ハイスクールD×D ~それは現か幻か~   作:DDX

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今回から本格的にデートのお話になります

まあ、その手の話はあまり組み込まれていませんが・・・・

それでは本編どうぞ


第37話

「すごいですわ朧様!あんなにたくさんのお魚達、私初めて見ましたわ!」

 

「ふふっ、そうか。それはなによりだ」

 

俺は年相応にはしゃぐレイヴェルを見て、思わず笑みを浮かべてしまった。

 

今回のデートは、レイヴェルにリクエストで水族館で行うこととなった。どうやら冥界には水族館は非常に少なく、レイヴェルはいつか行ってみたいと思っていたようだ。

 

俺は水族館デートは何回か経験もあったため、それなりに勝手はわかっている。なのでレイヴェルのリクエストを受け入れて水族館に来ているのだが・・・

 

「楽しいかレイヴェル?」

 

「はい!とっても楽しいです!」

 

わざわざリクエストまでしたのだからそれなりに楽しんではいると思ったが・・・・・それなりどころではなかった。人目をはばからず、まるで小さな子供のようにはしゃぐレイヴェル・・・・その姿は、とても愛らしく感じられる。

 

「大きな水槽の中で泳ぐお魚達が自由に泳ぎ回る姿があんなに綺麗だとは思いませんでしたわ。ですが・・・・・」

 

レイヴェルの表情が、笑顔から物憂げな表情に変わる。

 

「どうした?」

 

「見ている私達は楽しいですが、お魚さん達は水槽に閉じ込められて見世物にされて・・・・不満はないのでしょうか?」

 

・・・・なるほど。水槽の中の魚達に同情しているのか。

 

「魚達のことを気づかえるなんてレイヴェルは優しいな。けど・・・・・俺はレイヴェルとは違う考え方をしているよ」

 

「え?」

 

「確かに、この魚達は人間の為に人間に飼い慣らされている。けれど、それこそが・・・・この水槽の中こそが魚達にとっての世界なんだ」

 

「この水槽の中が・・・・お魚さん達にとっての世界?」

 

「水槽の中なんて狭い世界だ。だけど、魚達はこれ以上広い世界を知らない。広い世界は雄大ではあるけれど危険も多い。水槽の中なら危険は少ないし、何よりこれ以上広い世界を知らないゆえに窮屈に感じることもない。だからきっと・・・・不満はないと俺は思うよ」

 

「朧様・・・・」

 

そうだ・・・・きっと魚達はこの水槽の中を窮屈だなんて思っちゃいない。生きづらいとも思っていないだろうし、不満だってないと思う。

 

外の世界なんて・・・・知らなくたっていい。出なくたっていい。

 

『かつてのあなたがそうだったように?確かにそうね。あの小さな村で、家族と一緒に暮らしていたあなたは幸せそうだった。そして望まずに外の世界に出てしまったあなたは、絶望の底に叩きつけられてしまった』

 

・・・・そうだよラム。俺もこの水槽の中魚達のように在りたかったよ。そうすれば今頃もきっと・・・・

 

「・・・朧様のおしゃっていることは良くわかります。確かに、このお魚さん達にとって、この水槽の中が世界で居心地はいいのかもしれません。ですが・・・・」

 

「ですが?」

 

「もしも私がこのお魚さん達だったら・・・・外の世界を知りたいと思うかもしれません。いえ、きっとそう思います。今の私も・・・・フェニックス家や冥界だけじゃなく、人間界のことも知りたいと思っていますから」

 

「レイヴェル・・・・」

 

そっか・・・・レイヴェルはそう思っているのか。

 

「だから、今日のデートはとても楽しみにしていたのです。朧様と一緒にいられるからというのもそうですが・・・・人間界のことを少しでも知るいい機会でしたので」

 

君は外の世界に関心を向けているんだね。それはとても素敵なことだ。夢見る少女というのは非常に魅力的だ。

 

けど・・・だけれど同時に無知で愚かだとも思うよ。だって、レイヴェルのそれは残酷さと絶望を知らないこその願いだから。俺のような目に遭うかもしれないって知らないからこその願いだから。

 

だが、俺はそんな無知さと愚かさも愛そう。俺が生きている限りは、君は無知で愚かな夢見る少女でい続ければいい。そんな君は・・・・とても愛らしいのだから。

 

「・・・だったら、今日のデートはより一層レイヴェルを楽しませないとな」

 

「はい!よろしくお願いいたします朧様!」

 

俺が心で思った事を一切表に出さずにレイヴェルの頭を撫でながら言うと、レイヴェルは笑顔で返事を返してきた。

 

『彼女の笑顔・・・・・あなたには眩しいかしら?』

 

ああ、眩しいよ。だから尊くて、愛らしくて・・・・・・見ていて苦しくもなるな。

 

『そう。それは何よりね』

 

何より、か。相変わらず性格の悪いこと。

 

『褒めないで頂戴。照れるわ。それよりも・・・・レイヴェルちゃん何か言いたげよ?』

 

え?

 

「あ、あの・・・・朧様」

 

ラムの言うとおりだった。レイヴェルは何か言いたそうにもじもじしてる。

 

これは・・・・・もしや告白タイム?

 

「ん?なんだレイヴェル?」

 

期待を込めて、俺はレイヴェルに聞き返す。さて、レイヴェルは何を言ってくるのか・・・

 

「その・・・・お手洗いに・・・・」

 

変に期待して申し訳ありませんでしたレイヴェルさん。そりゃ言いにくいよね。

 

「うん、いいよ。行っておいで。ここで待ってるから」

 

「ありがとうございます。では・・・・」

 

ぺこりと一度お辞儀した後、レイヴェルはお手洗いに行った。

 

さて、この隙に、と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どうも、兵藤一誠です。現在オカ研メンバーと共に朧の尾行真っ最中です。

 

「今のところは普通のデートをしているわね」

 

「そうですね。しっかりとエスコートしているようですし」

 

「・・・・・現状これといって問題はない」

 

「いえ、わかりませんわよ。この距離では会話までは聞こえませんので・・・・何か良からぬことを言ってる可能性もありますわ」

 

部長、木場、小猫ちゃん、朱乃先輩は朧達の様子を伺っている。なんというか・・・・すごいノリノリである。

 

「イッセーさん・・・・私、朧さんに対して罪悪感が・・・・」

 

この中で私を除いてほぼ唯一となってしまったアーシアは非常に申し訳なさそうにしている。わかるよアーシア。私も同じ気持ちだから。

 

(というか、私達水族館にまで来てなんでこんなことしてるんだろう・・・・普通に皆で水族館回ったほうが有意義な気がする。かといって提案したところで却下されそうなんだよなぁ・・・・・)

 

そんなことを考えていると・・・・私の携帯がなった。着信音からしてメールが届いたようだ。

 

「イッセー、尾行中はマナーモードにするか電源を落としておかなくちゃダメじゃない」

 

「すみません」

 

部長に咎められ、謝罪した後に私はメールを確認する。

 

「・・・・・あ」

 

「どうしたんですかイッセーさん?」

 

「・・・・・部長、皆。これ」

 

私は携帯のメール画面を皆に向けた。そこにはこう書かれている。

 

 

 

出歯亀乙(^Д^)

水族館にまで来て人間観察とか暇なの?ウケるわー

そんなことしてる暇があったら皆で楽しんだほうが有意義だと思いマース

 

 

 

 

「「「「・・・・・・」」」」

 

メール画面を見た皆は、思わず固まってしまっていた。文面が文面だからか、アーシア以外は怒りでこめかみをヒクつかせている。アーシアも苦笑い浮かべてるし。

 

・・・・実際私も、さっきまでこのメールの内容と同じようなこと考えてたけど、正直ムカついた。

 

「尾行・・・・・バレてたんですね」

 

「みたいだな・・・・」

 

いや、まあ正直バレても仕方ないとは思うけどね。だった私達・・・・それなりに目立ってたし。なんかこっち見てヒソヒソ言ってる人たくさんいたし。

 

「ふふっ・・・・ふふふふっ・・・・・」

 

「ぶ、部長?」

 

なにやら怪しげな笑みを浮かべる部長。ぶっちゃけ危ない人に見えてしまう。

 

「上等じゃない朧・・・・・そこまで言うなら徹底的に尾行しつくして・・・・」

 

「部長・・・・言いにくいんですが朧くんの姿がありません」

 

「・・・・え?」

 

変に火が入ってしまった部長に、木場が言う。先程まで朧がいた場所に視線を向けると、確かにいなかった。

 

「・・・・私達を撒くなんてやるわね朧」

 

いいえ部長。残念ながらこれに関しては朧が有能だとかそういう問題ではないです。どう見ても意識逸らしてた私達が原因です。まあ、朧はそれを見越してメール送ってきたんだろうけど。

 

「あの~・・・・部長?癪ですがここは朧の言うとおり水族館を楽しんだほうがよくないですか?」

 

私はここぞとばかりに提案してみる。部長、アーシア、朱乃先輩、小猫ちゃんと水族館に来る機会なんて滅多にないんだから楽しみたい。木場?まあ別にいるだけならいいよ。

 

「そうね・・・・・冷静に考えてみれば朧の尾行なんてしたってとくに面白いわけでもないし」

 

部長、それ今更過ぎます。

 

「せっかくだわ。皆でこの水族館を見て回りましょう。ライザーの件で最近は気を張っていたことだし」

 

「よっしゃ!」

 

部長のお許しが出て、私は思わず声を出して喜びを顕にした。

 

結果論だけど、ここまで尾行してて良かったと思う・・・・これもある意味朧のおかげかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はあ、まったく・・・・」

 

私は携帯(以前朧に渡されたもの)に送られてきたメールを見て思わずため息を吐いてしまった。

 

メールにはこう書かれている。

 

 

グレモリー達には尾行をやめさせる

完全に安全とは限らないけど、これで少しは気が楽になるか?

ともあれ引き続きついてくるといいよ

 

 

どうやら私の尾行は気づかれてしまったらしい。しかもその上で気を遣わせてグレモリー達を引き剥がし、挙句について来いと言われてしまった。

 

・・・・正直このメールが来た瞬間、私は一体何をしているんだと虚しくなったと同時に、尾行がバレたことに関して羞恥心で死にたくなった。

 

だけどまあ・・・・一応朧の厚意には感謝しよう。尾行をやめるわけにはいかないのだから。

 

・・・・あくまでも、朧があのうなじ女に私のことを何も言わないかどうか監視するためだ。決して、私個人が気になるからではない。断じてない。

 

そんなこと・・・・・あったとしても認めてやらないわ。




朧は結構気配に敏感なので尾行するのはほぼ無理です

まあ、幻術使わされて撒かれるよりは今回はだいぶマシですが・・・・

それでは次回もまたお楽しみに!

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