ハイスクールD×D ~それは現か幻か~   作:DDX

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今回はゼノヴィアとイリナが登場します

この章のこれまでの話がフラグを建てるものであるなら、ここからの話はフラグを回収するものとなります。多分。

それでは本編どうぞ


第46話

『さて、随分とまあ面白い状況になっているわね』

 

ラムは今の状況を楽しむかのような声色で言う。

 

放課後のオカ研の部室にて・・・・現在、部室に備え付けられているソファには教会から来た二人の女戦士が二名腰を下ろしている。なんでも、この町を納めるリアスと何らかの交渉がしたいようだ。

 

驚くことに、二人のうちの一人はイッセーとは昔馴染みらしい。昨日イッセーの家に訪れた彼女はおばさんと談笑していたようだ。現在悪魔であるイッセーとしては気が気でなかっただろう。そしてそのイッセーの主たるリアスも相当心配しただろうな。

 

『それにしても、教会の人間が悪魔と交渉だなんて・・・・・どういう風の吹き回しかしらね?』

 

さあな。教会の人間は悪魔を嫌っている・・・・というより、倒すべき害悪として見ている連中だ。それなのに交渉がしたいとはよほどのことが起きてるのだろう。

 

ただその交渉云々もそうだが・・・・木場のことが気がかりだ。二人のことを怒気を孕んだ目で忌々しそうに見ている。前の話でそれなりにおとなしくなるかなとは思っていたんだが・・・・・そうでもないようだ。まあ、仕方のないことだとも思うが。

 

というより・・・・正直俺も彼女たちに殺気をぶつけてやりたい気分だけどな。俺にとって教会は悪魔と堕天使に並ぶほど憎らしい存在なのだから。まあ、だからといって理由もなく攻撃するほど見境無いわけでもないが。

 

ともかく、今は交渉を見守りますか。

 

「先日、カトリック教会本部ヴァチカン及び、プロテスタント側、正教会側で管理、保管されていたエクスカリバーが奪われました」

 

話を切り出したのはイッセーの昔馴染みだという少女、紫藤イリナだった。エクスカリバーが奪われたって・・・・木場があんな状態だってのに、随分とまたタイムリーだな。ほれみろ、木場のやつ表情がさらに険しくなっちまいやがった。

 

「なあ朧、なんか今の言い方だとエクスカリバーって複数あるように聞こえるんだけど・・・・」

 

イッセーは紫藤の言い方に疑問を感じたらしく、すぐ近くにいた俺に尋ねてくる。

 

「実際に複数あるんだよ。正確にはオリジナルのエクスカリバーではないがな」

 

「オリジナルのエクスカリバーじゃない?」

 

「ああ。エクスカリバーは過去の大戦で折れてしまってな。教会はそのエクスカリバーの破片から錬金術で7本の新たなエクスカリバーを作り出したらしい」

 

「へえ、あなた悪魔じゃないのに詳しいわね」

 

紫藤が感心したように俺の方を見ていう。当然というかなんというか俺が悪魔じゃないことには気がついているようだ。

 

「というより、どうしてここに人間が?」

 

「彼については事情があって私達に協力してくれているのよ。それよりも話を続けて頂戴」

 

「わかった。これが現在のエクスカリバーの姿だ」

 

俺の件に関してはリアスが手短に説明し、話が再開された。青髪に緑色のメッシュをいれた女性・・・・ゼノヴィア・クァルタが傍らに置いていた布に巻かれた長物を解き放つ。現れたのは、一本の長剣だった。破壊の聖剣(エクスカリバー・デストラクション)という名前らしい。

 

『・・・・これがエクスカリバー?随分とふざけているわね』

 

ラム?どうした?

 

『どうしたもこうしたもないわよ。この剣はオリジナルのエクスカリバーに比べてあまりにも脆弱だわ。聖剣としてはそれなりだけれどオリジナルの七分の一にさえ値しない・・・・・ナマクラといってもいいわね』

 

その言い方からして・・・・ラムはオリジナルのエクスカリバーを知ってるんだな。

 

『ええ。あれはまさに聖剣の中の聖剣と呼ぶにふさわしい剣だったわ。それがこんな見るも無残なものになってしまうなんて・・・・・やっぱり神造の剣に人の手が加えられてしまったらダメね』

 

まあ、そりゃ神造の剣に人の手が加わってしまえば衰えるに決まってるか。

 

現在のエクスカリバーに対するラムの愚痴を聞いてる中、教会の二人の話は進んでいく。話が進むにつれ木場の怒気が膨れ上がって言ってるようだが・・・・・大丈夫だろうか?

 

そして話は、聖剣を奪い、この地に逃れたという下手人に関するものへと移っていく。

 

「私の縄張りは出来事が豊富ね。それで?エクスカリバーを奪ったのは何者かしら?」

 

「奪ったのは『神の子を見張るもの(グリゴリ)』だよ」

 

リアスの問いに、答えたクァルタが口にしたのはとある組織の名前であった。

 

グリゴリ・・・・それはほぼ全ての堕天使が所属する、堕天使の中枢たる組織だ。そのグリゴリがエクスカリバーを盗んだようだが・・・・・どうにも解せない。

 

グリゴリの・・・・堕天使の総統アザゼルとはかつて一度だけ会ったことがあるが、奴はそこまで危険な男ではない。むしろ、争いを嫌う平和主義者であった。そんなアザゼルがエクスカリバーの強奪を指示するとは到底思えない。

 

『アザゼルの意思とは関係なしに、もしくは反してエクスカリバー強奪を企てたものがいるようね。問題はそれが誰なのかだけれど・・・・』

 

その答えは、すぐにクァルタの口から語られることとなる。

 

「奪った主な連中は把握している・・・・グリゴリの幹部、コカビエルだ」

 

ッ!?コカ・・・・ビエル?

 

その名を聞いた瞬間、俺の心臓は大きく脈を打った。

 

コカビエル・・・・古の戦いから生き残る堕天使の幹部。聖書にもその名を記された大物

 

そして何より奴は・・・・奴は・・・・・

 

『これは・・・・驚いたわね。もしかしてあなたが見た夢はこれを予期していたものかもしれないわね』

 

あるいはそうなのかもな。まさかここで・・・・俺が生きているうちにこんな機会に恵まれるとは思わなかった。この機を逃せば、もう二度と訪れないであろう・・・・・最初で最後の絶好の機会だ。誰がなんと言おうとも、俺はこの機に奴を・・・・

 

俺が内心でほくそ笑んでいるうちにも、話は進んでいく。

 

コカビエルはこの町に潜伏しているようで、今回二人がこの場に持ちかけた交渉というのは『悪魔はこの一件に関わるな』というものらしい。悪魔が堕天使と手を組むのではないかと危惧しているようだ。まあ、教会は堕天使と同じぐらい悪魔のことを信用していないから当然といえば当然だ。

 

もちろん、リアスはそんなことはしないと少々怒り気味に言い放った。誇り高い彼女がそんな姑息なことをするわけがない。何より魔王の妹という立場もあるわけだしな。

 

一切関わらないと約束を取り付けて安堵の表情を浮かべる。それを見て、リアスの怒りも多少収まった様子だ。

 

「・・・・一つ、聞かせてもらってもいいかな?」

 

俺は気になったことがあるため、二人に声を掛けた。

 

「なんだ?」

 

「教会から派遣された戦士は君たち二人だけなのか?はっきり言ってこの危険な任務、到底君たち二人だけで解決できるとは思わないが?」

 

「随分と私達を見くびってくれるな・・・・と、言いたいところだがその言い分はもっともだな。正直に言って私も死ぬつもりはないが無謀だとは思っている」

 

「それでもやらなくてはならないのよ。それが教会の下した命令なのだから」

 

「・・・そうか。わかったよ。ならもう何も言わない。聞いて悪かった」

 

どうやら二人共それなりの覚悟を持ってことにあたっているらしい。二人の信仰は敬意に値するが・・・・やっぱ教会はクソだな。

 

神に代わって人々を導くとか邪悪を退けるとかなんとか言ってるような連中だが・・・俺に言わせれば悪魔や堕天使と何も変わらない。いや、綺麗事並べて裏で非道なことをやってのけるだけ余計にタチが悪い。教会の身勝手な偽善のせいでどれだけの悲劇が起こってると思ってるんだ。

 

「さて、そろそろおいとまさせてもらうよ。行こうイリナ」

 

「あら?お茶の一杯ぐらい飲んでいったらいかがかしら?なんならお菓子も振舞うわよ?」

 

「いいや、結構だ」

 

「ごめんなさいね。それでは」

 

リアスの厚意を断って、二人はその場をあとにしようとする。

 

だが・・・・部屋を出る前に、二人の視線はアーシアへと注がれた。

 

「昨日会ったときもしやと思っていたが・・・『魔女』アーシア・アルジェントか?」

 

クァルタが言うと、アーシアは肩をビクリと震わせた。

 

「あなたが教会内部で噂された元聖女の魔女?悪魔や堕天使をも癒す力を持っていて教会に追放されたらしいけど、まさかこんなところで悪魔になってたとは思わなかったわ」

 

「あ、あの・・・・私・・・・」

 

紫藤の言葉に、アーシアは萎縮してしまう。そのあとも、二人はアーシアを貶めるような事を言い・・・・俺はそれを聞くたびに、自分の中で激しい怒りが募っていくのを感じた。

 

「ふむ、君からは信仰の香りがするな。抽象的な言い方だが、私はそういったものに敏感なんだ」

 

「そうなの?アーシアさんは悪魔になったその身でもまだ主を信じているのかしら?」

 

「・・・・捨てきれないだけです。ずっと信じてきたのですから・・・・」

 

二人に睨まれるかのように見つめられながらも、アーシアははっきりと・・・・だが、どこか悲しげに答える。

 

アーシアだって、好きで追放されたわけではないのに・・・・本当は悪魔になった今だって堂々と神に祈りを捧げたいと思っているはずなのにそんなことを聞くだなんて・・・・・きっとこいつらは、自分たちの言ってることこそが正しいと思って疑ってないだろう。

 

「そうか。ならば今すぐ私たちに斬られるといい。神の名のもとに断罪してやろう。我らの神ならば救いの手を差し伸べてくださるはずだ」

 

プチン

 

その時・・・・俺は自分の中で我慢の糸が切れたのを感じた。彼女たちの信仰には敬意を抱いていたがもう我慢ならない。

 

彼女たちへの怒りは、俺の心に巣食っていた憎しみの炎へと油のように注がれ・・・・一気に燃え上がった。

 

「くく・・・・あはははははははははっ!」

 

自分でもわかるほどに狂ったように笑い出した俺に、その場にいた全員の視線が集まってきた。

 

「・・・・なぜ笑っているんだ?」

 

「なぜって・・・・笑うに決まってるじゃないか!自分たちの事情に首を突っ込むなと言っておきながら、そっちは悪魔の事情に口を出して、それどころか綺麗事並べて断罪しようとしてるんだ!こんな滑稽でくだらない茶番を笑わずにいられるかっての!あはははははっ!」

 

「茶番・・・・ですって?聞き捨てならないわね。今のあなたの発言は私たちの主を愚弄するものよ」

 

「主を愚弄、ねぇ・・・・それってつまり君たちの行動は神様の意思だって言いたいのかい?」

 

「そうとってもらっても構わない。私達教会の人間は主の代行者でもあるのだからな」

 

教会の人間は主の代行者ねぇ・・・・随分な言い草だ。どうやらこいつらは教会の暗部を、闇を知らないと見える。

 

「だとしたらなおさらおかしな話だな。俺は君たちの言う主っていうのは清廉潔白な存在だと思っていたんだが・・・・教会の人間がその主の代行者だというのならどうにも腑に落ちない」

 

「どういうことだ?」

 

「別に?ただ、君たちは教会に属していながら無知なんだなって思っただけだよ」

 

こいつらは知らないだろうが・・・・俺は知っている。

 

かつて教会の手によって粛清されそうになった女のがいたことを

 

その女を守ろうと立ち向かい、死んでいった男がいたことを

 

そして・・・・その光景が脳裏に焼き付き、悲しみと絶望を心に抱き続ける女と男の子供のことを

 

綺麗事を並べながらもそんな非道を教会は裏で何度も行っていることを・・・・俺は知っている。

 

「あなた・・・・何を言っているの?」

 

「俺の言っていることの意味がわからないならそれでいいよ。むしろわからないほうがいい。そんなことより重要なことは・・・・・お前たちの茶番のせいで俺が今、はらわたが煮えくり返りそうになってるってことだよ」

 

「「ッ!?」」

 

俺が怒気をぶつけながら言うと、二人は一瞬怯んだ後に、俺を睨みつけてきた。

 

「アーシアのこと・・・・・何も知らないくせに好き放題侮辱しやがって。アーシアはいい子だ。こんなクズな俺に対しても微笑みを向けてくれて、俺なんかのことを優しいって言ってくれて・・・・・慕ってくれるんだからな」

 

ただまあ、やっぱり俺は優しくなんてない。なにせ・・・・この二人をぶちのめしたいっていう衝動を抑えられそうにないんだから。

 

「俺はアーシアを侮辱したお前達を許さない。二人共俺と戦え。俺が勝ったらアーシアに謝れとかそういうことを言うつもりはない。そんなことして心にもない謝罪をさせたところで意味がないからな。だからこいつはただの憂さ晴らし・・・・・付き合ってられないっていうなら拒否してもいいが、まさか高潔なる教会の戦士であるお前たちがここまで言われて逃げたりなんかしないよな?」

 

「ほう・・・・随分な口を叩くね」

 

「そこまで言われたら、私達も大人しく引き下がるだなんてできないわ」

 

俺の挑発に乗ってくるクァルタと紫藤。二人共剣の柄に手をかけている。

 

「朧、やめな・・・」

 

俺を止めようとするリアスであったが・・・俺の前に介入する木場を見て、言葉を詰まらせる。

 

「ちょうどいい。僕も一枚噛ませてもらおうかな」

 

あふれるほどの殺気を身に纏わせた木場が、その手に魔剣を携えながら言う。

 

「誰だ君は?」

 

「・・・・君たちの先輩だよ。失敗作だけどね」

 

不敵な笑みを浮かべる木場。同時に、部室内に無数の魔剣が出現する。

 

俺達の戦いは・・・・もはや誰にも止めることはできない。




ここからがある意味でこの章の本番となります

今後どうなっていくのか…………乞うご期待

それでは次回もまたお楽しみ!

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