あと、翔が好きな人には先に謝っとく。ごめんなさい。
理由は、決闘が始まりゃ分かる……てか、もう分かってるか。
まあいいや。とりあえず、行ってらっしゃい。
視点:翔
『それデーハ! これより、セニョール丸藤翔の、オベリスクブルー寮への昇格を賭けた、決闘を開始するのーネ!』
そんなクロノス先生の放送の声が聞こえるけど、それ以上に、目の前の対戦相手には、正直驚かされた。
『対戦相手ーは、オベリスクブルー二年生、セニョーラ平家あずさなのーネ!』
「いえーい、どうもどうも」
クロノス先生から紹介を受けて、そんな声を出しながら陽気に手を振ってる。正直なところ、見た目にはそんなに強そうには見えない。けど、僕はこの人の強さをよく知ってる。下手をすれば……いや、実際に、梓さん以上に強いってことを。
「まさか、あずささんが相手だなんて」
そう話し掛けてみると、あずささんも、素朴に笑い出した。
「えへへ。翔君の昇格決闘で誰がいいかって募集があった時、立候補したんだ。せっかくだから、あの時の答えをここで決めようと思って」
「あの時の答え?」
「うん。ほら、わたしと君、どっちが強いかって」
「ああ……」
セブンスターズから、七正門の鍵を守ること。そのために集められて、鍵を受け取ったメンバー。その内、僕と、あずささんの二人はどっちが強いか決められなくて、二人で一つの鍵を受け取ることになった。
「お互いに、あれから色々なことがあったよね」
「うん。その中でたくさんの決闘を経験して、お互いに強くなった」
「あの時の自分と今の自分、かなり差ができてる。けど、それはお互いもそうとは限らないよね」
「うん。あの時も今も、本当にどっちが強いのかは分からない。だったら、今ここで、答えを出しても良いと思ったんだ」
「うん。僕も知りたいよ。あの時の答え。どっちが強くて、本当ならどっちが選ばれるべきだったか」
『もちろん、そんなの翔さんに決まってます! 翔さんはあなたより断然強いです』
と、僕らの会話に、マナが割り込んできた。
『ほぉー、言うじゃねーの。言っとくが、うちの主も嘗めてもらっちゃ困るぜ』
と、あずささんの方も、シエンが、同時に全六色の着物が出てきた。
『ふ、ふん! 数が多いからって、翔さんの強さには関係ありません』
『ああ。こっちも数の有利が関係あるとは思わねえさ』
『むしろ、あずさなら俺達無しでも一人で戦えるだろうしな』
『むむむ……言いましたね! 翔さんは絶対に敗けません! あなた方を倒して、ブルー寮へ行くんです! 行くって言ったら行きます!』
『それじゃあ、僕らはそれを全力で阻止しなくちゃ。ねーミズホ』
『ええ……ところでシナイ、さっき、あの娘に見惚れていませんでしたか?』
『僕が?』
『シナイが……』
『まさか。確かに彼女が可愛いことは否定しないが、君を超える可愛さなんて僕は知らないよ。ほら、僕の目覗いてみて。僕の瞳に映ってるの、ミズホだけだろう』
『シナイ……////』
『ミズホ……』
『って!! こんなところでイチャつかないで下さい!! 普通の人には見えないからって不潔です!! ふしだらです!!』
(『お前が言うな。お前だけは言うな……』)
「……お互い、精霊には苦労するね……」
「うん……けど、こうして僕達を選んでくれた精霊も、僕達の成長の証なんだよね」
「そうかもね。だからこそ知りたいよ。どっちが強いのか」
「うん。その答えを見つけるために、全力でやろう」
「うん!」
互いの精霊がやる気を見せつつ、僕らの間にもやる気が出る。そうして、言葉を締め括った瞬間を合図に、始まる。
『それデーハ、決闘開始ぃぃいいいいい!!』
『決闘!!』
翔
LP:4000
手札:5枚
場:無し
あずさ
LP:4000
手札:5枚
場:無し
「翔ー、頑張れよー!!」
「翔さん……あずささん……」
「先行は僕だ。ドロー!」
翔
手札:5→6
(手札は、悪くない。よし、一気に布陣を整えよう)
「僕は『連弾の魔術師』を召喚!」
『連弾の魔術師』
レベル4
攻撃力1600
「え? 『連弾の魔術師』……?」
「『ビークロイド』じゃねえ!?」
「どうしたザウルス? 兄貴」
「翔のデッキが、今までのと変わってる」
「ドン?」
ちょっとは驚いてくれるかって思ったけど、さすがにあずささんの顔は変わらないな。
「僕は更に魔法カード『強欲な壺』を発動。カードを二枚ドロー」
翔
手札:4→6
「そしてこの瞬間、『連弾の魔術師』の効果発動! 自分が通常魔法カードを発動した時、相手に400ポイントのダメージを与える。スペルバーン!」
『強欲な壺』を発動した瞬間、『連弾の魔術師』の持つ二本の杖が光って、それをあずささんに向ける。その瞬間、杖から放たれた光が、あずささんを襲った。
「……」
あずさ
LP:4000→3600
「『
さっきと同じように、あずささんに光がぶつかる。
あずさ
LP:3600→3200
「更に、永続魔法『魔法族の結界』を発動」
この瞬間、僕の頭上を中心に、丸い大きな魔法陣が描かれた。そこから降りてきたいくつもの輪っかが僕を包んで、そんな輪っかの周りを、四つの結晶が回ってる。
「そして『
『見習い魔術師』
レベル2
守備力800
「『見習い魔術師』の召喚に成功した時、フィールド上のカードに魔力カウンターを一つ乗せる。僕はこの効果により、『魔法族の結界』に魔力カウンターを乗せる」
『魔法族の結界』
魔力カウンター:0→1
カウンターが乗った瞬間、四つの結晶の内の一つが光り輝いた。
「カードを二枚伏せる。これでターンエンド」
翔
LP:4000
手札:1枚
場:モンスター
『連弾の魔術師』攻撃力1600
『見習い魔術師』守備力800
魔法・罠
永続魔法『魔法族の結界』魔力カウンター:1
セット
セット
あずさ
LP:3200
手札:5枚
場:無し
よし。モンスターを展開して、ダメージも与えることができた。
後は、あずささんがどう動くか……
「わたしのターン、ドロー」
あずさ
手札:5→6
「……わたしは三枚のカードを発動するよ。『六武の門』、『六武衆の結束』、『紫炎の道場』」
出た、あの三枚のカード。『六武衆』の要の永続魔法三枚。
「効果は知ってるよね。わたしが六武衆を召喚、特殊召喚する度、結束と道場に一つ、門に二つの武士道カウンターが乗る」
「うん。知ってる」
「なら続けるよ。わたしは魔法カード『紫炎の狼煙』を発動。デッキからレベル3以下の六武衆を手札に加える。私はレベル3の『真六武衆-カゲキ』を手札に加える。そして、『真六武衆-カゲキ』を召喚」
『真六武衆-カゲキ』
レベル3
攻撃力200
『六武の門』
武士道カウンター:0→2
『六武衆の結束』
武士道カウンター:0→1
『紫炎の道場』
武士道カウンター:0→1
まだだ……
「そして、カゲキの効果で手札の『六武衆-ザンジ』を召喚。同時にカゲキの効果。フィールドに自身を除く六武衆が存在する時、攻撃力を1500ポイントアップする」
『六武衆-ザンジ』
レベル4
攻撃力1800
『真六武衆-カゲキ』
攻撃力200+1500
『六武の門』
武士道カウンター:2→4
『六武衆の結束』
武士道カウンター:1→2
『紫炎の道場』
武士道カウンター:1→2
「そして、永続魔法『六武衆の結束』の効果。このカードを墓地へ送ることで、このカードに乗った武士道カウンターの数だけ、カードをドローする」
まだだ。まだここじゃない……
あずさ
手札:1→3
「そして、『六武の門』の効果……」
ここだ!
「
「う……」
あずささんが顔をしかめてる間に、発生した風が門を飲み込んだ。
「これで、六武衆達の展開の要は封じたよ!」
「やるねぇ翔くん。六武衆の押さえるべきところを理解してるね」
「そりゃあ、何度もあずささんの決闘は見てきてるからね」
「よろしい。だけど、門が無くても闘えるよ。わたしの場に六武衆が二体以上存在する時、このカードは特殊召喚できる」
「……!」
来る。あずささんのエース……
「『大将軍 紫炎』を、特殊召喚!」
『大将軍 紫炎』
レベル7
攻撃力2500
「『大将軍 紫炎』……」
目の前に対するのは初めてだけど、こんなに凄い威圧感だったのか……
「……バトル! まずは『真六武衆-カゲキ』で、『連弾の魔術師』を攻撃!
カゲキが、魔術師に向かってきた。だけど、
「速攻魔法発動『ディメンション・マジック』! 自分フィールドに魔法使い族が存在する時、自分フィールドのモンスター一体を生贄に捧げて、手札の魔法使い族を特殊召喚する。僕は、『連弾の魔術師』を生贄に捧げる!」
その宣言で、カゲキの刀が伸びた『連弾の魔術師』が光になって、破壊から免れた。
「サクリファイスエスケープか……」
「そう。そして僕は、手札の魔法使い族を特殊召喚できる」
今こそ一緒に闘うよ。僕の新しいデッキのエース。
「来い! 『ブラック・マジシャン』!」
叫びながら、手札に残った一枚のカードを、上へ伸ばす。
その瞬間、空中に魔法陣が出現した。六芒星を中心に置いた、とても複雑だけど、とても神秘的な、聖なる力を思わせる紋様。そこから出現した、『ディメンション・マジック』の棺。そして、そこから開かれ、現れた、黒衣の最上級魔術師。
『ブラック・マジシャン』
レベル7
攻撃力2500
「凄え! 翔が、『ブラック・マジシャン』!」
「……の、レプリカだな」
「三沢……え、レプリカ?」
「ああ。あの『ブラック・マジシャン』、よく見てみろ。顔色が相当に悪い」
「……確かに、肌が緑っぽいけど」
「そうだ。知っての通り、『ブラック・マジシャン』は決闘モンスターズの創生期に登場したモンスターカードの一枚だ。今でこそ特別な能力を持たない通常モンスターという位置付けだが、カードの種類自体が少なく、攻撃力が優先されていた当時から見れば、そのデザインの美しさも相まって、人気の高いレアカードの一枚だった。優秀な効果モンスターが増えたことで一時期その人気やレアリティも落ち着いていたが、あの
「そこで、一般の人間にも手が伸ばし安いよう、デザイン違いのレプリカという形で、新たにデザインされた『ブラック・マジシャン』のカードが数多く販売された。その一枚が、あの通称『
「最初期のデザイン、私達が普段よく知ってるデザインの『ブラック・マジシャン』は、今では武藤遊戯のデッキに一枚しか現存しないと言われているわ」
「へぇー。万丈目に明日香も詳しいな……」
「そして、『ディメンション・マジック』の最後の効果。フィールド上のモンスター一体を選択し、破壊する。僕が破壊するのは、『大将軍 紫炎』!」
その宣言で、紫炎の背後に、棺が姿を現した。
「させないよ。『大将軍 紫炎』の効果! このカードが破壊される時、代わりに場の六武衆一体を代わりに破壊できる。カゲキを破壊」
その宣言の通り、棺はカゲキの前に移動して、カゲキを閉じ込めて破壊した。
「けどこれで、六武衆は一体だけだ」
「……やるねえ。翔くん」
薄笑いを浮かべてるのを見るに、あずささんも分かってたみたいだ。
「え? どういうことだ?」
「なるほど、そういうことか」
「三沢、どういうことだよ」
「翔のフィールドにある『見習い魔術師』には、戦闘で破壊された時、デッキからレベル2以下の魔法使い族モンスターを自分フィールドにセットできる効果がある。だがザンジには、自身を除く六武衆が存在するとき、戦闘したモンスターをダメージ計算後に破壊する効果があるから、あのままザンジで攻撃していれば『見習い魔術師』の効果は封じられていた」
「ところがカゲキが破壊され、六武衆がザンジ一体になったことで、その効果は発動できなくなった。つまり、このバトルで『見習い魔術師』を破壊するには、戦闘による破壊しかなくなった、ということだ」
「なるほどなぁ」
「丸藤先輩、そこまで考えて……普段の姿からは想像できないドン……」
「な、翔の奴強えだろう」
「人は見かけによらないザウルス……」
「……仕方ない。ここは敢えて、君の計算に乗るとしよう。バトル! まずは『六武衆-ザンジ』で、『見習い魔術師』を攻撃!
ザンジの光る
「この瞬間、『魔法族の結界』の効果発動。フィールド上の魔法使い族が破壊された時、このカードに魔力カウンターを、最大四つまで乗せることができる」
『魔法族の結界』
魔力カウンター:1→2
二つ目の結晶にも光が灯った。
「同時に『見習い魔術師』の効果発動。このカードが戦闘で破壊された時、デッキからレベル2以下の魔法使い族モンスターを、自分フィールドにセットできる。僕はレベル1の『
セット(『聖なる魔術師』守備力400)
「なら次に、『大将軍 紫炎』で『ブラック・マジシャン』を攻撃! 獄炎・紫の太刀!」
「くっ、これは止める手段が無い……」
『ブラック・マジシャン』に、紫炎の炎刃が迫る。けど『ブラック・マジシャン』も杖を振り上げて、魔法を打ち出した。互いの攻撃力は互角、だけど……
「紫炎の効果により、ザンジを破壊して破壊を免れる」
その魔法を、ザンジが身代りになって受ける。逆に『ブラック・マジシャン』は成すすべなく切り裂かれた。
「く……『ブラック・マジシャン』が破壊されたことで、『魔法族の結界』に魔力カウンターが乗る」
『魔法族の結界』
魔力カウンター:2→3
これで三つ目。
「わたしはカードを二枚伏せて、ターンエンド」
あずさ
LP:3200
手札:0枚
場:モンスター
『大将軍 紫炎』攻撃力2500
魔法・罠
永続魔法『紫炎の道場』武士道カウンター:2
セット
セット
翔
LP:4000
手札:0枚
場:モンスター
セット(『聖なる魔術師』守備力400)
魔法・罠
永続魔法『魔法族の結界』魔力カウンター:3
「分かってると思うけど、『大将軍 紫炎』が場にある限り、君は一ターンに一度しか魔法・罠カードを発動できないよ」
「……僕のターン」
翔
手札:0→1
「僕はセットされた『聖なる魔術師』を反転召喚」
『聖なる魔術師』
レベル1
攻撃力300
「『聖なる魔術師』のリバース効果。墓地の魔法カード一枚を手札に加える。僕は墓地の『強欲な壺』を手札に」
翔
手札:1→2
「同時に『魔法族の結界』の効果を発動。このカードとフィールド上の魔法使い族モンスター一体を墓地へ送ることで、このカードに乗った魔力カウンターの数だけカードをドローできる。そして、既に発動されている魔法の効果に紫炎の縛りは無い。結界に乗った魔力カウンターは三つ。『聖なる魔術師』と一緒に墓地へ送って、カードを三枚ドロー」
結界が消えると同時に、光っていた結晶が『聖なる魔術師』の周りを回りながら天に昇っていった。
翔
手札:2→5
「……来た。僕は手札から『熟練の黒魔術師』を召喚」
『熟練の黒魔術師』
レベル4
攻撃力1900
「お互いの魔法カードを発動する度、このカードに魔力カウンターが一つ、最大三つまで乗る。更に速攻魔法『月の書』発動! 『大将軍 紫炎』を裏守備表示に変更する」
「……っ!」
セット(『大将軍 紫炎』守備力2400)
「これで全ての効果は無効になる。更にこの瞬間、『熟練の黒魔術師』に魔力カウンターが一つ乗る」
『熟練の黒魔術師』
魔力カウンター:0→1
「そして、魔法カード『強欲な壺』。これにより、カードを二枚ドロー」
翔
手札:2→4
「やるな翔の奴。ここまで一気に手札補充とは」
「そして、『熟練の黒魔術師』に魔力カウンターが一つ乗る」
『熟練の黒魔術師』
魔力カウンター:1→2
「そしてこれだ。魔法カード『シールドクラッシュ』! 相手フィールドの守備モンスター一体を破壊できる。裏守備表示の『大将軍 紫炎』を破壊!」
「お~」
「そして、『熟練の黒魔術師』に魔力カウンターが一つ乗る」
『熟練の黒魔術師』
魔力カウンター:2→3
「よし。これで『熟練の黒魔術師』の効果が発動できる。魔力カウンターが三つ乗ったこのカードを生贄に捧げて、デッキ、または墓地から『ブラック・マジシャン』を特殊召喚できる。デッキから、二体目の『ブラック・マジシャン』を特殊召喚!」
『ブラック・マジシャン』
レベル7
攻撃力2500
「今度は『
「僕は二枚目の『魔法族の結界』を発動。そして更に、装備魔法『魔導師の力』を装備。自分フィールドの魔法・罠カード一枚につき、攻撃力を500ポイントアップする」
『ブラック・マジシャン』
レベル7
攻撃力2500+1000
よし。このまま『ブラック・マジシャン』の攻撃が通れば勝てる。
「バトル! 『ブラック・マジシャン』で、あずささんにダイレクトアタック!
あずささんに向けられた杖から、大きな魔力の塊が、あずささんへ向かって飛んでいく。
「これで決まるか!?」
「……いえ」
「罠発動『和睦の使者』。このターン、私は戦闘ダメージを受けない」
「く……僕はカードを二枚伏せる。これで『ブラック・マジシャン』は更に攻撃力をアップさせる」
『ブラック・マジシャン』
レベル7
攻撃力2500+2000
「ターンエンド」
翔
LP:4000
手札:0枚
場:モンスター
『ブラック・マジシャン』攻撃力2500+2000
魔法・罠
永続魔法『魔法族の結界』魔力カウンター:0
装備魔法『魔導師の力』
セット
セット
あずさ
LP:3200
手札:0枚
場:モンスター
無し
魔法・罠
永続魔法『紫炎の道場』武士道カウンター:2
セット
僕の場の『ブラック・マジシャン』は装備魔法でかなり強化されてる。あずささんの手札はゼロ。簡単には突破は無理、だと思うけど……
「……わたしのターン、ドロー」
あずさ
手札:0→1
「『強欲な壺』。カードを二枚ドローする」
あずさ
手札:0→2
「更に『天使の施し』を発動。カードを三枚ドローして、二枚を捨てる……いやあ、やっぱ翔くんは強いや。正直、あの時のわたしじゃ勝てなかったと思う。今まで使ってこなかった魔法使い族を、ここまで使いこなすなんて」
「あ、ありがとう……」
褒めてくれてる。
正直言うと、こんな大事な決闘で、新しく完成したばかりのデッキで闘っていいものか、迷ってた。確実に勝つためには、使い慣れたデッキで闘う方が良いに決まってるから。
けど、現に精霊であるマナが目の前にいて、それを、いつまでも決闘で使わないのは、多分すごく残酷なことなんだって思った。だから新しくデッキを作って、そして、マナと一緒に闘っていくって決めた。
そして、今日みたいな敗けられない決闘では、ある意味そんな新しいデッキのスタートにふさわしい、そんなふうに思えた。
だから、敢えて使い慣れたデッキじゃなくて、新しく組んだデッキで、今日の決闘に臨んだ。
そして、それがここまで僕に応えてくれるなんて、正直思ってなかった。このデッキは今、僕の新しいパートナーになってくれたんだ。
自分でも驚くくらい、胸がわくわくして、感情が高ぶってる。正直、誰にも負ける気がしない。たとえ、あずささんが相手でも。
「さて翔くん、そんな、新しいデッキと一緒に歩き出した君の前途を祈って、これからわたしが君にとっての最大の障害になってあげよう。永続魔法『六武の門』発動」
そう言うと、またあずささんの後ろに、大きな門が建った。
「二枚目か……」
「更に、永続魔法『紫炎の道場』の効果を発動。このカードを墓地へ送ることで、このカードに乗った武士道カウンターの数以下のレベルを持つ『六武衆』を、デッキから特殊召喚できる。わたしはレベル2のチューナーモンスター、『六武衆の影武者』を特殊召喚する」
『六武衆の影武者』チューナー
レベル2
守備力1600
「チューナー!!」
「……え、チューナー?」
「今、チューナーモンスターって言ったか?」
「チューナー?」
「チューナー……?」
「この瞬間、『六武の門』に武士道カウンターが一つ乗る」
『六武の門』
魔力カウンター:0→2
「更に速攻魔法『六武衆の荒行』。自分フィールドに存在する六武衆と同じ攻撃力を持つ六武衆を、デッキから特殊召喚する。『六武衆の影武者』の攻撃力は400。わたしはデッキから、攻撃力400の『六武衆のご隠居』を特殊召喚」
『六武衆のご隠居』
レベル3
守備力0
『六武の門』
魔力カウンター:2→4
レベル2と、レベル3。合計のレベルは5、と、いうことは……
「レベル3の『六武衆のご隠居』に、レベル2の『六武衆の影武者』をチューニング」
その詠唱と共に、宣言された二体が上に跳び上がる。
「紫の獄炎、戦場に立ちて
梓さんの時と同じ、チューナーモンスターである『六武衆の影武者』が星に変わって、その星が、『六武衆のご隠居』の周囲を回り、そして、光る。
「シンクロ召喚! 誇り高き炎刃『真六武衆-シエン』!!」
『真六武衆-シエン』シンクロ
レベル5
攻撃力2500
『ええええええええええええええええええ!?』
『うおおおおおおおおおおおおおおおおお!?』
『真六武衆-シエン』。
あずささんの真のエースカードが登場した瞬間、ずっと静かだった決闘場が、一気に湧いた。
お疲れ~。
さすがにまずかったかな、原作キャラの使用デッキをコンセプトごと変えるってのは。
とりあえず、決着は次話で書くから、次話までちょっと待ってて。