ハイスクールD×D ~それは現か幻か~   作:DDX

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今回から3巻の内容に入りますが・・・・しょっぱなから重めです

シリアス成分強めの章に相応しい始まりかと思います

それでは本編どうぞ


第三章 幻刃幻弾のアヴェンジャー
第39話


ああ・・・・・なんてひどい悪夢(絶望)だろう

 

醜い翼を持った男が美しい女を犯している。それも、幼い少年に見せつけるかのように・・・・・

 

女はどんなに惨めに陵辱されようと気丈に振舞っていた。時折少年の方に視線を向け、安心させるために微笑みを浮かべるが、少年はそれでも辛そうに泣き喚く

 

それは無理もないこと・・・・・女と少年は親子なのだから。親が犯されるのを見て、苦しまない息子などいるはずがない

 

だが・・・・・それでも、それ故に俺は思う。なぜ女は少年を見捨てなかったのだろうと・・・・見捨ててくれなかったのだろうと

 

少年は人質だった。だから女は無抵抗に犯されていた。だったら、少年を見捨てればよかったのだ。少年を見捨てさえすれば女はきっと逃げ出すことができたんだから。そうすればあんな凄惨な結末を迎えずに済んだというのに

 

・・・・・どうして?どうしてなんだ?

 

どうしてそんな子供を守ろうとする?なんの価値もない、将来どうしようもないクズになるそんな子供をどうして大切にする?

 

どうして・・・・・どうして・・・・・・

 

どうして少年()を見捨ててくれなかったんだ・・・・・

 

・・・・・・・母さん

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くそっ・・・・・」

 

深夜、空になったガラスコップを机に叩きつけながら俺は思わず悪態をついてしまった。

 

思い出されるのは先程まで見ていた夢。幼い頃の悪夢、絶望・・・・・堕天使と、そしてなにより母親を救えず、ただ見ていることしかできなかった自分を深く憎むきっかけとなった過去。

 

そんな胸糞悪い夢を見てしまったので、俺はうちから溢れ出そうになった憎悪を抑えるために水を飲みに台所にきたのだが・・・・・・憎悪はまったく収まらない。どころか、幾分か冷静になれたせいでより一層憎悪が強まってしまった。

 

「・・・・・最近は見てなかったのに。なんで・・・・・」

 

『なんで?おかしなことを言うわね。それは必然よ?』

 

「ラム?」

 

『レイナーレちゃんとレイヴェルちゃんという愛すべき存在を得た。秘密を抱えながらも充実した日常を謳歌している。つまりあなたは幸せに近づいてしまっているのよ』

 

ラムの言うことは否定しない。俺は今幸せに近づいている。それは確かに実感していた。

 

『けれど、あなたにとって幸せと絶望は表裏。幸せに近づくということは絶望を思い起こさせるということ。なぜならあなたはかつて、幸せな日常から最低な絶望に移りゆくの体験してしまったから』

 

「・・・・だから今になってあんな夢を見たってことかよ。戒めのために・・・・・絶望の悪夢で俺を縛るのか」

 

『うふふふっ・・・・・哀れな子ね。誰よりも幸せを追い求めているのに、幸せに近づくほどに絶望を思い出してしまう。なんて・・・・可哀想で可愛い子なのかしら』

 

「・・・・・黙れラム。それ以上はいくら相棒だからって聞かなかった振りはできないぞ?」

 

『あら恐い。怒らせてしまったわね♪』

 

自分でもわかるほどに冷たい声色でラムに言い放つが、ラムの調子は変わらない。ラムのどんな時であっても自分のペースを乱さないところは好きだが、今は忌々しさしか感じない。

 

『まあいいわ。今は黙っておいてあげる。私が口を出したんじゃ余計にイラつかせちゃうでしょうし。それに・・・・・』

 

「それに?それになんだよ?」

 

聞き返すが、ラムは答えない。ちっ、黙るって言っても聞かれたことぐらいには答えろっての。

 

・・・・・まあいい。このままここに居たって仕方がないし部屋に戻ろう。またあんな悪夢を見たらたまったものでもないから寝れそうにはないが・・・・・・まあ本でも読んで時間を潰しておけばいい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「遅かったわね」

 

自分の部屋の前に戻ってくると、そこにはレイナーレが居た。

 

「・・・・・何してるんだよ?」

 

「夜中に足音が聞こえたせいで目が覚めちゃったのよ」

 

「それはここにいる理由になっていないだろ。起こしてしまったことに関してはすまないと思うが、気にせずまた寝ればよかったろうに。それとも起こされたから文句の一つでも言おうと思ったか?」

 

「それもあるけど・・・・・どうにも足音が荒かったから気になったのよ」

 

・・・・ちっ。足音でバレるほど余裕なかったのかよ俺。

 

「・・・・・別になんでもないさ。とっとと部屋に戻って寝ろ。寝不足は美容の大敵だぞ?」

 

「断るわ。なんでないだなんてあからさまな嘘を聞かされて戻れるわけ無いでしょう?これまでないほどにイラついてるみたいだし・・・・・何があなたをそうさせているのかを知るまでは部屋に戻るつもりはないわ」

 

どうやら俺の言うことを聞くつもりはないらしい。こうなったら何を言っても無駄だろう。

 

ああ、鬱陶しい。愛おしい存在ではあるけれど・・・・・・今はただただ煩わしくて堪らない。

 

「・・・・・調子に乗るな」

 

「ッ!?」

 

俺はレイナーレの肩を掴み、壁に叩きつける。

 

「俺はお前を愛している。だからグレモリー達の前で偽装工作までしてここに連れてきた。だがな・・・・・だからといってお前のすること全てを許そうだなんて微塵も思っちゃいないんだよ。あんまり調子に乗るなら・・・・・犯すぞ?」

 

レイナーレの服に手をかけ、縦に引き裂裂きながら俺は言い放つ。服の破れ目からレイナーレの豊満な胸が晒された。

 

まあ口ではああ言ったが、実際に犯すつもりはないがな。これぐらいしておけば部屋に戻ってくれると思ったからやったに過ぎない。

 

なのに・・・・・レイナーレの反応は、俺の予想に反するものであった。

 

「クククッ・・・・・・アハハハハハッ!」

 

怯えもせず、怒りもせず、不機嫌さで表情も歪めることさえもせずに・・・・・レイナーレは愉快そうに声をあげて笑い出す。

 

「なんで笑ってんだよ?」

 

「なんで?笑わずにいられないわ。だって、ようやくあなたに犯してもらえるんだから」

 

「・・・・は?」

 

何を・・・・言っている?この女は何を言っているんだ?

 

「朧の手を取ったあの時からこうなる覚悟は出来ていたのよ。いつあなたに犯されるのか、いつあなたに穢されるのかと心待ちにしていたわ。それなのに朧は全然手を出してこないんだもの。せっかくの覚悟が無駄になってしまったようで腹立たしかったわ」

 

レイナーレは妖艶な笑みを浮かべながら言葉を紡ぎ出す。

 

「けれど、ようやくその時が来た。ようやく朧に犯してもらえる。ようやく・・・・・私の覚悟が報われるときが来たのよ」

 

レイナーレの指が、俺の頬に触れる。俺から乱暴を働いたというのに・・・・・まるでレイナーレに追い詰められているかのように感じてしまう。

 

「さあ、朧はどうやって犯してくれるのかしら?獣のように私の躰を激しく蹂躙してくれるのかしら?それともあなたが愛するこの髪を欲望で染め上げてくれるのかしら?あるいはそのどちらもかしら?まあなんだっていいわね・・・・どんな方法であっても私はあなたの全てを受け入れてやるわ。あなたの女に成り下がってやるわ。だから・・・・・・たっぷりと、思うがままに私を犯しなさい」

 

俺の首に手を回し、耳元で色っぽい声で犯せと囁くレイナーレ。この時俺は気がついてしまった・・・・・レイナーレの手が、わずかに震えていたことに。それは俺に犯されることに対する恐れの震えであることに気がついてしまったのだ。

 

そして理解してしまう。レイナーレは俺に犯されることを望んでいるわけではなく・・・・・レイナーレが知りえない、俺が抱えている『ナニカ』を受け止め、俺を救うために犯されようとしていることに。

 

・・・・なんでだ?なんでこの女は俺なんかのためにここまでする?

 

自分を殺し、自由を奪い、縛り付けた俺に・・・・・・なんで?

 

レイナーレといい、母さんといい・・・・・どうして・・・・・

 

「レイ・・・・ナーレ」

 

俺はレイナーレの背に手を回し、胸に顔を埋めた。あの悪夢によって生じた憎悪は俺の心の奥底に押し込められ、イラつきも消え去っていた。

 

「あら?犯さないの?」

 

「・・・・・・うん」

 

「そう・・・・残念ね」

 

そう言いながら、レイナーレは俺の頭に手を乗せて撫でてくれる。

 

それは酷いくらいに心地よく・・・・残酷なほどに暖かかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・夜が明けるわ」

 

「・・・・そうか」

 

あれから数時間して、夜が明ける時間になってもまだ朧は私に抱きついていた。その間ずっと、私は朧の頭を撫で続けている。

 

「朝食作らなくてもいいの?」

 

「後でやる」

 

「後でって・・・・・学校、遅刻するわよ?」

 

「今日は行かない。レイナーレと一緒に居たい」

 

「そう・・・・・とんだ不良生徒ね」

 

「別にどうでもいい。もともと問題児だし」

 

まるで子供のような言い様だ。だけれど、そんな朧が可愛いと思えてしまう・・・・・私も重症ね。

 

「・・・・・夢を見たんだ。昔の夢を」

 

「夢?」

 

「俺・・・・昔母さんと一緒に堕天使に捕まって。母さんは俺を人質に取られて・・・・・その堕天使に俺の目の前で毎日犯されていた」

 

ッ!?母親が堕天使に殺されたことはラムに聞かされて知っていたけれど、まさか陵辱までされていたなんて・・・・・

 

「その夢を見たの?」

 

「・・・・・うん」

 

それであんなにもイラついていたのね・・・・・無理もないわ。朧にとってはトラウマ以外のなにものでもないでしょうから。

 

「朧・・・・堕天使が憎いかしら?」

 

私は答えがわかりきっていながら朧に尋ねた。

 

「憎いよ」

 

ただ一言・・・・・朧は告げる。

 

「私も堕天使よ?あなたの母親を殺し、絶望の淵に追いやった種族・・・・・私も殺してやりたいほど憎いかしら?」

 

「・・・・まったく憎くないわけじゃない」

 

やっぱり・・・・・私のことも憎いのね。堕天使である私のことも・・・・・朧は・・・・

 

「けど・・・・・それ以上に愛してる。レイナーレのこと・・・・俺は愛してる」

 

「・・・・・そう」

 

改めて言われると・・・・・存外恥ずかしいものね。憎悪を抱きながらもそれを上回る程にか・・・・・どうやら朧の私に対する愛情は私が思っている以上のようね。

 

「それに・・・・・」

 

「それに?」

 

「堕天使以上に俺は・・・・・自分自身が憎くいんだ。人質として捕えられて、母さんが犯されるのを泣き喚きながら見ていることしかできなかった自分が・・・・・憎くて憎くてたまらないんだ」

 

「朧・・・・・」

 

見ていることしかできなかった・・・・・その言葉からして、当時の朧は幻術を使えなかったようね。幻術さえ使えていれば、母親を救うことができていたかもしれない・・・・・朧の幻術ならばそれぐらいのことは出来ていただろうから。

 

だが、できなかったからこそ母親を救うことができず、無力感に苛まれ・・・・・自らを憎むことになってしまったのでしょう。

 

・・・・悔しいけれど、私では朧の自責の念を、自身に対する憎悪をどうすることもできない。だったら・・・・

 

「・・・・以前言った言葉だけれど、もう一度言ってあげるわ」

 

「え?」

 

「あなたが死ぬまで連れ添ってあげるわ。だから・・・・・せいぜい私をずっと愛し続けなさい。憎しみを・・・・忘れてしまうほどに」

 

「レイナーレ・・・・・ありがとう」

 

顔を上げ、ニコリと微笑みを浮かべた後に、また私の胸に顔を埋める朧。

 

 

 

 

馬鹿な人・・・・・感謝の言葉なんていらないのに。感謝するのは私の方なのに

 

朧・・・・・私を愛してくれてありがとう

 

まあ、絶対に直接言ってなんてやらないけど




なぜこの話をわざわざこの章の頭でやったのか・・・・それはいずれわかります

まあ、ここまで言えば朧の母親を陵辱した堕天使が誰なのかわかってしまうでしょうが

それでは次回もまたお楽しみに

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