遊戯王GX ~氷結の花~   作:大海

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第二話だよ~。
それじゃあ、行ってらっしゃい。



第二話 進化と停止

視点:翔

 

 

「仲間が一人増えました!」

 

「どうかした? あずさ」

 

 

 えっと、現在僕らはレッド寮の食堂にいる。メンバーは僕と、兄貴、と、ももえさん。

 そして、仲間が一人増えた。

 ラーイエローの新入生で、名前は『ティラノ剣山』君(これ本名?)。橋の上で決闘ディスク狩りをしてたのを、僕と兄貴が駆けつけて、兄貴が決闘で倒して、弟分になった。

「つまり、翔君の弟弟子ということですわね?」

「誰が弟弟子だドン!」

 と、僕の隣に座るももえさんが言って、それに剣山君が言い返した。まあ、そりゃ怒るか。

「確かに俺は十代の兄貴に敗けたけど、その弟分には敗けてないドン! 実際敗ける気も無いザウルス。というか、はっきり言って俺の方が強いザウルス」

「へぇー、言ってくれるじゃない」

『うわ!』

 と、今度は僕の後ろからぬっと出てきたカミューラが言った。まあ、レッド寮の食堂担当だし、いるのは当然だけど……

「所詮は島の外でお山の大将張ってただけの筋肉バカが、翔の実力も知らず偉そうにのたまってるんじゃないよ」

「ドン!?」

「カミューラ、言い過ぎ」

「ご、ごめんなさい、翔……」

 注意したら、急に声が可愛くなって小さくなった。

「というか! あなたは翔君に密着し過ぎです! 離れて下さい!」

「あら? くっついてたら何か問題でもあるの?」

「……ごめん、カミューラ。できれば僕としても、離れてほしいっていうか……」

「あら翔まで、どうしてよ?」

「いや、その……背中に、当たってるんだけど……////」

「当ててるのよ。言わせないでよ恥ずかしい」

「え……////」

「きー!! 色々とでかい女が、自分より小さな男の子の後ろでそんなに小さくなっても見苦しいだけですわ!!」

「あら? 身長以外何もかも小さいだけの女が言うのと、どっちが見苦しいのかしら?」

「くきー!!」

「いや、だから、それ以上押し当てないでって……////」

「だから当ててるのよ。何ならこのまま大人の階段昇っちゃう?」

「え、何それ……?」

「あら……」

 聞き返してみたら、優しく僕の頬に顔を当てて、目を合わせてきた。

「分からないなら、教えてあげましょうか? 今この場で」

「え……?」

「くきーぁ!! だったら私も!!」

「あら? 色気の欠片もないそんな体で、翔を大人にできるの?」

「ウリィィィィィイイイイイイイイイイイイイイ!!」

 

 

 

視点:十代

 

 

(ガタッ!!)

 

「どうかした? 明日香ちゃん」

 

 

 散々言い合った挙句、結局ももえは翔に張り付いて、向かい合うカミューラと睨み合ってる。

「ぐぬぬぬ……」

「ふふ……」

(暑苦しい……)

 で、そんな二人に挟まれてる翔は、眼鏡の下の目を一にして、眉毛を八の字にして黙ってる。

 

『……』

 

(兄貴、丸藤先輩は、いつもああザウルス?)

(まあな。まあ翔がっていうより、あの二人が騒いでるだけだけど。最初はそうでもなかったんだけど、去年の終わり頃になって、急にあんな状態になったんだよな。おまけに、あの二人と、もう一人いるし)

(え、まだいるザウルス……!)

 そんな事実に、また驚く。他にもいる、て言うよりも、今目の前にいる。剣山には見えないだろうけど、二人を横から睨みつけてる『ブラック・マジシャン・ガール』――確か、マナって呼んでたっけ? の姿が、俺の目には見えてる。

(……こう言っちゃ何だけど、あの人どうしてあそこまでモテるドン? 見た目冴えない感じでそこまで女子に好かれる要素があるとは思えないザウルス……)

(まあ、そう見えるかもしれないけど、色々魅力的なんだろうな。俺は恋愛のことはよく分からないけど。それに、二人の言った通り、決闘の実力も凄えんだぜ)

(本当ですかドン?)

(ああ)

 と、返事をしながら目を離して、また翔の方を見る。翔と、翔を挟みながら抱き着いてるカミューラとももえ、あと、それを見てまた目を血走らせてるマナ。

(けど……正直、ああはなりたくないドン……)

(あはは、まあな……)

 

 

 

視点:翔

「やれやれ、やっと解放された……」

 夕方、あの二人からやっと解放されて、イエロー寮まで歩く。最近はいつも、授業に行ったらももえさんにくっつかれて、レッド寮に行ったらカミューラか、今みたく両方にくっつかれる。だから、今とかイエロー寮なら平気かって、言われたら……

『翔さん、ベタベタし過ぎです!』

 そんなこともないわけで。

 みんなには見えてないけど、四六時中日常的にくっつかれてるのがこの、決闘モンスターズの精霊で、且つ決闘モンスターズのアイドル、『ブラック・マジシャン・ガール』こと、マナ。それが今、僕の隣をふわふわ浮いて移動してる。

『私というものがありながら! もう少し強い意志でもってあの人達のことを拒絶するべきです』

 私というものがありながらって……

 今考えてみると、あの二人がやけにくっつようになってきたのは、マナが僕の元へ訪れた時からだった気がする。おかしい。二人にはマナの姿は見えてないはずなのに。

 それかもしかして、これが女の勘てやつ……?

 まあ、どっちでもいいけど。

『そりゃあ、翔さんと言えども男の子ですから、女の子とイチャイチャしたくなる気持ちは理解もできます。だったら! イチャイチャしたいなら私にして下さい! いつでもあなたのそばにいるんですから! 触ろうと思えば触らせてあげますから! お望みなら今からでも!』

「その……遠慮しておくよ……」

 もう、苦笑するしかないや。

 とは言え、ここまでのことを言われて、あれだけのことをされたら、僕だってどうしてみんながそんなことしてくるのか、さすがに気付く。

 こういう時ってどうするべきなのかな? 男子として、喜んだり、舞い上がったり、モテモテだーとかって、テンション上げるべきなのかな?

 まあ確かに、三人の、それも美人揃いの女性達から言い寄られてるのは、男として嬉しい、とは感じる。ただ、正直そこまで興味が無いから、三人から言い寄られても、

「ああそうですか」

 ていう言葉しか出てこないのが現実なんだよねぇ。人の恋路を見るのは面白いって思うんだけど。(あずさ)さん達とか。

『……分かりました。じゃあ、私が勝手に触ります』

 と、浮いた状態のまま僕の背中に周って、抱き着いた。周りには見えないけど、僕に触ることはできる、いわゆる半実体化の状態。聞いた話だと、この状態になれる精霊は少ないらしい。まあ、そんなことはどうでもいいんだけど……

「マナ……」

『何ですか?』

「その……背中に、当たってるんだけど……」

 感触からして多分、カミューラより大きいのが……

『気にしないで下さい。精霊はそういうの気にしません』

「そうなの……?」

 事実かどうか、今度アズサやミズホに聞いてみるべきかな?

 ただどの道、この状況は精神的に良くないなぁ。興味が無いのは事実だけど、それはどっちかっていうと色恋に関する話題のことで、僕だって仮にも一男子。女装しようが可愛いと言われようが、性欲もあれば、女性に対して興奮だってしてしまいます。

 カミューラの時もそうだったけど、

『翔さんの背中~、あったかいです~////』

 マナはいつも僕に抱き着いてる間、なぜだかこういう、夢見心地な口調に変わる。

 こっちはあったかいどころか、色々と窮屈なんだけど。

 変態だとか思われたくないからカミューラにはああ言ったけど、正直どうしよう? このまま性欲が暴走して本当に大人の階段昇るようなことになったら。

 三人ならむしろ大喜びしそうな気さえするのが怖い。それでもやっぱり、女の子を傷物にするのはまずいよね。一男子として……

 

 と、そんないつもの窮屈さと格闘しながら、やっとイエロー寮に。

 すぐに自室に入ろうとした時、

「うん?」

 部屋のドアに着けられてるポストに、何か入ってる。封筒だ。

「手紙?」

 封筒を手に取って、差出人を見てみる。それは、

「お兄さん!」

 すぐに部屋に入って、封を開けて中身を見た。そこに入ってるのは……

「これは!」

『どうしました~?////』

 未だに僕の背中にくっついて、夢見心地になってるマナに、すぐに目を覚まさせることになる言葉を掛けた。

「やったよマナ。これで完成する」

『はい~?//// なにがですか~?////』

「君と……『ブラック・マジシャン・ガール』と闘うためのデッキが」

 

 ……

 …………

 ………………

 

 

 

視点:外

 剣山が仲間になった数日後、イエローである翔に、ブルー寮への昇格を賭けた決闘の話しが来た。内容な実にシンプルなもの。ブルー寮の生徒と決闘を行い、それに勝利すれば昇格が認められる。

 そして、その決闘の観戦のため、十代ら生徒達はブルー専用の決闘場へ集まっていた。

「しかし、初めて会った時は十代にくっついているだけの奴だと思っていたが、それがこんなにも早くブルー寮へと這い上がってくるとはな」

 彼らの後ろの席に座る、万丈目がそう言った。無表情ながらも、歓喜の見え隠れする表情で。

「まあ、翔の実力なら当然だな。同じイエローとして、俺も嬉しいよ」

 その隣に座る三沢もまた、そう称えながら笑顔を浮かべる。

 そんな二人からの賞賛を耳にした十代もまた、表情に微笑を含ませた。

「十代の兄貴の言う通り、丸藤先輩って、決闘の腕も高いってことザウルス?」

「おお。翔は強いってことだ」

「……」

 そんな、十代らのやり取りを聞きながら、そんな彼らと仲間である梓の心中は、穏やかなものではなかった。なぜなら、

(やはり、ここでは言うべきではない、か。この決闘の真実を……)

 そう、梓は知っていた。この決闘が示す、本当の意味を。

 

 

 二日前、全ては偶然だった。偶然職員室に用事があり、偶然そこにナポレオン教頭はおらず、そして、校長室にいるという話しを聞いて、そこへ行き、偶然その話を耳にした。

 

「カイザー亮の弟である、丸藤翔をブルー寮へ押し上げて、我が校のスター発掘のための足掛かりとするのでアール!」

「うぬぅ……確かにセニョール翔ならば、ブルー寮へ上ることのできる実力を十分備えていまスーが……」

「実力云々はこの際どうでも良いのでアール! カイザー亮のネームバリューを最大限に利用すれば、我がアカデミアから新たなスターを生み出すことは簡単。そのためには、現在イエロー寮に属する丸藤翔を、ブルー寮へ引き上げるのでアール!」

「し、しかし、それではセニョール翔の実力を正当に評価しての昇格とは……」

「重要なのは生徒一人一人の実力ではなく、生徒一人一人の価値でアール! そんなことも分からないから、臨時はいつまで経っても臨時なのでアール!」

「マンマミーア!」

 

「……」

 その後、聞いていなかった振りをしながら校長室へ入り、用事を済ませ、黙って帰っていった。

 

 

(つまりはこの決闘、翔さんをブルー寮へ引き上げるための試練ではなく、茶番劇ということ。翔さんには間違いなく、ブルー寮へ上がるだけの実力が伴っているというのに、見るのはそれではなく、彼のお兄さんだということ。酷い侮辱だ……もっとも、ナポレオン教頭先生はともかく、クロノス臨時校長先生のこと、そんな目的のための相手を選ぶことは、無いと思いたいのですが……)

 

「にしても驚いたザウルス」

 梓が思考していた時、隣に座る十代の、そのまた隣に座る剣山が、梓に向けてそんな声を発した。

「まさか十代の兄貴が、凶王、水瀬梓先輩と友達だなんて」

「……」

 今日の真実も、現在の心情も知らない後輩からの、そんな純粋な言葉に、梓も微笑みの表情を浮かべた。

「あなたは私が怖くはないのですか?」

「え、いや、それは……」

 そう聞かれた剣山は、表情をしかめつつ視線を逸らしてしまう。

 万丈目の行った決闘の後の、凶王による決闘。剣山も当然あの場にいた。そして、凶王の姿を晒したことで、新入生の半分は、梓に対する感情の形が変わってしまっていた。

 だが残りの半分はむしろ、その強さと、変わらぬ美しさに、変わらぬ気持ちを懐いている者。剣山の場合は、

「まあ、確かに、あの時の決闘にはビビったザウルス……けど、けど、あんな決闘俺には真似できないドン! 二年生最強と言われる実力は伊達じゃないって、よく分かったザウルス。そんなあんたのこと、俺は怖い以上に尊敬してるドン」

「……」

 そんな力強くも純粋な後輩の言葉は、嫌われることにも、好かれることにも慣れた梓にとっても、喜ばしいと感じられる言葉だった。

 だが、その言葉の全てに同意を示すわけにはいかない。

「以前も誰かに言われた気がしますが、私は、少なくとも最強ではありませんよ」

「え? けど、みんな話してるドン。二年生最強の決闘者は、誰も見たこと無い『シンクロモンスター』を使って、あのカイザー亮を倒した梓先輩だって」

「確かに、亮さんと決闘し、勝利は得ました。ですが、そんな私よりも強い決闘者が、少なくとも一人おります」

「え? そんな決闘者がいるドン?」

「ええ。それでも敢えて名乗るなら……私の二つ名と掛けて、『最凶』、でしょうか」

「……ああ、凶王の凶ってこと?」

 十代の問い掛けに、梓は、はい、と頷いて肯定を示す。

「じゃあ、本当の最強は誰ザウルス?」

「それは……ここにはおりませんね」

 周囲を見渡しながら、そう、軽い落胆の声で言う。

 決闘の観戦は強制ではない。いないとしても何ら不思議ではないが、それでも、仲間である翔の決闘を共に観戦すること、そして、それ以上の本音として、彼女と一緒に見たかった、そんな、(よこしま)な気持ちもまた内在しての言葉だった。

(あずささん……)

 

 

 

視点:翔

 現在、僕は決闘場の入り口前のベンチに座ってる。いつも思うけど、こういう待ち時間て妙にプレッシャーを感じるんだよね。

『さあ、頑張りましょう!』

 隣から、マナがそう話し掛けてきた。

 何ていうか、マナはいつでもニコニコ陽気に笑ってる。こっちが緊張してても、気分が落ち込んでても、いつも変わらない笑顔を向けてきて、前向きな言葉を掛けてくれる。

 それで悩みが吹っ切れるわけでも、緊張が解けるわけでもない。だけど彼女のそんな笑顔や言葉には、心につっかえてる何かを、全部じゃないけど取り除いてくれる力がある。心を癒してくれる、魅力がある。

(……ああ、そっか)

 そんなことを感じてると、ずっと疑問に感じていたことの答えを、理解することができた。

 『ブラック・マジシャン・ガール』のカード。確かに可愛いし、伝説のレアカードだけど、所詮はただのカード、紙に印刷されたデザインでしかない。こう言っちゃなんだけど、ただ単純に、たまたまそういうのが好きな男の人達が喜ぶデザインに生まれただけのカードだ。そこまで強くもないし。

 昔の僕も、そんな、単純な可愛さだけ見てこのカードに夢中になってた。けど、梓さんや色んな人達に出会って、決闘を見直すようになって、それで、いつの間にか『ブラック・マジシャン・ガール』には興味が無くなっていった。

 そして、どうしてあそこまで『ブラック・マジシャン・ガール』に夢中になっていたのかって、分からなくなって、ずっと疑問に感じていた。

 でも……

『翔さん?』

 僕の名前を呼んでくる彼女の顔は、どこまでも純粋で、真っ直ぐに光ってる。こんな僕のことを心から慕ってくれて、信頼してくれてる。

 カードだけじゃ分からないことかもしれない。だけど、きっと可愛いだけじゃなくて、そんな純真さが伝わってくるから、みんなが彼女に恋焦がれて、僕も、そんなマナに夢中になってたのかもしれない。

 だってマナは、こんなに優しくて、素直で良い子なんだから。

『翔さん?』

「マナ」

「は、はい……」

 ずっと僕のことを呼んでいたマナを、僕も呼ぶ。今、どうしても言いたくなったことを言うために。

「ありがとう。僕なんかの元へ来てくれて」

『え? そ、そんな、いきなり面と向かっていきなりそんなこと……////』

 そう言えば、今までこんなふうに、僕の方から気持ちを伝えたことは無かったかな。

 けど、そうさせてくれたのは、君に本当に感謝してるからなんだよ。だから、

「頑張ろう。マナ」

『も、もちろんです! 翔さんには、私がついています。ずっとずっとずっと、ずーっと、私達は一緒ですよ』

「あはは。ありがとう」

 心強い言葉を言いながら、拳を握るマナの姿、やっぱ可愛いな。

 

「翔くーん!」

 

「はっ!」

 と、マナの姿に癒されてる間に、いつもの声。そっちの方を見ると、いつもと同じく、ももえさんが走ってきた。そして、

 

 ガバッ

 

「うおおぅ……!」

 いきなり抱き着かれて、後ろへ体が引っ張られる。けどどうにか倒れずに踏ん張ることができた。

「翔さん、今日は頑張って下さい。あなたが私と同じ、ブルー寮へ上がってきてくれること、心より願っています!」

「……」

 抱き着きながら、良い笑顔でそう言ってくれてる。

 スキンシップが過激なのはどうかと思うけど、それでもこうして全力で応援してくれる。

「ありがとう。ももえさん」

「はうっ!////」

 て、お礼を言っただけなのに、どうして赤くなるの?

「ももえさーん?」

「////」

 何か、どこかに旅立ってる?

 そう思った直後だった。

 

「へいお待ち!」

 

「へいおまち?」

 と、復唱した時、目の前には、いつも料理を作る時に着る、白の割烹着(かっぽうぎ)姿で、手にはおかもちを持った、カミューラが立ってた。

「カミューラかつ丼、一丁」

 そんなことを言いながら、おかもちから取り出したのは、言った通り、美味しそうなかつ丼。

「え、なんで?」

「トメさんに習って作ったのよ。必勝祈願にはこれが一番なんでしょう?」

「いや、確かにそうだけど……」

 

 グゥ~……

 

「……////」

 そう言えば、緊張してたせいで朝から何も食べてないんだった。それが、三人のお陰で緊張が解けて、今になって空腹になったわけか。

「ちょっと! ズルいですよ物で釣るなんて!」

「あらん? 私はただ、翔の必勝を願って作ってきただけよ。なに? あんたは応援だけで何の土産も無し?」

「むきー! だったら私は、翔さんの勝利を祝って愛の接吻を……!」

「グォラ! それこそ決闘前にすることじゃないでしょう! あんたは翔に穢れた体で決闘させる気か!!」

「誰が穢れてるいるですって!? 吸血女にだけは言われたくありませんわ!」

「ほう? ならあんたの血も吸い尽くしてあげようか?」

「やってごらんなさい!」

『というか! 二人とも私の翔さんにふしだらな真似しないで下さい!!』

「誰か今何か言った? 何か聞き捨てならない台詞が聞こえた気がしたわよ?」

「私もです。私の翔さんですって!?」

 

「……ふふふ」

 そんな三人を見てて、どうしてか、笑いが止まらなくなった。

「ふふはは……」

「翔君?」

「翔?」

『翔さん?』

 三人から、それぞれの呼び方で呼ばれて、僕は、返事する代わりに、今の気持ちを言うことにした。

「みんなありがとう。みんなに出会えて、僕、本当に良かった」

「え?」

「僕はずっと、自分に自信なんて持てなくて、今だって、全然そんな感覚分からない。だけど、そんな僕が、ここまでやってこられたのは、きっと、みんながこんなふうに、僕のことを信じてくれたからだ。だからこんな僕でも、頑張ることができたんだ」

「翔……」

「そんな、みんなの応援に応えられるよう、今日は頑張るよ。そしてきっと……違う、絶対にブルー寮へ行く。今日の決闘に勝って、絶対」

「……////」

「……////」

『……////』

 三人にそう言った、その直後だった。

 

『セニョール翔、決闘場へ上がって来なサーイ』

 

 クロノス先生の声が聞こえた。

「ごめんカミューラ。かつ丼は決闘の後で頂くよ」

 そう言いながら立ち上がって、決闘場へ歩いていった。

 

「行くよ。マナ」

『はい! 任せて下さい。翔さんの勝利は、私が捧げますから!』

 

 

 

 




お疲れ~。
あれ? 主人公って翔だったかな?
……まあ、いいよね。今始まったことでもなし。
とりあえず、次話まで待ってて。

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