれは行っておかなければならないことだ。これは脅しであると同時に警告でもあるのだから。

 

さて、リアスはどう返すか・・・・

 

「それはこれから聞く話の内容次第ね。私の眷属でも悪魔でもないとはいえ、あなただって私・・・・いえ、私たちにとっては大切な仲間よ。好んで敵対したいだなんて思わないわ」

 

どうやらこの期に及んでもリアスたちは俺のことを仲間だと思っているようだ。まあ、さっきの負の感情は俺を仲間だと思ってくからこそ生じたものなのだからそれはわかっているのだけれど。

 

「けれど、あなたの話の内容次第では朧と、そしてレイナーレと敵対する道を選ばざるを得なくなるわ。私にとって守るべきなのは私の可愛い眷属や仲間である悪魔たちなのだから。もしも朧とレイナーレが私たちの害となる存在であるというなら、私はあなたたちを滅ぼすわ」

 

リアスからの返答はリアスなりの覚悟と、そして誠意と警告が込められたものであった。下手に俺の言うことを素直に承諾されるより、よほど信用できる。

 

「お心遣い感謝しますリアス部長。その気遣いに報いるためにも、これから話す内容に嘘偽りは一切ないことを誓います。さて、それじゃあ何から話したものか・・・・」

 

「何からだなんて決まってるじゃない。どうして私が生きていて、そして朧と一緒にいるのか・・・・・そこから話すのが妥当なところでしょ?二人ほどそれを気にしているひとがいるようだし」

 

レイナーレは自身の方へ視線を向けてくるイッセーとアーシアを見ながら言う。まああの二人はレイナーレが原因で悪魔になってしまったわけだし、レイナーレのことから聞きたいと思うのは当然のことか。

 

「朧・・・・・どうしてレイナーレが生きているんだ?」

 

イッセーは拳を強く握り締めながら、俺に訪ねてきた。

 

「単純なことだよ。あの日の夜、レイナーレは死んでいなかった。だから生きている。それだけだ」

 

『あら?嘘偽りはないと誓ったくせに早速嘘をつくのね』

 

仕方がないだろう。ここで嘘を付かなければ俺の禁手(バランス・ブレイカー)について話さないといけなくなる。敵対する可能性が皆無で無い以上、あの禁手のことは話すべきではない。

 

「あの時、俺はレイナーレに幻術をかけて脳を支配した。自分は死んでいると強く錯覚させることでいわゆる仮死状態にしたんだ。アーシアから奪った神器が出てきたのも、仮死状態にしたおかげで・・・・」

 

「そんなこと聞いてるんじゃない!」

 

イッセーは左手で俺の胸ぐらを掴みかかってきた。

 

「レイナーレのせいでアーシアは死んだんだぞ!コイツはアーシアを殺した・・・・・なのにどうして!どうしてレイナーレは生きてるんだよ!どうして生かしてるんだよ!答えろ朧!」

 

激情のままに叫ぶイッセー。その目は俺を射殺すかのように鋭い。イッセーにこんなふうに見られる日が来ようとはな。

 

「・・・・好きだからだ」

 

「え?」

 

「レイナーレのことが好きだったから、愛してしまったから俺はレイナーレを生かした。俺の幸せにはレイナーレの存在は不可欠なんだ」

 

「アーシアを殺したのにか?」

 

「ああ」

 

「・・・・・私を殺したのにか?」

 

「・・・・・すまないイッセー。今の俺にとってはお前よりもレイナーレの方が大切なんだ。本当に・・・・・すまない」

 

「ッ!?」

 

俺の言葉を聞き、イッセーは表情を歪ませる。そして俺の胸ぐらを掴んだまま、右腕を大きく振り上げた。そうか、俺はイッセーに殴られるのか・・・・まあ仕方がないか。俺は親友であるイッセーではなく、レイナーレを優先してしまっているのだから。

 

甘んじてイッセーの拳を受けようと覚悟を決める俺だが、それを阻む者がいた。

 

「やめなさい、イッセーちゃん」

 

それはレイナーレだった。レイナーレは俺が殴られないようにとイッセーの腕を掴んでいる。

 

「あなた、なんで朧のことを殴ろうとしているの?」

 

「なんでって。朧は私達を騙して・・・」

 

「そうじゃないでしょう?」

 

「え?」

 

「あなたが朧を殴る理由はそんなくだらないことじゃない。あなたが拳を振るう理由はそれ以上にくだらないものでしょう?」

 

「そ、それは・・・・・」

 

レイナーレに問いただされ、イッセーはたじろぐ。俺にはレイナーレの言っていることの意味がわからなかった。いったいどういうことなんだ?

 

「その様子だと自覚しているの?ふふふっ、これは滑稽で、同時に醜くもあるわ。親友同士といっても所詮は男と女。友情なんて幻想に過ぎななかったようね」

 

「黙れ!」

 

イッセーは俺の胸ぐらから手を離し、今度はレイナーレの胸ぐらを掴んだ。

 

「あら?私を殴るの?いいわ。あなたにはその権利がある。殴るというなら好きにしなさい」

 

今にも殴られそうになっているというのに、レイナーレは余裕を崩さない。イッセーをからかうように嘲笑を浮かべていた。

 

「ああ、朧がさっき私に危害を加えたら殺すとか言っていたけれどそれは気にしなくてもいいわよ?今回は朧は特別に見逃してくれるそうだから。ね、朧?」

 

レイナーレは俺に目配せをしながら言う。本当は幻術を使ってごまかそうと思っていたのだが、レイナーレ自身がいいと言っている以上はそうもいかないか。

 

「ほら、殴りなさいよ。アーシアの時のように思い切り殴りなさいイッセーちゃん」

 

「このっ・・・・・!レイナーレ!」

 

レイナーレの挑発を受けて、イッセーは拳を振りかぶる。今度こそイッセーの殴打が炸裂してしまうかというその瞬間・・・・

 

「ダメですイッセーさん!」

 

アーシアが声を張り上げ、イッセーを止めた。

 

「アーシア?なんで止めるんだ?レイナーレのせいでアーシアは・・・・」

 

「はい。私はレイナーレ様に神器を抜き取られて死にました」

 

「だったら・・・・」

 

「でも、レイナーレ様は私とイッセーさんを助けてくれました」

 

ニコリと微笑みを浮かべながらアーシアはイッセーに告げる。

 

「私とイッセーさんがケルベロスに襲われそうになったとき、レイナーレ様は命の恩人なんです。だから、殴ったりなんてしたらダメですよイッセーさん」

 

「それは・・・・確かにそうだけど」

 

アーシアの言うとおり、あの時レイナーレが来てくれなかったら大事になっていた可能性は高い。俺もあの時は相当焦った。イッセーもレイナーレがいなかったらどうなっていたのかがわかっているのか、握り拳をほどいて、レイナーレの胸ぐらを掴む手の力も緩めている。

 

「手を下ろしてくださいイッセーさん。レイナーレ様を殴ってはダメです」

 

「・・・・・・」

 

イッセーは黙りながらも、手をおろした。流石に妹のようにさえ思っているアーシアに諭されてはイッセーも従わざるを得ないということだろう。

 

「・・・・はっ、相変わらず甘ちゃんね」

 

「レイナーレ様?」

 

「なに?助けてくれたから私が殴られるのは嫌だって言うの?たったあれだけのことであなたを殺した私を許そうとか思っているの?だとしたら反吐が出るほど不愉快だわ」

 

アーシアを侮辱する言葉を口にするレイナーレ。

 

「あなたのそういう甘い優しさは私は大嫌いだわ。私はあなたを殺したのよ?憎みなさいよ。恨みなさいよ。恨みつらみを口にして、私のことを罵りなさいよ。あなたにはその権利があるのよ?」

 

内容は酷いものだった。それこそアーシアを大事に思う者であれば、誰だって怒り狂いそうなほどに。だがそれでも、誰も何も言わなかった。誰もレイナーレに対して怒っていなかった。なぜなら・・・・レイナーレの目からは涙が溢れていたから。

 

その涙を見て、皆思ったのだろう。レイナーレの態度は形だけのものであり、本当はアーシアに対して申し訳ない気持ちでいっぱいであることに。

 

「まさか私のことを許そうだなんて馬鹿なこと考えてないわよね?いい?あなたは悪魔なのよ。今のあなたはもう聖女じゃない。怒りのまま、激情のまま私のことを憎んだって誰も攻めたりはしないわ」

 

「・・・・嫌です」

 

「え?」

 

「レイナーレ様のことを憎むのも恨むのも嫌です」

 

アーシアは優しい声色で、だがしっかりと言い放った。

 

「恨みや憎しみに意味がないとは言いません。ですが、それでも私はレイナーレ様にそんな感情を抱きたくないです。レイナーレ様が助けてくれたとき、とても嬉しかったから。だから私はレイナーレ様を恨みも憎みもしません。レイナーレ様のことを許します」

 

「ッ!?」

 

許す・・・・・その言葉を聞いた瞬間、レイナーレの顔はひどくこわばった。

 

「馬鹿な女ね。許されたところで、私はあなたに謝るつもりなんて一切ないわ。あなたから神器を抜き取ったことを後悔したりもしない」

 

「それでも私はレイナーレ様のことを許します。他の誰でもない、私のために私はレイナーレ様のことを許したいんです」

 

「・・・・・本当に馬鹿な女」

 

そう言って、レイナーレはアーシアから視線を逸した。

 

アーシアの言うことは、俺からすれば甘く、愚かだとしか思えなかった。だけど、同時に尊いとも思った。

 

ひとを許すということは簡単なことではない。憎み、恨む気持ちというのは理屈や理性で抑えるのは難しいことだ。だが、アーシアはそれでもレイナーレを許した。

 

『愚かしいほど優しい子。あなたはああはなれそうにないわね』

 

わかってるよラム。俺はアーシアのようになれないし、アーシアのようになるつもりもない。

 

だからこそ俺は思う。アーシアは凄い子だって・・・・・アーシアのようにありたかったってな。




原作からしてアーシアは普通にレイナーレのこと許しそうだなと思ったのでこうなりました

ちなみにイッセーの感情については・・・・まあ、親友といっても男女ですからね。嫉妬が入ってると思ってください

それでは次回もまたお楽しみに!

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