ハイスクールD×D ~それは現か幻か~   作:DDX

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とうとう朧の復讐が始まります

さて、どのように復讐するのか・・・・・

それでは本編どうぞ


第59話

「殺す?貴様が俺を?不可能だな。貴様のような人間風情では俺は殺せん」

 

俺では自分が殺せるはずがないと断言するコカビエル。侮られたものだな・・・・・まあその方が都合はいいんだが。

 

どれ、もうちょっと挑発してみるかな。

 

「随分とでかい口を叩くな。そういうお前だってここまで戦っておいて誰ひとり殺せていないじゃないか」

 

バルパーを除いてだけどな。まあ、あいつは直接戦ってたわけではない上にコカビエル側のやつだったから除外しておいていいだろう。

 

「ふんっ、確かにまだ貴様らを誰ひとり殺せていないが、まさかあれが俺の本気だとでも思っていたのか?俺が本気を出せば貴様らを殺すのに5分とかからん」

 

「フラグが建ったな」

 

「なに?」

 

「そう言うセリフは負けフラグって言うんだよ。そういうかっこつけたこと言うやつに限って負ける・・・・物語ではよくあることだ。そんなことも知らないのか?」

 

「くだらんな。実際の戦場にそんなフラグなどというものはあるはずない。戦場では強いものが勝ち、弱いものが負けるのだ」

 

強いものが勝ち、弱いものが負けるねぇ・・・・確かにその理屈は間違っちゃいないんだろう。だがその理屈は俺には適応されない。

 

「コカビエル、俺は弱いさ。ここに居る誰よりも弱い。さっき死んだバルパーを除けば身体能力的には間違いなく最弱だろう。だがな・・・・・俺は幻術使い。幻術ってのは弱くても勝てる小細工だ。まさか長年生きていてそれさえわからないだなんて言うわないよな?」

 

「確かに貴様の幻術(小細工)は厄介ではある。本気を出していないとは言え、この俺が未だに戦いでひとりも殺せていないのも貴様が幻術を使って俺の反撃を微妙に逸らされていたからだ」

 

「「「・・・・え?」」」

 

他の者たちは気がついていなかったようで疑問の声を上げているが・・・・どうやら、コカビエルは気がついていたらしい。まあ、コカビエルほど戦闘経験があれば気がつかれるのは当然といえば当然か。

 

「だが、貴様の幻術は防御には使えても攻撃にはどうだ?ケルベロスに大したダメージも与えることもできない程度の幻術で俺を殺せるとでも?そもそも、幻術とは言え俺にダメージを与えるには俺に攻撃を当てなければならないはずだ。まさかこの俺に銃弾を当てることができるなど本気で思っているのか?」

 

確かに俺の幻術は因果を無視してダメージを与えることは()()()。ダメージを与えるには攻撃を当てるという過程を()()()に必要とする。ようは当たらなければどうということもないということだ。

 

だが・・・・・この状況ならば攻撃を当てることはそう難しくはない。

 

「俺ひとりじゃ確かに難しいだろう。だが、俺はひとりだけどひとりじゃないんでね」

 

俺は幻術を使って分身を作り、その分身に銃を持たせてコカビエルに銃口を向けた。

 

「37人・・・・・俺が今出せる精一杯だが、これだけいれば銃弾を当てるのもそうそう難しくはない。いくらお前でも同時に放たれる37の弾丸を全て躱すのは難しいだろう?」

 

「ほう、確かに大した数だ。だが・・・・・これでもまだ当てるのは難しくないと言えるか?」

 

黒い翼を広げ、コカビエルは高速で飛び回り始めた。

 

「は、速い・・・・・」

 

それを目の当たりにして、イッセーがつぶやく。確かにコカビエルの飛行速度は速かった。並の人間・・・・どころか、悪魔や堕天使でも目で追い切るのは難しいだろう。事実、リアスたちはコカビエルの動きを目で追いきれていなかった。

 

「さあ、撃ってみるがいい。当てられるものなら当てて見せろ。もっともその目に俺の姿をまともに映すことができたらの話だがな」

 

どうせ当てられないだろうと思って挑発してくるコカビエル。まったく・・・・・面白いくらい俺好みな展開にしてくれるものだ。

 

「・・・・・ちっ、そこまで言うなら躱してみせろよ」

 

俺は舌打ちをした後、上空に向かって銃を構える。ひとりひとりの銃口は一つとして同じ方向には向いていない・・・・コカビエルからすれば当てずっぽうで当てようとしているように見えるだろう。

 

「当てずっぽうで当てられるとでも思っているのか?愚か極まりないな。まあいい、撃ってみろ人間。俺に当てて見せろ」

 

はっ、言われるまでもないよ。見事に当ててやる。もっとも・・・・・当てるのは銃弾じゃないがな。

 

「・・・・・警告しておこうコカビエル。背中には気をつけることだ」

 

「はははっ!何を言うかと思えばそんな浅はかな手にこの俺が・・・・がぁっ!?」

 

浅はかだと俺を笑い飛ばすコカビエルだが・・・・・その口からはうめき声が漏れた。原因は・・・・背に感じる痛みによるものだろう。

 

「だから言っただろ・・・・・背中には気をつけろと」

 

俺はコカビエルに忠告する・・・・・少しでも背後に意識を持って行かせるために。

 

「なっ・・・!?ばかな・・・・!」

 

背後を振り返るコカビエル。そこには・・・・・剣を手に、コカビエルの左右の翼を切断した俺の姿があった。

 

俺がわざわざあんな忠告をしたのは少しでも背後を意識させれば、そこをついて幻術がかけやすくなるからだ。コカビエルは見事に俺の術中にはまったということだ。

 

「俺の翼がっ!?うおっ!?」

 

実際に目で見て確認してしまったせいで、コカビエルの脳は翼を失ったと錯覚してしまい飛行能力を失ってしまい地に落ちていく。動揺しているせいか着地体制を取るのが遅れてしまっているコカビエルを・・・・・俺は剣を持った幻術の分身で取り囲み、四肢を剣で貫き、動けないように地面に仰向けの状態で突き刺した。

 

「うぐおおおおぉぉぉ!?くそっ!こんなもの!」

 

四肢を貫かれる激痛に悶えながらも、どうにか体の自由を取り戻そうともがくが、コカビエルの意思に反して体はピクリとも動かなかった。

 

「無駄なことはするものじゃない。こいつは幻術だが、貴様の脳はそれを本物だと錯覚してしまっている。貴様のようになまじ戦闘経験が豊富なやつほど痛みを本物だと信じ込んでしまって幻術が脱するのが難しくなるんだよ・・・・・皮肉なことにな」

 

「この・・・・俺が!こんな人間風情の幻術に!」

 

「それがお前の敗因の一つだ。せっかくだし惨めな堕天使の幹部様に敗因を一つ一つ説明してやろう。敗因その1。俺のことをたかだが人間風情だと侮り、俺のスペックを低く見積もってしまったこと」

 

俺の幻術を厄介だと言いながら、それでもコカビエルは俺のことを人間風情だと侮っていた。その侮りが油断を生み、俺に付け入る隙を作ってしまった。

 

俺の目に映らぬよう、高速で飛び回っていたがあんなものこの目があれば追うことは難しくない。目に映りさえすれば幻術なんてかけ放題だ。

 

「敗因その2。俺の言うことをいちいち鵜呑みにして、俺の嘘に踊らされたこと。幻術使いってのは大概嘘つきだっていうのにな」

 

先程のやり取りで俺はいくつもの嘘を織り交ぜた。コカビエルはその嘘を見抜けずに・・・・いや、見抜こうともしなかった。どうせ何があっても容易に対処できると思っていたのだろうが・・・・浅はか極まりない。

 

「敗因その3、俺が剣を使うことを一切想定していなかったこと。まあ、これに関してはお前の前で剣を使っちゃいなかったから想定できなくても仕方がないといえるが」

 

なにせ、コカビエルの前どころかこの場にいる奴らにも剣をまともに使うところは見せていないからな。

 

俺は戦闘時は身体能力の関係上銃を使うことが多いが、元々は剣を使う方が得意だ。ラム曰く、剣術の才能はずば抜けて高く、剣士として修行していれば必ず大成できていたらしい。なので、剣のひと振りでコカビエルの翼を切り裂くことができたのだ。まあ、あくまでもあれは幻術だけど。

 

「そして敗因その4・・・これがもっとも大事なことだ」

 

俺は最後にして最大の敗因をコカビエルにつきつける。

 

「貴様が今ここで俺のような人間風情に追い詰められている最大の理由は・・・・・・貴様が母さんを一年間もの間陵辱し尽くした挙句に殺し・・・・・俺を逃してしまったからだ」

 

「ッ!?まさか貴様・・・・・あのときの・・・・?」

 

目を見開き、ハッとした表情で俺のことを見るコカビエル。

 

「ようやく思い出したかコカビエル。そうだよ・・・・俺はあの時のお前に捕まった親子のうちのガキの方だよ。ははははっ・・・・・数奇なものだよな。この広い世界でまた会えるだなんて嬉しい限りだよ」

 

俺はこらえきれず笑みを浮かべながら、手にもった銃口をコカビエルにむける。

 

「待ちに待った復讐の時間だ。手始めに372発・・・・俺と母さんが捕まっていた日数、弾丸を貴様に叩き込んでやる。せいぜい苦しんでくれよ?」

 

俺はコカビエルに向かって、銃の引き金を引く

 

さあ・・・・・復讐の幕開けた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何度も・・・・・・何度も何度も何度も。朧はコカビエルに向かって引き金を引く。その度に銃弾がコカビエルの体をえぐり、鮮血がほとばしる。決して急所に当てることはなく、死なないように配慮しながらも弾丸は撃ち込まれ続けていて・・・・・それは本当に幻術なのかと疑ってしまうほどに酷い光景であった。

 

傷だらけになり、これ以上は出血多量で死んでしまいそうになったときは幻術を解いて傷と出血を消すが・・・・・そのあとはまた銃弾が打ち込まれ始める。先程からこれの繰り返し・・・・・・当分終わる気配はなさそうだった。

 

周りを見てみると、リアス・グレモリーたちがコカビエルに銃弾を撃ち込む朧を恐怖の宿った目で見ている。まあ、あんな狂気じみたことしてる人間を目にすれば仕方のないこと。こいつらはそれなりに朧と親交があるから尚更でしょうね。

 

「朧・・・・・」

 

「待ちなさい」

 

私は朧の下へ歩み寄ろうとしていた兵藤一誠の手を掴んで引き止めた。

 

「あなたまさか朧を止めようだなんて思ってるのかしら?だったらやめなさい。朧の邪魔をしないで」

 

「朧の邪魔って・・・・・どういうことだよ?お前は何か知ってるのか?」

 

「ええ、知ってるわ。むしろ朧の親友であるあなたが知らないことに驚きね」

 

「・・・・・」

 

私の一言に、彼女はあからさまに落ち込んでしまった。まあ、親友なのに朧のあの凶行の理由が何一つわからないのだからそれなりにショックを受けるのも仕方がないとは思うけれど。ただ、朧は朧で親友だからこそ知られたくないと何も話していないのでしょうけど。

 

他の連中も朧がどうしてのあんな凶行に走っているのか分かっていないんでしょうね・・・・・・ただ一人を除いて。

 

「・・・・・姫島朱乃。どうやらあなたは何か知っているようね」

 

「ええ・・・・・コカビエルがそうだとは聞いていなかったけれど、それでもあれを見ればわかりますわ」

 

私が尋ねると、姫島朱乃はそう答える。やっぱりそうか・・・・・彼女だけ朧を見る目が違っていたからもしかしてとは思ったけれど。

 

姫島朱乃のことは知っている。バラキエル様の娘だ。彼女の事情は私でもおおよそ理解しているが・・・・・それはおそらく朧も同じ。だからこそ、朧はこの女には全てではないようだが話したのだろう。

 

「朱乃・・・・あなたは何を知っているの?なぜ朧はあんなことを?」

 

「それは・・・・・申し訳ありません部長。彼の事情を私の口から語るわけには・・・・・・」

 

リアス・グレモリーが尋ねるが、それでも彼女は答えない。自らの主に問われても答えないとは・・・・・それなりには誠実さは備えているようね。もしも話していたら槍の一本でもお見舞いしていたところだわ。

 

「とにかく・・・・・あなた達は大人しくここで見ていなさい。終わるまで・・・・ね」

 

どれだけかかるかはわからないけど、この期に及んで邪魔者が入るのは朧としては面白くないでしょうね。だからこいつらには朧の復讐が終わるまでここでおとなしくしてもらう必要がある。

 

結局、私が手を下すまでもなかったということか・・・・・まあ、それならそれで構わないけれど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

235・・・・・236・・・・・237・・・・・傷と出血を消して・・・・・238・・・・239・・・・

 

引き金を引いてコカビエルに苦痛を与え、出血多量で死にそうになったら傷と出血を消してまた引き金を引いて・・・・・・先程からこれを繰り返す。

 

決して気分のいいものではない。相手は憎むべき相手とはいえ、俺のしていることは非道にして外道・・・・好んでこんなことをしているわけではない、それでもやめるわけにはいかない。たとえどんなに苦しくても・・・・・この復讐には意味があるのだから。

 

『復讐には意味があり、幸せには価値がある』・・・・・俺が木場に言った言葉。俺はこの言葉は真理であると思っている。復讐したところで過去には帰れないし、失ったものを取り戻すことだってできない・・・・・・それでも確かな意味はある。復讐を遂げれば・・・・・・憎悪は消え去り、幸せの価値が増すのだから。

 

憎悪は幸せの価値を鈍らせる。憎悪は心を過去へと縛り付け、幸せを陰らせてしまう・・・・だから俺は復讐するんだ。コカビエルの死をもって・・・・・・コカビエルへの憎悪を消し去るために。

 

コカビエルを殺したところで全ての憎悪が無くなるわけではないけれど・・・・・コカビエルを殺したところで、堕天使という種族への憎しみは無くならず、悪魔や天使、教会への憎悪は健全だけれど・・・・それでも、俺が最も憎いのはコカビエルだ。コカビエルが死に憎しみさえ無くなれば・・・・・きっと俺の幸せは輝きを増す。幸せの価値は跳ね上がる。

 

もう・・・・・もう十分すぎるほどに俺は苦しんだんだ。絶望したんだ。だから輝かしい幸せを手にしたっていいはずなんだ。幸せを満喫したっていいはずなんだ。だから・・・・その為に・・・・・

 

コカビエル・・・・・・貴様にこの憎悪にふさわしい報いを与えて・・・・・ぶっ殺してやる。俺の幸せのために・・・・・死んじまいな。

 

「ぐ・・・・がぁ・・・・」

 

コカビエルに弾丸を撃ち込み始めて472発目・・・・・これでひとまず区切りだ。流石に472発もの弾丸をほとんど休みなく撃ち込まれ続ければ、コカビエルといえど相当な痛みと疲弊で苦しんでいることだろう。

 

少々生ぬるいかもしれないが・・・・・・報いはこんなところでいいだろう。あとは仕上げだ。

 

「これで最後だ。何か言い残すことがあるのなら聞いてやろう」

 

「・・・・殺・・・せ」

 

銃を剣に変え、突きつけながら言うとコカビエルは短くそう答えた。

 

別に母さんへの懺悔を期待していたわけじゃなかったが・・・・・この期に及んで命乞いさえせずに、死を受け入れるか。その潔さだけには敬意を評してやる。

 

「わかったよ・・・・・じゃあ死ね」

 

剣を両手でもち、確実に殺せるように心臓に突き立てる。俺の復讐が間もなく完遂されようというその時・・・・・

 

「そこまでにしてもらおうか()()。そいつを殺されては困るんだ」

 

俺を復讐を阻む声が聞こえてきた。俺のことを幻龍と呼ぶその声には聞き覚えがある。

 

声のする方、上空へと視線を向けると・・・・

 

「白龍皇・・・・・!」

 

そこにいたのは白い全身鎧を身につけた者・・・・・忌々しい白龍皇であった。

 




朧にとって復讐とは『憎悪を消し去り、幸せの価値を高めるもの』となっております。まず間違いなく一般的ではないでしょうが、これは朧が幸せを求める気持ちがあまりにも強すぎるためです

さて、とうとう白龍皇まで登場してしまいましたが・・・・・朧の復讐はどうなってしまうのか?

次回もまたお楽しみに

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