遊戯王GX ~氷結の花~   作:大海

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んはぁ~。
てことで、バッドエンドの第二パターン。
それじゃあ早速いってみよ~。
行ってらっしゃい。



催醜話ノ二 花は凶へ、凶は鬼へ、鬼は……

視点:外

 

「カードを二枚伏せる!! このエンドフェイズ、『異次元からの帰還』で特殊召喚されたモンスターは全て、ゲームから除外される!!」

 その言葉の通り、トリシューラを除いた二体の龍は、煙となって消えていった。

「ターンエンドだ!!」

 

 

LP:50

手札:0枚

 場:モンスター

   『氷結界の龍 トリシューラ』

   魔法・罠

    セット

    セット

 

 

あずさ

LP:100

手札:4枚

 場:モンスター

    無し

   魔法・罠

    永続魔法『六武の門』武士道カウンター:6

 

 

「何とかこのターンは凌げたけど……」

「このターンで何とかしないと、次のターンでやられる」

「あずさ……」

 

 倒れていたあずさは、ゆっくりと立ち上がり、デッキに手を伸ばした。

「……わたしのターン、ドロー」

 

あずさ

手札:4→5

 

「……うん。このターンで、梓くん、今度こそ君を倒すよ」

「っ!!」

「まずは魔法カード『魂の解放』を発動。お互いの墓地から、五枚までのカードを除外する。確か君の墓地には、トリシューラのシンクロ召喚に使った『キラー・ラブカ』が落ちてたよね」

「ちぃ……」

「『キラー・ラブカ』と、『処刑人-マキュラ』、そして、三枚の『氷結界の水影』」

「……!!」

 

「え、水影?」

「何で? 他にもヤバいカードは落ちてるのに……」

 

「さっきから、水影のカードを見る度、苦しそうにしてた。よく分からないけど多分、目を背けちゃいけないことに苦しんでる。そうだよね」

「……」

「そのことを忘れろなんて言えない。だけど、そればかりを見てていいわけじゃない。苦しむことは、償いじゃないから」

「……」

「だから、今だけは、この決闘を見てて。君が今日まで生きてきて、そして招いた、目の前の現実を」

「……」

 言われながら、宣言された五枚のカード、そしてその中の、三枚の『氷結界の水影』。

 

(……)

 もう二度と戻れない、犠牲にしてきた全ての過去。

 それが、水影の姿に重なった。

 別の時間と、別の世界を生き、そして、偶然出会った、同じ名前を持つ三人。

 同じ服を着て、同じ志を胸に、同じ目的を目指した三人。

 その姿が、目の前の三枚に、どうしても重なって、そんな三人に見つめられる度、分かりきっていたはずの罪に苛まれ、胸を締め付けられ……

「……っ!!」

 それ以上、分かりきった罪を見る前に、懐にしまった。

 この決闘だけは、勝たなければならない。それこそ分かりきっていることだから。

 

「……速攻魔法『異次元からの埋葬』。ゲームから除外されたモンスターを、三体まで墓地に戻す。私はゲームから除外された、『ネクロガードナー』と、『スキル・サクセサー』、『真六武衆-シエン』を墓地に戻す」

「く……」

「そして、魔法カード『死者蘇生』発動。『真六武衆-シエン』を蘇生」

 

『真六武衆-シエン』シンクロ

 レベル5

 攻撃力2500

 

『六武の門』

 武士道カウンター:6→8

 

「更に手札から、『六武衆の御霊代』を召喚」

 

『六武衆の御霊代』ユニオン

 レベル3

 攻撃力500

 

『六武の門』

 武士道カウンター:8→10

 

「御霊代の効果。フィールドの六武衆一体に装備できる。シエンに装備して、攻撃力を500アップ」

 

『真六武衆-シエン』

 攻撃力2500+500

 

「『六武の門』の効果を発動。武士道カウンターを四つ取り除いて、デッキか墓地から六武衆を手札に加える。デッキの『六武衆の師範』を手札に加える」

 

『六武の門』

 武士道カウンター:10→6

 

あずさ

手札:1→2

 

「そして、効果で特殊召喚」

 

『六武衆の師範』

 レベル5

 攻撃力2100

 

『六武の門』

 武士道カウンター:6→8

 

「『六武の門』の効果。一つ目の効果を四回使って、シエンの攻撃力を2000アップさせる」

 

『真六武衆-シエン』

 攻撃力2500+500+2000

 

「最後に永続魔法『連合軍』。これで、フィールドの戦士族、魔法使い族の数だけ、戦士族の攻撃力をアップさせる」

 

『真六武衆-シエン』

 攻撃力2500+500+2000+400

『六武衆の師範』

 攻撃力2100+400

 

「ぐぅ……」

 

「一気にパワーアップ!?」

「いける!! この攻撃が通れば、梓を倒せる!!」

 

「これだけやれば負けないかな……」

『いいのか? 私で』

「うん。やっぱ、あんたで決めるのが礼儀だって、思うから……」

『……分かった。任せてくれ』

「……いくよ、梓くん」

(くっ、私が敗けるなど、あってたまるか……させない、この二枚のカードで、貴様を必ず……)

 

「バトル!! 『真六武衆-シエン』、梓くんにダイレクトアタック!!」

「罠発動!! 『次元幽閉』!! 攻撃してきたモンスター一体を除外する!!」

 梓のカード発動と共に、シエンの目の前に、空間の裂け目が生まれた。

(やっぱり、破壊系のカードじゃない。けど……)

「シエンのモンスター効果! 一ターンに一度、相手の魔法・罠の発動を無効にして破壊するよ!」

(これで、攻撃が通れば私の勝ち……!!)

 

「私の勝ちだ」

「……へ?」

 

『え?』

 

「速攻魔法発動!! 『禁じられた聖槍』!!」

「それって!?」

 

「あれは!? 万丈目」

「あ、ああ……あれも『禁じられた聖杯』と同じく、梓のカードで、俺との決闘で奪い返されたカード……」

 

「シエンを対象に、効果発動!!」

 そう叫んだ瞬間、シエンの頭上に現れた巨大な槍が、シエンの胸に突き刺さった。

「対象となったモンスターは攻撃力を800ポイント下げ、このターン、魔法・罠カードの効果を受けない!! 全ての永続魔法、そして、装備魔法扱いのユニオンの効果、全てがシエンに対しては無意味と化す!!」

「そんな……て、ことは……」

 

『真六武衆-シエン』

 攻撃力2500-800

 

「そんな……これじゃ、シエンをいくら破壊から守ったって、意味が無い……チェーンして墓地の『スキル・サクセサー』を除外しても、結局下がった800ポイントをまた上げることになるだけだから、意味が無い……」

 

「そんな……」

「あずさが……」

 

「迎え撃て!! トリシューラ!!」

 裂け目が消え、残ったのは、背中を槍で貫かれ、苦しげに刀を振るうシエンだけ。そのシエンがトリシューラに向かう様は、無謀としか言えない光景だった。

 そして、梓が指を、シエンに向けた、その瞬間……

 

「終幕のブリザード・ディナイアル!!」

 

 トリシューラの三つの口から放たれた冷気。

 それが、シエンを包んだ瞬間、跡形もなく消えた。

「シエン……」

 

あずさ

LP:100→0

 

 バッ

 バラァ……

 

 ライフがゼロになった瞬間、梓は全てのカードをばら撒きながら、ディスクを刀に変えながら、あずさへと走る。

 

 ガッ

 

 その勢いのままあずさを蹴りつけ、胸を踏みつけ、地面に背中を押しつける。あずさのカードもまた、宙にばら撒かれた。

 

(あずさ)!!』

 

「梓くん……」

 

(こうべ)を垂れろ!!」

 

 メンバーの悲鳴。

 あずさの微笑みと呟き。

 梓の絶叫。

 全てが一つに重なった時、

 

 ズバァッッッ

 

 鞘から抜かれた刀が、宙を舞っていた『真六武衆-シエン』のカードを、そして、地面に倒れ伏したあずさの首を、切り裂いた。

 

 

『……』

 その一瞬の出来事に、メンバーは全員、言葉を失い、絶句し、動けなくなった。

 だが、

 

 ギ……

 

「ひっ……!!」

 梓が、そちらへ般若の顔を向けた時、

「あ……あああ……!」

 

『ああああああああああああああああああ!!』

 

 全員が絶叫しながら、その場を走り去ってしまった。

 

「……」

 残されたのは、梓、ただ一人だけ。刀を手に、カードを地面に散らばせながら、横たわったそれ(・・)を見つめる。

 

「……ふはは」

 

 見つめながら、声を出した。

 

「あっはははははははは!! やった!! やったぞ!! お父さん、私はぁ……」

 

「……」

 

 

 

視点:???

 

 カラン

 

「……」

 なぜ、笑っているのだ? 私は……

 

 おかしい。

 

 

 バサ……

 

「……」

 なぜこんなに着飾っているのだ? 私が……

 

 スルスル……

 

 必要無い。

 

 

 カラ……

 

「……」

 この刀は何だ? 私の……

 

 バキッ

 

 あり得ない。

 

 

「……」

 誰が倒れている? 誰が……

 

 どうでもいい。

 

 

「……」

 なぜこんなにカードが散らばっている? なぜ……

 

 知らん。

 

 

 バシャ……

 

「……」

 お前は誰だ?

 私は……

 ……私?

 

 ……

 

 私など、どこにもいない。

 

 バキバキバキ……

 ベリァッ

 

 

 ザッ

 ザッ

 ザッ

 ザッ……

 

 そうだ……ここにあるのは……ゴミだけだ……

 

 ゴミに心は無い……ゴミに命は無い……ゴミに名前は無い……

 

 ただ、時に身を任せて……全てを見過ごして……

 

 その身が朽ち果てるまで……ただ、ここにあるだけの……

 

 ここに……

 

 ここ、に……

 

 ここ……

 

 ……

 

 ガララッ

 ザッパァァアアアアアアアアアアアアアッッッ

 

 

 ……

 …………

 ………………

 

 

 

視点:外

 

 翌朝、メンバーは恐怖を抑えながら、昨夜と同じ場所へと足を運んだ。

 だがそこには、梓も、あずさの死体すら、どこにも残っていなかった。

 代わりに、折れた刀、脱ぎ捨てられた血染めの着物、そして、散らばったカードがそこに残っていた。不思議なことに、両者のカードは全て、白紙の使い物にならないカードへと変わってしまっていた。

 また、その先にある、下は海の、断崖絶壁を見下ろしてみると、そこには巨大な氷が、まるで花のようにそびえ立っていたという。

 

 その直後、学園祭、最後のセブンスターズの出現、そして三幻魔の出現と、目まぐるしい日々が続いたことで、いつからか、二人の(あずさ)の存在は、誰の記憶からも消えていった。

 そして、十代達の卒業の日まで、そしてそれ以降も、アカデミアで二人の(あずさ)の存在が語られることは、二度と無かった。

 

 

 

 完

 

 

 

 




お疲れ~。
梓が聖槍も忘れず回収し、あずさに見事勝利して復讐も達成した結果、生きる意味が無くなり、完全なゴミに変わってしまった。
そんなエンディングでした。

一応、四部までの段階ではもう一個だけバッドがあるから、興味があれば読んでね~。
てことで、次話まで待ってて。

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