魔法少女と偽りのヒーロー   作:カオスロイドR

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第15話 結んだ影の協定と光の絆

上条との激闘からの翌日。

 

俺は昨日の戦いの事を問い詰める為に一時間目が終わった休み時間に上条のいる八組に向かおうとしたら

 

「やあ城戸君。来ると思ってたよ」

 

「上条!」

 

余裕の表情の上条が八組の教室前で待っていて昨日の事もあり声に思わず怒気が入る。

 

ザワッ!?

 

他の生徒達が何事かとこちらに注目し出す。

 

だが俺は上条に詰め寄り、また上条も気にせず二人の間に一触即発の空気が漂う。

 

「ちょ、ちょっと!なんで二人共そんなに険悪なの?」

 

「一真も何があったか知らないけど落ち着け」

 

たまたま近くにいたのだろうか。

 

異様な空気を読んだ美樹さんと杏子ちゃんが慌てて止めに入る。

 

「なんでもないよ、さやか。城戸君向こうで二人だけで話をしようか?」

 

「大丈夫だよ杏子ちゃん。俺は冷静だ。いいだろ上条」

 

そう言って上条の後に付いて行き

 

事情の知らない杏子ちゃんと美樹さんが残された。

 

・・・ごめんこればかりは話すわけにはいかないんだ。

 

なにかいいわけ考えておかないとな。

 

「ねえ杏子、あの二人になんかあったの?あんな城戸を私見た事ないんだけど」

 

「アタシだって分かんねえよ、ただ・・・」

 

「ただ?」

 

「あいつが他人に対してあんなに怒ってるの小学生以来久しぶりに見た」

 

 

 

人気のない校舎裏に着き、上条が生徒や教師とインキュベーター避けの結界を張って話し合いをすることになった。

 

あの結界、前は苦労したけど使用者にとったら便利だな。

 

練習したら俺にもできるだろうか。

 

できなくても俺の持つ技で代用できないかな。

 

「まずは君に謝罪させてくれ。僕は君が幼女神から貰った特典の能力を利用して何も知らないさやか達を兵藤一誠のように彼女達をハーレム要員にしようと企んでいるのではないかと思い込んでしまっていた。すまなかった」

 

頭を下げる上条。

 

なるほどそれで・・・

 

確かに赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)の本来の所有者である兵藤一誠はハーレム王目指してるいるから同じ力を持った俺もハーレム王になる事を目論んでいるんじゃないかと誤解されたのか。

 

でも俺は目指してないよ。

 

興味ないから。

 

赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)を選んだのは単純に倍加の力と赤龍帝の鎧(ブーステッド・ギア・スケイルメイル)がカッコいいから選んだのが理由だったし

 

「で、謝罪をするって事は誤解は解けたと解釈していいんだな?」

 

「ああ、君は彼女達を守る為に左腕を差し出したのだろう?一時的とはいえ禁手(バランス・ブレイカー)に至る為に。自分の欲望しかない奴はそんな事しない」

 

上条が俺の左腕を指さす。

 

「ああ、銀色のバイクの形をした魔女が現れてそいつは物凄く強かった。その上そいつは年端もいかない子供まで人質に捕っていたんだ。子供を助けてみんなと生きて帰る為にどうしても禁手(バランス・ブレイカー)になるしかなかったけど俺が弱い所為でなる事はできなかった。だから俺は左腕を代価にして疑似禁手(バランス・ブレイカー)に至ったんだ」

 

「後悔と恐怖は無かったのかい?自分の身体の一部を失う事に」

 

「恐怖は無かった・・・のかな。無我夢中だったし襲ってくる魔女の恐怖の方が大きかったから。後悔は・・・杏子ちゃん、佐倉杏子に対して迷惑をかける事になってしまった事だ」

 

「迷惑?」

 

無言で左腕の制服の袖を捲って腕を上条に見せる。

 

「俺の左腕、みんなと同じ人間の腕に見えるだろ?でも違うんだ。本当なら兵藤一誠のように代価として支払った腕は鱗がぎっしりと生えたドラゴンの腕になっていた。でも偶然ドラゴンの左腕が杏子ちゃんのソウルジェムに触れて左腕のドラゴンの魔力がソウルジェムに吸収され元の人間の腕に戻ったんだ」

 

「そんな事が!」

 

『ありえん・・・そのようなこと』

 

上条とアルビオンが驚きの声を上げる。

 

この二人にとってもこの現象は想定外の事だったようだ。

 

「でもそれは一時的なものだ。時間が経てば元のドラゴンの腕に戻ってしまう。その度に杏子ちゃんに魔力を吸収してもらわないといけない」

 

「吸収する事で佐倉杏子自身に副作用とかないのか?」

 

「リュネが言うには女神の名においてそれは絶対にないと保証してくれた」

 

銀の魔女との戦いの後、しばらくして神様から手紙が来て神様も副作用はないと太鼓判を押してくれた。

 

「だから誓ったんだ。この力を使って魔女やインキュベーターと戦ってせめて近くにいる俺の大事な人達の希望や未来を守ると」

 

今までの人生が辛くなかったわけがない。それでも俺を支えてくれた人や助けてくれた人がたくさんいた。

 

だから俺も助けてくれた人達のようなヒーローになりたいと思ったから。

 

「・・・そうか、そんな覚悟があるなら提案がある」

 

「提案?」

 

「僕は君のようなみんなを助けれる楽観者じゃなく誰かを助けるには犠牲も必要だと考える傲慢な人間だ。さやかさえ助かれば他の人間などどうなってもいいと思っている。だから君と僕は敵同士だ」

 

こんなに言っても俺達は分かり合えないのか・・・認めたくないがそれが上条の考え方なら仕方ない。

 

「だが約束しよう。学校内と魔女関連と関係ない時はかつてと同じように君と親友関係を築いていくと」

 

「分かった」

 

そうか今はそれでいい戦いが終わり、いつか本当の意味で友達の戻れる日を楽しみに待っている。

 

「あと僕はさやかやインキュベーターに白龍皇だと知られたくない。さやかを守る為には影から動いた方が動きやすいからね。だからこの事は秘密で頼む」

 

こうして一応の休戦協定を結び学校にいる間は普通の友人として過ごす事になった。

 

向こうも美樹さんのいる学校ではむやみに力を振るわけにもいかずよほどの事がないかぎり破られることもないしこちらも無用な戦闘は避けたい。

 

こちらも破って周りの人間に危害が加えられるかもしれないので破るつもりもない。

 

あと上条の左手が怪我で動かなくなる大事故に関しては普通の人間ならまだしも白龍皇の光翼(ディバイン・ディバイディング)を持った上条は弟の上条透を助けて無傷で生還した。

 

弟を助けた理由は肉親の情ではなく同じバイオリニストの弟が左手を怪我して美樹さんが願いで回復させて魔法少女化を防ぐ為らしい。

 

本心はどうなのかそれは鈴木君、いや上条にしか分からない。

 

ジリリリリリリリ!!

 

呼び鈴がなり思考の渦から現実に引き戻される

 

「じゃあまたね、今度戦場で相見える時までに”ソレ”は直しておいた方がいいんじゃないかな」

 

あいつ、何言ってるんだ?

 

『一真。足を見てみろ・・・」

 

え?あ!

 

ひ、膝が震えている!いつからだ?

 

『お前があいつと二人だけになった時からだ」

 

・・・気づかなかった。

 

俺は・・・あいつに怯えてる・・・

 

くそ!

 

こんなんじゃだめなのに!

 

『(無理もない。全戦全勝だった一真がようやく禁手(バランス・ブレイカー)に至ってさらに力を付けた上で全力を出し切って負けたんだ。体が無意識に恐怖しているのか)』

 

その後の俺は悲惨だった。

 

何をやっていても上の空で上手くいかずに。

 

「やる気ないならお前今日はもう帰れ!」

 

挙句の果てに路地裏で見つけた魔女退治中もつまらないミスを連発してしまい杏子ちゃんに怒られる始末。

 

はっは、駄目だなこんなんじゃ呆れられるのも無理はない。

 

魔女はマミさんが倒しグリーフシードを回収し、結界が解けていく。

 

「ごめん・・・」

 

フラフラと路地裏から出ていく。

 

「城戸君、最近様子が変ね」

 

「そうなんだよ、あいつあの白龍皇って奴と戦ってからいつもあんな感じだ・・・」

 

「私達に何か出来る事があればいいんだけど・・・」

 

俺は二人と別れトボトボと見滝原市中を歩く。

 

『(一真、佐倉杏子も巴マミも心配してるぞ)」

 

「(分かってる)」

 

分かってるんだ。心配かけてしまってる事を

 

俺だってこのままじゃダメだって分かってるのに

 

でもどうしてもアイツが姿が脳裏に横ぎり体がふるえてしまう。

 

せっかく禁手(バランス・ブレイカー)になれてほとんどの技が解除されたのに俺はあいつに勝てなかった。

 

最初の方までは互角だったのに。

 

アイツの持つ完全な王の駒(キング・ピース)が発動するまでは・・・

 

向こうの駒の発動は無制限、それに比べて俺の駒はたったの五分間

 

俺にも完全な王の駒(キング・ピース)があれば勝てるのに。

 

リュネの所為で・・・

 

ダ、ダメだ!こんなこと考えたら

 

俺は最低だ!

 

あの時は戦いで熱くなっていたが戦いが終わり冷静さを取り戻すとどうしても不完全な王の駒(キング・ピース)を持ってきたリュネの所為にしてしまう。

 

分かってる。リュネだって間違えたくて不完全な駒を持ってきたんじゃないのに。

 

命の恩人に対して俺はそんな最低な考えに至ってしまうんだ。

 

『力で勝てないなら技で勝て!』

 

人気が少なくなった所でドライグが声を荒げた。

 

『いつまでもウジウジした所でアイツには勝てんぞ!たしかに上条とアルビオンは強敵だ。しかしお前にはアイツらにない技がたくさんあるだろう。そしてお前にはこれまでの実戦経験もある。ならばそれを活かせ!幸いもうすぐ夏休みだ。その時間を修行に生かしてさらに強くなればいいではないか!」

 

そ、そうだな。あんなに頑張ったのにこのまま負けっぱなしなんて悔しいよ。

 

俺は夏休みを利用してさらにきつい修行に挑む事を決意した。

 

今できる事を成し遂げる為に。

 

でも我流では限界がある。生半可な修行をした所で完全な王の駒(キング・ピース)を持つアイツに勝てるか・・・

 

俺はもう二度と負けないと言う男の意地を貫き通す為、禁手(バランス・ブレイカー)の力を最大限に引き出せるよう夏休みを利用して修行をすると話す。

 

「アタシも付いて行くぞ!」

 

「私も行くわ!」

 

すると二人が付いて来るって言われた時はさすがに参った。

 

外泊になるから駄目だと言ってるのに一緒に行くと聞かない杏子ちゃんとマミさんを何とか説得できたけど・・・

 

「男の子の意地に答えてあげるんだから次はお返しに女の子の思いに答えて今度一緒にお買い物に行きましょう」

 

「ああ、荷物持ちくらいなら言ってくれたらいつでもいいけど」

 

「そういうんじゃなくてデートって意味よ」

 

「え、ええ!?デ、デート!?」

 

「あら私とじゃ嫌?」

 

「そ、そんな事は」

 

「ちょっと待て!なんでそうなるんだよ!」

 

「あなたは一真君の家に住んでるんだからいいでしょ。私だってたまにはいい思いしたいのよ!」

 

「これとそれは別だ!」

 

ギャーギャー

 

・・・一悶着あったが二人と別々に一緒に出掛けるという願いを叶える事で何とか解決することができた。

 

二人にも心配をかけたんだ。お詫びの意味を込めて修行から戻ったら出来る限りの事をしよう。

 

杏子ちゃん、マミさん。心配かけてごめんねそしてありがとう。

 

特訓内容はウルトラマンの新しい能力の確認と使いこなす特訓をする為にイッセーが冥界の山でやっていたサバイバル生活を無人島かどこかでやろうと思う。

 

たが一つ問題があった。

 

それは両親の存在だ。

 

いくら夏休みでも子供が数日間いなくなれば親なら心配して警察に捜索願を出される。

 

かと言って修行の時間がたっぷり取れるせっかくの夏休みにいつもの修行だけでは勿体ない。

 

どうにか解決策がないかと部屋で悩んでいるとドアの前が輝き出す。

 

こんな事する知り合いは一人しかいねえ。

 

「はろ~元気にしてたですか~」

 

やっぱりか・・・

 

俺と上条の寿命を削り俺を転生してくれた張本人である幼女神リュネか

 

いきなりだな。前に見たのが幻みたいなものだし実物見たのは転生前か。

 

「・・・久しぶり尻は大丈夫か?」

 

俺にご禁制の使った事で尻は百叩きになった件を出す。

 

「にゃ!にゃにいきなり言ってやがるですか!」

 

「ぐはっ!」

 

それを避けずに甘んじて受ける。

 

お約束って奴だ。

 

「まったくセクハラですよ!」

 

頬を膨らませ目の前でプンプン怒っている幼女神

 

「おう悪いな、で何の用だ?」

 

殴られた頬を擦りながら訪ねる。

 

今で脳内に声が来たリ幻影が現れることは何度かあったがこいつが直接来たことなんてなかったからな。

 

「セクハラするならせっかくご両親に心配かけずに本気で一真が戦えるとっておきの修行相手を用意したのにやめますよ」

 

「本当!」

 

最高の修行相手、もしそれが本当ならぜひお願いしたい。

 

とはいうのも正直一人だけの修行に限界を感じていたからだ。

 

杏子ちゃんやマミさんにお願いしたいが魔力を消費してソウルジェムが穢れる魔法少女では正直効率が悪いし負担を掛けられない。

 

由良さんという師匠もいるが

 

普通の人間の由良さんと能力を使って本気で戦えるわけにもいかない

 

だからこそリュネの言う本気で戦える修行相手は願ってやまない事だ。

 

「頼む!ぜひ紹介してくれ!俺は白龍皇に!上条恭介に勝ちたいんだ」

 

あいつに勝ちたい。

 

いくら協定を結んだといってもこのまま奴に負けっぱなしで奴の影に怯えていきたくない。

 

もしあいつが協定を破って仲間や家族が傷つけられたりでもしたら。

 

弱いままではみんなを護れない。

 

だから強くなりたい。

 

意地を貫き通す為に俺はプライドを捨てて膝を付き頭を地面に擦り着けていた。

 

「わ、わかったのです。だから頭を上げるです」

 

俺の予想外の土下座を見て慌ててリュネが駆け寄る。

 

「じゃあ!」

 

嬉しさで頭上げる。

 

「そんな事しなくても助けるですよ。その為に来たのですから」

 

「でも願いは叶えたのに助ける舟なんか出していいの?」

 

「いいのです、これくらいなら問題ないですよ。試作型の王の駒(キング・ピース)を渡してしまった償いをさせて下さい」

 

気にしてないと言えばうそになるが、それでもこれで問題は解決した。

 

まず両親の問題からだがこれは簡単にいうと俺の肉体と精神を一時的に分割して本体は修業、分身は普通に生活させるらしい。

 

ウルトラマンマックスの分身はあまり距離が離れると分身が消えてしますがこの方法なら消える事はない。

 

しかし肉体と精神を分割って改めて考えたらとんでもないな。

 

まあ転生や特典なんてできるんだから肉体と精神を二つにするくらい可能なのか?あれか某口笛の嫌いな宇宙人が地球の神様になる為に悪の心を追い出したみたいなものと理解すればいいのか?

 

でもこれで両親の事を気にせずに特訓ができる。

 

また本体と分身での夏休みでの記憶の食い違いが発生しない為分身が消えれば分身の記憶はそのまま本体と共有できるらしい。

 

すまん、ピッ〇ロさん方式でなく多重影分身方式だったてばよ。

 

やれやれ俺も現金なもんだ。

 

修行の目処が立ったおかげで軽口言えるぐらいに少しだけ肩の荷が軽くなるんだから・・・

 

ありがとう。

 

「あ、学校で出された夏休みの宿題はちゃんと本体である自分でやるのですよ。あと夏休みが終わったら回収するですよ」

 

・・・チィ、中学生の宿題でもめんどうだから分身の方に押し付けようと思ったのに・・・

 

「まったくそんな邪な考えでは強くなれませんよ。じゃあ修行相手のいる場所に送りますよ、えい!」

 

リュネが掛け声を出すと視界が歪み光に包まれて目を閉じる。

 

ほんの数分ぐらいだろうか

 

光が収まり目を開けれるくらいの明るさになったので恐る恐る目を開けるそこは

 

「ここはどこだ?」

 

辺りを見回すと俺の部屋の中がどこかの風の吹く荒野に変わっていた。

 

「そういや修行相手はどこにいるんだ?」

 

「君が城戸一真君だね」

 

後ろから聞いたことのある声がして振り向くと四人の男性が立っていた。

 

声を掛けたのはテレビで何度も見た事ある白髪の眼鏡をかけた男性だ。

 

「あ、あ、ああ、あなた方は!」

 

「時間が惜しい挨拶はあとだ。さっそく修行を始めよう」

 

カウボーイ姿の男性がそう言うと四人の姿が変わる。

 

思わず背筋を正し緊張する。

 

「あまり緊張するといい結果が出せないぞ。肩の力を抜け。」

 

「は、はい!」

 

「こりゃ前途多難だな、でもここまで緊張してくれるなんて嬉しいな。本当なら兄弟全員で来たかったがさすがに我々の宇宙も疎かにできないんでな許してくれよ」

 

「いえ、兄さん。僕は彼の気持ちがよく分かります。僕もはじめて教官達に会った時は彼の様になってましたから」

 

「はっは、そういやそうだったか?」

 

き、緊張するなって言われても無理です。

 

だってそうだろ、俺の目の前にはみんなが知っている本当のヒーロー。

 

ウルトラマン、ウルトラセブン、ウルトラマンジャック、ウルトラマンエース、ウルトラマンメビウス

 

人間サイズとはいえ子供の頃から憧れたウルトラ兄弟がいるんだぞ!

 

男なら緊張するなって方が無理です。

 

リュネさんよ、確かにとっておきの修行相手だよ!

 

本気出せるし、俺の特典のウルトラ戦士の能力の向上を考えたら本家本元なんだからこれ以上にない最高の師匠の方々だよ・・・でもな!

 

お前!とっておきにもほどがあるわ!!!!!

 

「まずは実践方式の組手から始める!鎧を着ろ。いくぞ!」

 

そう言うとセブンさんが右の拳を後ろに引き、俺に向かって勢いよく突き出して来た。

 

「うえ!いきなり!」

 

急いで赤龍帝の鎧(ブーステッド・ギア・スケイルメイル)を纏ってセブンさんの攻撃を受け止める。

 

うわ、鎧越しでもこの衝撃はすごすぎだろ!

 

たった一撃で受け止めた部分に亀裂が走ってるし。

 

白龍皇の時でもこうはいかなかったぞ!

 

「セブンらしいな」

 

「ええ、まったくレオの事を思い出します」

 

ちょっとジャックさん、エースさん和んでないで助けて下さい!

 

こうして夏休みの間、瞑想とサバイバル生活と共に俺は日替わりでウルトラ兄弟の皆さんに鍛えてもらうことになった。

 

主な修行内容は朝は光線技の修行と座学、夏休みの宿題の消化、昼は実践的な組手、夜は瞑想のスケジュール

 

朝は俺がメビュームブレードなどの多用している技や光線技をお手本として間近で見せてもらいそこから自分もやって悪い所を直していく訓練だ。

 

今日の教官はウルトラセブンさん

 

小屋の外でウルトラ念力を実戦で使いこなす為に俺は両の拳を合わせて水がいっぱいに入ったバケツを空に浮かせる基礎訓練を行っていた。

 

「(ぐ・・・)」

 

集中力が乱れ浮いてたバケツが下に落ちる。

 

「もう一度だ!」

 

両拳を合わせてウルトラ念力を発動してバケツを浮かす。

 

だがすぐにバケツは下に落ちてしまう。

 

「くそ!なんでうまくできないんだ!」

 

「精神を集中しろ。ウルトラ念力の基礎は磨かれた集中力にある。そして気合いだ。見ていろ」

 

右腕を伸ばしたセブンさんがそう言うとウルトラ念力で俺より大きな小屋ぐらいの岩を浮かす。

 

「イヤァー!」

 

セブンさんの気合いの入った叫び声で岩が爆発四散した。

 

すげえ、あんな大きな岩が粉々になるなんて

 

「集中力を一瞬の気合いで吐き出すのがウルトラ念力だ」

 

「はい!」

 

セブンさんから教わったが何度も失敗してしまう。

 

それでもセブンさんは俺を見捨てずにただ黙って見守ってくれた。

 

そしてついにその時が訪れた。

 

「・・・・・ハアア!!」

 

空に浮いたバケツは破裂して水が下に落ちることなくシャボン玉のように空に浮く。

 

「や、やった!できた!」

 

「そうだ!お前が諦めない限りそれは敗北ではない。ウルトラ念力を応用すれば様々な状況で役に立つ。その呼吸を忘れるな」

 

「はい!」

 

昼の日替わりで相手の変わる組手は正直きついってレベルじゃない。

 

「ぐあ!」

 

投げ飛ばされて倒れ込んでしまう。

 

「どうした?これぐらいで根を上げてるようでは魔法少女達を護る事なぞできんぞ!」

 

「ま、まだまだ!」

 

四人の中でも一番厳しいウルトラセブンさん

 

さすがと言うべきかこれまで戦った相手とは次元が違いすぎる

 

なにしろ鎧ありの状態でも光線技ありのルールだからむこうも遠慮なく光線をバンバン撃ってくるし、体術も俺なんか足元にもおよばないくらい凄まじく強い。

 

これが地球を護り抜いた歴戦の戦士の力なのか・・・すごすぎだろ

 

鎧なんて何度も簡単に壊されたし。

 

俺の光線技やドラゴンショットをものともしない

 

「ジュワ!」

 

セブンの頭部に付けられた必殺技『アイスラッガー』が飛んできて胸に直撃する。

 

「うわあああ!」

 

ま、また鎧が壊された。

 

とんでもない衝撃が体を駆け巡る・・・

 

正直この模擬戦がいちばんきついな。

 

それに恐怖心を克服する為とはいえ鎧の使用禁止でジープに追い掛け回されるのはもうこりごりです・・・

 

でもエースの北斗さんが作ってくれた料理やメビウスのミライさんのカレーはおいしいかったです。

 

夜は瞑想してドライグと昼間の組手の反省会中

 

『一真、昼間はだいぶ派手にやられたな、辛いか?』

 

「いや、この修行は得るものがたくさんあって辛いと感じる暇はないよ」

 

戦闘面だけじゃなく戦いの心構えや厳しさ、俺になかったものや足りなかったものをたくさん教えてもらった。

 

俺も教わった事を今後に生かして努力していこう。

 

『そうか、そうだな。じゃ今日の座学の事なのだが・・・」

 

こうしてドライグと反省会したあと。寝床に行き就寝して夜は更けて朝を迎えるの繰り返し

 

そんな普通なら一生体験できない貴重な夏休みの日々だった。

 

そしてついに夏休みも終わりが来る日が来た。

 

「ここまでよく付いてきたな、今日で修行は終わりだ」

 

「ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・はい、ありがとうございました」

 

最終日、ウルトラマンさんとの組手が終わり袖も取れてボロボロの道着から着替えて帰る準備をしていると

 

「最後の組手も終わったようだな」

 

声がした方に振り向くとセブンさん、ジャックさん、エースさん、メビウスさん

 

他の兄弟の方々が見送りに来てくれた。

 

小屋の入り口前

 

荷物を背負う俺の前に五人兄弟が横に並ぶ。

 

「これから我々がこの修行の締めに最後の言葉を送る」

 

最後の言葉、そうだ修行が終わるって事は厳しく優しかったこの人達とはもうお別れなんだ。

 

短い間だったけど寂しくなってきたな。

 

「我々は転生者の君と違い別の世界の住人だ。君の戦いに加わる事はできない。だが私達の一番弟子である君がいるなら安心して任せ平和を取り戻すことを祈っている」

 

ウルトラマンさん…

 

「それがどんなに辛い状況でも未来を信じる心が不可能を可能にする。信じる力が勇気になる。あと仲間を大切にしろよ俺が受けた悲しい思いは俺だけで十分だ」

 

セブンさん…

 

「例え貰った力であろうと信じて戦えばそれは本物になる。挫けず一生懸命に信念を貫き通すことが大切なんだ。負けてもいい倒れたら何度でも立ち上がればいい。我々がそうであったように、そして時には周りの悪い心、嫉妬、憎しみ、疑いといった悪意に触れてしまい苦しめられ絶望しすれ違い守るものに値するのか悩むときだってある。それでも一人でも信じてくれる人がいたらその人の事を思い出してくれ」

 

ジャックさん…

 

「その時は優しさを失わないでくれ、 弱い者をいたわり、互いに助け合い、どこの国の人達とも友達になろうとする気持ちを失わないでくれ。 例えその気持ちが何百回裏切られようとな」

 

エースさん…

 

「そして魔法少女達の絶望をあなたの心の光と紡いた絆で希望に変えてあげてください」

 

メビウスさん…

 

「それが我々の最後の願いだ」

 

師匠達の言葉が心に染み込んでいく。

 

大変だったけど得たものがたくさんあった。

 

技や体術だけじゃなく大切なものを師匠達からたくさんいただいた。

 

あ、やべ涙が出てきた。

 

「今は本当の意味を理解できなくてもいい。だがさっきの言葉を忘れないでくれ」

 

「君が諦めない限りそれは敗北ではない 」

 

エースさんとジャックさんが俺の手を力強く握る。

 

託してくれたんだ、この俺に!

 

「ありがとうございました!何度負けて何度も立ちがり絶対に挫けません!」

 

そうだ白龍皇に一回負けたからってそれがなんだ。

 

負けても屈せず何度も立ち上がって強くなって向かって行ってやる。

 

それが希望につながる事なら

 

「がんばれ別の世界の私達の弟子よ」

 

「はい!」

 

ウルトラマンさんの声と共に景色と四人の姿が消えて見まわすと見覚えのある部屋にいた。

 

そう、自分の部屋に戻っている。

 

「帰ってきたのか、俺は」

 

「やあ、本体の俺、おかえり修行はどうだった?」

 

呆然としていると声を掛けられる

 

声を掛けたのは夏休みの間に俺の影武者をしていた分身。

 

座って漫画を読んでいた俺と同じ顔をした分身が立ち上がり出迎える。

 

「すごく充実した毎日だったよ。君も俺の身代わりになってくれてありがとう」

 

「かまわないさ、俺は君でもあるんだ。さあ一体化しよう手を出してくれ。一体化したら俺が夏休みに体験した家での出来事などが君の中に流れ込んでくるよ」

 

俺と分身がタッチすると分身が光の粒子なりながら消え、粒子が俺を包み込みやがて消えた。

 

なるほどこっちでも色々とあったんだな。

 

流れ込んだ記憶を見ながら思わず苦笑していると

 

「なんだ今の音!?あ、あれ一真?ほ、本物の方の?」

 

部屋に杏子ちゃんが入ってきた。

 

杏子ちゃんとマミさんにはあらかじめ分身が居ると事を伝えていた。

 

伝えた時になぜか一真(城戸君)なら仕方ないと言われたけど。

 

「ただいま杏子ちゃん。母さんは?」

 

「おかえりおばさんは買い物に出かけてるぞ」

 

「そっか」

 

杏子ちゃんやマミさんにもお世話になった。

 

いずれ出かけるだけじゃなくてなにかの形に残る物で返さないとな。

 

「・・・一真だよな?」

 

「なんで?」

 

「いや、なんか修行に行く前と顔つきが変わったような気がしたからさ」

 

変わったか・・・かもしれない。あの人達のおかげで俺はまた前に進めるんだから。

 

「憧れの人達に出会って忘れかけてた大事なものを取り戻せたからかな」

 

その後二年生に進級し、クラス替えがあったけど杏子ちゃんや鹿目さん、志筑さん、中沢と美樹さんとは変わらず同じクラスになり殆ど変わり映えないと思ったけど上条恭介と同じクラスにてしまった。

 

でももう俺は上条を白龍皇を恐れない。

 

さて今年から彼女が転校してくる。

 

ここから本番だ!




ウルトラ念力にくだりはウルトラマン物語を参考にしました。

ウルトラ兄弟の台詞回しや雰囲気を似せようと努力しましたがどうだったでしょうか?もしファンの方で不快に思われた方この場を借りて謝罪します。

あと最近まどマギ成分が薄くてごめんなさい。

ですが次回から新章『原作介入編』が始まりついにほむほむがやってくる。

一真の介入でいつも繰り返して見てきたクラスの光景と違う光景を見たほむほむの反応は?

お楽しみに

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