魔法少女と偽りのヒーロー   作:カオスロイドR

25 / 30
シリアス回


第24話 すれ違ってしまった思い

【一真サイト】

 

夕方、魔法少女体験コースと称して戦う力のないただの一般人であるまどかさんとさやかを魔女の結界に連れて 魔女を倒した帰り道。

 

「・・・いや悪いけど魔法少女体験コースは今日でおしまいだ。これ以上続けるなら本気で止めさせてもらう」

 

俺はマミさんにそう告げる。

 

「な、何を冗談言ってるの?一真君。まだほかに教える事が・・・」

 

俺の言葉に不信と驚愕の表情を浮かべるマミさん。

 

「冗談なんかじゃないよ、俺は本気だ。今日は我慢したけど本来なら危険な魔女の結界に一般人を連れて来るなんて許されない事だ。さすがにこれ以上は見逃す事はできない。」

 

「でも彼女達は選ばれた・・・」

 

まだ二人の勧誘を諦めきれないようだ。

 

何がここまで彼女を突き動かすのだろうか?

 

「ただキュゥべえが見えるだけで選ばれたんじゃない。ただの偶然だ」

 

「そ、それは・・・」

 

キュゥべえ・・・いやインキュベーターは絶望などの負の感情で黒く濁り切ったソウルジェムがグリーフシードへと変質し魔法少女が魔女になる時に発生するエネルギーを回収して宇宙の寿命を延ばす事らしい。

 

インキュベーター曰く人類は家畜で個人の意思や生命などなんとも思っていない。

 

彼女達は選ばれたのでなくインキュベーターにとって思春期特有の性格や問題を抱えそれがエネルギー効率にたまたま利用しやすかっただけだ。

 

だがそれをマミさんは知らない。

 

そしてそれを話すこともできない。

 

「一真君はやっぱり今でも私達が魔法少女になる事は反対なの?」

 

まどかさんが怯えながら訪ねてくる。

 

「当然だよ、友達が危険な事をしようとしてたら体を張って止めるのは当たり前の事だ」

 

正直に胸の内を隠さず話す。

 

杏子ちゃんやマミさんを助けられなかった俺が言えた義理じゃないがこれ以上犠牲者を増やすわけにはいかない。

 

ただの偽善で自己満足なのかもしれないが優しいまどかさんと明るいさやかさんに危険な目に遭わせたくない。

 

「で、でも・・・」

 

「まどかさん、選ばれたからって無理にする必要なんかないよ。他のみんなが戦ってるからって自分も戦わないとって思ってない?」

 

「・・・」

 

返事が詰まるって事は図星か・・・

 

思わず苦笑をもらしそうになる。

 

まどかさんらしいな。

 

「協力してくれようとする気持ちは嬉しいよ。でも自分を抑えてまで戦ってほしくない」

 

「み、みんなが戦ってるのに私だけ逃げたくないよ」

 

まどかさんが涙目で訴えてくる。

 

こ、これを否定しないといけないのか・・・

 

罪悪感が半端ないんですけど。

 

でも彼女自身のためにもここは優しさを捨て心を鬼にならなくちゃ。

 

「確かに友達が戦ってるのに自分は見てるだけでいいのかって思ってしまうかもしれない。でもそれだけで俺達に合わせて戦っていたらいずれ君の心が潰れる。一緒に戦うだけが仲間ってことじゃない、君は優しいから魔法少女として戦ってもらうより友人として平和な日常で魔女との戦いに疲れ果てている時に笑顔で俺達を迎えてほしいんだ」

 

「・・・・・・・」

 

考え込むまどかさん。

 

少しばかり卑怯な言い方だったかな。

 

分かってくれたらいいけど。

 

《やれやれ僕の邪魔しないでもらいたいな城戸一真、せっかくまどかがもう少しで契約する気になってくれてたのに》

 

黙れよ女の子を喰い物しているペテン師が…

 

色々と怒鳴り散らしたいが落ち着いて冷静になるんだ。

 

すでに魔法少女になってしまったマミさんと杏子ちゃんの為に。

 

「俺は戦いの恐ろしさと魔法少女じゃなくても出来る事を話してるだけだ。安易に契約して一生後悔しないように。メリットだけを話すのはフェアじゃないからな。それとも何か問題でもあるのか?」

 

《……》

 

だんまりか、そうだろうなここで魔法少女とソウルジェムの秘密を喋ったら誰も絶対に契約しなくなるから言える訳がないか。

 

感情が無いとか言ってるがさすがにそこは理解しているな。

 

もっと攻めてやりたい所だがここには杏子ちゃんとマミさんがいる。

 

攻めすぎてソウルジェムの秘密と魔女との本当の関係を喋られたらマミさんのメンタルがヤバイ。

 

ここらで退いておくか。

 

「一真、あたしは戦えるよ!みんなを護る覚悟もある!」

 

今度はさやかさんか。

 

さやかさんは他の四人に比べて精神が弱くて魔女化が早かったし何より上条が暴走しそうだからも彼女も魔法少女になってほしいんだけどな。

 

原作どおり魔女になったしまったら今の俺に打つ手はない。

 

それにしても覚悟だと・・・?何も知らずにふざけるなよ・・・

 

「みんなを護る覚悟?人知れず賞賛も感謝もされることもなく、さやかさんの言うみんなの中には犯罪者や人の善意を利用して食い物にしている最低な奴らもいる。さやかさんの言っている理想の魔法少女はそんな人間も分け隔てなく助けないといけない。そんな物語の勇者や英雄みたいな自己犠牲の覚悟が本当にあるの?」

 

「う・・・そ、それは・・・」

 

押し黙ってしまうさやかさん。

 

やはりそこまで考えてなかったか。

 

そういえばさやかさんは自分の理想の正義と現実の違いに押し潰されたのも魔女化の要因のひとつだったな。

 

だったらここではっきり言っておくか。

 

「命を懸けるほどの願いもなく生半可な覚悟で魔法少女になるな!」

 

「うう…」

 

強く叱咤されてうなだれるさやかさん。

 

さすがに自分の所為で女の子が泣きそうな表情になると気が重いな・・・

 

ごめんね、でもこれだけは強く言わないといけない。

 

君達が絶望に押しつぶされ不幸にならない為に。

 

まどかさんはしっかりしているし、さやかさんもお調子者の所はあるけど願いごとが決まらなければそうそうバカなマネには走らないと思うが用心に越したことはない。

 

「いいかげんにして一真君!鹿目さんや美樹さんの思いを踏みにじる気?」

 

後輩達を攻められついにマミさんが怒って怒鳴る。

 

せっかく魔法少女の仲間が増えるかもしれないのにそのやる気を削がれたら怒るのは当然か。

 

正直、魔法少女のデメリットとこれから起こるマミさんの死、さやかさんの魔女化とそれに伴う杏子ちゃんの自爆を知らなければ仲間が増えることに浮かれて俺もマミさんの考えに賛同してたかもしれない。

 

けど知ってしまってるからこそここで甘い顔を見せられない。

 

「俺は当たり前の事を言ってるだけだよ、魔法少女といってもただの人間で万能じゃない。それに前回と今回の魔女はまだ対処できたけど体験コースを続けていく内に俺達三人でも勝てない魔女が現れた時はどうするつもりなの?もし俺達が負けたらなんの力のない二人は犠牲になってしまう。魔女の犠牲になりそうになったコウちゃんのように・・・それともその場でどうでもいい願いで契約させて二人に後悔させながら魔女と戦う宿命を背負わせるの?」

 

「そ、それは・・・」

 

マミさんが俺に指摘され言葉がつまる。

 

小学生の頃、あの銀の魔女との戦いはマミさんにとっても決して忘れてはならない戦いの一つだから思う所があるのだろう。

 

 

 

~~まどかサイド~~

 

一真君に言われて私は何も言い返せなかった。

 

さやかちゃんも一真君に反論できず悔しくて泣きそうな顔をしている。

 

そして今も一真君とマミさんの言い争いをただ茫然と見ているしかない。

 

一緒に戦っている仲間なのになんで二人が言い争うの?

 

「ねえ?杏子、コウちゃんって誰なの?なんで悪い魔女と一緒に戦うって言ってるのに私達あそこまで一真に言われなくちゃならないんだよ!?」

 

泣きそうだったさやかちゃんが袖で涙を拭いて杏子ちゃんに話し掛ける。

 

そうだ、さっき一真君が言ってた『コウちゃん』って?

 

一緒に戦っている杏子ちゃんなら知ってるのかな。

 

「・・・そうだな、このまま一真が悪者になっちまうのも癪だし怒る理由を知ればお前らも納得するかもしれない。別に口止めされてもねえから教えてやるよ」

 

「やっぱりなにかあったんだね」

 

「・・・ああ、あれはあたし達がまだ小学生の頃だ」

 

「しょ、小学生って…」

 

そんな時から杏子ちゃん達は魔女と命懸けで戦ってたの!

 

さやかちゃんも同じ事を思ったのか驚いた顔している。

 

「続けるぞ…見滝原公園でいなくなった子供を探す母親が居てアタシと一真はその子供を探しながら魔女を追っていた。そして魔女の反応を見つけ結界に跳び込みその時に初めてマミさんと出会ったんだ」

 

それが一真君達とマミさんの出会い。

 

「魔女の結界の中で探してた子供、コウちゃんって五才くらいの男の子が魔女に襲われて摂りこまれそうになっていた」

 

「ひ、ひどい魔女はそんな小さな子供まで襲うの!?」

 

私には弟のタツヤがいる。

 

もしタツヤが襲われたらと思ったら怖くて体の振るえが止まらなかった。

 

「アタシと一真とマミさんの三人はなんとかして助けようとしたんだが魔女は子供を盾にしてその上戦いの中で魔女が使い魔をとりこんでパワーアップしやがってアタシ達三人はやられそうになった」

 

「そ、それでその子供どうなったの?」

 

「安心しろよまどか。魔女は一真が倒して助けた子供はちゃんと母親の元に送り届けた・・・」

 

よかったコウちゃんは助かったんだ。

 

私とさやかちゃんがほっと胸をなでおろしていると

 

「一真が左腕を犠牲にしてな…」

 

え?杏子ちゃん・・・今なんて言ったの?

 

「ひ、左腕!?一真の左腕ちゃんとあるよ、どういうことさ?」

 

私の聞き間違いじゃなかった。

 

さやかちゃんが杏子ちゃんの肩に掴み掛かる。

 

そうだ一真君の左腕はちゃんとあるし学校でも今日も普通に動いているの見ている。

 

杏子ちゃんがこんな事で嘘つくなんて思えない。

 

じゃああの左腕は?

 

「一真の禁手(バランス・ブレイカー)・・・・あの戦う時に着てる赤い鎧だ。今は自由に装着できるけど小学生だった当時の一真はまだ未熟で自分の意志で装着できなかったんだ。だから一真は・・・・」

 

「だからな、何さ?」

 

や、やめて杏子ちゃんそれ以上聞きたくない。

 

「魔女を倒して子供を助ける為に左腕を代価にたった一度だけ鎧を装着し、その代償として一真の腕は赤い鱗と鋭い爪の生えたトカゲみたいなドラゴンの腕になっちまった・・・」

 

話しながら辛そうな表情の杏子ちゃん。

 

「そ、そんな杏子ちゃん嘘だよね…?」

 

「じょ、冗談だよね杏子。だ、だって一真の左腕どう見ても普通の腕じゃん」

 

「今はそうさ、アタシが定期的にドラゴンの魔力をソウルジェムで吸い取る事で一時的に人間の腕になってるんだ。でもほっておいたら魔力が溜まってドラゴンの腕になっちまう」

 

「そんな、そんなのって・・・」

 

目の前が真っ暗になりそうだった。

 

あの入学式の日、一緒に呉先輩のお財布を探し私を助けてくれて学校まで走ってくれて、いつも優しく笑顔でいてくれた一真君にそんな過去があったなんて。

 

《おかしいな、ソウルジェムに魔力を吸収する機能なんてないのに?》

 

「知らねえよ、できたもんはできたんだから」

 

「…んで…?」

 

さ、さやかちゃん?

 

「なんで杏子達は一真を止めないのさ!そんなになってるのまだ戦わせるなんて!」

 

さやかちゃんが泣きながら杏子ちゃんの肩を掴む。

 

学校で一真君と冗談を話ながら笑って仲のいいさやかちゃんもショックを受けている。

 

私も我慢しないと泣いちゃいそう。

 

「止めたよ!力づくで!でもな一真は『みんなが傷つくのをただ黙って見ていたくなんかない』って言って止まらなかった」

 

杏子ちゃんも泣きながらさやかちゃんの手を振り払う。

 

そうだ私達以上にそれを目の前で見ていた一番仲が良い杏子ちゃんが辛くない筈がない。

 

ましてやそれが好きな人なら…

 

「ご、ごめん杏子何も知らずに生意気言って」

 

「いいよ、だから決めたんだよ。もうあんな事を起こさせねえ為に強くなってあいつの背中を支えるって」

 

涙を制服の袖で拭いて自分の決心を私達に話す杏子ちゃん。

 

一真君にそんな過去があったなんて・・・

 

そして杏子ちゃんも一真君を支えようとしている。

 

「これで分かったろう、アタシらの戦いはいつも今日みたいな生易しく甘いもんじゃねえ!左腕一本犠牲にしなくちゃならねえともだってあるんだ」

 

これが戦う覚悟・・・

 

ただ何の取り柄のない自分を変えたく憧れて魔法少女になりたいってだけの中途半端な私にはないものだ・・・

 

やっぱり一真君やほむらちゃんの言うとおり覚悟のない私達には魔法少女になる資格なんてないのかな…。

 

 

 

 

 

 

 

【一真サイド】

 

「でも魔法少女が増えれば今日みたいに魔女に襲われる人を一人でも多く助けられるのよ」

 

「だがその分魔法少女が増えたらグリーフシードは不足してしまう」

 

まどかさん達の心配もそうだけど現実問題、この見滝原だけに魔法少女が五人も集中してしまったら魔女しか落とさないグリーフシードの供給が追いつかない。

 

そうなれば五人の内誰がインキュベーターの思惑通り魔女になってしまう。

 

 

「・・・そ、そう…それがあなたの考えなのね・・・そうやって上から目線でお説教してるけど結局は人命より佐倉さんの為にグリーフシードが確保したいのがあなたの考えなんでしょ!」

 

「何を言ってるんだ?そんなわけないだろ」

 

違う!そうじゃない、そうじゃないんだマミさん。

 

「お、おいマミさん、一真は二人の事を心配して…」

 

まどかさん達と話を終えていた杏子ちゃんが止めようするが感情が爆発したマミさんは止まらない。

 

「佐倉さんはいいわよね!一真君がいるから!!でも私にはパートナーと呼べる人はいないの!」

 

「だからってそんな言い方!仲間ならアタシ達がいるじゃないか」

 

「仲間?じゃあどうして長いつきあいなのに佐倉さんのお父さんの事を私に教えてくれなかったの!?私だけ知らされずに仲間外れにして!」

 

「あ、あれは・・・」

 

「杏子ちゃんだって思い出したくない過去だから言い出せなかったんだ。分かってくれ」

 

杏子ちゃんは勇気出して話したのにそんな言い方!

 

「そうねそうかもしれない、じゃあ一真君はどうなのよ!こないだの二人で地下駐車場の使い魔との戦いも一人だけ何かに焦るだけでそれがなんなのかその後も結局話してもくれなかった!仲間ってなんでも話し合える間柄じゃないの?なのにどうして一人で抱え込んでいるの?」

 

「そ、それは・・・」

 

実は未来を知っていて、あの時はインキュベーターとまどかさん達との接触を避けたかったなんて言えるわけがない・・・・

 

「言い返せないわよね!私に一人で背負い込むなとか言いながらそうやって一人で背負い込んでるのはあなたの方じゃない!!それで人に説教するなんて馬鹿にしないでよ!!」

 

マミさんの怒りに言葉が詰まり何も言えない俺と杏子ちゃん。

 

たがマミさんの追撃はなおも続く。

 

「二人共、私をのけ者にして勝手に二人だけの世界を作り私は仲間外れ、その上せっかく魔法少女になろう考えている鹿目さん達の邪魔をする。なんで仲間が増えて一人でも魔女や使い魔の犠牲から助けられるのに邪魔をするの?彼女達は選ばれたのよ!!」

 

そ、それが頑なに反対を押し切ってまで二人を魔法少女に加入しようとした理由なのか。

 

まさか俺が魔女と戦いに割り込んだ所為でマミさんと杏子ちゃんの絆に亀裂が入るなんて…。

 

「もう貴方達とは一緒に戦えない。私は『私』だけの仲間と一緒に魔女と闘うわ!」

 

そう言うと泣きながらマミさんは走り去ってしまった。

 

「一真、あたし達を魔法少女にさせたくない事情は分かったけど女の子を泣かすなんてあんたのやったことは最低だよ!」

 

さやかさんが俺を睨みマミさんを追いかけ、まどかさんは軽く頭を下げてさやかさんの後を追って行った。

 

その場に残される俺と杏子ちゃん。

 

はああ・・・やっちまった・・・

 

マミさんを蔑ろにしようとなんてこれぽっちもなかったのに。

 

事情を説明するわけにもいかず一人で背負い込むしかなく。

 

さやかさんの魔女化やマミさんを上条から護る気持ちだけ先走ってしてマミさんの悩みに気づいてあげられなかった。

 

もっとマミさんの気持ち考えてあげて優しい言い方がすればこんな事には・・・

 

どうも前世ではマミさんより年上だったからつい上から目線で話してしまったな。

 

ここでは年下なのにあんな言い方されたら怒るのは当然だよな。

 

手を顔に添えて俯く。

 

「一真・・・あんま気にすんなよ。マミさんやさやかの奴、気が立ってて何言ってるか分かってなくて本心じゃないと思うからよ」

 

杏子ちゃんだって辛いのにそんな心配そうに声を掛けてくる。

 

「分かってる、ありがとう大丈夫だよ杏子ちゃんの方こそ大丈夫?辛い過去まで話したのに…」

 

「あ、ああ…前にも言ったろ、もう吹っ切れたって…」

 

少しの間無言の時間が過ぎていく。

 

「あの一真…」

 

暗い雰囲気に耐えきれなくなり話しかけてきたけど。

 

「ごめん・・・杏子ちゃんは先に帰ってて、俺は頭冷やしてから帰るから、心配してくれてほんとにありがとう」

 

「…分かった、あんま気にすんなよ」

 

なんとか作り笑いをしてそう言い、気持ちを理解してくれた杏子ちゃんは家に帰る。

 

 

杏子ちゃんもいなくなり一人、夕暮れの空を見ながらさっき起こった事を整理する。

 

・・・マミさんを説得どころか怒らせてしまったな。

 

でもだからって上条の件とお菓子の魔女にマミさんが殺される件があるからこのまま体験コースを続けさせてまどかさん達を魔法少女にさせるわけにはいかない。

 

どうしたらいいんだ…

 

「城戸一真、少しいいかしら」

 

背後から声がして振り返るとそこには見知った顔があった。

 

「暁美さん帰ったんじゃなかったのか」

 

声の主は先ほどグリーフシードをマミさんに突き返した暁美ほむらさんだ。

 

「気になって残ってたの。あなたとまどかの会話を聞かせてもらったわ。ずいぶん魔法少女の契約をさせる事に反対なのね」

 

君と同じで魔法少女の秘密とこれから起こる事を知っていれば反対もするさ。

 

お互い先の事を知っているのに上手くいかないものだね。

 

「それにしても魔法少女と言ってもただの人間か・・・何も知らないくせに随分と大口叩けるわね」

 

いきなり挑発か…彼女らしいといえば彼女らしいけど。

 

幸いマミさんも杏子ちゃんもキュゥべえもいないし心に余裕もないから悪いけど今は本音で相手するよ。

 

「・・・それは魔法少女になった女の子の魂がソウルジェムになって肉体と別れてしまったからそう言ってるのか?なら許さないぞ」

 

「あ、あなたどこでそれを!?」

 

驚いた顔の暁美さんが後ずさる。

 

暁美さんとキュゥべえしか知らない真実をぶつけてみたがやっぱりか、原作の時間軸でさやかさんがそれを知ってしまい悲観して自分の事をゾンビだと言っていたからもしやと思ったが…

 

あのシーンは今思い出しても辛いな。

 

「答えなさい!どこでそれを知りあなたの本当は何者なの?」

 

俺の予期せぬ返答に普段のクールな冷静さを失った暁美さんが拳銃を向ける。

 

だが人に向けて撃ったことがないか銃口は振るえている。

 

「答えてるからそんな物騒な物下ろして落ち着きなよ。誰かに見られたら騒ぎになるから。いい機会だし教えてるよ、場所を変えよう。道の真ん中じゃ落ち着いて話もできない」

 

遅い時間帯だから人気(ひとけ)がなくてよかった。

 

結界内ならいいけど町中だと銃刀法違反になるから勘弁してよ。

 

大人びても中身はやっぱり中学生なんだな。

 

「…分かった。あと佐倉杏子の話を聞いてあなたの左腕の一部始終も知ったわ。それを踏まえて私もあなたに話があるの。いいかしら?」

 

向こうから接触してくるなんて話すには丁度いい機会だ。

 

教えてあげるよ。

 

俺の過去と正体を・・・

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。