ハイスクールD×D ~それは現か幻か~   作:DDX

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今回はコカビエルとの戦いが終わった後の話となります

メインはレイナーレです

それでは本編どうぞ


第61話

コカビエルとの戦闘を終え、家に帰ってきた私と朧。本来ならグレモリー達に私のことや朧とコカビエルの因縁、そしてラムのことも話すべきなのであろうが・・・・皆あの戦闘で疲労が蓄積しており、事後処理やらもあったため話は後日ということとなった。

 

そして今、私はベッドの上で朧に抱きしめられていた。ベッドの上だからといっていかがわしいことになっているわけではない。双方ちゃんと服を着ているし、朧も私の胸に顔を埋める以上のことをしようとしてこない。ただ単純に朧が私に甘えてきているというだけだ。

 

「朧、暑苦しいんだけど?」

 

「・・・・・」

 

本当は朧に抱きしめられて心地よく感じているにもかかわらず、私の口から出るのは朧を突き放すような言葉。しかし、朧からの返答はなかった。

 

「はあ。戦闘後だからゆっくりしたいのに、これじゃあ眠れないじゃない。どうしてくれるのよ?」

 

そう言いながらも、私は朧の背に手を回してあやすように撫でている。仕方がないじゃない。愛しい人に甘えられてるんだから応えるのは当然でしょ?

 

「・・・・レイナーレ、ごめん」

 

しばらくして、ようやく朧は口を開いた。

 

「ごめん?なにが?」

 

「ラム・・・・幻龍のこと黙ってた」

 

正直、朧のこの発言には呆れ果てた。何に謝っているかと思えばくだらないにも程がある。

 

「馬鹿ね。そんな些細なことでいちいち謝る必要なんてないわよ。何かと思えばくだらない」

 

「え?」

 

「曲がりなりにも数ヶ月一緒に暮らしてあなたがどういう人間なのかはおおよそ把握しているわ。あなたは嘘つきで秘密主義のロクデナシ。今更隠し事の一つや二つ気にしないわよ」

 

まあ、幻龍のことはともかくラムのことは直接話しをしたから知っていたけれど。

 

「・・・・・それはそれで凹むんだが」

 

「そう。それはなによりだわ。存分に凹みなさい」

 

いや、実際は凹まれても困・・・・りはしないわね。朧の凹み顔結構可愛いし。ああもう、なんだか朧へのゾッコンっぷりを自覚しちゃってこっちが凹みそうだわ。

 

「というより、謝るなら私のほうよ」

 

「どうしてだ?」

 

「どうしてって、私が余計なことしたせいで私のことがグレモリー達に露呈しちゃったじゃない。それは面倒事でしょ?」

 

本当は最後まで姿を隠して、隙を見てコカビエルを殺そうと思ったのだけれど、アーシアがケルベロスに殺されそうになってたから思わず出てきちゃったのよね。我ながら浅はかだわ。

 

「確かに面倒だけど大丈夫。もしもリアスたちがレイナーレに危害を加えようっていうなら殺すから」

 

壮絶な戦闘の後のせいか、それとも復讐のあとのせいか朧の思考は随分と物騒なものになっていた。確かに朧は私のためならグレモリー達を殺しもするだろうが、普段ならこんなふうにそれを堂々と宣言することはない。

 

というか、私としてはそうなることは避けたい。なぜならそれは朧にとって悪手なのだから。

 

「朧、あなたやっぱり馬鹿だわ」

 

「は?」

 

私が言うと、朧は呆けた表情を浮かべる。わかってないのかしら?復讐のあとだから思考がおかしくなっているのかもしれないわね。

 

「あなた前に言っていたでしょう?グレモリー達に情を抱いてしまっているって。そんな相手を殺してしまってはあなた絶対に後悔するじゃない」

 

「それは・・・・・」

 

言葉を詰まらせる朧。朧だってわかっているのだろう。たとえ愛する私を守るためとは言え、情を抱いている相手を殺せば必ず後悔することを。ましてや相手の中には親友である兵藤一誠もいるのだから抱く後悔は想像を絶するものになるでしょうね。そしてその後悔は、間違いなく朧の幸せに陰りを生むことになる。

 

「あなたにとっての一番の幸せが私だとしても、グレモリー達のいる生活だってあなたにとっては幸せなはずよ。幸せを何よりも求めるあなたが一番の幸せのためとは言え他の幸せを自ら切り捨てようって言うの?だとしたら愚かとしか言い様がないわね。幸せを求めるなら、その要因をひとつ残らず手中に収めてみなさいよ。あなたはこの私をものにしているのよ?だったら一番の幸せだけを確保しようだなんていう妥協は許さないわ」

 

まったく、堕天使である私がどうして人間風情である朧にここまで気を遣わなければならないのよ。これが惚れた弱みというやつならとんだ弱さもあったものね。まあ、それも悪くないと思ってしまっているけれど。

 

「妥協は許さない、か。はははっ・・・・レイナーレは厳しいな。幸せになるために一体どれだけ俺に苦労しろって言うんだよ」

 

「苦難ぐらい喜んで受けて立ちなさいよ。幸せのためならその程度乗り越えられるでしょう?というか乗り越えなさい」

 

「命令かよ。俺はそういう主人公気質じゃないんだけど、まあいいか。好きな女の前でカッコつけて惚れ直させる機会ができたと思っておこう」

 

「そうしておきなさい」

 

惚れ直させるっか・・・・無理な話ね。これ以上ないほどに惚れてるのに、どうやって惚れ直せって言うのよ。

 

「・・・・レイナーレ。俺いい加減眠くなっちゃったからさ。このまま寝ていいか?」

 

話が一区切りしたところで、朧はそう切り出してくる。

 

「私の胸を枕にしようっていうの?あなたはともかくとして私は眠れそうにないのだけれど?」

 

「ダメか?」

 

顔を上げて上目遣い気味に尋ねてくる朧。顔の造形が整ってるせいか断りづらいわね。これで一体何人の女を落としたのかしらねコイツは。

 

「・・・・・今回だけよ」

 

仕方がないから今回だけは許してやるわ。次からは頼まれない限りやらせないわ・・・・って、これじゃ頼まれたらやらせるってことじゃない。まあ別にいいけど。

 

「ありがとうレイナーレ」

 

私に感謝の言葉を述べて後、再び私の胸に顔を埋めようとする朧。だが、私はそんな朧に待ったをかける。

 

「待ちなさい朧」

 

「え?」

 

「止めは私が刺したけど、コカビエルを追い詰めたあなたにご褒美をあげるわ」

 

私は朧の頭を手で押さえ、朧にキスしてやった。前にした時も思ったけれど、朧の唇の感触は柔らかく、心地よかった。

 

「感謝しなさいよ?私からのご褒美なんてそうそう受けられるものじゃないんだから」

 

「うん。すごく嬉しいよ」

 

嬉しそうに微笑むその表情からして、それは本音なのだろう。まったく、嘘つきのくせに素直なんだから。私は全然素直じゃないのに・・・・・

 

「・・・・・用は済んだわ。とっとと寝なさい」

 

「ああ。おやすみ」

 

朧は私の胸に顔を埋める。そして程なくして小さな寝息が聞こえてきた。

 

「寝付くのはやいわね」

 

「仕方がないわよ。それだけ疲れているのだから」

 

何気なく呟いた私の独り言だったが、それに反応するものが一人。声のする方に視線を向けると、そこにはいつかの灰色の美女・・・・朧の神器(セイクリッド・ギア)に宿る相棒、ラムがいた。

 

「こんばんはレイナーレちゃん。こうして会うのは二度目ね」

 

「ええ、そうね幻龍さん」

 

ニコニコと胡散臭い笑顔でいうラムに対して、私はイヤミっぽくさん付けしながら言ってやった。なんで出てきたのかは敢えて聞かない。はっきり言ってどうでもいいことだから。

 

「うふふ♪いいわねぇ、その態度。私好みの生意気さだわ」

 

「別にあなたの好みに沿ってたとしても嬉しくともなんともないわよ」

 

「あら辛辣。まあいいけれど」

 

どうでもいいといったように言葉を返したラムは、朧に近づいて朧の頭を撫で始めた。その時の表情は先程のような胡散臭い笑顔とは違い、慈しむように微笑みを浮かべている。私はその光景をただただ黙って見ていた。余計なことを言ってしまえば邪魔になると思ったから。

 

「朧は弱いわ」

 

数分ほどして、ラムは朧の頭を撫でながらではあるが突然そう言ってきた。

 

「優秀な幻術使いではあるわ。数多の種族が存在するこの世界においても朧ほど優秀な幻術使いはそうそういないでしょうね」

 

それは私もわかっていた。かつての大戦を生き残ったあのコカビエルを追い詰めているのだから、幻術使いとしては優秀であることは疑いようはない。

 

「けれど、優秀な幻術使いであっても朧は弱い。視力と反射神経は高いけれど、身体能力は人間レベルを逸脱しておらず、腕力も体力もはっきり言って低いわ。そしてそれは精神面も同じ。過酷な経験をしているから多少はタフではあるけれど、それでも人間らしく儚く、脆く、ちょっとしたことで簡単に傷つくこともある」

 

ラムの言っていることは否定しようのない事実であった。どれほど強力な幻術を操ろうとも朧はやはり人間なのだ。人間はこの世界で最も数は多いが、その殆どは儚く弱い。数ヶ月朧と生活しているからこそわかるが、朧はその例に漏れず弱い存在だ。

 

強力な幻術を操り、その幻術で強者をも打ち倒せる朧。だが、決して強いわけではない。むしろ、弱いからこそ朧は勝てるのだろう。弱いからこそ、幻術という小細工を使いこなせるのだろう。

 

「レイナーレちゃん、どうか弱い朧を支えてあげて。弱い朧に寄り添ってあげて。この子にはあなたが必要なの」

 

「それを朧の相棒であるあなたが口にするの?」

 

「朧の相棒だからこそよ。私は確かに朧の相棒だけれど、朧を支える存在でもなければ朧に寄り添う存在でもない。私はただ、朧にちょっかいかけて楽しむだけの愉悦主義者よ」

 

快楽主義者、ね。その割には朧が白龍皇と対峙していた時には随分と焦っていたようだけど・・・・・まあ、言わないでおくけれど。

 

「お願いレイナーレちゃん。朧の最愛であるあなたにしかこんなことは頼めないのよ」

 

頼む、か。ふざけてるわね。

 

「あなた、私のこと馬鹿にしているの?」

 

「え?」

 

「頼まれるまでもないことをいちいち頼まれるとか不愉快極まりないわ。私が朧にとっての最愛であるように、朧は私にとっての最愛なのよ?支えるのも寄り添うのもできて当然のことよ。いちいちそれを他人に頼まれるだなんて気分が悪いわ」

 

誰に言われるまでもない。私は朧の傍にいる。朧を支え、朧に寄り添う。それは私だけの特権であり、私だけにできること。誰にも譲れない私の存在理由。

 

「わかった幻龍?あなた私にした頼みごとは無意味なのよ。むしろ言われるまでもなくやろうとしていることをやれだなんて侮辱に等しいわ。あなたはただこれまでどおり朧の中で愉悦を満喫していればいいわ」

 

「うふふふっ、これはしてやられたわね。わかったわレイナーレちゃん。あなたの言うとおり、私はこれまでどおりただ朧の中で楽しませてもらうわ。だから、あなたも私に愉悦を与えて頂戴ね?」

 

「いやよ。愉悦を与えるのは朧の仕事でしょ?私はあなたにそんなもの与えないわ」

 

「あら残念♪」

 

何が残念よ。私が与えるまでもなく、勝手に楽しんでるくせに。

 

「用が済んだならさっさと朧の中に戻りなさい。あなたがいたらゆっくり朧を堪能できないわ」

 

「ええ、そうさせてもらうわ。またねレイナーレちゃん♪」

 

胡散臭い笑みを浮かべながら、レイナーレは姿を消す。

 

「・・・・まったく、面倒な女だわ」

 

消えたラムに対して悪態をつきながら、私は朧の頭を撫で始めた。




幻術使えようが所詮朧は人間なのではっきり言って身体的にも精神的にも弱いです。だからこそ、レイナーレには朧を支えてもらわないとね

それでは次回もまたお楽しみに!

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