ハイスクールD×D ~それは現か幻か~ 作:DDX
それでは本編どうぞ
「そういえば、話を聞きに行って何か成果はあったの?」
食後にレイナーレの淹れてくれた美味しいコーヒーを飲んでいると、レイナーレが尋ねてきた。
レイナーレにはレーティングゲームがあるということは話してあるので、成果とは間違いなくその件についてだろう。
「んー・・・・・まああったといえばあったかな」
「随分と曖昧な返事の仕方するわね」
「それはしょうがないさ。成果はあっても結果に影響は与えそうにないからな」
「は?どういうこと?」
レイナーレはわけがわからないといった様子だ。
「シトリーから話を聞いて、向かうが建てそうな作戦はいくつか予測できたし、グレモリー達のための策も思いついた。あと、警戒するべき点もな。それが得られた成果だ。だが、それがあろうがなかろうがほぼ確実に訪れるであろう結果には大して影響は与えないと思う」
「・・・・その結果っていうのは?」
「どれだけ策を巡らせようがグレモリー達は負けるって結果だよ」
「なるほど・・・・・朧が参謀になって策を考えても結果を覆せないのね」
「参謀って・・・・俺はそんな大したもんじゃないよ」
俺はただ最低限やることをやってるだけだからな。グレモリー達の参謀だなんてお断りだっての。
「というか・・・・お前なんか俺のこと過大評価してないか?」
「正当な評価よ。これでも私あなたよりも長く生きてるのよ?見る目はそれなりに確かだと思うわ」
「なるほど・・・・・ところでレイナーレの歳って・・・・」
「刺すわよ?」
「ごめん」
清々しいまでの笑顔を浮かべ、光の槍を俺に向けてくるレイナーレ。正直簡単には刺されないとは思うけど・・・・今のレイナーレの迫力には少々気圧されてしまう。
『当然よ。女性に年齢を聞こうなんて愚かでしかないわよ?』
肝に銘じておこう。
「まあ、それはともかくとして、朧の策で結果が覆らせられないっていうことは相手のフェニックス家の悪魔とその眷属はそれだけ強いのかしら?あるいはグレモリー達が弱いから?」
「きっついなレイナーレ・・・・・でもまあ実際その通りなところはあるけど」
シトリーから聞いた感じではライザーの眷属とグレモリーの眷属の力量は総合力ならほぼ互角ってところだろう。グレモリー側は数では劣るが、質・・・・というよりポテンシャルは全員高いからな。イッセーについては経験が浅いから若干力不足だが、姫島、塔城、木場の実力でそれは補えるだろう。
だが・・・・・それでも、眷属同士の戦いは分が悪い。なにせ相手はフェニックス・・・・・確実にレーティングゲームには涙が持ち込まれる。アレを使われてばグレモリー側が不利なのは明白だ。数が少ないっていうのもかなり不味いしな。
それだけでも勝率を相当に下げているというのに・・・・問題
この時点で・・・・勝率は限りなくゼロに近いといっていいだろう。
「はあ・・・・勝てないのわかってるのに策を考えるとかテンション上がんねぇな」
「まあ気持ちはわからないでもないわよ。でも、そのゲームで勝てないとうなじ女・・・・レイヴェルとかいったかしら?そいつを口説き落とせないんじゃないの?だったらもうちょっとやる気出しなさいよ」
やる気ねぇ・・・・というか、今更だけど、レイナーレ的にはレイヴェルを口説き落とそうとしてることに関してはどう考えてるんだ?
『それについてはあなたが気にする必用はないわ。彼女の中ではもう結論は出てるようだから』
え?そうなのか?ならいいけど・・・・・それよりも、と。
「その事なんだけどさ・・・・・実はゲームに負けるってことを想定して別に口説く方法を考えてみたんだけどそっちの方がよさげなんだよね」
「・・・・は?」
「いやぁ、だから・・・・ぶっちゃけ俺個人の目的としてはグレモリー達に負けてもらっても構わないんだよ。むしろ大歓迎的な?」
正直リスクもあるし、うまくいくとも限らないし、うまくいったとしても面倒なことにはなりそうだけど・・・・・でも成功した時の見返りが超でかい。だから俺としては負けてもらっても一向に構わなくなったんだ。
「呆れた・・・・・それってつまり、グレモリー達が勝てるようにすることを完全に諦めたこと?あなたって幻術使いのくせにリアリストね」
「いやいや、むしろ幻術使いだからこそリアリストって言ったほうが俺の場合は正しいぞ?なにせ俺は現実を歪ませる幻術使いだからな」
「本当にタチが悪いわね・・・・」
「あはは!褒め言葉として受け取っておくよ。でもまあ・・・・勝てるようにすることを完全に諦めたったいうのは否定させてもらうかな」
「え?」
「勝つための策は考え続けるさ。たとえ負けるとわかってても・・・・テンション上がらなくてもな」
正直気乗りはしない。それでもやる。やらなければならない。だって俺は・・・・
「だって俺・・・・・これでもオカ研の部員の一人だからさ」
「・・・・・あなた、馬鹿じゃないの?」
レイナーレはいやに神妙な面持ちで・・・・・冷めた目で俺を見ながら言う。
「それってつまり、グレモリー達に情を抱いたってことよね?兵藤一誠やアーシアはまだいいわ。二人には罪悪感を抱いているでしょうから情のひとつも沸くでしょうね。特に兵藤一誠はあなたの親友なんだから。でも・・・・それ以外のグレモリーとグレモリーの眷属は違う。彼女達に情を抱くのは愚かでしかないわ。とんだ愚者ね」
「愚者とは・・・・酷い言いようだな」
「愚者に愚者と言って何が悪いの?わかってるでしょう?グレモリー達とはいずれ敵対する可能性があるのよ?あなたは我欲のために私を生き返らせ、この家に住まわせてくれている。今は隠し通せているけど・・・・それがいつまでも続くと本当に思っているの?」
まあ・・・・レイナーレの言ってることはもっともだな。
確かに今はレイナーレの存在を隠しとおせているが・・・・いつまで続くかなんてわかったものじゃない。
隠し通すのは難しい・・・・なんのきっかけでレイナーレのことがバレてしまうかわからない。バレてしまったとしても、敵対しないように口車に乗せるつもりではあるが・・・・・成功するとは限らない。
それなのにグレモリー達に情を抱くなど確かに愚かだろう。情を抱いてしまえば・・・・いざ敵対してしまったら、いくら俺でも心を痛めてしまうだろう。
レイナーレはそれを理解してくれている・・・・・つまり、レイナーレは俺を気遣って厳しい言葉を口にしているのだ。
「ああもう・・・・・本当にいい女だなぁ」
俺は愛おしさのあまりレイナーレの体を引き寄せ、抱きしめていた。
言葉は辛辣だけど、それでも俺に対して気遣ってくれる・・・・・こんなにいい女、抱きしめられずにいられない。
「・・・・はぐらかさないで。そんなことしたって、あなたが愚者であることには変わらない」
「ああ、そうだな。酷い言いようだが・・・・確かに俺は愚者だ。でも、仕方ないさ」
「仕方ない?」
「そう。袖振り合うも他生の縁・・・・・どんな理由、経緯があって将来的に敵対する可能性があるとしても、もう関わっちまったんだ。だったら・・・・・情を抱いてしまうのは人間のさがってやつだ」
そう・・・・どんな力を持ち、どんな存在であろうとも所詮俺は人間に過ぎない。人間らしく情を抱いてほだされる・・・・そんな人間らしさには逆らえないんだ。
「・・・・人間というのは損な性質を兼ね備えているのね」
「だな。だけど、レイナーレも人のこと言えないだろ?」
「は?私が?なんでよ?」
「レイナーレだって自分を殺した俺に情を抱いてるじゃないか」
殺した相手に情を抱いてるんだ・・・・俺のこと言えないだろ。
「はあ・・・・ええ、そうね。あなたを愚者と断ずるのなら、私だって間違いなく愚者よ。でも・・・・別にそれでいいわ。愚者だろうがなんだろうが・・・・私は何があってもあなたの傍に居るって決めたんだから」
レイナーレは俺の背に手を回し、ギュッと抱きしめ返しながら言ってくる。
「そっか・・・・ありがとうレイナーレ。俺も決めてるよ。何があっても・・・・グレモリー達と、アーシアと、イッセーと敵対することになっても俺はレイナーレを守って。レイナーレの傍にいるって。レイナーレを愛し続けって。そう・・・・決めてるから」
俺にとってはレイナーレが一番だ。グレモリー達やイッセーや・・・・・好みのうなじを持つレイヴェル以上に大切だ。
だから俺は・・・・・レイナーレを想い続ける。何があってもだ。
「そう・・・・それ、嘘じゃないわよね?」
「信用ないのな」
「幻術使いは嘘つき」
「そうだけども」
なんか最近そのフレーズ何度も聞くなぁ・・・・自覚はあるし俺が自分で言ったようなものだけど。
でもまあ・・・・今回ばかりは、嘘にならないように最大限配慮するつもりだけどな。だってこれは・・・・これだけは嘘にしたくないから。
レイナーレを・・・・・愛しているから。
「今回は信じてくれてもいいよ」
「なら信じさせてみなさいよ」
俺とレイナーレは互いの顔を見つめ、ニヤリと笑みを浮かべ合いながら言った。
『暑いわねぇ。朧、冷房つけて頂戴』
ラムさん・・・・少しは空気読んでください。
レイナーレやレイヴェル優先でも朧はグレモリー眷属達の味方です
なので負け戦となるとわかっているので心境は複雑です
それでは次回もまたお楽しみに!