魔法少女と偽りのヒーロー   作:カオスロイドR

21 / 30
祝20話と言いたいところですが
予定より更新遅くなってすみません。
『何やってんだあああミカアアアァァーー!』
私事で申し訳ありませんが体調を崩して微熱続きで風邪かと思ってたけど熱が下がらず病院行ったらライザ・エンザ・・・じゃなくてインフルエンザにかかっちゃってました・・・
とりあえず薬飲んでしばらくは大人しくしてたおかげでなんとか完治しました。
これからまた徐々に投稿していきますのでよろしくお願いします。


第20話 まずは信じることから始めよう

【一真サイド】

 

 

巨大な斧が本体であった一つ目魔女を倒し徐々に崩壊していく結界の中。

 

マミさんと杏子ちゃんの二人は俺に休んでいろと言って使い魔の残党が潜んでいないか捜索中。

 

暁美さんは離れた所でこちらを見ているし、美樹さんは落ち着いた事で魔女に襲われたのを今になって怖くなったのか座り込んでいる。

 

そして俺は先ほどの様に魔女が復活しないかと念の為に鎧だけ残し兜と仮面だけ解除した状態で座って警戒していた。

 

ふと視線を感じて顔を上げると何か言いたそうな鹿目さんと目が合う。

 

「どうかしたの?鹿目さん」

 

まあ目の前でいきなり景色が変わって怪物が現れたり同級生が全身鎧(フルプレートアーマー)を着てその怪物と戦ってるのを見たら言いたい事や聞きたい事なんて山ほどあるよな。

 

さて何を聞かれるかそれとも怖がられて何を言われるか・・・

 

覚悟しておかないと。

 

「城戸君、すごい汗だけど大丈夫?」

 

「え?汗?」

 

てっきり赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)関連の事を聞かれると思ったが予想外の質問に変な声が出てしまい顔と髪を触ってみると。

 

「いつの間に・・・」

 

言われて触ってみると気づかないうちに顔と髪がバケツ一杯の水を頭から被った様に汗で濡れていた。

 

どうやら強靭な剛腕を振るう龍帝(ストロングパワーフォーム)を使用した影響で体力をごっそり奪われて大量の汗をかいたらしい。

 

「ごめん汗臭かったよね。匂いを防げるか分からないけど兜と仮面を被り直すね」

 

「そ、そういう意味で言ったんじゃないよ。大丈夫なのかなって聞いただけだから。それに熱中症になるといけないからヘルメットだけじゃなくてその鎧も脱いだ方がいいと思うよ?」

 

兜と仮面を被り直すと俺の行動に慌てた鹿目さんが否定しアドバイスしてくれたので再び兜と仮面を収納して素顔を出す。

 

異質な力を見られた事を気にするあまり熱中症まで気が回らなかったな。

 

「・・・心配してくれてありがとう。でもこのおかしな景色が元に戻るまでなにがあるか分からないから警戒の為に鎧はまだ脱げないんだ」

 

「そ、そうなんだ…」

 

つい笑顔で答えると悲しそうな顔をする鹿目さん。

 

なんかこっちが悪い気がしてきた。

 

「あ、その…結界ももうすぐ崩壊し終わるだろうし完全に崩壊したのを確認したらおれも暑いから鎧をすぐに外すよ」

 

後頭部を掻きながら答える。

 

もっと気の利いた言葉を言えたら良いんだけど

 

残念ながらそこまで頭良くないもので・・・

 

「!?うん!」

 

でもそれを聞いて笑顔になってくれた鹿目さん。

 

心の底から心配してくれてるのが分かる。

 

鹿目さんが俺の横に座ってポケットから桜色のハンカチを出すと俺の額に流れる汗を拭き始めた。

 

「え?」

 

いきなりの鹿目さんの行動に驚き思わず後ずさってしまう。

 

「う、動かないで!そのままだと体冷えちゃうよ」

 

そう言うと再び俺の顔を拭き始めハンカチから何かの甘い匂いがして鼻をくすぐる。

 

「・・・ありがとう。ごめんねそのハンカチは明日洗って帰すよ」

 

「ううんいいよ、気にしないで。私やさやかちゃんを助けてくれたんだからこれくらいどうってことないよ」

 

本当に優しい子だな。

 

気味悪がって近づきたくないって思う人もいるのに。

 

暁美さんが時間を遡ってでも助けたいって気持ちが分かった気がする。

 

そして改めて決意する。

 

この子は魔法少女にさせちゃいけないと。

 

「そうだ、これよかったら飲んで」

 

鹿目さんが赤い顔で両手を前に出して手を左右に振ったあと思い出したかのようにレジ袋からお茶の入ったペットボトルを差し出す。

 

「いいの?ありがとう。喉が渇いてたから助かるよ」

 

汗を流した所為か喉が渇いてた俺はペットボトルを受け取ると蓋を開けそのまま一気に飲んで喉を潤した。

 

「あの・・・城戸君なんだよね?クラスメイトの・・・」

 

お茶を飲む手が止まる。

 

ついに来たか。

 

「まだ何が信じられないしもしかして夢を見てるかもしれなくて・・・それにさっきの怪物やこの変な景色も何が起こっているのか分からなくて、それでその・・・城戸君や杏子ちゃんやほむらちゃんの事どう・・・いったらいいのか・・・ごめん自分でもよく分からないよ」

 

普通に生きていれば決して出会う事のなかった魔女や結界。

 

現実離れした出来事が続いて起きた事に頭が追い付かず混乱しているようだ。

 

当事者である俺もそんな彼女に気の利いた言葉が思い浮かばず無言になってしまう。

 

これが上条なら鹿目さんが安心するような台詞を簡単に言えるんだろうが。

 

俺と鹿目さんの間に無言の気まずい雰囲気が流れる。

 

「鹿目さん・・・」

 

言葉が思い浮かばずに結局は素直に『姿は変わっても俺と杏子ちゃんも暁美さんも変わらないから、今までどおりでいいんだよ』と思っている事をを言おうとしたら

 

「ほらハンカチ一枚じゃその汗は拭き取れねえだろ!アタシも拭いてやるから少し頭を屈めろ!!」

 

いつのまにそばに来ていた杏子ちゃんが赤いハンカチで俺の頬を乱暴に擦り拭く。

 

「い、痛いって!いや鹿目さんにも言ったけどハンカチ汚れるからいいよ」

 

「馬鹿!そのまんまにしてたら風邪ひいちまうだろうが!」

 

「そうよ、城戸君が魔女を倒してくれたんだから。私も拭いてあげる」

 

マミさんも近づいていてハンカチを出して汗を拭いてくれた。

 

いつか三人になにかお礼しないと。

 

「そういえば、城戸君。さっき魔女と戦ってた時に体が大きくなってたけどあれは何?筋肉が膨れあがっていたからもしかしてこの異常な発汗の原因もそうなんでしょ?」

 

マミさん、鋭いな…

 

一目で見抜くなんて。

 

「そうなのか一真!?そういやあれなんなんだよ!初めて見たぞあんなの!」

 

杏子ちゃんが鎧の肩をつかんで揺さぶる。

 

ち、ちゃんと説明するから落ち着いて。

 

「杏子ちゃん落ち着いて、それじゃ城戸君喋れないよ」

 

鹿目さんが杏子ちゃんを宥めてくれたおかげで落ち着きを取り戻した杏子ちゃんが揺らすのを止めてくれた。

 

あーまだ世界が揺れる…

 

数秒ほど待って揺れが止まった所で強靭な剛腕を振るう龍帝(ストロングパワーフォーム)の説明を始める。

 

あれはフォームチェンジと言って去年の夏休みの修行で会得した力と鎧の装甲を特化した形態

 

この発汗も一時的な物でまだ慣れていないからこうなってるだけで体力が付いたら抑えられる事などを説明した。

 

説明が終わると鹿目さんはものすごく驚いていたが杏子ちゃんとマミさんはあまり驚きもせず城戸君(一真)らしいわ(な)と言って呆れ、杏子ちゃんが鹿目さんに一真の特殊な能力の事で一々驚いていたら体がもたねえぞと身も蓋もないアドバイスまでされている始末。

 

「あ、あはは…」

 

鹿目さんも乾いた笑い方してるし

 

いやもう別にいいんだけどさ…

 

ちょっと寂しい・・・・

 

「あなたは一体?」

 

汗を拭き終わりお礼の内容を考えていると暁美さんが話し掛けてきた。

 

そういえば何の説明も準備もなしに赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)とウルトラマンの能力を見られてしまったな。

 

得体の知れない能力って思われて警戒されたくないから少しずつ打ち明けていこうと思ってたのに。

 

とにかく今は普通に会話しないと。

 

「俺は城戸一真、君と同じクラスの・・・」

 

「そうだ!城戸!転校生は悪い奴なんだ」

 

「え?」

 

振り向くと怒りをあらわにして暁美さんに指さす美樹さん。

 

急に話に割って入ってきてなんの事?

 

もしかしてグリーフシードを独占しようとしてる事を言ってるのか。

 

それなら誤解を解かないと。

 

「転校生は他の魔法少女って子達を殺しまわっているそうなんだよ」

 

予想外の言葉に思考が止まる。

 

何を言ってるんだ?

 

どういう事?殺しまわる?

 

「なんか他の魔法少女達が黒い魔法少女って奴に襲われる事件が連続で起こっているってキュゥべえが言ってんだよ。んでその犯人の黒い魔女が・・・転校生って事になんてんだ」

 

混乱する俺に杏子ちゃんが説明を付け加える。

 

・・・・何それ初めて知ったんだけど!?

 

原作一回だけ見ただけでうろ覚えだけどそんな話なかった筈だ。どういう事?

 

俺の知らない話でもあるのか?

 

あとで上条に連絡して聞いてみるか。

 

俺は原作のアニメしか知らないけど、上条ならまどマギの事に詳しいから何か知っているかもしれないな。

 

「そういうわけなんだよ。城戸、さっきみたいに早くやっつけて!」

 

「さやかちゃんやめて!ほむらちゃんは私達を助けてくれたんだよ」

 

「でもその前に杏子を襲おうとしたじゃないか」

 

暁美さんと何があったか知らないけど美樹さんがとんでもなく物騒な事言ってるな。

 

何がどうなっているか知らないけどキュゥべえや美樹さんが言うその黒い魔法少女は暁美さんじゃない。

 

原作を知ってるからって訳じゃないけどよほどの理由がないかぎり彼女がそんな事するはずがないのはすぐに分かる。

 

「違う、私はそんな事しない」

 

彼女自身も色んな時間軸を移動して不信がられたけどさすがにいきなり人殺し呼ばわりされて混乱してるな。

 

こりゃシロだな。

 

さてどうするか。

 

下手に刺激したら暁美さんのソウルジェムが濁りきって魔女になってしまうし杏子ちゃんもマミさん警戒心むき出しで暁美さんもいざとなったら戦闘もやむなしって顔をしている。

 

「それはグリーシードを独占する為に他の魔法少女を狙っているという事かしら?もしそうなら許さない」

 

キュゥべえを信じているマミさんが身構えて戦闘態勢に入る。

 

暁美さんの事情と魔法少女の明かされていない秘密を知らずにキュゥべえと魔法少女を希望を振りまく絶対的な正義の味方と信じ切ってしまっているから無理もない。

 

それが裏切られた時の絶望感は深く別の時間軸で真実を知ってしまった彼女は失意と絶望に飲まれて錯乱し仲間の杏子ちゃんの命であるソウルジェムを撃ち砕いた・・・

 

あんな悲劇もう二度とあってはならないんだ!

 

だからこそ何とかしてこの一触即発の雰囲気を何とかしないと。

 

今の俺にできる事といったら・・・よし!

 

近付こうとしたら暁美さんに銃口を向けられ

 

それを見た杏子ちゃんが槍をマミさんがマスケット銃を出し、鹿目さんと美樹さんに隠れるように指示する。

 

俺は無言で赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)を解除した。

 

「ちゃっと城戸なにしてんのさ」

 

「美樹さん悪いけど少し黙って見ててもらえるかな。俺は彼女が嘘をついてるとどうしても思えないんだ」

 

後ろで美樹さんが文句を言ってる。

 

話も聞かない一方的な偏見も彼女を追い詰める要因になってしまったのだろうな。

 

顔だけ美樹さんに向けた後、再度暁美さんの方を見て両手を上げる。

 

「もし少しでも怪しい素振りを見せたらその拳銃で頭か心臓を撃ってくれ、そうしたらさすがの俺も死ぬから」

 

「・・・あなた本気で言ってるの?」

 

「本気じゃないとこんな事言えないさ」

 

「何考えてんだお前!」

 

「そうよ危ないから早く禁手(バランス・ブレイカー)なって!」

 

杏子ちゃんとマミさんが心配して俺の無茶を止めようとするがごめんそれは聞けない。

 

打算的な考えで悪いけど杏子ちゃん達と暁美さんとの仲が悪くなればワルプルギスの夜との戦いに支障が出るし

 

なにより暁美さんを孤独なままにさせたくないんだ。

 

「二人はそのままでいいよ、でも絶対にこっちから手を出さないで」

 

「何を企んでいるの?まったく理解に苦しむわ」

 

「何も企んでなんかいないさ、ただ誤解を解いて話がしたいだけだよ」

 

なんてかっこつけてるけど生身で本物の銃を前にしているからものすごく怖い・・・

 

背中に冷汗が流れてるし。

 

けどまずは話をして誤解を解く事から始めないとなにも始まらないしこのままだとお互いが誤解の末不幸になってしまう。

 

「・・・どうしてそこまでして私を信じようとするの?」

 

銃口を向ける暁美さんの目に涙が溜まり一筋の滴が流れる。

 

「もし本当に犯人ならグリーフシードを独占しようとする時点で他者の犠牲をいとわない自分勝手な性格だろうから鹿目さんと美樹さんを見捨てただろうし、逃げるタイミングを失っていたのなら俺達が杏子ちゃんと合流した時に三対一だと分が悪いから魔女が復活したあのどさくさに紛れて逃げればいい。でも君は逃げずに今も必死に自分の疑いを晴らそうとしている。それに・・・」

 

本当に暁美さんが犯人なら今この瞬間にも時間を止めてここから逃げてる筈だしな・・・

 

まあ暁美さんの能力は無用な警戒心と疑念を持たれないように今はまだ知らない振りをするけど。

 

でも本当の理由は。

 

「平気で人を裏切ろうとする女の子はそんな悲しそうな目をしないよ」

 

俺が前世で親戚中をたらい回しにされてた時裏切られまくったけどそんな中にも俺の事を本気で心配してくれた人もいてくれた。

 

おかげで信用できる人間とそうでない人間がある程度見分ける事ができるようになったけど

 

その時の経験がこんな風に役に立つなんて皮肉なもんだ。

 

心の中で前世の時の辛かった事を思い出し苦笑しているとカシャンとなにかが落ちた音が思考を現実に引き戻した。

 

見ると暁美さんの足元に拳銃が落ちていた。

 

「私は・・・私はやっていない・・・本当に知らないの・・・」

 

耐えきれなくなった暁美さんは手で涙を抑え泣きながら必死に訴えた。

 

「分かってる信用するよ」

 

暁美さんが落ち着いたと頃を見計らって大きく息吸い吐いて深呼吸して落ち着いた後

 

「いるんだろキュゥべえ出てこい!お前がいいだしたんだ。マミさんと一緒に詳しく聞かせてもらおうか!

 

空に向かって叫んでこの事態を作った原因の名を呼ぶ。

 

《やれやれ詳しくと言われても佐倉杏子と美樹さやかが言ってたように最近黒い魔法少女が他の魔法少女を襲っていると教えただけだよ》

 

「や、やっぱり転校生の事じゃないか!魔法少女だし服だって黒いし!現に杏子を襲おうとしたじゃないか」

 

「さやかちゃん落ち着いて、まだほむらちゃんだって決まった訳じゃないよ」

 

なるほど状況は不利だな。状況証拠は暁美さんを指してしまっているから美樹さんは完全に疑い、鹿目さんは暁美さんを信用しようとしている。

 

杏子ちゃんとマミさんは判断に困っている。

 

もうひと押しっていった所か。

 

「キュゥべえ、被害者が魔法少女って事は他にも魔法少女がいるって事だよな。お前が今まで契約した女の子の中にも黒い魔法少女はいなかったのか?」

 

《いるね》

 

感情がないキュゥべえは淡々と答える。

 

相変わらず表情がないから何考えてるか読めないな。

 

「犯人の黒い魔法少女の顔。もしくは暁美さんがやったという物的証拠でもあるのか?」

 

《顔も見てないし物的証拠もない。あるのは証言だけだね》

 

「つまりあくまでも黒い魔法少女って証言だけで確たる証拠は一切なく暁美さんが魔法少女を襲っている黒い魔法少女とは断定できない事だな」

 

《そういう事になるね、今の所はね》

 

「よかったほむらちゃんは悪い人じゃなかったんだね」

 

暁美さんの疑いが晴れ鹿目さんが後ろで安堵し一息吐く。

 

「でもあくまでも可能性の一つであって完全に疑いが晴れた訳じゃないんでしょ」

 

マミさんが痛い所をついてくる。

 

まあ第三者から見たらそうなるね。ほとんど屁理屈だし。

 

「そうだ、それに杏子やその小さな生きものを襲おうとしたのはどうなのさ!」

 

「いやついかっとなって先に変身したのは私だしな・・・」

 

申し訳なさそうに後頭部を頭を掻く杏子ちゃん。

 

「じゃあどうしてキュゥべえを襲ったの?キュゥべえがいなくなったら新たな魔法少女が生まれなくなる。やっぱりグリーフシードを独占するつもりで!」

 

「そ、それは・・・」

 

暁美さんの返事が詰まる・・・

 

体験した時間軸の経験から今ここで魔法少女の秘密を話せばマミさんが何するか分かっているから言えないよな。

 

「言いづらいないなら魔法少女じゃない俺が聞いておくよ。すまないけどこの件は俺に預けてくれないだろうか。お願いします暁美さんの事信じたいんだ」

 

頭を下げる。それでもダメなら土下座でもなんでもやるつもりだ。

 

「ちょっと城戸君」

 

「・・・分かったこの件は一真に任せた」

 

「佐倉さん!」

 

「一真が頭下げてここまで言ってるんだ任せてみようぜマミさん」

 

「・・・分かった、あまり納得はしてないけど城戸君に任せるわ」

 

「ありがとう、杏子ちゃん、マミさん」

 

やはりマミさんや美樹さんの疑いを完全に晴らすには真犯人の黒い魔法少女を見つけるしかないか。

 

「それはこれから俺達が調べる。美樹さん鹿目さん二人は今日の事は忘れて普通の生活に戻ってくれ」

 

「ちょっと城戸!私達をのけ者にする気か!」

 

「二人が係わる必要はない、これは魔女と戦うオレと魔法少女の問題だ。いられても足手まといになるのがオチだ」

 

冷たい言い方だが心の弱い美樹さんと最悪の魔女になる鹿目さんの二人を巻き込むわけにはいかない。

 

鹿目さんと美樹さんにきつめに突き放さないとまた付いてきそうだ。

 

「なんだと!もういっぺん言ってみろ!」

 

「・・・そうだな、戦える城戸ならともかく魔法少女でもない二人にいられても迷惑だ」

 

「杏子まで!分かったじゃあ私も魔法少女になる!」

 

「本気で言ってるの!馬鹿な真似はやめなさい美樹さやか!」

 

「さっきも言ったがそんなことぜってえ許さねえからな!」

 

「じゃあ城戸が使ってるその赤い手甲を手に入れた場所を教えてよ。それがあれば私も戦える」

 

まだ諦めない美樹さん

 

ねばるな

 

「この力は産まれつきだから無理だ」

 

「ううう…」

 

美樹さんが悔しがってるとキュゥべえが美樹さんの近くに寄り。

 

《二人共魔法少女になりたいのかい?じゃあ願いご・・・》

 

契約をしようとしていたいきなりキュゥべえが爆発四散する!?

 

俺何もしてないぞ

 

暁美さんも驚いた顔してるし他のみんなも驚いている。

 

それに今の見覚えのある魔力弾ってまさか。

 

「あ、あそこに誰かいる」

 

鹿目さんが空に向かって指をさし皆がその方向を見ると

 

「魔法少女になろうなど考えない事だ。こうなりたくなければな」

 

建物の上に右人差し指をこちらに向ける白龍皇の鎧を纏った上条の姿があった。

 

「な、なんだあいつは!

 

美樹さん驚きの声と同時に杏子ちゃんが槍をマミさんがマスケット銃を即座に出して構える。

 

「テメェは白龍皇だったか!何の用だ!また一真を狙いにきたのか!」

 

上条は一年の頃に俺の前に白龍皇としては現れた後は一切現れる事はなく杏子ちゃん達も話題に出すことはなくなっていたがそれが現れた事で警戒のレベルが一気に跳ね上がった。

 

俺は学校で正体を知っているのでほぼ毎日会ってるが奴が何をするか分からないので鎧と兜を再度装着する。

 

「別に何もしない、今日は忠告に来ただけだ」

 

「よくもキュゥべえを!」

 

マミさんがマスケット銃を撃つが上条の障壁に防がれる。

 

「安心しろあの害獣はそう簡単にはくたばらん。すぐまた姿を現す」

 

「何を言ってるの現に今あなたが!」

 

マミさんが新しいマスケット銃を取り出して撃とうしたその時

 

《やれやれ、まさか他にもイレギュラーがいるなんて思わなかったよ。君たちは一体何者なんだい?》

 

肉片になったキュゥべえの上にもう一匹”キュゥべえ”が姿を現した。

 

「え?」

 

「嘘!」

 

「な、なんで!」

 

「お前さっき爆発したんじゃ!」

 

インキュベーターはバラバラにされても体の替えはいくらでもある事を知らないマミさん、鹿目さん、美樹さん、杏子ちゃんが驚きの声を上げる。

 

《代わりはいくらでもあるけど、無意味に潰されるのは困るんだよね。勿体ないじゃないか》

 

「代わりって・・・」

 

「そういう事だ巴マミ。そいつは身体を失くしてもすぐに新しいのが来る」

 

「だ、だからってこんなひどい事を!」

 

「ひどい事?ひどいのは無限に再生できる事を教えずに君達をましては一般人を危険な事に巻き込む事じゃないのか?」

 

「そ、それは・・・」

 

そうかインキュベーターが不死身だと教えたのは不死身の癖に助けを求める矛盾を見せて不信感を抱かせる為か・・・

 

自分が悪者になるのも顧みず美樹さんの為に・・・

 

俺と違いやっぱりすごいよお前は

 

「まあいい、今回はこれで失礼しよう」

 

そう言うと背中の白龍皇の光翼(ディバイン・ディバイディング)と広げる。

 

「え、何?」

 

白龍皇が美樹さんをチラリと見ると飛翔してその場を後にした。

 

「と、飛んでちゃった・・・」

 

呆然とする鹿目さん、暁美さん。

 

「一体誰?今着ている城戸一真の鎧に似てるけど」

 

「白龍皇アルビオン、俺の宿敵だ・・・」

 

さすがに正体が上条だと言うわけにもいかないのでそこだけ伏せて簡単に説明した。

 

「そうあなたとそんな因縁が。その因縁に私達を巻き込まないで欲しいんだけど」

 

「別に巻き込む気はないさ、アイツの狙いは俺一人で君達がちょっかいかけなければ向こうもなにもしない」

 

「なんでそんな事が分かるのかしら?」

 

「あいつは目的は俺だけだ。それ以外の事はしないからな」

 

上条の奴、美樹さんに魔法少女になって欲しくないから演奏会が終わってすぐに来たんだろうけどな・・・

 

「暁美さん、今は信じてくれと言わない、ただ話がしたいんだ聞いてほしい」

 

何度も繰り返した時間遡行の旅で誰にも信じてもらえず失敗の連続で人間不信に落ちいっているから彼女に隠し事や嘘は通用しない。

 

もし少しでも隠し事や嘘を付けば俺に対しての不信感を煽ってしまう。

 

だから信じてもらうには何も隠さずに俺の正体を明かして本音でぶつかるしかないと考えていた。

 

「・・・いいわ、あなたは私の事を信じてくれたし味方になるかどうかは別にしてさっきの白い鎧を着た人物についてもあなたの力にも興味があるし話だけでも聞いてあげる」

 

「・・・!ありがとう暁美さん!」

 

彼女の前向きな返答を聞いて笑顔になる。

 

話を聞いてもらえるなら一歩前進できる。

 

そう思っていた。

 

しかし・・・

 

この時の俺は暁美ほむらという人間の中に巣食う心の闇が思った以上に根深い事を知る由もなく

 

「佐倉杏子、一つ聞かせてなんであなたは彼の言葉を信じたの?私が敵だったら身の危険にさらされるのよ?」

 

「あ?そんなの一真を信じてるからに決まってるだろ?アイツはアタシが魔法少女になりたての頃から背中預けて一緒に戦ってる相棒なんだ。その一真がテメェを犯人じゃないって言ってるのに信じないでどうすんだよ」

 

杏子ちゃんと暁美さんが話すその後ろで

 

「相棒か・・・」

 

さらに・・・マミさんが哀しそうな顔をしたのに気づいてなかった・・・


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。