魔法少女と偽りのヒーロー   作:カオスロイドR

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第21話 今日までの足跡

【一真サイド】

 

 

主の魔女がいなくなり崩壊した結界から脱出した俺達は反省会を兼ねて俺の家の部屋に移動していた。

 

魔女を倒した後は反省会を開くのがこうして日課になっている。

 

場所は俺の部屋か杏子ちゃんの部屋かマミさんの部屋。

 

今回の反省会は俺の部屋だ。

 

ただマミさんを連れてきたら母さんがニヤニヤしてるの嫌なんだよな。

 

あとなぜかマミさんのお母さんから気にいれられマミさんの家で反省会する度に歓迎される。

 

嬉しいけどなんでだろ。

 

もちろん魔法少女の事はマミさんのお母さんに話していない。

 

知ればどうなるか分からないからマミさんにも口止めしてもらっている。

 

もっともマミさんから心配かけたくないからと秘密にしてくれと言われているから知られる事はないと思うが。

 

おっと話を戻そう。

 

反省内容と言っても戦った魔女との戦いの反省と今後の戦い方と集めたグリーフシードの振り分けなどだ。

 

まあ、俺はグリーフーシードは使わないから集めたグリーフシードはマミさんと杏子ちゃんに渡している。

 

ただ今回は暁美さんへの赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)の説明もあるけど。

 

魔法少女と違って服を変えられない俺はみんなを先に部屋に案内してさすがに女の子の前で汗くさいのは、嫌なので先にシャワーを浴びて来ると言ってシャワーを浴び私服に着替えて紅茶専門店【花鶏】で分けて貰った茶葉で紅茶を入れ由良さんから教わったケーキを出してみんなの待っている部屋に持って行く。

 

「みんなお待たせ」

 

「城戸君それって」

 

「紅茶とケーキ。甘い物があった方がいいと思って」

 

扉を開けてるとみんなが座って待っていた。

 

席順は左から杏子ちゃん、マミさん、対面にほむらちゃん、鹿目さん、美樹さんの順だ。

 

空いている杏子ちゃんとマミさんの間に座り紅茶とケーキを配る。

 

「「「「いただきます」」」

 

ふむ、今日のケーキは結構美味くできたな。

 

「うまっ!」

 

「おいしい!」

 

美樹さんと鹿目さんにも好評のようだ。

 

「一真、また腕上げたな」

 

「ええ、ケーキもだけど紅茶の淹れ方もさすがだわ」

 

反省会を俺の家でやる時はほぼいつも出しているから手作りだと知る杏子ちゃんとマミさん。

 

大変だけどみんなの喜ぶ笑顔を見る度に頑張った甲斐があったってものだ。

 

「「え!このケーキ城戸(君)が作ったの?」」

 

鹿目さんと美樹さんが驚きケーキを二度見する。

 

「うん、趣味の一つだけどね」

 

「いやいや趣味の範囲ってレベルじゃないでしょ、これ!」

 

そこまで褒められると思わなかったな。

 

頭をかきながら照れる。

 

ケーキの作り方と教えてくれた由良さんと紅茶の茶葉を分けてくれた秋山さんありがとうございます。

 

「まあ反省会の楽しみであるな。でもなんで人数分あるんだ?アタシらはともかくまどかとさやかと転校生が来るのは予想外だったろ?」

 

「ん?ああ、明日の杏子ちゃんのおやつの分も出しただけだよ」

 

杏子ちゃんが美味しそうに食べてくれるからつい作り過ぎちゃうんだよね。

 

母さんや父さんも喜んでくれるし両親の分は別に取ってあるから問題ない。

 

申し訳ないけど杏子ちゃんには我慢してもらおう。

 

「なあ!楽しみにしてた明日のケーキを!?」

 

当ての外れた杏子ちゃんが思わず立ち上が怒ろうとすると。

 

「ごめ・・「ずるいぞ杏子!こんなおいしいケーキを独り占めしようとしてたなんて!」

 

「う、うるさい!アタシのケーキ食べて文句言うな!」

 

楽しみにしていたケーキを食べてしまった鹿目さんが謝ろうとするのを美樹さんが遮り美樹さんが杏子ちゃんに文句を言って言い争いという名のじゃれあいが始まった。

 

杏子ちゃんが俺の家に同居しているのはここにいる暁美さん以外知っている。

 

あれは去年の今頃だったかな。

 

美樹さんと鹿目さんと志筑さんが突然杏子ちゃんの部屋を訪ねた時に帰宅した俺と鉢合わせてしまった。

 

特に美樹さんが「同棲だ…と・・・杏子どういう事!!」って騒いでたけど杏子ちゃんがはずかしかったのか真っ赤な顔して「居候だ!」と否定してたっけか。

 

あの時もこんな風にじゃれあってたな。

 

あれからもう一年経つのか。

 

「あのごめんね城戸君」

 

「大丈夫、杏子ちゃんにはまた別に用意するから気にしないで食べてね」

 

謝罪するが俺の言葉を聞いて安堵する鹿目さん。

 

気を使いすぎるくらい優しい子だ。

 

だからこそ友達が傷つくのが嫌で魔法少女になろうとするんだろうな。

 

「ふふ、仲いいわね」

 

「さやかちゃん・・・杏子ちゃん・・・」

 

マミさんが微笑みながら二人のじゃれあいを見てそんな二人に呆れる鹿目さん

 

あっちはあっちで楽しそうだな。

 

「暁美さん、ケーキと紅茶の味どうかな?」

 

「・・・おいしいわ」

 

そう言った後そっぽを向く暁美さん。

 

よかった暁美さんも喜んでくれてるみたいだ。

 

「その前になんで関係ないまどかと美樹さやかがこの場にいるのかしら?」

 

ケーキを食べ終えてお皿を載せたトレイを隅に置いていて反省会を始めようとすると魔法少女でない彼女達を巻き込みたくない暁美さんが静かに怒っていた。

 

「ご、ごめんほむらちゃん」

 

「そんな言い方ないだろ転校生!私やまどかは杏子達の事を心配で来てるのに事情を話してくれたっていいじゃないか」

 

確かに元をただせば杏子ちゃんと暁美さんが心配で巻き込まれてしまったからあまり強くは言えないな。

 

「別に来てくれなんて頼んでないわ」

 

「何だと!もういっぺん言ってみろ!」

 

怒る美樹さんに暁美さんも喧嘩腰で対応してるから空気が重い。

 

本当なら鹿目さんと美樹さんは家に帰したかったがどうしても付いていくと言って渋々了承するしかなかった。

 

暁美さんは帰ろうとしたけど俺の能力と秘密を教えると言ったら付いてきてくれた。

 

「コホンッ」

 

軽く咳払いして注目をこっちに向ける。

 

「ケンカするならよそでしてくれるかな?そろそろ説明と反省会したいんだけど?」

 

軽く睨んで注意する。

 

あんまり女の子相手にしたくなかったけどさらに暁美さんと美樹さんの間に溝が深まりそうだったからな。

 

さっきのじゃれあいと違って今回の暁美さんとの口ゲンカは美樹さんから掴み掛かりそうだから止めなくちゃならない。

 

「ご、ごめん城戸、私が悪かった」

 

「そ、そうね悪かったわ。説明してもらえるかしらあなたのあの力について」

 

暁美さん、自分を守る為に心に殻を被り人と距離を開けたい気持ちは分からなくもないが

 

不用意に敵を作るやり方は誤解を招き溝を広げるだけだからできれば止めてほしいな。

 

『例え裏切られても優しさだけは失わないでくれ』

 

夏休みの修行の最終日に送られたウルトラマンエースさんの言葉を思い出す。

 

本来の彼女は内気な性格ながらも優しい性格の女の子だった。

 

だが時間移動した体験やインキュベーターの企みを話しても信じてもらえないそんな状況に暁美さんは絶望し、一人で戦うことを決めその度に絶望を味わって人を信用できなくなっている。

 

その為にたった一人で鹿目さんを護る為に心に壁を作りマミさんや美樹さんに対して冷たい態度をとるようになってしまった。

 

でも俺は知っている。

 

最初に時間移動した時・・・

 

暁美さんがまだメガネを掛けていた頃、危なげながらも魔女を倒したが落ちそうになったがマミさんに助けられ鹿目さんと喜び合ったあの笑顔を。

 

だから・・・

 

だからこの時間軸で壁を叩き壊して仲を取り持ち彼女の孤独な旅を終わらせてやる。

 

ただこの様子じゃ前途多難って言葉じゃ言い表せないくらい大変そうだけど・・・。

 

「ご、ごめんそうだ城戸が付けてたあの赤い鎧何?そろそろ教えてよ。」

 

反省した暁美さんと美希さんの言葉にまどかちゃん達が俺に注目する。

 

「あれは赤龍帝の鎧(ブーステッド・ギア・スケイルメイル)この神器(セイクリッド・ギア)赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)の切り札みたいなもんだよ」

 

左腕を赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)に変えて暁美さん達に見せる。

 

二度目だが目の前で人間の腕が赤い金属の手甲に変わる様子を見て驚く鹿目さんと美樹さん。

 

赤龍帝の鎧(ブーステッド・ギア・スケイルメイル)赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)?」

 

魔法少女の暁美さんは不思議な現象に耐性のあるのか表情に変化はないが他人に無関心な彼女も俺の能力に興味が湧いたのか根掘り葉掘りと興味津々で聞いてくるんだけど。

 

「間近で見るとやっぱり普通の腕じゃないんだな…」

 

興味深そうに美樹さんが触ってきて集中できない。

 

この子、好奇心旺盛すぎやしませんか。

 

あ、今一瞬だけ上条からの殺気を感じた気がする。

 

「さ、さやかちゃん城戸君に失礼だよ」

 

「ほらまどかも触ってみなよ、まるで金属みたいに硬いよ」

 

いやいや何、鹿目さんにまで進めてるの君は?

 

「う、うん、さ、触ってもいいかな?」

 

「…どうぞ」

 

そんな上目遣いで聞かれたら断れるわけないでしょうが。

 

興味があるのか恐る恐る触る鹿目さんと遠慮なしにベタベタ触る美樹さん。

 

『(一真…)』

 

「(ごめんね、ドライグもう少しだけ我慢して…)」

 

二人が十分に触った所で触るのを終わらせて元の人の左腕に戻して神器(セイクリッド・ギア)赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)の説明した。

 

「産まれた時から身に宿っていて数秒ごとに力を倍にしていくってそれチートじゃん」

 

「チートって言わないでくれる。この力をここまで使いこなすのは本当に大変だったんだから」

 

美樹さんにあらためて言われると確かにチートかもしれないが赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)をただ宿しただけじゃ強くなれないんだよ。

 

思い返せばここまで来た道は決して平坦じゃなかった。

 

転生したばかりの当初はまだ身体が幼なかった所為もあってか赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)の力を使いこなす所か発動さえもできず自分の不甲斐なさに苛立ちを覚える日々が多かった。

 

赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)の維持と倍加を発動した時に掛かる負担を耐えられる体とスタミナを作る為にいつも走り込みの時に付けている重りをさらに増やし、腕立てや腹筋やスクワットといった筋トレの回数を増やしたりと色々やった。

 

その所為で限界を超えて熱を出して倒れてしまうのは一度や二度所じゃなかった。

 

当時の年齢の子ではオーバーワークと言われるくらいの特訓をギリギリの所までこなす事でなんとか発動できる段階までできたがその間になんどか倒れそうになって両親に心配かけてしまったことは申し訳なかったと今でも思っている。

 

しかしそれで終わりというわけにはいかず発動できても今度はそれを維持する時間が短いという壁にぶつかってしまった。

 

ドライグ言わく『最低でも戦闘でない状態で丸三日間は維持ができないと話にもならないレベル』らしい

 

正直それを聞かされた時の努力してた分ショックはかなり大きかった。

 

それでもドライグに励まされ不貞腐れずにいられた事はドライグに感謝している。

 

一人では挫けて諦めてしまっていただろうから。

 

親のいない日の休日は赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)を常に発動して日常生活を過ごし体に掛かる負担を当たり前の状態にして慣れさせる訓練を続けた。

 

最初は維持できる時間が短く、疲労ですぐ解除してしまいながらも維持できる時間の記録が伸びたのが嬉しかったのを覚えている。

 

その努力が報われ小学生中に丸三日間の赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)の発動を維持ができるようになりこれにはドライグも驚いていた。

 

ドライグの目安では暁美さんの転校する一年前、つまり中一の頃だろうと思っていたからだそうだ。

 

ふふふ・・・あの時のドライグの驚きようは今でも忘れられないよ。

 

その後さらなる特訓と年齢を重ね体ができあがってきたおかげで三日間維持できるようになり杏子ちゃんと出会い、魔法少女になってしまった彼女と共に魔女と戦う日々

 

その日々の中でマミさんのお父さんを助けられなく挫折した事もあった・・・

 

それでも前を見て立ち上がり杏子ちゃんの家族と絆を護り通すことができた。

 

中学になると同じ転生者で赤龍帝の宿敵である白龍皇となった上条が現れ襲い掛かってきた。

 

その戦いの中、生死の境で禁手(バランス・ブレイカー)に至り互角の戦いを繰り広げていたが力の差で負けてしまい今までの努力が無駄になった気がして何も手が付けられないくらい落ち込んだ。

 

そんな落ち込んだ俺を見て杏子ちゃんやマミさんが気晴らしに一緒に遊びに行ったりと色々と励ましてくれたが立ち直れず、最終的にはドライグに『力で勝てないなら工夫と技で奴に勝て!今までもそうやって戦ってきただろう!』と叱咤されて

 

杏子ちゃん達に迷惑かけてしまった事を謝罪し、もう二度と負けたい為、夏休みにリュネの協力でウルトラ兄弟のみなさん厳しい特訓を付けてもらい強くなれた。

 

ここまでこれたのはみんなに支えられたから来れたんだ。

 

「最初から強かった訳じゃない支えてくれた人たちが居て努力してここまで強くなったんだ」

 

「そうだぞさやか!一真の努力を馬鹿にすんな!こいつはいつも毎日欠かさず鍛えてるんだ」

 

「ご、ごめん」

 

俺の剣幕に押され杏子ちゃんも加わって思わず頭を下げる美樹さん。

 

大人気ない気もするがこればかりは譲れない。

 

「あと遅くなったけど助けてくれてありがとう」

 

「無事でよかったよ。あ、怪我とかしていない?」

 

「え?うん大丈夫だよ」

 

「よかった美樹さんは女の子だから怪我して傷が残ったら大変だからね」

 

怪我なんかさせてたら俺が上条に殺される・・・

 

負けるつもりはないけど。

 

いざとなればリライブ光線があるけど怪我なんてしない事に越した事ないからな。

 

あれ?顔真っ赤にして俯いたけどどうしたの?

 

私には恭介がとかブツブツ言ってるけど?

 

「痛え!!」

 

スネに激痛が走り見ると睨みながら杏子が俺のスネを抓っていた。

 

「いきなり何するの!?」

 

「うるさい!無駄話してないでさっさと反省会しろ!」

 

なんで俺、スネを抓られたの?

 

「城戸一真・・・新しい火種にならなければいいけど」

 

火種ってそれどういう意味?

 

『・・・(いいのか相棒ここまで話して?あのくそ野郎(インキュベーター)もここでの会話をどこかで盗み聞きしてると思うが?)』

 

抓られた箇所を擦っているとドライグが俺にしか聞こえない声で話し掛けてくる。

 

「(いいんだよ、教えてるのは杏子ちゃんやマミさんが知ってる今までの戦いで見せた能力だけだし暁美さんにはあとで秘匿している情報を公開して彼女の信用を得て俺が敵じゃないって知ってもらうのが目的だから)」

 

インキュベーターに知られたらマズイ情報や能力は話していないから大丈夫だ。

 

「・・・・そう、あなたの事はだいたい分かったわ。」

 

とりあえず今は信用を得ることができたかな。

 

「じゃあ次は魔法少女について教えてあげるわ」

 

次はマミさんが自分のソウルジェムを見せながら魔法少女についての説明が始める。

 

どんな『願い』も一つ叶えその代償が魔法少女になって魔女と戦う。

 

魔法少女とは希望を振りまく者。相対する魔女は逆に絶望を振りまく存在。

 

そしてそんな魔法少女の魔法の源はソウルジェムで魔力を使用する度にソウルジェムの輝きが失われ穢れていき完全に穢れてしまうと魔法少女は魔法が使えなくなってしまう事。

 

穢れを取り除くには魔女を倒して魔女の持つグリーフシードを手に入れて穢れを移し続けなければならない事を話す。

 

話を聞いた二人は驚きの表情で口を開いたまま呆然としている。

 

そりゃ目の前で実際に見たとはいえこんなありえない現実離れした話を聞いたら誰だってそうなるよな。

 

「・・・・これで満足したでしょ?今日の事は直ぐ忘れなさい、そして家族や友人と平和に暮ら続けたければ私達に関わらない事ね」

 

暁美さんの方を見ると隠そうとしているが苛立ちと複雑そうな表情をしている。

 

無理もないか

 

マミさんが説明したのはすべて表向きの事でデメリットを含んだ魔法少女の二つの裏の秘密を一切知らない。

 

魔法少女の秘密とこれから起こる鹿目さんと美樹さんに振りかかる悲劇を知っている暁美ほむらにとってこのまどか達とインキュベータの出会いはなんとしても阻止したかった出来事だ。

 

だが運命の強制力は強大でまどか達が会った魔女とは別に出た魔女を放っておく事はできず

 

魔女自体は倒すことはできたがその所為でまどか達を危険な目に晒してしまった。

 

その事に俺も後悔している。

 

さて転生者であること以外の俺の秘密はすべて話した。

 

後は二人からどういう反応が返ってくるか・・・

 

「・・・そっか、杏子や城戸達は私達に黙って裏でそんな事してたのか」

 

今まで黙っていた美樹さんが口を開く。

 

その口調は少し怒っている。

 

「さやかちゃんそんな言い方」

 

「だってまどか、私達は友達なのに何も話してくれなかったんだよ」

 

心配してくれてたんだな。

 

なら怒られても仕方ない。

 

ただ事情が事情なだけに話すわけにいかなかったからな。

 

「さやか、悪かったな黙っていて」

 

「ごめん、友達だからって言いづらい事もあるよ・・・まして巻き込んで危ない目にあうならなおさらだ。美樹さんだって友達だからって言いづらい秘密があるんじゃないの?」

 

「う・・・」

 

美樹さんの顔が赤く染まる。

 

どこの両想いのバイオリン弾いている幼なじみを思い浮かべてるのやら。

 

「・・・分かった、まだ完全に納得できないけど黙ってたのを許す事にするよ。まどかは?」

 

「わ、私はただ城戸君がみんなの為の役に立つ事ができてすごいな思って」

 

「ありがとう二人共、今はそれでもいいよ」

 

でも鹿目さん違うんだ。

 

俺を正義の味方(ヒーロー)か何かと勘違いしてるようだけど

 

世界平和とか見知らぬみんな(・・・)の為に俺は戦ってるんじゃない。

 

本当の正義の味方(ヒーロー)は顔も名前も知らない人達の為に傷つきながらも見返りもなく命懸けで戦える人の事を言うんだ。

 

だけど俺は見知らぬみんな(・・・)の為に戦っているんじゃない。

 

だから俺は正義の味方(ヒーロー)じゃない。

 

杏子ちゃん、マミさん、暁美さん、そして美樹さんと鹿目さん。

 

俺の周りにいる大好きなみんな(・・・・・)が不幸になってほしくない自己満足から戦っているんだ。

 

その点だけは美樹さんの為に戦うと決めた上条と同類だな。

 

「あ!じゃあ前にマミさんと出かけてるのを見かけたのは魔女退治の為で二股じゃなかったんだ」

 

美樹さんが思い出したように手を叩く。

 

・・・ああ、そんな事もあったね

 

俺もすっかり忘れてたよ。

 

一年の夏から秋に変わる頃だったか。

 

俺とマミさんは、二人の魔女捜索の当番の時に偶然美樹さんに見られて次の日の学校で俺が杏子ちゃんとマミさんに二股しているというあらぬ疑いを掛けられた。

 

本当の事を言う訳にもいかずに小学生の頃から一緒に遊んでもらってるお姉さんみたいなものでそんな関係じゃないよって説明したけど。

 

そうしたらマミさんは落ち込むし美樹さんには怒られるし志筑さんには最低と言われた。

 

本当の事を説明しただけなのになんで俺が悪者になってるの?

 

事情を知る杏子ちゃんは俺を庇ってくれたけどその所為で美樹さんと言い争いになってしまい鹿目さんはそんな状況にオロオロしている。

 

許せないのはそんな修羅場を見て中沢が面白そうに笑ってやがる事だ。

 

中沢は物理的と精神的にあとで〆た。

 

おまけに上級生のかくれマミさんファンに襲撃されるし、女子からは汚物を見るような目で見られるし散々な目に遭い味方は事情を知るが話せない杏子ちゃんとマミさんと信じてくれたのは鹿目さんだけだった。

 

最終的にはマミさんが誤解を解いてくれておかげで疑いが晴れて志筑さんは謝ってくれたけど美樹さんだけは最後まで納得してくれなかったな・・・

 

あと美樹さんを魔法少女のマミさんと会せた事で軽く上条に文句を言われたが。

 

そもそも偶然だと対処しようがないし、人が魔女捜索をしている時に美樹さんとデートしてた奴に言われたくないわ!

 

・・・・思い出したらだんだんムカムカしてきたぞ。

 

あいつ転生前は確か二十代前半だった筈だよな・・・

 

歳の差を考えろよ・・・

 

いや転生して肉体自体は同い年になってるからいいのか?

 

しかしな・・・

 

うーむ・・・

 

「(城戸君がなんかブツブツ言い出したんだけど・・・)」

 

「(触れてはいけないものに触れたみたいね)」

 

「(さ、さやかちゃん城戸君なんか怒ってない?)」

 

「(あ、もしかして私地雷踏んじゃった?)」

 

「(おい、さやかどうすんだよ、なんとかしろよ)」

 

「(あ、あたしが!?)」

 

「(原因作ったのお前だろ!なんとかしろよ!)」

 

「よし!ね、ねえ城戸」

 

「何?」

 

美樹さんに呼ばれ思考の海から現実に戻り返事する。

 

「秘密を共有してみんな揃ってるし、いい機会だしいつまでも苗字じゃなくてわたしとまどかの事も杏子やマミさんみたいに名前で呼んでよ」

 

「は?」

 

いきなりなにを言いだすんだ、この子は?

 

「さ、さやかちゃん、いきなりなにを?」

 

ほら、突然の事に鹿目さんが顔を真っ赤にして驚いているし。

 

「えーいいじゃん、前から杏子やマミさんは名前なのに私らは苗字で壁作られてるみたいで嫌だったんだよ、でも城戸の秘密知っちゃたからいい機会だから私らも名前で呼んでもらおうかと思ってさ。という訳でいい?杏子?」

 

え?当事者の俺じゃなくて杏子ちゃんに聞くの?

 

「…なんでアタシに聞くんだよ?」

 

「いや~私らが城戸の名前を呼ぶと杏子がいい顔しないと思って」

 

「べ、別にアタシに聞かなくても好きに呼べばいいだろ!」

 

杏子ちゃんが顔を赤くして言い返す。

 

俺の意志は?

 

「あの~?マミさん、なんで俺の事を名前で呼ぶのに美樹さんは杏子ちゃんに訪ねて杏子ちゃんはあんなに怒ってるのでしょうか?」

 

「う~ん、一真君は体を鍛えるだけじゃなくて女の子の心も勉強したほうがいいと思うな」

 

隣いるマミさんに小声で話し掛けると同じくらいの小声で返された。

 

あれ?いつのまにかマミさんが俺を名前で呼んでいるし。

 

「よし杏子からOK貰った。とうわけで私とまどかはこれからは一真って名前で呼ぶからよろしく。私らも名前で呼んでいいからね」

 

「いやいや、名前で呼ぶのはいいけど、鹿目さんの許可もらってないよね」

 

手を左右に振って鹿目さんの方見ると先ほどの杏子ちゃんと同じくらい顔を真っ赤にして俯いてしまっていた。

 

「まどかも恥ずかしがってないで友達なんだし一緒に名前で呼ばれようよ」

 

「え…えっと、その…」

 

「美樹さやか、まどかに余計な強要して困らせないで」

 

困る鹿目さんに暁美さんが割って入り助けようとするが

 

「なんだと!転校生!横から来て私達の邪魔しないでよ!」

 

「まどかが困っているのが分からないの?」

 

「私らは付き合い長いんだ!来たばかりのあんたとは違う!」

 

ちょっとまたケンカしないでよ!どんだけ仲悪いだこの二人・・・

 

「え…えっと、わ、私も城戸君の事を名前で呼んでいいかな?」

 

赤い顔してモジモジしながら鹿目さんが訪ねてくる。

 

「いいけど無理して呼ばなくてもいいんだよ、いつもみたいに苗字でも」

 

考えれば杏子ちゃんのように小さい頃から呼び慣れてるならともかく思春期真っ只中の子が異性の名前を呼ぶのは恥ずかしいものがあるよな。

 

思春期なんてかなり前に終わってたから忘れてたよ。

 

「ううん、私もみんなみたいに名前で呼びたいんだ。だ、だから改めてよろしくね、か、一真君」

 

頬を赤く染めて笑顔を見せる。

 

ここまで勇気出したんだ。

 

ここで答えられなきゃ男じゃないな。

 

「こちらこそよろしく、まどかさん(・・・)

 

俺も笑顔で答えまどかさんの顔がパッと笑顔になった。

 

「え?何これ?ちょっと一真、私も名前で呼べ!」

 

美樹さ・・・さやかさんが叫ぶ。

 

「さやか、そこは空気読んで静かにしろよ、アタシだってそれくらい分かるぞ」

 

「美樹さん、さすがにそれは…」

 

「美樹さやか、重ねて言うけどあなたはどこまで愚かなの?」

 

呆れ顔の杏子ちゃん、マミさん、暁美さん。

 

「ちょちょっと!なんで私が悪い事になってるの!一真!どういう事だ?」

 

「う、うん、さ、さやかさん(・・・)…と、とりあえず落ち着こう…ふっふふふ」

 

正直、契約して後から能力を身に付けた魔法少女と違い転生して産まれた時から備わった神器(セイクリッド・ギア)の事を話して二人からは化け物呼ばわりされるか怖がられて離れていってしまうかと心配したがそんな心配は杞憂に終わった事に思わず苦笑して笑い声をあげてしまう。

 

「ちょっといきなり何笑っての!」

 

「ごめんごめん、そうだ最後に一つだけ言っておく事があるんだ」

 

右人差し指を立て鹿目さん達の目を見ながらこう言う。

 

「さっき話した赤龍帝の力と魔法少女の事と魔女と戦っている事は…クラスのみんなにはナイショだよ」

 

暁美さんが驚いた顔して俺の話は終わった。


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