ハイスクールD×D ~それは現か幻か~ 作:DDX
こんなレイナーレ・・・・個人的にはアリだと思うんだ
どんなレイナーレかは見てのお楽しみ
それでは本編どうぞ
「♪~」
「・・・・・やけに機嫌が良さそうね」
夕食の折、私は目の前で機嫌よさげに鼻歌を歌う朧に声をかける。ちなみに今日の夕食はミートローフ・・・・・憎らしいけどやはりこの男の作る料理は美味しい。
いや、今はそんなこととうでもいいわね。この男がどうして機嫌がいいのか・・・・それを知らなければ。
・・・・なんぜそんなこと知らなければならないと思うのかは置いておく。
「ん?わかる?わかっちゃう?いや~、やっぱり一緒に暮らしてるレイナーレにはわかっちゃうか~」
ヘラッと気の抜けた笑顔で言う朧・・・・正直うざいと思ったけれど、突っ込まないでおこう。話が逸れる。
「いいから答えなさい。どうしてそんなに機嫌がいいの?」
「ふっふっふ・・・・実はなレイナーレ。今日俺好みのうなじを持った女の子と会ったんだよ~!」
「・・・・は?」
もの凄く嬉しそうに言う朧だが、私はあまりのことにポカンとしてしまった。
髪ならまだわかる。コイツは重度の髪フェチでそれが理由で私はこの家に連れてこられたのだから。
でも・・・・なんでうなじ?
「うな・・・・じ?え?髪じゃなくて?」
一応・・・・言い間違いではないかと思って聞き返してみた。
「うんにゃうなじであってるよ・・・・てか言わなかったっけ?俺は髪だけじゃなくて重度のうなじ、くびれ、鎖骨フェチでもあるんだよ。あ、最近は太ももと瞳にもグッとくる」
・・・・馬鹿だとは、馬鹿だとは思っていたけれどこれは重症だ。
うなじ?くびれ?鎖骨?そして太ももに瞳?
胸やお尻ならまだ理解できるけど・・・・どんだけマニアックなの?
しかも・・・・俺好みって・・・・
「・・・・・つまり今日あなた好みのうなじの持ち主と会えたってことね」
「そうそう!しかもちょっと話したんだけど好感触!あと一手二手仕掛ければものにできそうなんだよね!」
・・・・へえ、向こうも悪い気はしてないのね。それに・・・・ものにできるって・・・・
じゃあそいつを堕とすことができたら・・・・私はどうなるの?
私は・・・・もういらないってこと?
私は捨てられるってこと?
私は・・・・・必要とされない?
な・・・に?この気持ち?なんでこんなにも・・・・こんなにも・・・・?
「・・・・」
「ん?どうしたレイナーレ?」
「・・・・別に。なんでもないわ」
自分の声が酷く冷めているのがわかる。声だけじゃなく心も、感情も、思考も・・・・何もかもが冷たい。
「・・・・ご馳走様」
「え?ご馳走様って・・・・まだ残ってるぞ?」
確かに朧の言うとおり、おかずはまだ残っている。でも・・・今は食べる気が全く起きない。
いつもなら・・・・何も言われなくたって全部食べてたのに。美味しいから・・・・残したくなんかなかったのに。
「別に私の勝手でしょ。一々口出ししないで」
「そっか・・・悪い」
「・・・・食器は置いておくから洗っておいて。それと・・・・・今日は髪洗わせないから。乾かすのも自分でやる」
「いっ!?な、なんで!?」
髪を自分で洗って乾かすと言ったら酷く狼狽えてみせる朧。
何狼狽えてるのよ・・・・どうせそのうなじ女が手に入ったら私は用済みになってここから追い出すんでしょう?ならいいじゃない。
「・・・・私はあなたが生き返らせてここにいる。だけど勘違いしないで・・・・私はあなたに全てを委ねているわけじゃないから」
私はそう朧に言い捨てた後、朧に背を向けてその場から離れた。
「・・・ああ、もうっ。鬱陶しい」
お風呂から出た私は、この家に用意された自分の部屋で久方ぶりに髪をドライヤーで乾かしていたのだが・・・・どうにもしっくりこない。
以前・・・・朧にやってもらうようになる前、自分でどうやって乾かしていたのかしっかり覚えていて、その通りにしてるのに・・・・・何故か私の心中に不快感が募っていった。
乾かすのだけでない・・・・洗う時もそうだった。ほんの数日前までは自分で洗っていたのに・・・・違和感に襲われた。
「・・・・なんでこんなにイラついてるのかしら?」
誰もいない部屋で呟く私。その声は誰が聴いてもわかるほどに不機嫌さが混在しているものであった。
なんで・・・・なんで私がこんな気持ちにならなければならない?そもそもどうしてこんなに苛立ってるの?
わからない・・・・・自分のことなのに・・・・なんで?
「うふふっ・・・・悩ましげな美女というのは中々絵になるわね」
「・・・・え?」
突然・・・・私の耳に聞き覚えの一切ない女性の声が聞こえてきた。
声のする方には・・・・灰色の長髪に、朧と同じ灰色の瞳をした、ニコニコと愉快そうに笑っているのに・・・・何故か儚さを感じさせる女性がそこにいた。
「こんばんはレイナーレちゃん」
「あなた・・・・誰?」
「私はラム。朧の
「・・・・そう」
それは驚くべきことだった。だというのに、何故か私の中で違和感というものが働かない。
ゆえに感じてしまう・・・・彼女の言っている事は本当なのだと。そしてそれ故に、一々リアクションを取ることもなかった。
「その反応からして信じてくれたようね・・・・ダメねぇ。私のような不確かな存在の言うことを信じちゃうなんて」
「あいにくと、私は自分の信じたいものを信じるのよ。だからあなたが何を言っても知ったことではないわ」
「言うじゃない。流石は朧が気に入った女ね」
「・・・・朧が気に入った、か。まあ、うなじ女を口説き落とせたら捨てられるんでしょうけどね」
そうだ・・・・朧が話していたうなじ女を口説き落とせたらもう私は用済み。そうなれば私は・・・・
「やっぱり・・・・あなた勘違いしてたのね」
え?
「勘違い・・・・ですって?」
「ええ、そうよ。感謝しなさい。私はその勘違いを正すためにわざわざ朧に内緒で姿を表したってわけ」
「・・・・私が何を勘違いしているっていうのかしら?」
「・・・・あなた、朧がレイヴェルちゃん・・・・例のうなじの娘のことね。その女の子を朧が口説き落としたら自分は捨てられるって思ってるみたいだけど・・・そんなことないわよ。絶対にありえない」
「なんでそんなこと言えるの?」
「朧はあなたもレイヴェルちゃん、どちらも愛するつもりだからよ。なにせあの子にはハーレム願望があるんだから」
「・・・・は?」
あまりのことに一瞬私はキョトンとしてしまった。
朧に・・・・・ハーレム願望?
「・・・・私聞いてないんだけど?」
「それに関しては単純に朧が言い忘れてたのよ。あの子頭はいいけどうっかりしてるところがあるというか・・・・度々一言少なかったり余計な事言ったりするのよ。まあ、そういう抜けてるところも私は気に入ってるのだけれどね」
愉快そうに・・・・だけど、穏やかさも孕んだ表情で微笑むラム。その微笑みは・・・・・まるで家族に向けるようなものだと思った。
「まあとにかく、ハーレム願望がある以上、レイヴェルちゃんのためにレイナーレちゃんを諦めるだなんてありえないから安心なさい。ま、逆はありえるかもしれないけど」
「逆?」
「ええ。レイナーレちゃんのためなら・・・・きっと朧はレイヴェルちゃんを諦めるわ。レイナーレちゃんは朧にとって特別だから」
私が・・・・特別?朧にとって?
「どういうこと?」
「髪、うなじ、くびれ、鎖骨・・・・・それらが朧のフェチだけれど髪には特に深い執着を持っているのよ。いつも朧が言っているようにあなたの黒髪は朧にとってはこれ以上ないもの。たとえ他を差し置いてでもね」
「・・・・・喜べばいいのか呆れるべきなのか複雑ねそれ」
とりあえずラムの言っている事を信用するのなら私が捨てられることはないということだけれど・・・・・でもそれが髪への執着故だっていうのがどうにも納得いかない。
・・・・もしも髪の色が何らかの理由で黒以外になったら結局捨てられそうだし。
「喜べばいいのか・・・・ね。うふふふ」
「何笑ってるのよ」
「自分を特別扱いされてるのが喜ぶってことは・・・・あなたも少なからず朧の事を想っているということでしょう?それがわかって嬉しいのよ」
私が・・・・朧の事を想ってるか?何を言うかと思えば・・・・・当然じゃない。
確かに初めは自分を殺した相手だから憎しみの方が勝っていた。だけど・・・・まだ少しの間とはいえ朧と一緒に生活して嫌でも思い知らせれてしまったのだ。
朧は私を大切にしてくれているいうことに
朧は私の願いを可能な限り叶えようとしてくれているということに
そして朧は・・・・・私が今までに会ってきた誰よりも『いい男』だということに
確かに破天荒・・・・というか、明らかに変人ではある。だけど、それでも朧は・・・・悔しいけど格好いいし、私に対て真摯であり・・・・・なにより優しい。それが自分の幸せのため、自分の我欲を満たすためなのだから『いい人』ではないと言えるだろうけど・・・・『いい人』でなくても『いい男』ではあるとは思う。
だから好意の一つぐらい抱くに決まっている・・・・悔しいからまだ直接は言ってやらないけど。
「でもまあ・・・・だからこそ残念なこともあるけれど」
ラムは憂いを帯びた表情を浮かべた。
「残念なこと?なによそれ?」
「・・・・・そうね。本当は言うつもりはなかったのだけれど、レイナーレちゃんが朧の事を少なからず思っているのなら、言っておくべきでしょうね。朧は・・・・あなたのことを心の底から信頼しきれていないのよ」
それは私にとってそれなりにショックなことであった。
「朧が・・・・私のことを信頼しきれていない?私に・・・・・好意を抱いているのに?」
「仕方のないことなのよ。別にレイナーレちゃん個人がどうというわけではないのだけれど・・・・・朧は母親を堕天使に殺されてしまっているから」
「・・・・え?」
母親を・・・・堕天使に殺された?
「じゃあ朧は堕天使を憎んでいるの?だから・・・・私のことを信頼しきれてないということ?」
「そうよ」
・・・・確かに、どうして朧に家族がいないのかと気になったことはある。でも・・・・まさか母親が堕天使に殺されていただなんて。
それじゃあ堕天使に憎しみを抱いてるのも仕方がないし・・・・・私が信頼されなくたって仕方がない。
でも・・・・それならどうして・・・・
「どうして・・・・朧は憎い堕天使である私に好意を抱いているの?」
「それは単純よ。好意を抱くのは好きだから・・・・それ以上の理由もそれ以下の理由もない」
「・・・・その好きなのって私の髪?」
「それもあるわ。だけれど・・・・あなたとの生活で、あなた自身にも朧は惹かれるようになっているわ」
「私自身にも・・・・」
それは嬉しいわね・・・・なによ朧の奴。いつも髪髪って言ってるけどなんだかんだ私自身のことも・・・・
「まあ、朧ってよほどのことがない限り適応して好きになれるからある意味当然だけれど」
「そこでじっとしていなさい。この槍で貫いてあげるわ」
私は光の槍をラムに突き出しながら言う。
・・・・あとで朧にも突き刺してやろう。どうせ意味ないだろうけども。
「やめておきなさい。ここに居る私は幻よ。そんなことしたって意味ないわ」
くっ・・・・そういえばラムは朧の神器に宿る存在だったわね。幻でもおかしくないわ。
「それはともかくとして、現状としてはあなたは朧に信頼されていない・・・・だけれど、朧自身はあなたを信頼したいと思っているわ。だから・・・・可能ならば約束して。何があっても・・・朧を信じるって。朧のそばにいるって。そうすれば朧も・・・・きっとあなたを信じられるようになるから」
・・・・・何を言うかと思えば。
朧を信じる?
朧の傍にいる?
「はあ・・・・そんなできて当然のことをいちいち念を押して言わないでちょうだい。まさかその程度のことができないほど私が低能な女だとでも思っているの?」
だとしたら舐めるなってはなしよ。そんなことぐらい、言われるまでもないわ。
「・・・・うふふっ。私も朧のことを言えないわね?」
「どういうこと?」
「事あるごとに朧に女の強かさを舐めるなって言っていたのだけれど・・・・まさか女である私が舐めてしまうだなんて滑稽だわ。悔しいわ」
「そう・・・・ざまぁないわね」
「あら、手厳しい」
ニコニコと満足げな笑みを浮かべるラム。
その笑顔を見てると・・・・なんだか認められたと思えて嬉しかった。
「それじゃあ改めて言うまでもないのだけれど・・・・・朧の事お願いね」
「ええ。あなたの期待以上に信頼されてやるわよ。だから安心して見てなさい」
「そうさせてもらうわ・・・・さて、私はそろそろ失礼するわね。これ以上は朧に怪しまれちゃうかもしれないから」
ああ・・・・そういえば朧に内緒で話に来たって言ってたわね。
だったら・・・・
「一応聞くけれど・・・・あなたと話したってことは朧に言わないほうがいいのかしら?」
「ええ。秘密にしておいて頂戴。秘密は女を美しくする・・・・・秘密にすれば私もあなたも泊がつくわよ」
「・・・・なんというか、そういう発言をするわあなたが朧の相棒だって納得できるわ。そういう言い回し朧にそっくりね」
「私が朧にそっくりなんじゃなくて朧が私にそっくりなのだけれどね。なにせ朧がああいう性格になったのは6割方私のせいだから」
・・・・・どうやらラムに自覚はあるようだ。
「それじゃあ私はこれで・・・・ああ、そうそう。最後にもうひとつだけ言っておくわ」
「なに?」
「朧はたくさんの秘密を持っている。そしてその秘密は私達女のように美しさに磨きをかけるものではなく・・・・まるで絶望を詰め込んだパンドラの箱のようなものよ。底に希望が詰まっていないようなね。だから・・・・朧の秘密を知るときは、それをそれなりに覚悟しておきなさい」
朧の秘密が・・・・絶望を詰め込んだパンドラの箱?
母親を堕天使に殺された事以外にも・・・・まだ何かあるというの?
「言いたいことは以上よ。さようならレイナーレちゃん」
私が朧の秘密について考えている間に、ラムはその姿を消した。朧の下に戻ったのだろう。
「・・・・・随分とまあ好き放題言いたいこと言ってくれたわね」
自分が話したいことばっかり話して話が終わったらさようならって・・・・・とんだ自己中ね。そういう自分本位なところも朧に似てるわ。
ただ・・・・・朧の事をそれなりに教えてくれたことには感謝している。同時にあんな相棒をもった朧に同情も抱いたけど。
あの相棒とあの保護者・・・・朧ってもしかして女運ない?だったらせめて・・・・私ぐらいは朧にとっていい女であってもバチは当たらなそうね。
さしあたってはこのまだ湿り気を帯びた髪を朧に乾かしてもらおう。なんだかんだそれだって私にとっては夕食と引けをとらないぐらいの楽しみな時間になっているのだから。お風呂の時も・・・・朧に髪を洗ってもらおう。きっと朧は喜んでくれるから。
覚悟しなさい朧・・・・・絶対に私の事信頼させてやるんだから。
レイナーレの朧への好感度は着実に高まっております
まあ、朧は個人的に相当ないい男だと思うので仕方ないですね
まあ、朧の方はそれに気がついていないのですが・・・・
本命に対しては奥手になり、どこか鈍いですので
それでは次回もまたお楽しみに!