ハイスクールD×D ~それは現か幻か~ 作:DDX
はてさてどうなりますことか・・・・・
それでは本編どうぞ
「さて、木場の方はどうなってるかなっと」
「あれだけのことをしておいてどうしてそんなに冷静に仕切り直せるの・・・・?」
私との論争を終えた朧は、木場達の方へと視線を向ける。部長に何やら突っ込まれてるが、まるで聞こえていないかのように全く気にしていない。かく言う私は少々熱くなりすぎたと若干反省している。後悔はしてないけど。
「というか朧、木場の方に助太刀したりしなくていいのか?」
ふと疑問に思った私は朧に尋ねてみる。朧はイリナとの戦いを無傷で勝利した。それも幻術はたったの一回しか使っていないので余裕があるはずだ。だから木場の方に助太刀すれば有利になると思ったのだが・・・・
「んー・・・・まあ助太刀してもいいんだけどねぇ。ぶっちゃけ俺が戦いふっかけた理由って個人的に紫藤さんとクァルタさんの物言いにイラついたからで、そのイラつきは紫藤さんに恥をかかせた時点で結構収まっちゃってるんだよなぁ」
「・・・・・」
朧のこの発言を聞き、イリナは朧に睨むように視線を向ける。ただ、負けてしまったが故にか何も言ってはこなかった。
「それに、今俺が助太刀しようにも木場からしたら『邪魔するな』って感じになりそうだからさ。大人しく見てたほうが無難かな?」
確かに朧の言っていることはわかる。私と朧の論争にツッコミはしていたが、今の木場は声をかけるのもはばかられるほどに雰囲気が尖っている。まあ、木場にとっては復讐のための戦いだから無理もないんだろうけど。
「・・・・・朧、聞きたいことがあるのだけれどいいかしら?」
「なんですかリアス部長?」
「この勝負・・・・・祐斗は勝てると思う?」
「多分無理です」
部長の問いかけに、朧は一切考える素振りを見せずに即答した。
「・・・・そう思う根拠は?」
「それは聞かなくてもわかってるんじゃないですか?まあ、聞かれたからには答えますが。単純に今の木場とクァルタさんは相性が悪い。木場は次々と魔剣を創造してクァルタに攻撃を仕掛けているが、それをクァルタはものともせずに木場の作った魔剣をものの見事に破壊している。さすがは『破壊』の名を冠するだけあってあの聖剣はいい攻撃力だ」
確かにゼノヴィアの攻撃力は凄まじい。なにせさっき、聖剣を振り下ろしただけででかいクレーターができてしまうほどだからな。木場が創った魔剣が破壊されてしまっても仕方がないと言える。
「けど、木場ならスピードを活かして対処できるんじゃないか?」
「できるだろうな。普段の木場なら。だが・・・・・あれ見てみろよ」
朧に示され木場の方を見てみると、木場は身の丈を大きく超える巨大な魔剣を創造していた。なんて大きさだ・・・・見ただけで高い攻撃力が秘められていることがわかる。
「まったく・・・・・それは悪手でしかないってのに」
朧は木場の魔剣を見て呆れていた。まあ、私も朧が呆れている理由はわかっているのだが。あの剣は、あまりにも木場らしくなさすぎる。
木場はゼノヴィアに向かって剣を振るう。だが、木場の振るった剣はゼノヴィアの振るった聖剣のひと振りによって粉々に砕かれてしまった。
巨大で、攻撃力に重点を置いた剣なんて本来の木場の攻撃スタイルに反したものだ。木場の長所を殺してしまうだなんてこと私でもわかる。それはゼノヴィアも理解しているようで、木場に説教じみたことを言っている。
ここまでくれば誰がどう見ても理解出来る・・・・・今の木場は常の戦いができなくなっている。だからこそ、勝目などないということに。
「まあ、ここまでだな・・・・・仕方ない」
朧は木場へと近づいていった。その木場は、ゼノヴィアから聖剣の柄で殴られたことによってダメージを受け、地面に膝をついている。柄とはいえ聖剣の一撃だ・・・・ダメージは相当なものだろう。
「まだだ!まだ僕は・・・・・」
「ストップ・・・・・もうゲームセットだよ木場」
ダメージを受けながらも立ち上がろうとする木場を、朧が制した。
「どいてくれ朧くん!僕はまだ・・・・」
「立ち上がったところで今のお前に勝機なんて無い。諦めろ」
「諦めろだって?どうして君が・・・・よりにもよって君がそれを口にするんだ!僕の復讐を応援しているって言ってたじゃないか!」
「朧が・・・・・木場の復讐を応援?」
私はなぜ朧が木場の復讐を応援しているのか分からず、声を漏らす。部長達も意外そうな表情をしていた。もっとも、朱乃先輩だけが何かを知っているのか、表情が少々険しいが。
「確かに俺はお前の復讐を応援しているよ。だけど、俺は無駄が嫌いでね。勝ち目がないのに挑むだなんて無駄・・・・・・応援してるがゆえに見てられないんだよ」
「無駄なんかじゃない!僕は・・・・」
「自分でもわかってるだろうが。このままやっても勝てないだなんてことは。ちょっと頭冷やして反省しろ」
そう言いながら、朧は木場の手に手錠を掛ける。幻術で作ったものであるためか、木場はどうにか手錠を外そうとするがびくともしない。
「というわけで、この戦いはここまでということでいいかなクァルタさん?」
「そうだね。私もその
ゼノヴィアは朧に聖剣の切先を向けながら言う。
「おいおい・・・・どうしてそうなる?」
「どうしても何もないさ。君はイリナに勝利して、私はその
「えー・・・・・」
勝ったもの同士戦うのは筋だと言うゼノヴィア。だが、朧の方は全く乗り気はなさそうだ。
「正直、俺から仕掛けておいてこんなこと言うのはなんだけど、もうこれ以上はやる気はないんだけどなぁ・・・・・・けどまあ、このまま引き下がるのも癪か。わかったよ。木場の雪辱戦って名目でその勝負受けてやる。野郎の雪辱戦だなんてすっごい不本意だけど」
面倒くさそうにしながらも、一応はゼノヴィアの申し出を受け入れた朧。木場の雪辱戦っていうのがすっごい不満っぽいけど。けどまあ、それでもあの朧が男の木場の雪辱戦を行うというだけでかなり珍しいことではあるけども。
「んじゃ、勝負するとしてクァルタさん、一つ忠告してあげよう」
「忠告だと?」
「ああ。心して聞きな・・・・・・背中には気をつけることだ」
「ッ!?」
朧に言われ、ゼノヴィアは後ろを振り返って剣を構える。だが、振り返った先には、何もなかった。
そして・・・
「はい、チェックメイト」
後ろを振り返った隙に・・・・・朧はゼノヴィアの背中に幻術で作り出した拳銃を押し当てた。
うん、なんていうか・・・・・朧らしい作戦である。
「くっ、卑怯な・・・・」
「卑怯?わざわざ忠告したのにそれを無下にしたのはそっちじゃないか。断じて俺は卑怯ではない」
この時、この場にいた全員の心が一つになったのを感じた。皆絶対に思ってるはずだ・・・・・『いや、卑怯だろ』と。
でもまあ確かにあそこで後ろを向いたのは迂闊だとは思うが・・・・
「・・・・さっき背後から聞こえた足音は幻術か」
「ご明察。その通りだよ」
足音?
「朧、それって一体どういうこと?」
「俺の幻術は何も視覚だけを惑わせるものじゃないってことだよ。こっちも俺の領分さ」
そう言いながら、朧は耳を指で示す。
それを見て、なぜゼノヴィアがあの時振り返ったのかわかった。あの時、朧はゼノヴィアにだけ聞こえるように幻術で足音を作り出したのだろう。あんな忠告をされたあとに背後から足音が聞こえてしまえば、振り向いてしまうのも仕方がない。
やはり卑怯な手ではあると思うけれど・・・・それでも、その手に嵌めるために策を巡らせた朧はやっぱりすごいと思う。
「さて、勝負は着いた。茶番はここまで・・・・とっとと自分の仕事に戻りな。それともまだやるかい?」
「・・・・いや。もう戦う気はないさ」
ゼノヴィアにはもう戦意は無いようで、聖剣を下ろした。
「・・・・リアス・グレモリー、先程の話よろしく頼むよ。それと眷属をもう少し鍛えたほうがいい。センスだけ磨いても限界がある・・・まあ、悪魔でなく人間に負けた私もまた修行不足だけどね」
ゼノヴィアは木場、朧の順に視線を向けながら部長に言う。朧に視線を向けたときは少々悔しそうだった。
「用は済んだ。行こうイリナ」
「あ、待ってよゼノヴィア。現世朧くんって言ったっけ?次に会うときは絶対に負けないんだから覚悟してね!」
荷物を持って、その場をあとにするゼノヴィアと、その後を追うイリナ。まあイリナは去り際に朧へ捨て台詞を吐いていったが。
「さて・・・・・少しは頭は冷えたか木場?」
「・・・・・」
朧が未だに手錠を付けられている木場に視線を向けながら言う。木場は朧を忌々しげに見つめていた。
「その目からして反省はしてないようだな・・・・・まあいいけど」
ため息を吐きながら、朧は幻術を解いて手錠を消した。木場が朧に切りかかるのではないかと心配していたが、それはなかったので安心した。おそらく、朧相手にそんなことをしても無意味だってわかっているのだろう。
「木場、俺はお前の復讐を応援してる。それは今でも変わらないさ。だけど・・・・今日のお前の戦いを見て、一つわかったことがある」
「・・・なんだい?」
「お前・・・・・根本的に復讐向いてないよ」
「ッ!!」
朧のその一言に、木場の朧を見る目はさらに険しくなる。だが、朧にそれを恐れている様子は全く見られなかった。
「怒るなよ・・・・・事実を言ったまでなんだからさ。さて、リアス部長。俺はそろそろ失礼させてもらいますよ。帰って勉強しなければならないので。ほら、俺って優等生ですし?」
「いや、誰が優等生だよ」
朧のボケに、私はツッコミを入れた。まあ多分、今のは重い空気を変えるための朧なりの気遣いだったのだろうが。
「待ちなさい朧。あなた、祐斗の復讐を応援していると言っていたけれど・・・・・それはどう言う意味かしら?」
その場を去ろうとする朧を引き止め、部長が尋ねる。
「そのままですよ。俺は木場の復讐が成されればいいと思っています。なにせ俺も・・・・木場と同じで復讐を志していますからね」
「・・・・え?」
どこか悲しげな表情を浮かべる朧・・・・そんな朧が何を言っているのか、一瞬わからなかった。朧が復讐を?一体誰に?そもそもなんで復讐なんて・・・・
皆は私と同じように驚いている・・・・・木場と朱乃先輩を除いて。二人は朧から何か聞かされて知っているのだろうか?
・・・・親友である私は知らないのに。
「それじゃあ俺はこれにて・・・・皆さんまた明日」
手をヒラヒラと振ってその場を去っていく朧。
朧に復讐のことを聞きたいのに・・・・・私は引き止めることができなかった。
「・・・朧?どうしたの?」
家に帰ってきた朧は、突然私を抱きしめてきた。いつもならすぐに夕食の準備を始めるというのに。
「・・・・・・この町に居る」
私を抱きしめる腕の力を緩めることなく、朧は言葉を紡ぎ始めた。
「居るって誰が?」
「・・・・コカビエル」
「ッ!?」
コカビエルが・・・・・この町に?どうして・・・・?
「コカビエルが・・・・居るんだ。この町に・・・・近くにいる。はははは・・・・・こんな偶然ってあるんだな」
狂ったような笑い声をあげる朧。それと同時に、朧から悍ましく思えるほどにドス黒いもの感じる。
それを私は知っていた。私と戦った時に朧が私に向けていた感情。兵藤一誠を殺した私に対して向けられていた・・・・・憎悪。もっとも、私の時よりもはるかに強く感じられるが。
「殺す・・・・必ず殺す。コカビエルを必ず・・・・・」
コカビエルに向けられる強い憎悪。朧の復讐の念は凄まじい。
ああ、そうね・・・・・憎いわよね。母親を陵辱し、挙句殺したコカビエルが憎いわよね
わかってる・・・・・わかってるわ朧。あなたの憎悪・・・・私は理解している
理解しているからこそ・・・・・私も願っている。私も望んでいる
あなたが強く憎んでいるコカビエルを・・・・・私は・・・・私が・・・
「・・・朧」
私は朧に負けないくらい力強く、朧を抱きしめた。
ようやく朧の復讐相手が誰なのか明記されました。まあ、ほとんどの読者は気が付いていたと思いますが
はたして朧は復讐を果たすことができるのか・・・・
それでは次回もまたお楽しみに!