あずさ「（ガタッ）……！！」
？？？「灼熱の太陽すら瞬間氷結。氷の剣……」
梓「（ガタッ）……！！」
なんて、今更過ぎるネタは置いといて、行ってらっしゃい。
視点：亮
亮
ＬＰ：1900
手札：4枚
場 ：モンスター
無し
魔法・罠
永続罠『リビングデッドの呼び声』
梓
ＬＰ：1500
手札：3枚
場 ：モンスター
『氷結界の龍 ブリューナク』攻撃力2300+500
『バトルフェーダー』守備力0
魔法・罠
セット
永続魔法『ウォーターハザード』
永続罠『リビングデッドの呼び声』
フィールド魔法『ウォーターワールド』
『氷結界の龍 ブリューナク』。相手にとって不足は無い。
「俺のターン、ドロー」
亮
手札：4→5
「……、っ！」
な、なんだ……？
『……』
ブリューナクが、俺を見ている……
「（フルフル）……！」
震えている……この俺が……？
何だ？ 今まで決闘で、散々モンスター達と向かい合ってきた。なのに、ただ、ブリューナクに見られているだけなのに、このプレッシャーは……
「亮さん？」
……！！
「どうかなさいましたか？」
「……いや」
なぜだ？ ずっと向かい合っていたはずの梓の声が、異様に遠くから聞こえた気がした。
だが、お陰で正気には戻った。
「相手フィールドにのみモンスターが存在し、俺のフィールドにモンスターが無い場合、『サイバー・ドラゴン』を、特殊召喚する！」
『サイバー・ドラゴン』
レベル5
攻撃力2100
「更に、『プロト・サイバー・ドラゴン』を召喚」
『プロト・サイバー・ドラゴン』
レベル3
攻撃力1100
「『プロト・サイバー・ドラゴン』はフィールドに存在する限り、カード名を『サイバー・ドラゴン』として扱う。そして、速攻魔法『フォトン・ジェネレーター・ユニット』！ 『サイバー・ドラゴン』二体を生贄に、デッキから、『サイバー・レーザー・ドラゴン』を特殊召喚！」
『サイバー・レーザー・ドラゴン』
レベル7
攻撃力2400
「『サイバー・レーザー・ドラゴン』は一ターンに一度、このカードの攻撃力以上の攻撃力、または守備力を持つモンスター一体を破壊できる」
「ブリューナクは今、『ウォーターワールド』によって攻撃力が上昇している……！」
「破壊光線 フォトン・エクスターミネーション！」
『サイバー・レーザー・ドラゴン』の尻尾の先から放たれた光。それが、空中を舞うブリューナクを貫いた。
「ブリューナク……！」
「バトルだ！ 『サイバー・レーザー・ドラゴン』で、『バトルフェーダー』を攻撃！ エヴォリューション・レーザーショット！」
今度はその口から放たれた光線が、小さな『バトルフェーダー』を蒸発させた。
「……っ、自身の効果によって特殊召喚された『バトルフェーダー』は、フィールドを離れた時ゲームから除外されます……」
「カードを一枚伏せる。ターンエンド」
亮
ＬＰ：1900
手札：1枚
場 ：モンスター
『サイバー・レーザー・ドラゴン』攻撃力2400
魔法・罠
永続罠『リビングデッドの呼び声』
梓
ＬＰ：1500
手札：3枚
場 ：モンスター
無し
魔法・罠
セット
永続魔法『ウォーターハザード』
永続罠『リビングデッドの呼び声』
フィールド魔法『ウォーターワールド』
「すげえ！ あの龍をあっさり倒した！」
「さすがカイザー！！」
周りは勝手な盛り上がりを見せているが、こんな所で終わるはずはない。むしろ、本当の始まりはここからだ。
「私のターン」
梓
手札：3→4
梓の手札には、前のターンに『堕天使の施し』の効果で戻した『氷結界の水影』が二枚。『ウォーターハザード』と合わせればフィールドに二体並べることができる。
それ自体は、この伏せカードで防ぐことは可能だが……
「……私は1000ポイントのライフを支払い、『
「『簡易融合』だと！」
梓
ＬＰ：1500→500
「融合デッキより、レベル5以下の融合モンスター一体を、融合召喚扱いとして特殊召喚します。私はレベル5の『深海に潜むサメ』を特殊召喚します」
『深海に潜むサメ』融合
レベル5
攻撃力1900
「……まさか！！」
「チューナーモンスター『氷結界の水影』を召喚！」
『氷結界の水影』チューナー
レベル2
攻撃力1200+500
「レベル5の水属性『深海に潜むサメ』に、レベル2の『氷結界の水影』をチューニング」
「え、また！？」
「そんな！ 二体目がいるの！？」
レベルの合計は、7……
「冷たき
「シンクロ召喚！ 狩れ、『氷結界の龍 グングニール』！」
前のターンに呼び出された、空から現れたブリューナクとは逆に、凍った海を突き破り、現れた。
鋭利な体と、そこから生える逞しい四つの足。
それらを備えた、ブリューナクを遥かに超える巨躯の龍が。
「で、でかい……」
「けど、格好良い……」
「綺麗……」
ブリューナクがあくまで流麗の美しさであったのに対し、グングニールは強靭の美しさ。
初めて見た俺達がそうであったように、今日初めて見た生徒達もまた、グングニールに魅入っていた。
『氷結界の龍 グングニール』シンクロ
レベル7
攻撃力2500+500
『……』
「……！？」
またか……
普通のモンスターとは明らかに違う、相対しているだけで、押しつぶされそうなほどの強烈なプレッシャー。
これが、シンクロモンスターの力なのか？
それとも、『氷結界の龍』だけが持つ特別な力なのか？
そして、かつて、万丈目、平家あずさ、そして翔は、これほどのプレッシャーを前に、決闘を行っていたというのか……
「グングニールのモンスター効果！」
「……！」
「一ターンに一度、手札を二枚まで捨てることで、相手フィールド上のカードを捨てた枚数分破壊できる。私は二枚のカードを捨てます」
梓
手札：2→0
「冷刃災禍！」
梓の捨てた二枚のカードが、グングニールの翼に宿る。そして、それを大きく振り上げ、こちらに向かって、放った。
そこから放たれた、巨大な風、いや、刃！
「っ！ 速攻魔法発動！ 『神秘の中華鍋』！」
「それは……」
「自分フィールドのモンスター一体を生贄に捧げることで、その攻撃力分のライフを回復する。『サイバー・レーザー・ドラゴン』を生贄に捧げる！」
亮
ＬＰ：1900→4300
「そんなカードを……では、バトル！ グングニールで、亮さんに直接攻撃！ 崩落のブリザード・フォース！」
グングニールの口から放たれた冷気、防ぐすべは無い！
「ぐおおおぉぉぉぉ……！！」
亮
ＬＰ：4300→1300
「私はこれで、ターンエンド」
梓
ＬＰ：500
手札：0枚
場 ：モンスター
『氷結界の龍 グングニール』攻撃力2500+500
魔法・罠
セット
永続魔法『ウォーターハザード』
永続罠『リビングデッドの呼び声』
フィールド魔法『ウォーターワールド』
亮
ＬＰ：1300
手札：1枚
場 ：モンスター
無し
魔法・罠
永続罠『リビングデッドの呼び声』
強い……
氷結界の龍だけではない。それを従え、使いこなす、梓自身が、本当に強い……
「俺のターン、ドロー！」
亮
手札：1→2
「……『サイバー・ヴァリー』を召喚」
『サイバー・ヴァリー』
レベル1
攻撃力0
「『サイバー・ヴァリー』の効果。このカードと、フィールド上の表側表示のカードをゲームから除外することで、カードを二枚ドローする。『サイバー・ヴァリー』と、『リビングデッドの呼び声』を除外。そしてドロー」
亮
手札：1→3
「魔法カード『無欲な壺』を発動。互いの墓地に眠るカードを二枚まで選択し、持ち主のデッキに戻す。俺はこの効果で、『サイバー・ドラゴン』二枚をデッキに戻す。カードを二枚伏せる。これでターンエンド」
亮
ＬＰ：1300
手札：0枚
場 ：モンスター
無し
魔法・罠
セット
セット
梓
ＬＰ：500
手札：0枚
場 ：モンスター
『氷結界の龍 グングニール』攻撃力2500+500
魔法・罠
セット
永続魔法『ウォーターハザード』
永続罠『リビングデッドの呼び声』
フィールド魔法『ウォーターワールド』
「カイザーが、押されてる……」
「ああ。今は守りを固めるしかないって感じだね……」
「お兄さん……」
「私のターン、ドロー」
梓
手札：0→1
「……」
この状況で、梓にとって最も理想なのは、手札を二枚に増やし、グングニールの効果でこちらの伏せカードを二枚とも破壊すること。
だが、あの反応からして、それはできないらしい。あの一枚の伏せカードの存在も気にはなるが、ずっと伏せていることから使うタイミングが限られるカードのようだ。
モンスターである可能性もあるが、だとすればこの伏せカードを警戒して迂闊に召喚できないか、それとも、グングニールの攻撃が防がれた後で、俺のライフを削るには攻撃力が足りないのか。
いずれにせよ、今の奴にできるのは、あの一枚の手札を使い、こちらの伏せカードのどちらかを破壊することだけだ。そして今、どちらを破壊するかを必死で思案している。
「……決めた。グングニールの効果！ 手札を一枚捨てることで、亮さんから見て左側の伏せカードを破壊します！」
梓
手札：1→0
「冷刃災禍！」
前のターンでは二枚の翼だったが、今回は一枚の翼で、鎌鼬を起こす。それが、こちらの伏せカードに向かってきた。
だが……
「罠発動『転生の予言』！」
「……！」
「互いの墓地から、合計二枚のカードを選び、デッキに戻す。俺はこの効果により、墓地の『サイバー・ドラゴン』と、『パワー・ボンド』をデッキに戻す」
「全ての『サイバー・ドラゴン』と、『パワー・ボンド』がデッキに……ならば、グングニールで、亮さんに直接攻撃……！」
「罠発動『威嚇する咆哮』！ このターン、お前は攻撃できない」
「どちらもフリーチェーンのカード。どちらを破壊しても同じでしたか……ターンエンド」
梓
ＬＰ：500
手札：0枚
場 ：モンスター
『氷結界の龍 グングニール』攻撃力2500+500
魔法・罠
セット
永続魔法『ウォーターハザード』
永続罠『リビングデッドの呼び声』
フィールド魔法『ウォーターワールド』
亮
ＬＰ：1300
手札：0枚
場 ：モンスター
無し
魔法・罠
無し
「俺のターン、ドロー」
亮
手札：0→1
「『強欲な壺』。カードを二枚ドロー」
亮
手札：0→2
「装備魔法『未来融合－フューチャー・フュージョン』発動！」
「そのカードは……！」
「デッキから、融合素材モンスターを墓地へ送ることで、融合モンスターを融合召喚し、このカードを装備する。俺はデッキから、三枚の『サイバー・ドラゴン』を墓地へ送る。そして……現れよ！ 『サイバー・エンド・ドラゴン』！」
『サイバー・エンド・ドラゴン』融合
レベル10
攻撃力4000
「く……！」
「フューチャー・フュージョンの効果で特殊召喚されたモンスターは、このターン攻撃できない。カードを一枚伏せ、ターンエンド」
亮
ＬＰ：1300
手札：0枚
場 ：モンスター
『サイバー・エンド・ドラゴン』攻撃力4000
魔法・罠
セット
装備魔法『未来融合－フューチャー・フュージョン』
梓
ＬＰ：500
手札：0枚
場 ：モンスター
『氷結界の龍 グングニール』攻撃力2500+500
魔法・罠
セット
永続魔法『ウォーターハザード』
永続罠『リビングデッドの呼び声』
フィールド魔法『ウォーターワールド』
「私のターン、ドロー……」
梓
手札：0→1
梓がドローした瞬間、手札の上にギロチンが現れた。
「『命削りの宝札』の効果で、このターン、手札は全て墓地へ送られます……なので、捨てる前に発動します！」
「なに！」
「速攻魔法『非常食』！ フィールドの魔法・罠カードを墓地へ送り、一枚につき1000ポイントのライフを回復します。『リビングデッドの呼び声』と、『ウォーターハザード』を墓地へ！」
梓
ＬＰ：500→2500
「私はこれでターンを終了」
梓
ＬＰ：2500
手札：0枚
場 ：モンスター
『氷結界の龍 グングニール』攻撃力2500+500
魔法・罠
セット
フィールド魔法『ウォーターワールド』
亮
ＬＰ：1300
手札：0枚
場 ：モンスター
『サイバー・エンド・ドラゴン』攻撃力4000
魔法・罠
セット
装備魔法『未来融合－フューチャー・フュージョン』
ライフは逆転されたか……
「俺のターン、ドロー」
亮
手札：0→1
そして、デメリットは俺も例外ではない。
亮
手札：1→0
同じように、手の上にギロチンが現れ、今度は手札のカードを真っ二つに破壊された。
だが、今の状況には関係ない！
「バトルだ。『サイバー・エンド・ドラゴン』で、『氷結界の龍 グングニール』を攻撃！ エターナル・エヴォリューション・バースト！」
サイバー・エンドの三つの口から放たれた光線が、グングニールにぶつかる。
「くぅ……！」
なすすべなく、グングニールは蒸発した。
梓
ＬＰ：2500→1500
『うおおおおおおおおおおおおおおお！！』
「すげえ！ グングニールも倒した！」
「やっぱり、お兄さんはすごい……」
「さすがカイザー、ここまでやるとは……」
『やるもんだなぁ。シンクロ同士でも手こずる相手なのによ……』
「うん。すごいよ……」
確かに、二体目のシンクロモンスターを倒すことができたのは、見る人間によっては偉業にも見えよう。だが、まだ終わってはいない。まだ、二体を倒しただけだ。
「ターンエンド」
亮
ＬＰ：1300
手札：0枚
場 ：モンスター
『サイバー・エンド・ドラゴン』攻撃力4000
魔法・罠
セット
装備魔法『未来融合－フューチャー・フュージョン』
梓
ＬＰ：1500
手札：0枚
場 ：モンスター
無し
魔法・罠
セット
フィールド魔法『ウォーターワールド』
そして、梓のことだ。次は必ず……
「私のターン……ドロー！」
梓
手札：0→1
「私は、『氷結界の輸送部隊』を召喚！」
『氷結界の輸送部隊』
レベル1
守備力200-500
現れたのは、巨大な積荷を運ぶ緑色の龍。
「輸送部隊の効果。墓地に眠る氷結界二体をデッキに戻します。私は墓地に眠る『氷結界の水影』と、『氷結界の舞姫』を選択します」
選択したカードをデッキに加え……
そうだ。あの決闘ディスク、シャッフルを自動で行うのか。
「そして、その後、互いにカードを、ドローします」
「……」
梓
手札：0→1
亮
手札：0→1
「……亮さん」
「……？」
「あなたの決闘は素晴らしかった。カードの組み合わせも。戦略も。どれを取っても、最強、カイザーを名乗るにふさわしい」
「……」
「そして、そんなあなたの最強のドラゴンの相手には……最後の龍こそがふさわしい」
「……っ！！」
「最後の龍！？」
「まだいるのか！？」
「出るの、遂に！？」
「梓くん……！！」
「永続魔法『生還の宝札』を発動！ この効果により、私の墓地からモンスターが特殊召喚される度、私はカードを一枚、ドローします。そして、私の墓地に存在するモンスターが水属性モンスターのみであるため、墓地の『フィッシュボーグ－ランチャー』を特殊召喚します！」
『フィッシュボーグ－ランチャー』チューナー
レベル1
守備力200-500
く、グングニールの効果で落ちていたか……
「この効果で特殊召喚されたこのカードがフィールドを離れた時、ゲームから除外されます。宝札の効果で、一枚ドロー」
梓
手札：0→1
「永続罠『ウィキッド・リボーン』発動！ ライフを800払い、墓地に眠るシンクロモンスター『氷結界の龍 グングニール』を特殊召喚します」
梓
ＬＰ：1500→700
『氷結界の龍 グングニール』シンクロ
レベル7
攻撃力2500+500
「グングニール……！？」
「一枚ドロー」
梓
手札：1→2
「『ウィキッド・リボーン』の効果で特殊召喚したモンスターは効果が無効となり、このターン攻撃できません」
「だが、狙いは戦闘ではない」
「ええ……参ります」
来るか……！
「レベル7の『氷結界の龍 グングニール』と、レベル1の『氷結界の輸送部隊』に、レベル1の『フィッシュボーグ－ランチャー』をチューニング！」
さっきまでと同じだ。『フィッシュボーグ－ランチャー』が一つの星となり、残る二体のモンスターの周囲を回る。
「
「シンクロ召喚！ 刻め、『氷結界の龍 トリシューラ』！」
「……っ！」
そしてそいつは、氷の世界と変わった『ウォーターワールド』に猛吹雪を巻き起こし、その吹雪の中から、まるで、幻が徐々に実体を持つように、現れた。
「あれが、最後の龍……？」
「……すごい」
「前の二体もすごく綺麗だったけど……」
「あの二体には、比較にならない……」
流麗な美しさ。強靭の美しさ。二体の龍は、それぞれがそんな特徴を持っていた。
だが、目の前に現れたトリシューラは、その両方を兼ね備えた、最強最後の龍。
誰もがまた、その雄姿に魅入られた。
『氷結界の龍 トリシューラ』シンクロ
レベル9
攻撃力2700+500
「トリシューラの、モンスター効果発動」
「……！」
いかん！ 俺まで、またトリシューラに魅入って……
いや、それどころではない！ トリシューラの効果は……！
「このカードの召喚に成功した時、相手の手札、フィールド、墓地に存在するカードを、それぞれ一枚ずつゲームから除外する」
「く……！」
「えぇ！！」
「何だその効果！？」
「滅涯輪廻！！」
周囲からの驚愕の声を無視しながら、梓が叫ぶ。
その瞬間、
『グオオオオオオオオオオオオオオ！！』
『……！！』
トリシューラが咆哮を上げ、それに、周りの生徒達は、そして俺もまた、驚愕を見せる。
「……くぅ」
相変わらず、その咆哮には、それを聞いた者を威圧し、屈服させるだけの威力がある。
そして、そんな威圧の中で、
「亮さんのその手札一枚、フィールドからは『サイバー・エンド・ドラゴン』……」
梓の声が聞こえてきた。
「くぅ……」
「……」
（どうする……このターンで決着が着けられるのが最良ではある。しかし、あの伏せカードで防がれ、また逆転の手を引かれる可能性もある。なら、多少危険でも、更なる逆転を狙うためには……）
「私は、あなたの墓地の、『異次元からの宝札』をゲームから除外します！」
なに！？
亮
手札：1→0
宣言されたカードを、全て懐に仕舞う。
だが、墓地からの除外が『異次元からの宝札』とは。このターンで決着が着けられない可能性を見越しての賭けに出たか……
「そして、バトルです！」
……！
トリシューラが、俺を見ている。ブリューナクや、グングニール同様、梓の敵である俺を倒さんと、俺を睨み据えている……
「『氷結界の龍 トリシューラ』で、亮さんに攻撃！ 終幕のブリザード・ディナイアル！」
「……！」
トリシューラの三つの首から放たれた、白く、冷たいブレス。それが、俺に向かってきた。
「……永続罠『女神の加護』発動！ ライフを3000ポイント回復する！」
目の前に現れた女神が放つ、温かい光。それが、俺を包んだ。
亮
ＬＰ：1300→4300
「……！！」
だが次の瞬間には、トリシューラの冷気は目の前に来ていた。
「うおおおおおおおおおおおおおお！！」
亮
ＬＰ：4300→1100
「ぐぅ……」
「……カードを二枚伏せます。ターン終了」
梓
ＬＰ：700
手札：0枚
場 ：モンスター
『氷結界の龍 トリシューラ』攻撃力2700+500
魔法・罠
セット
セット
永続魔法『生還の宝札』
フィールド魔法『ウォーターワールド』
亮
ＬＰ：1100
手札：0枚
場 ：モンスター
無し
魔法・罠
永続罠『女神の加護』
「ぐぅ……」
これが……トリシューラの、攻撃なのか……
ガクッ
「お兄さん！？」
「カイザー！？」
「どうしたの？ いきなりひざなんかついて……」
「……それだけ、トリシューラの攻撃が、重かったんだよ」
「え、重かった……？」
「うん。わたしも、あのトリシューラから、ダイレクトアタックを受けたから分かる。闇の決闘だったことを差し引いても、他のモンスターとは全然違うんだよ。凄く強いとか、力の差とか、そんな、生易しいものじゃない。もっと、あの龍自身が持ってる、怒りとか、悲しみとか、恨みとか、そんな感情を、全部乗せたって言えば良いのかな？ とにかく、ただ強いだけじゃなくて、一度受けちゃったら、絶対に勝てないって、確信させられるくらいの威力が、あの攻撃にはあるんだよ」
「そんな力が、あの、トリシューラに……？」
強い……
『氷結界の龍 トリシューラ』。他のモンスターとは、明らかに違う。
あの龍だけには、勝てる気がしない……
――嫌だ……
あれだけの一撃を受けて、分かった。これ以上、戦うことも……
――嫌だ。
仕方がないか。たとえ、敗けたとしても、これだけやれたんだ。もう、悔いは……
――嫌だ！
「……くぅ！」
ひざに無理やり力を籠めて、立ち上がる。
「『氷結界の龍 トリシューラ』、必ず倒す！」
「ええ、来なさい！ 亮さん！」
トクンッ
（……え？）
「俺のターン、ドロー！」
亮
手札：0→1
「そしてこのスタンバイフェイズ、ゲームから除外された『異次元からの宝札』が手札に戻る」
亮
手札：1→3
「え、二枚！？」
「お前がさっき、トリシューラの効果で手札から除外したカードも、『異次元からの宝札』だ」
「そんな……！」
「よって、一枚につき二枚、互いのプレイヤーはドローする」
「四枚……」
亮
手札：3→7
梓
手札：0→4
いくぞ……
「魔法カード発動『パワー・ボンド』！ 手札またはフィールド上から、融合モンスターに必要なカードを墓地へ送り、機械族の融合モンスター一体を、特殊召喚する。だが、手札と場に、そのカードは無い。よって、速攻魔法『サイバネティック・フュージョン・サポート』発動！ ライフポイントを半分払い、墓地に眠る融合素材モンスターを除外し、融合召喚を行う！」
亮
ＬＰ：1100→550
「墓地に眠る『サイバー・ドラゴン』三体を除外！ 現れよ！ 『サイバー・エンド・ドラゴン』！！」
『サイバー・エンド・ドラゴン』融合
レベル10
攻撃力4000+4000
『うおおおおおおおおおおおおお！！』
「すげえ！ やっぱカイザーはこうだよな！！」
「これで勝負は分からなくなった！！」
「『パワー・ボンド』の発動ターンのエンドフェイズ、プレイヤーは、特殊召喚したモンスターの、元々の攻撃力分のライフを削る。だが、このターンで終わらせてやる！！」
「……申し訳ないが、それはさせない。永続罠『デモンズ・チェーン』発動！」
「……！！」
梓がカードを発動させた瞬間、サイバー・エンドの巨大な体に、更に長大な鎖が巻き付けられた。
「これは……」
「『デモンズ・チェーン』が場にある限り、『サイバー・エンド・ドラゴン』の効果は無効となり、更に攻撃も封じられます」
「バカな……」
「そしてこのエンドフェイズ、あなたは『パワー・ボンド』の効果を受け、敗北します」
「梓……」
「完璧だ。梓……」
「そんな、お兄さんが、敗ける……」
敗ける？
――嫌だ……
俺が、敗ける？
――嫌だ……
嫌だ……
視点：外
「嫌だ……」
「え？」
「嫌だ、俺は……」
「敗けたくないぃぃいいいいいいいいいいいい！！」
「な……！」
「え……！？」
「お兄さん……！？」
「亮……！？」
「どんな形でもいい……」
うつむきながら、亮は、そう呟き続ける。
「俺は勝ちたい。貴様を倒して……」
「亮、さん……？」
「分かったんだ。今やっと。俺はお前の決闘を見て以来ごまかし続けてきた。シンクロモンスターを従えるお前との決闘、自分の決闘をぶつけることができれば勝ち負けは関係無いと……だが違う」
「俺は餓えている……渇いている……勝利に……！」
「お前の懐にある勝利を奪い取ってでも、俺は……！！」
「……」
「魔法カード発動『死者蘇生』」
「む……！」
「互いの墓地からモンスター一体を、特殊召喚する。『プロト・サイバー・ドラゴン』を、特殊召喚！」
『プロト・サイバー・ドラゴン』
レベル3
攻撃力1100
「そして手札から、魔法カード『オーバーロード・フュージョン』を、発動！ 自分フィールドまたは墓地から、融合素材モンスターをゲームから除外、機械族の融合モンスター一体を、特殊召喚！ 俺は！！」
叫びながら、デッキを開き、その中から一枚のカードを選び出した。
「『キメラテック・オーバー・ドラゴン』召喚！！」
「『キメラテック・オーバー・ドラゴン』！？」
カードを選択したのち、墓地からカードを四枚、取り出した。
「『キメラテック・オーバー・ドラゴン』は、自分フィールド上の『サイバー・ドラゴン』を含む、二体以上の、機械族モンスターの生贄が必要。俺は！！ この六体を生贄とする！！」
『プロト・サイバー・ドラゴン』
『サイバー・ジラフ』
『サイバー・フェニックス』
『サイバー・レーザー・ドラゴン』
『サイバー・ツイン・ドラゴン』
『サイバー・エンド・ドラゴン』
「これが生き残るための、俺の足掻きだぁああああああああああああ！！」
「出でよ！！ 『キメラテック・オーバー・ドラゴン』！！」
そして、姿を現したのは、一つの体から、六つの首が生えた機械の竜。
『キメラテック・オーバー・ドラゴン』融合
レベル9
攻撃力？→4800
「攻撃力4800……！？」
「『キメラテック・オーバー・ドラゴン』の攻撃力は、生贄に捧げたモンスターの数×600ポイントの数値となる」
「……っ」
「『キメラテック・オーバー・ドラゴン』で、『氷結界の龍 トリシューラ』を攻撃！ エヴォリューション・レザルト・バースト！！」
六つの首の一つから放たれた光線が、トリシューラに向かった。
『梓！！』
『梓さん！！』
「墓地の『キラー・ラブカ』をゲームから除外！ その攻撃を無効とし、攻撃力を500ポイント下げます！」
梓が宣言した直後、光線を放った首に、黄色の生物が巻き付いた。
『キメラテック・オーバー・ドラゴン』
攻撃力4800-500
「おお、凌いだ……」
「あれも、墓地に落ちていたのか……」
「使う機会はいくらでもあったろうに、ここぞという時のために取っておいたというわけか。だが、それも無意味に終わる」
「……」
「言っただろう、このターンでケリを着けると。俺は！！ 勝つ！！」
「勝つって……！！」
「そんなこと、できっこない！！」
「『キメラテック・オーバー・ドラゴン』は、生贄に捧げたモンスターの数だけ攻撃することができる！！」
『なに！？』
『ええ！？』
『なぁ！？』
「エヴォリューション・レザルト・バースト！！ 五連打ァ！！」
先程の首を覗いた、残り五つの首。そこから一気に放たれた光線が、トリシューラへ、そして、梓へと向かった。
「梓くん！！」
「……見事だ。速攻魔法発動！ 『禁じられた聖杯』！」
「っ！！」
「あのカードは！！」
光線を放った『キメラテック・オーバー・ドラゴン』。その頭上に現れた杯から注がれた水が、『キメラテック・オーバー・ドラゴン』を包む。
「モンスター一体の攻撃力を400ポイントアップさせ、効果を無効にする」
「なに！？」
「『キメラテック・オーバー・ドラゴン』の攻撃力は、自身の効果によって上がったもの。つまり、効果が無効になれば……」
『キメラテック・オーバー・ドラゴン』
攻撃力4800-500→0+400
「攻撃力、400……」
トクンッ
（……！ そうですか。やはり彼が……）
「迎え撃て！ トリシューラ！ 終幕のブリザード・ディナイアル！！」
一気に威力を失った光線と、最強の冷気。
その二つがぶつかった時、勝敗は明らかだった。
冷気は、あっさり光線を押し返し、水に包まれた機械竜へと届いた。
「『キメラテック・オーバー・ドラゴン』……」
（これは、勝利なのか……）
亮
ＬＰ：550→0
『……』
決闘が終わった後、誰もが声を発せずにいた。
だがそれは、つい三日前に行われた、十代と、亮の決闘とはまるで違う。
三日前のそれが、感動と、興奮と、充足感だった。
そして、この決闘で感じたもの、感動と興奮は確かに感じた。
だがそれ以上に会場を包んだものが、驚愕と、ある種の恐怖だった。
「……」
だが、そんなものを、亮は気にする様子は無い。ただ、敗北という目の前の現実だけが彼を包み、その場にひざを着かせていた。
「敗けた……俺が……シンクロモンスターに……氷結界の龍に……」
そんな、打ちひしがれる亮の前に、
「亮さん」
梓は立ち、話し掛ける。
「……あれだけ大きなことを言っていた、その末路が、この姿だ。笑いたければ笑え」
「……」
自嘲する亮に対して、梓はただ、首を横に振った。
「人は、色々な形へと成長し、変わっていける。そして、あの姿もまた、あなたの成長の証、と、いうことなのでしょう」
「成長……そうかもな」
梓は笑う代わりに、懐に手を入れた。
「亮さん」
「……？」
「これを」
そしてそれを、亮に差し出した。
「情けのつもりか？」
「まさか。何も言わず、手に取って見て下さい」
「……」
一度は断ろうとかと考えた。だが、なぜか、そのカードが気になった。そして、言われた通り、手を触れた、その時、
カァァァァァァァァ……
「……！！」
『……！！』
再びカードから、会場の全員が目を覆うほどの光が放たれた。
「竜崎、あれって……！」
「ああ。ワイらと同じ。あいつが、そうなんか……」
「今、カード達の封印が解かれました」
「封印？」
「ええ。このカード達は、今日からあなたのものだ」
「俺の……？」
疑問を返しながら、カードを受け取り、内容を見てみた。
「これは、シンクロモンスター……！？」
「そうです。このカード達をどう使うか、あなたの自由です」
「なぜ、俺に……？」
「それは私にも分からない。あなたを選んだのは、このカード達だから」
「……」
「そして、願わくば……」
「……？」
「今日以上に強くなったあなたと、再び決闘してみたいです。最初のような、らすべがす決闘での亮さんか。それとも最後に見せた、ただ勝利を目指した亮さんか」
「……」
「いずれにせよ……」
最後にそう言いながら、梓は笑顔を見せながら、手を差し伸べた。
「良き決闘を、感謝致します」
「……フ」
亮の顔にもまた、微笑みが浮かんだ。そして、立ち上がり、その手を握りながら、
「梓」
「はい？」
「ラスベガスではなく、リスペクト、だ」
最後に、そう言った。
『……』
パチパチ……
パチパチパチパチ……
パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ
二人が手を取り合った直後、沈黙から、拍手、そして、歓声が会場を包んだ。
「……」
（これで、果たすべき約束は、全て果たすことができた）
（どうか、皆さんがそれぞれ選んだ人達のもとで、幸せになって下さい……）
「おめでとう。梓君」
歓声の中、会場に立つ梓と亮の前に、鮫島がクロノスを引きつれながら立った。
「君は見事、勝利を納めました。これで君の退学は無くなり、同時にブルー寮への存続も決定しました」
「ありがとうございます」
礼を言いながら、深々と頭を下げる。
そんな梓に対し、鮫島は、更に笑顔を深ませた。
「ただ、やはり長期の欠席という事実は消えない。なので、君には今日の決闘ともう一つ、レポート百枚を提出していただきます」
「レポートを、百枚……」
「ええ！？ 決闘に勝てばチャラじゃねえのか！？」
「百枚って、マジかよ……」
「うわぁ、梓くん大変だ……」
「……分かりました。」
「それと、もう一つ言っておきたいことが」
「何でしょう」
「これは、君に限ったことではないのですが、今後はトレーニング目的であろうとも、無断で島内の木々を伐採することは禁止とさせていただきます」
「……」
「あなたもよ。あずさ」
「あはは……」
「分かりましたね」
「……はい」
梓の返事を聞いたところで、
「それではこれで、本日の全日程を、終了致します！」
鮫島のその言葉で、会場に集まっていた者達は、ゾロゾロと列を作り、帰っていく。
誰もがその顔に、充足感に溢れた笑顔を浮かばせていた。
（梓くん、今日は、良い決闘をありがとう）
（お前から託されたこのカード、大切に使わせてもらうで）
（そして、またいずれ、このカードを携えて……）
（もう一度決闘だ……！！）
（もう一度決闘だ……！！）
（もう一度決闘だ……！！）
「……」
……
…………
………………
――翌朝、アカデミア職員室。
「クロノス先生」
コーヒーを飲んでいたクロノスに、梓が話し掛けた。
「おや、セニョール梓、何かご用なノーネ？」
「ええ。実は、レポートの件なのですが……」
「レポート枚数なら、免除はしないノーネ」
「そうではなくて、その、実は……」
「なんでスーノ？」
「その……」
終始言い辛そうにしながら、どこからか、分厚い紙束を取り出した。
「夢中になって書いていたら、枚数が、五百枚を超えてしまって……」
「（ブッ！）五百枚！？ たった一日で！？」
コーヒーを吹き出しながら、大声で聞き返していた。
「はい。やはり、百枚ちょうどになるよう、添削するべきでしょうか……？」
「ああ、いや……分かりました。そのまま提出頂ければ、チェックさせていただきますノーネ」
「クロノス先生……」
後に、クロノスが数日掛けてレポートのチェックを行った結果、クロノスいわく、
「このまま決闘の教科書として十分通用するノーネ！」
と漏らすほど、完璧に仕上がっていたそうな。
一年目 完
お疲れ様～。
まあこんな感じで、亮のヘル化を若干早めたところで、一年目が終了じゃー！！
いやぁ、正直ここまで書けるかどうか不安だったよ～。
なんて、誰も大海の下らん話しなど聞きたくないろうから、巻いて行こう。
今回は、オリカは無し。原作効果のみ。
『サイバー・ヴァリー』
効果モンスター
第二の効果、このカードと表側表示のモンスターを除外してカードを二枚ドロー。
これが、モンスター限定でなく表側のカード全部という、かなり範囲が広くなっております。
いらなくなった永続魔法や永続罠ってのも意外に多いし、こっちのが便利でしょうな。
『未来融合－フューチャー・フュージョン』
装備魔法
デッキから融合素材モンスターを墓地に送って融合デッキから融合モンスター１体を特殊召喚し、このカードを装備する（この特殊召喚は融合召喚扱いとする）。
この効果で特殊召喚したモンスターはこのターン攻撃できず、デュエル中に生け贄に捧げることもできない。
このカードが破壊されたとき、装備モンスターを破壊する。
攻撃と生贄にできなくなるけど、代わりにすぐ呼び出せて、かつ破壊でなくバウンスとかならモンスターは場に残り続ける。
まあ墓地肥やしだけが目的ならどっちが良いとは一概には言えないけど、やっぱすぐに呼び出せる分、こっちのが多少は便利、か？
『サイバネティック・フュージョン・サポート』
速攻魔法
つい最近数年越しでOCG化されたことは記憶に新しいのじゃなかろうか。
ちなみに原作じゃ後出しだったけど、OCGじゃ『融合』使う前に発動しとかなきゃいけないから注意ね。
『キメラテック・オーバー・ドラゴン』
融合モンスター
まあほぼ違いは無いけど、OCGじゃ複数回攻撃はモンスターのみで、原作じゃモンスター関係なく攻撃できます。
どの道この話の中じゃ一度攻撃が通ればそれで終わりだったのでどっちでも同じなんだけど、一応亮の台詞的にはこうだから、記しときます。
以上。
てなわけで、無事に一年目が終わりまして、次は二年目。
なんだが、次もいつになることか。
分かんないけど、でもこれだけは言わせてもらう。
ちょっと待っててね。