【一真サイド】
放課後、俺とマミさんと杏子ちゃん、そして見学者のまどかさんとさやかさんはカフェテラスに集まっていた。
「それじゃあ魔法少女体験コース第一弾。張り切って行ってみましょうか」
「おー!」
「「「お、お・・・」
張り切るマミさんとさやかさんとそのテンションに付いていけない杏子ちゃんとまどかさん。
そしてまどかさんの膝の上には魔法少女の素質がある子以外から見えないのをいい事に朝の登校からまどかさん達についてきたキュゥべえがいる。
まどかさんとさやかさんが魔法少女になる気になったら即契約する為らしい。
魔法少女とソウルジェムの秘密を知らなければその営業っぷりは元ブラック企業に務めていた俺から見れば称賛に値するかもしれないが秘密を知った以上絶対にやらせねえよ。
「お前、顔色悪いけど大丈夫なのか?」
「大丈夫ちょっと色々あって疲れてるだけだから今日の魔女捜索に支障はないから平気だよ」
杏子ちゃんが心配そうに声を掛けてきてくれるがなにがあったか言えるわけがない。
なにしろ授業中に普通の人間に見えないキュゥべえが教室をウロウロしやがって上条がいつブチ切れて文字通り教室を爆発させないか冷や冷やしてたなんて・・・。
白龍皇の力を宿している上条はキュゥべえの姿が見えるし声も聞こえる。
だがさやかさん達の前では他のクラスメイト同様見えないフリしないといけないので怒りを抑え込んでいた。
時々右腕を左手で掴みながら・・・。
あれってキュゥべえに魔力弾をぶっ放そうとして左手で押さえ我慢してたんだろうな。
そして昼休みに上条に呼び出されお菓子の魔女が出現する前にマミさんがさやかさんの魔法少女への勧誘をやめないとマミさんの命が狙うと警告された・・・。
上条は本気だ。
説得できないと上条は本気でマミさんを手にかける。
確かこれまでの戦いで鍛えられベテランの域に達したマミさんは強い。
彼女の強みはマスケット銃だけじゃなくリボンを使った応用力と戦闘センスが極めて高く、特に判断力と対応力の高さは俺以上で魔女との戦いにも何度も助けられたし、また俺と模擬戦を何回かやって力押しができれば勝てるけど俺の動きを分析され読まれてリボンを使った絡み手された時はこっちが負けてしまうほど強くなった。
でもそれはあくまでも模擬戦での話で実戦というなら話は別だ。
なぜなら実戦は模擬戦と違って相手の命を奪う。
並の魔女なら倒せるかもしれないが白龍皇の強さは魔女とは次元が違いすぎる。
しかも上条は原作の知識から魔法少女の弱点であるソウルジェムがマミさんの髪飾りだと知っている。
もし戦えば確実にそこを狙うだろうし。
マミさんはソウルジェムが魔法少女の魂だと知らないから髪飾りを狙われたらどうしようもない。
けど当事者のマミさんは聞く耳を持たずに新しい仲間が増えそうな事に浮かれきってしまっているんだよな・・・
白龍皇に命が狙われているとマミさんに話せばいいかもしれないがそれを話せば『どうして美樹さん達が魔法少女になったら私の命を狙われなくちゃならないの?』と指摘され白龍皇の正体を明かさなければならない。
そうなれば上条と結んだ密約を破る事になりどっちみちマミさんは口封じに上条に消され杏子ちゃん、まどかさん、暁美さんまで危害が及んでしまう。
まどかさんが狙われるかもしれないのは現時点でまどかさんは魔法少女ではないがみんながいなくなったら優しい彼女は家族や友人を護る為に魔法少女になると言うかもしれない。
そうなればまどかさんはみんながいなくなった真実を知った時に絶望しソウルジェムが濁りきって世界を滅ぼす最悪の魔女となり、上条はさやかさんに危害が及ぶと判断し魔女化する前にまどかさんも消す。
結局マミさんやみんなを護るには魔法少女の勧誘をやめさせてお菓子の魔女と戦う前に俺か杏子ちゃん、もしくは暁美さんがお菓子の魔女を叩くしか道はない。
でも楽しそうに魔法少女の説明をまどかさん達にしている今のマミさんを見ると説得は難しそうだな・・・・。
「それじゃあ魔法少女体験コース第一弾始めたいのだけど・・・」
マミさんが言いにそうにしながら視線を横に向ける。
その原因は俺の横の席に座っている・・・。
「杏子いいかげんそろそろ機嫌を直しなよ」
「・・・別に怒ってねえよ」
さやかさんが止める先にはほとんどヤケ食い状態でケーキを食べている杏子ちゃん。
魔法少女が増え戦力増加という理屈では理解できてるけど二人を危険な戦いに巻き込みたくないという気持ちで納得いかないようだ。
気持ちは分かるよ。どう考えても人を襲う魔女のいる結界に一般人を連れて行くなんて許されない。
俺だってまどかさんとさやかさんを巻き込みたくない。
二人には魔女とか魔法少女とか命懸けじゃない普通の生活をして欲しい。
俺達が行く所は遊び場じゃなく命懸けの戦い。
なのにマミさんは二人を連れてきた。
その態度が許せなくて頭では分かってるけど気持ちが整理つかないから苛立ってるようだ。
おかげで注文を取りに来たウェイトレスさん、機嫌の悪い杏子ちゃんに少し怯えていたな。
注文したケーキと紅茶を置いてすぐ逃げるように離れて行ったし・・・。
ごめんなさい名前も知らないウェイトレスさん。
なにもできませんがせめて売り上げに貢献します。
俺のなけなしのこづかいを生贄にして・・・。
「それじゃあ気を取り直して準備はいい?」
「うむ、どんと来い!」
張り切るさやかさんが布を巻いた何かを取り出す。
なんだあれ?
「さっき体育館から拝借して来た」
さやかさんが巻いてた布を取り外すと野球で使うバットが出てきた。
バットか、ありきたりだけど悪くない選択だな。
でも学校の備品だから後で元の場所に返しておくんだよ。
「うん・・・まあ意気込みはいいわね・・・」
マミさんもこれには予想外だったらしく困った顔している。
「まあ素手よりいいんじゃねえか?」
相変わらずケーキを食べ続ける杏子ちゃん
それ以上食べるとに太・・・!?
杏子ちゃんから物凄い殺気を込められて睨まれた・・・
・・・そっとしておこう。
「まどかは何か準備してきた?」
「え!」
慌てふためきながらカバンから一冊のノートを取り出しして見開いて俺達に見せてくれた
「え、ええっと私は・・・こんなの考えてみた!」
ノートにはフリフリの魔法少女の衣装を着たまどかさんと武器の弓が描かれていた。
・・・うんでも、想像する事はいい事だ。
でもまさかこれから危険な魔女の結界に入るのに武器じゃなくて衣装から決めるなんてまどかさんは形から入るタイプだったのか。
「「ブッ・・・」」
「うぐっ!?」
拭き出すマミさんとさやかさん。
笑っちゃダメだよ。
「さー!準備も整ったし行くか!」
「そうね!行きましょう!」
「ひ、ひどいよ!マミさんまで!」
よく描けていてうまいけどこれはフォローのしようがないな。
あれ?杏子ちゃんやけに静かだな。
文句の一つでも言うんじゃないかと思ったがどうしたの?
「うぐうぐぐ!!!」
杏子ちゃんもまどかさんが持って来た魔法少女の予想絵が予想外だったのか驚いて拍子に口に含んでいたケーキが飲み込めず喉を詰まらせている!
「んんん!!」
いけない息ができなくて顔が青くなってる!?
「佐倉さん!」
「杏子!」
「杏子ちゃん!」
三人が異変に気づいて驚いて声をかける。
「杏子ちゃんこれ飲んで!ゆっくり飲むんだよ」
背中を優しく擦りながら渡した飲み物をゆっくりと飲ませて喉を詰まらせていたケーキを流し込んだ。
「うええ…苦!?」
俺が渡した飲み物を飲んだ後、舌出して泣きそうな顔をする。
あ、そういや俺が飲んでたのブラックコーヒーだったな。
前世からの癖で集中力高めたい時とかつい飲むのを慌ててたからうっかり渡しちゃった・・・
「お前こんな苦いのをアタシに飲ませやが・・・ってこれ一真がさっきまで飲んでた奴か!?」
杏子ちゃん、甘いのは好きだけど苦いのは苦手なんだよな。
「ごめん…手元にあったからつい…」
慌ててたとはいえ嫌いな物を渡して飲ませてしまったからさすがにこれは謝らないと。
「い、いい!気にすんな!」
顔がまだ赤いな。
かなり苦しかったのか。
「間接キスか、くく…よかったね杏子」
「な!?ち、ちがう!」
「照れんなって、お似合いだよ。ね、マミさん」
「そ、そうね・・・」
さやかさんとマミさんが立ち上がり慌てて杏子ちゃんが否定して杏子ちゃんが一方的に文句を言いながらお金を払って店から出る。
ああ、そういうことか…
確かにイケメンじゃない俺みたいな奴と間接キスはいやだよね。
でもだからってあそこまで嫌がられるのはさすがにへこむな…
「あの…一真君」
項垂れているとまどかさんが話しかけてきた。
おっといけない。心配かけちゃったな。
「うん大丈夫、嫌がられるのは仕方ないからね、けど魔女捜索とこれは別だから気持ち切り替えてしっかりするよ」
「いや杏子ちゃんの態度は嫌がってるんじゃなくて照れ…」
何を言おうとしてるか分からないけどこれ以上続けると悲しくなるからこの話題は打ち止めてもらおう。
「話は変わるけどまどかさんの絵よく描けてたよ」
「え?あ、ありがとう一真君」
よし話題そらし成功。
さて…落ち着いたし三人を追いかけて魔女捜索がんばるとするか。
魔法少女体験コースは原作と同じく魔女を探すところから始まった。
まず前の戦いで俺とマミさんが使い魔と戦った地下駐車場に行きソウルジェムで魔女の痕跡を辿り初め、辿り着いた廃ビルの屋上から魔女の口づけに操られた女性が飛び降りた。
このまま地面に激突すれば命がない。
けれど誰よりも早くマミさんが魔法少女に変身してリボンで飛び降りて女性を包み込み救助されこ事なきを得る。
魔女のいる廃ビルに突入しようと杏子ちゃんも変身して俺も鎧を装着しようとしたらマミさんに止められた。
「今回は一真君は魔女と戦わないで、これは魔法少女体験コースだから魔法少女じゃない一真君が戦ったら意味ないから」
・・・徹底してるな。
まあ確かに魔法少女体験ツアーという名目だから俺が戦うのはマズイかもしれないけど戦力の出し惜しみは愚策なんだが。
「マミさんいいかげんに「いいよ今回は大人しくしている。けど二人を護る為にいざって時すぐ対処できるよう
「分かったわ、行くわよ鹿目さん美樹さん」
「あ、待ってマミさん」
マミさんとさやかさんが廃ビルに入って行き、まどかさんが心配そうにこちらを見た後二人について行った。
「いいのかよ?」
「今は何を言っても無駄さ、だけどできるかぎりのフォローはするよ」
杏子ちゃんが魔法少女に変身して俺も鎧を装着し廃ビルに突入する。
廃ビルの中は壁にむき出しの鉄材の錆や亀裂があったりツタが生い茂ったりと荒れ果てて人が入った形跡はほとんどない。
少し歩いたと階段前でマミさんが立ち止まり髪飾りのソウルジェムが輝き魔女の結界の入り口が出現させ俺達は入り口前に立つ。
結界に入る前にマミさんがさやかさんの持ってきたバットに魔法を掛けるとバットにビーズのような物が飾り付けれ外国のおとぎ話に出てくるようなメルヘンチックなバットに変化する。
「気休めだけどこれで身を守る程度の役には立つわ。絶対に私の傍を離れないでね」
「おお変わった」
「すごーい」
「派手すぎねえか?」
「あらそうかしら?かわいいと思うけど」
リボンをマスケット銃に変える魔法の応用だろうか。
マミさん魔法でいつのまにあんなことまでできるようになったんだろう。
気づかなかったな。
飾り付けられたバット『デコレーション・バット』を掲げながら眺めるさやかさんとまどかさん。
「じゃあ俺もサービスするかな」
こないだの原作にいなかった魔女や黒い魔法少女の件もある。
なにが起こるか分からないから念には念を入れて何もやらず失敗して後悔しないように打てる事は全部打っておくか。
さやかさんの背後に立ち。
「ちょっとくすぐったいよ」
「え?なにが?」
振り返ろうとした美樹さんの肩に籠手を置いて宝玉が輝く。
『Boost』
『Transfer!!』
「あふん!」
何今の声?
もしかして俺の所為?
ワザとじゃないよ・・・
杏子ちゃんやマミさんに掛けた時は何ともなかったのに。
体質の問題かな。
でもこれで使い魔程度なら遅れはとらない筈だ。
二人は護る為だ。
マミさんに手を貸さないで言われているが最低限これくらいならやってもいいだろう。
「ちょっと!いきなりなにすんのさ!」
「おっと」
真っ赤な顔のさやかさんがマミさんの魔力で強化されたバットを振り下ろしてきたので籠手で受け止める。
倍加をかけて身体能力も上がっているが元がただの女子中学生なので小さな使い魔を潰せる程度の力しかない。
これなら使い魔が襲ってきても返り討ちにできそうだな。
「ごめんごめん驚かせて、念には念込めてさやかさんの身体能力を上げておきたかったんだ」
「そ、そういえば体が軽いし力があふれてくる。それにこの赤いもやみたいなのが?」
さやかさんがその場で駆け足したりバットを振り回す。
「こ、これは・・・そうか!私の中に眠っていたとてつもない潜在能力がついに開花したんだな。ようしマミさん、杏子、アタシも魔女と戦うよ!魔女は生まれ変わったスーパーさやかちゃんに任せなさい」
「え、えっと・・・」
困り顔のマミさん。
「アホか」
調子に乗ったスーパーさやかちゃん(笑)をばっさり一言で切り捨てる杏子ちゃん。
「だ、誰がアホだ!」
「元が弱いんだからその程度の力で魔女が倒せるかよ。それに一真の
「なんだと!?」
驚愕の表情でこっちを見るさやかさん。
「うん調子に乗らない。その力はあくまで一時的なもので時間が経ったら消えるんだよ」
「そ、そんな・・・」
うなだれるさやかさん。
ギフトを掛けたの失敗したかな・・・
「とにかく二人共あぶないから絶対に俺達から離れないでね」
「特に前にやらかしたさやかはよく聞いておけよ」
「うっさい!分かってるよ」
前回不用意に魔女の本体である斧に近づいてしまったさやかさんに杏子ちゃんが注意する。
たしかにあれは軽率だったな。
「それじゃあ行くわよ!」
結界に次々マミさん、さやかさん、まどかさんが跳び込んでいく。
彼女は・・・やっぱり来たか。
杏子ちゃんが結界に入り、最後に俺も突入する前に背後をチラッと見ると黒髪の少女の姿が見えた。
結界内に入ると無数の扉があり使い魔たちが待ち構えていた。
俺達は階段を駆け上がりながら魔女のいる最深部を目指す。
「使い魔の群れを突破すれば魔女の所に辿り着けるわ」
キュゥべえを抱き抱えた戦えないまどかさんを中心に護りながら陣形をとり、襲い掛かってくる使い魔に対してマミさんがマスケット銃を撃ち、
「数だけ多いくせに邪魔すんな!」
「来るな!来るな!!」
杏子ちゃんが槍で薙ぎ払い、さやかさんがデコレーション・バットを潰し俺は拳で殴り飛ばしながら魔女のいる最深部を目指した。
使い魔を蹴散らせながら走り、しばらくすると複数の使い魔が守る扉の前が見えてくる。
《ここが魔女のいる結界の最深部だ》
「パロットラ・マギカ・エドゥ・インフィニータ!」
マミさんの無数のマスケット銃から銃弾が発射されて扉の前の使い魔全てを一気に一掃する。
「出たわ、あれが魔女よ」
最後の扉の開けるとウジャウジャと通路にいたさらに多い使い魔とその中央には無数の薔薇と蝶の翅のある魔女が蠢いていた。
「うわぁ、グロい…。」
「あんなのと…戦うんですか?」
素直な感想だ。
俺は見なれたから何とも思わないけどやっぱり見慣れない人にはそう見えるんだろうな。
「行くぞマミさ・・・っておい!」
すでにマミさんは魔女に向かって走り出していた。
「ああもう!
イライラで左手で髪をかきむしり慌てて追いかける杏子ちゃん。
魔女の戦いは俺が加勢する必要なく一方的にこちらが優勢戦えると思ったが・・・
今日はいつもと様子がおかしい。
まず第一にチームワークに乱れが生じている。
「こ、これじゃあアタシが近づけれないよ!」
杏子ちゃんの攻撃に銃弾で割り込んで邪魔したり次々マスケット銃を召喚し撃ち続けて槍で攻撃する杏子ちゃんが攻撃できず立ち往生している。
マミさんのスタンドプレーが目立つ。
なんだろ、さやかさん達はマミさんの戦い方に興奮してるけど派手な大技を連発して何か焦ってるように見えるな・・・
どうしたんだマミさん?
銃弾も何発か外れているし。
杏子ちゃんと一緒に戦っているというより競っているように見える。
「キャッ!」
「マミさん!?」
足元から伸びた魔女の触手が腹部に巻き付いて逆さまにつるし上げられる。
「マミさん今助ける」
杏子ちゃんが向かおうとしたその時。
「来ないで!」
「な!?」
思わず足を止める杏子ちゃん。
なんで止めるんだ?
「大丈夫、これが私の戦い方未来の後輩にカッコ悪いとこ見せられないもの!」
外れたと思っていた弾丸から黄色いリボンが植物の蔓のように伸びて魔女の全身に絡みつき動きを封じる。
これが狙いか。
魔女がリボンで締め上げられひるんだ隙に新しいマスケット銃を出して腹部の触手を撃ち抜いて脱出する。
「ティロ・・・フィナーレッ!」
胸元のリボンを解きリボンが巨大なマスケット銃に変化して弾丸が飛びだし魔女は爆発四散した。
「「すごい・・・」」
「アタシ今日居なくてもよかったんじゃねえか?」
実際マミさん一人でも対処できる魔女だったからね。
なにはともあれお疲れマミさん、杏子ちゃん。
「これがグリーフシード、魔女の卵よ」
「た、タマゴ・・・」
結界が消滅して元に戻ったビル内でまどかさんとさやかさんにグリーフシードを見せてマミさんは自分の少し濁ったソウルジェムを出して濁りを移し替える所を見せる。
「うわ、きれいになった」
「吸収されこれで私の魔力は元通りと言う訳」
「なるほど」
「佐倉さん、あなたも浄化した方がいいわ」
「ん?ああ・・・そうだな」
杏子ちゃんのソウルジェムの濁りもグリーフシードに移された後。
穢れきったグリーフシードはキュゥべえに回収された。
「…と言うわけで期待してたようで悪いけど今回のグリーフシードは私達で使ってしまったわ…暁美ほむらさん」
マミさんがそう言うと視線の先に腕を組んで壁に背を預ける暁美さんの姿があった。
「あいつ・・・!」
暁美さんを見て敵意を向き出すさやかさん。
気にくわないからってそんな嫌そうな顔しないで。
暁美さんにも話したくても話せない事情があるんだから…
「それともまるごと自分のものにしたかったかしら?」
うーむ、説明不足な暁美さんのコミュ力の低さもそうだがマミさんのあの言い方は上から目線っぽいが壁を作ってるんだろうな。
それじゃお互い歩み寄ろうとしないよ。
初対面でキュゥベえに発砲した暁美さんの印象が最悪とはいえ、一度思い込んだら相手の言い分に聞く耳持たないのもマミさんの悪い癖だな。
まあ事情も知らず十五そこらの中学生にそれを察しろというのは酷な話か。
大人でも難しい事だしな。
「いらないわ。それはあなた達の獲物よ。二人で分けたらいい」
そう言い残し暁美さんは帰っていた。
「なんだあいつ!相変わらず感じ悪いやつ」
「もっと仲良くできればいいのに・・・」
鹿目さんの言う通りそれができたら一番いいのにね。
「・・・お互いにそう思えればね・・・」
一人で戦うと決めたとはいえ今も彼女は・・・暁美さんも心どこかでそう思ってるだろうか?
「でもよ、あいつほんとにグリーフシードを独り占めしたいだけなのかな?なんか別の目的がありそうな気がすんだよな。」
「なんだよ!あんな奴の肩持つのか!」
「そうじゃねえよ、ただあいつのあの目はグリーフシード独占なんてそんな小さな目的で動いてるような奴の目じゃねえなと思ったんだよ」
「じゃあなんだって言うんだよ。むこうからケンカ売ってきたのに!」
「んなのアタシが知るわけねえだろ!?」
「とにかく!佐倉さん言うとおり例えそうだとしてもその理由を話してくれないことには鹿目さんが望むように仲良くするのは難しいと思うわ!それより今は飛び降りようとした女性が心配だから外に行きましょ」
ビルの外に出て魔女の口づけで操られていた女性を介抱して落ち着かせる。
「私どうしてあんなことを・・・!」
「大丈夫ですちょっと悪い夢を見てだけですよ」
その後、女性と別れた帰り道。
「どうだった?今日の感想は?」
「うん、すげーかっこよかった」
「あの女の人助かってよかった」
話題はさっきの魔女との戦いと魔法少女についてだ。
マミさんは人を助ける魔法少女の素晴らしさを熱く力説している。
真実を知る俺にはそれがひどく哀しく見えた。
「アタシの出番ほとんど奪っておいて・・・マミさん二人を連れてくんの今回だけだからな」
「何を言ってるの佐倉さん。魔法少女体験コースはまだ始まったばかりよ」
「そうだよ魔女の戦いだってマミさん一人で十分楽勝だったじゃん」
「馬鹿野郎!前の魔女の戦いを忘れたのか、あん時ほんとに危なかっただろうが!」
一つ目魔女との戦いか。
後で杏子ちゃんから俺とマミさんが来る前の話を聞いたがまどかさんとさやかさんを護りながらギリギリの戦いをしたらしいからな。
怒るのも無理ない。
「あん時はマミさんがいなかったからじゃん。大丈夫だってマミさん強いんだから」
マズイな・・・さやかさん、今回の魔女との戦いがマミさん一人で圧勝したから完全に危機感をなくしてしまってる。
「アタシが弱かったからって言いたいのか!」
「それは違うわ、美樹さん」
険悪な杏子ちゃんとさやかさんの間にマミさんが割って入る。
「油断したらダメ、こんな事じゃ魔法少女になった時痛い目にあうわよ。きびしいかもしれないけどこれは先輩からのアドバイス」
「は、はいマミさんごめんなさい」
「謝る相手は私じゃなくて佐倉さんでしょ」
「ご、ごめん杏子言い過ぎた」
「あ、ああ・・・もういいよ」
さすがマミさんあの状況をいとも簡単に納めちゃったよ。
さすがみんなのお姉さん。
さやかさんも憧れのマミさんの言う事はしっかり聞くんだな。
「佐倉さん、次の体験コースも一緒に来てくれないかしら?二人はみんなで護るし美樹さんも油断しないって約束してくれたわ。それにあくまでも魔法少女になるならないは大切な事だから二人の意志を尊重して決めさせるべきであって強制したりしないわ」
「・・・・まあ体験コースだけならいいかな」
あちゃあ・・・今まで二人が魔女捜索に来るのを反対してた杏子ちゃんがケンカしちゃった罪の意識からマミさんに説得されて次の体験コースを認めてしまったか。
このままじゃお菓子の魔女の時まで二人がついて来てしまう。
さすがにこれ以上続けさせるわけにはいかない。
「じゃあ次の魔法少女体験コース第二弾の日時なんだけど・・・」
「・・・いや悪いけど魔法少女体験コースは今日でおしまいだ。これ以上続けるなら本気で止めさせてもらう」
俺は心を鬼とし、そう告げた。
それが後にとんでもない展開を起こす引き金になるのを知らずに。
ストックが無くなり忙しくなったって来たので更新が遅くなります。