ハイスクールD×D ~それは現か幻か~ 作:DDX
結構重めです
それでは本編どうぞ
「へぇ・・・・・そんなことになってたのか」
レイヴェル達が帰った後、俺はイッセー達からおおよその事情を聞いた。
「部長の婚約を解消するためにレーティングゲームか・・・・・よほどあちらさんは婚約を成立させたいようですね」
「やはりあなたもそう思うかしら?」
「当然。向こうはレーティングゲーム経験者なんでしょう?それに対して部長達は知識はあって、ゲームの記録を見たことがあるかもしれませんが経験自体は無し。それをわかった上でレーティングゲームで決着をつけろだなんて黙って結婚しろって言ってるようなものでしょう」
まあ、貴族やら権力者にとって婚約ってのはそれだけ大事だっていうことだけど。それに関しては理解できる。
理解できるけど・・・・
「・・・・・胸糞わりぃな」
「おぼ・・・ろ?」
「・・・・ん?」
顔を上げると、皆が緊張したような面持ちをしている。
というより・・・・これは怯えてる?
『うふふっ・・・・あなた怒気が漏れ出してたわよ?あなたのそれって結構怖いのよねぇ』
マジか・・・・それは気づかなかった。
「あ~・・・・すみません皆さん。驚かせちゃいました?俺ってば純愛主義者なのでそういうお家事情ってやつが絡んだ婚約って嫌いなんですよね~。それでちょっとイラッときちゃいました~。てへっ♪」
「「「気持ち悪い」」」
空気を変えるためにおどけてみたのに気持ち悪いって言われてしまった・・・・・解せぬ。
「というか朧・・・・・あそこで口説きにかかるってお前どんだけ空気読めないんだよ」
イッセーが呆れたように俺に言ってくる。
「空気?何ソレ美味しいの?そんなものより恋愛っしょ恋愛!ああ・・・・レイヴェル本当によかったな~。あのうなじ・・・・舐めて甘噛みしてキスマーク残したいなぁ」
「「「変態」」」
変態?結構だね。誰になんと言われようと構わんさ!
『そこは解せぬじゃないのね』
だって自覚してるもん。
「というより・・・・先輩本気なんですか?」
「え?まあ本気だけど・・・・なにか問題ある?」
「問題もなにも・・・・朧くんは人間で相手は悪魔なんだよ?」
「その上名門のフェニックス家の令嬢相手に・・・・正気の沙汰とは思えないわ」
まあ、塔城、木場、姫島の3人が言ってる事ももっともだ。相手は悪魔の上に名門の令嬢・・・・そんな相手に人間の俺が恋愛だなんて馬鹿げてると思っているのだろう。
だが・・・・・
「・・・・じゃあ逆に聞きますけど、自分の好みの相手が目の前にいたとして、種族が違うという理由だけで諦められるんですか?相手のお家事情を考慮するんですか?」
「「「・・・・・」」」
俺の問いかけに、皆沈黙してしまった。
「ほら、何も言えないでしょう?だからこそ俺は断言しますよ?俺は自分が間違ってるとは思わない。俺はレイヴェルに惚れた。だからレイヴェルを堕とすことに全力を尽くす・・・・それが恋愛でしょう?」
惚れたから・・・・追い求める理由はそれで十分。種族やらお家事情ってのは確かに障害になり得るが、逆に言えば俺にとっては障害にしかなりえない。
それが無理だという理由にならないならば、俺は俺のやりたいようにやるだけだ。
『そうやってレイナーレちゃんだってうちに連れてきちゃったものねあなたは』
ああ。後悔なんて一切してないし、してよかったと思っている。
『だったら今回も・・・・せいぜいモノにできるように頑張りなさい』
当然だな。あの感じじゃ好感触だったし・・・・策を巡らせればいけるかもしれない。
ふふふっ・・・・・胸が踊るなぁ。
「私は・・・・少しわかるような気がします」
「アーシア?」
「その・・・・・好きになってしまったのならどんな事情があったとしても・・・・諦めないことが大切だと思います」
「うん。ありがとうアーシア」
微笑みを浮かべながら言うアーシアに、俺は感謝の言葉を述べる。
・・・・マジにこの子純粋だなぁ。なんていうか妹にしたい。
『やめておきなさい。ゲスなあなたには勿体無いわ』
そんなことぐらいわかっとるわ。
でもまあ・・・・アーシアは応援してくれてるみたいだし、その為にも打てる手を打つとしますか。
「まあ、そういうわけもありまして・・・・レイヴェルを堕とすためにも部長達には是非ともレーティングゲームには是非とも勝っていただけないとですね」
「え?どうしてそうなるのかしら?それは何も関係のないことでしょう?」
なぜ俺がレイヴェルを堕とすこととレーティングゲームに勝利することが繋がるのかが理解できていないのであろう。グレモリーは首を傾げていた。
「あのですね部長?レイヴェルもフェニックス家の人間であるのなら、既に婚約者がいる可能性はあるでしょう?部長とライザーの例もあるわけですし。そして仮にその通りだとして、部長達が不利な条件でのレーティングゲームに勝利すれば・・・・・計略にまみれた婚約よりも、純粋な恋愛の方がいいと思ってくれる可能性もなきにしもあらずです。俺はそれを狙っています」
「それって・・・・私達の勝利をダシにあの子に言い寄るってことか?」
「その通りだよイッセー!花丸をあげましょう!」
「いや、いらないけど・・・流石というかなんというか・・・・」
「それ褒めてる?」
「褒めてない。けど、感心はしてる」
流石は我が親友イッセー。こんなげすな発想で感心してくれるのは俺ぐらいだよ。
「まあ、そんなわけで俺は皆さんの勝利を願っておりますし、その為にできる事は可能な限りするつもりです。さしあたっては・・・・・姫島先輩、塔城ちゃん。ちょっとお話があるのでついてきてもらえます?」
「「・・・・え?」」
いきなり俺に名指しされたことに、二人はキョトンとしてしまった。
「私と朱乃先輩に話って・・・・一体何の話ですか?」
「ちょっと・・・・二人と愛について話し会おうかと思ってね」
「・・・朧。こんな時にふざけないでちょうだい」
グレモリーがキッと俺を睨んできた。
ふざけてるって思われちゃったかぁ・・・・結構本気なんだけどねぇ。
「ふざけてるって思うのは別に構いませんが、大事な話ではありますよ。だからこそ・・・・・ここで話すのはやめたほうがいいのでしょうけど」
「まさかあなた・・・・」
俺がイッセーとアーシアの方にチラッ視線を向けながら言うと、グレモリーは察してくれたようだ。グレモリーだけでなく、木場もそのようで同じような表情をしている。
「朱乃、小猫。あなた達はどうしたい?あなた達の意思を尊重するわ」
「・・・・朧先輩と話すことは何もありません」
塔城は俺と話をすることを拒否した。
まあ、別に無理強いするつもりはないし・・・・・本人にとってはデリケートなことだ。仕方がない。
さて、姫島の方は・・・・
「私は・・・・いいですわ。話をしてきます部長」
姫島の方は了承してくれた。まあ、あくまでも了承してくれただけで・・・・俺の言うことを聞いてくれるとは限らないが。
「では、行きましょう姫島先輩。あ、話が終わったら俺はそのまま帰ったほうがいいですか?今日はもう部活どころではないでしょうし」
「そうね。あなたの話が終わったら、朱乃と作戦会議をするつもりだから帰っていいわ」
「じゃあ荷物は持っていきますね・・・・・塔城ちゃん」
俺は拾い上げた鞄を開いて、中からクッキーの入った袋を塔城に渡した。
「・・・・これは?」
「昨日焼いたクッキー。塔城ちゃんの分のね。あ、皆の分ももちろんありますので」
俺は鞄から塔城に渡したのと同じ量のクッキーが入った袋を出して机に置いた。
「・・・・どうして私の分だけ別にあるんです?」
「塔城ちゃんいつも俺の作ったお菓子を美味しそうに食べてくれるからね。だから塔城ちゃんの分だけ別に多めに用意しておいたんだ。さっきのお詫びってわけではないけど・・・・受け取ってくれる?」
「・・・・ありがとうございます」
塔城は素直に受け取ってくれた。
まあ、こんなのでチャラになったとは全く思ってはいないけどね。
「お礼なんていらないよ・・・・それでは皆さん、また明日」
軽く手をひらひらと振って挨拶した後、俺は姫島と話をするために旧校舎の適当な部屋へと向かった。
「・・・それで?話っていうのはなにかしら?」
姫島は俺を鋭く睨みつけながら尋ねてくる。
「言ったでしょう。愛について話し合いたいんですよ」
「・・・・茶化さないで欲しいですわ」
「全く見当違いでもないと思うんですけどね。だって・・・あなたの秘められた力は愛ゆえのものとも言えるんですから」
「・・・・・」
さらに目つきが険しくなる姫島。これは・・・・予想以上の憎悪のようだ。まあ、無理もないけれど。
「あなた・・・・どこまでしているの?」
「大体の事情は知ってしますよ。保護者の悪魔に聞いていますので」
「人間にそんなことまで話すなんて・・・・・随分と不容易な悪魔ですわね」
「それに関しては同感ですが・・・・まあ、今それを議論しても仕方ないでしょう。なので、まだるっこしいこと無しで言わせてもらいますが・・・・・レーティングゲームに本気で勝ちたいと思うのなら雷光の力を解放することをお勧めしますよ?」
普段姫島は雷の魔力を使って戦うが・・・・姫島にはそれ以上のものがある。
それは、姫島の血に由縁したものであった。姫島は元々堕天使と人間のハーフ・・・・ゆえに堕天使の光の力を使えるのだ。
もっとも・・・・姫島はその父親を憎んでいるようだが。
「姫島先輩は堕天使・・・・父親に対して強い憎しみを抱いているんですよね?だから雷光の力を使うことを拒んでいる。だけれど・・・・ライザーとのレーティングゲームに勝ちたければそれを気にする余裕などはありませんよ?悪魔は光に弱い・・・・・雷光の力を使わないのはあまりに勿体ない」
「勿体無い・・・・ですって?」
ビリッと、姫島の周囲に一筋の雷が走る。
「何も知らないのに・・・・私の気持ちも知らないのに勝手なことを言わないで!」
バチバチと激しい雷をその身に纏いながら、姫島は俺に怒号を飛ばす。
俺に雷を放ってもおかしくないほどの怒りを感じるが・・・・それでも、実際にやらないあたり幾分か冷静なのだろう。
「私の気持ちも知らないのに・・・か。それは違いますよ姫島先輩。俺は、ある意味では誰よりも・・・・それこそあなたの主である部長よりもあなたの気持ちを理解できる」
「ふざけたこと言わないで!」
「ふざけてなんていませんよ。だって・・・・俺は母親を堕天使に殺されているんですから」
「・・・・・え?」
俺の発言を聞いて・・・・姫島の纏っていた雷の勢いが弱まった。
「俺の母親は堕天使に殺された。それもおよそ1年もの間陵辱された挙句にです」
「ッ!!そ、それはいつもの嘘かしら?」
「姫島先輩がそう思うのならそれでいいですよ。ただ・・・・・真実ですけどね」
そう・・・・俺の母親は堕天使に殺されたんだ。
今でも容易に思い返すことができる。堕天使共に陵辱される母さんの姿が。そして・・・・・俺をかばって堕天使の光の槍に貫かれる母さんの姿が。
「俺も・・・・同じですよ。俺だって堕天使が憎くて憎くて堪らない。でも・・・・・そんな俺だからこそ言わせてもらいます。過去に囚われ、縛られ、力を押さえ込んでしまっては・・・・・守りたいものも守れなくなってしまう。それが嫌なら・・・・その力を解き放つべきなんです」
・・・・別に姫島を想って言っているわけではない。ただ、レーティングゲームでライザー達に勝ってくれた方がレイヴェルを落すのに都合がいいから言っているに過ぎない。
そう・・・・・それだけだ。
「どうしますか?憎しみを押さえ込み力を使うか、あるいは憎しみを抱いて力を封じるか・・・・・選ぶのは姫島先輩です」
「・・・・・」
俺に問われ、姫島は黙り込む。おそらくどうするべきか、どうしたいのかを考えているのだろう。
そして・・・・・しばしの沈黙の後、姫島は答える。
「私は・・・・雷光の力は使いませんわ。決めたもの・・・・・あの力は絶対に使わないと。使わずに・・・・雷の巫女としてリアスの女王の務めを果たすと」
姫島が選んだ答えは・・・・雷光の力を使わないというものだった。
姫島の目からは強い決意が感じられた・・・・・これは何を言っても無駄だろう。
「・・・・・わかりました。姫島先輩がそう決めたというのならそれでいいと思います。嫌なことを聞いてすみませんでした」
「別に構いませんわ。あなたも・・・・言いたくないことを話したと思いますし」
「・・・・まあ、それなりにはですね」
本当はそれなりどころではないのだが・・・・・俺としたことが姫島に親近感でも湧いてしまったのだろうか?
それで・・・・話してしまったのか?
我ながら・・・・馬鹿らしいな。
「・・・・一つだけ教えて。あなたがあの堕天使、レイナーレを殺したのは・・・・憎いから?」
・・・・まあ、それは聞かれても仕方がないか。
「・・・・違いますよ。堕天使は憎いですが・・・・彼女を殺した理由は以前話したとおりです。それ以上でも以下でもない」
そう・・・・堕天使は憎いが、それでもレイナーレが好きなのは事実だ。
もっとも・・・・憎さゆえに、信用も信頼もしきれていないのだが。
「・・・・話はここまでにしましょう。お付き合いいただきありがとうございます姫島先輩。それでは今日はこれにてさようなら」
俺は姫島に踵を返す。
と、そうだ・・・・まだ言っておかなければならないことがあったな。
「姫島先輩・・・・・どうか後悔無きように」
姫島先輩の方へと振り返ることなくそう告げて、俺は部屋から出て行った。
朧の母親を殺した堕天使は実は原作にいます
それが誰かはいずれわかりますし邂逅した折には・・・・
それでは次回もまたお楽しみに!