名前の通り、要するにバッドエンドですわ。
ギャルゲーでもエロゲーでもない小説でそんなもん用意するのもどうかと思うが、まあ思いついたもんだからよ。
ただ、前半は公式とほぼ同じだし、圧倒的に短いからつまらないかもしれませんわ。それでもいいよって気があれば読んでやって下さいな。
行ってらっしゃい。
視点:外
「なぜだああああああああああああああああああああ!!」
『っ!!』
「……」
「過去を捨てた! 未来を捨てた! 故郷を捨てた! 思いを捨てた!」
「友を捨てた!! 誇りを捨てた!! 愛を捨てた!! 決闘を捨てた!! 顔を捨てた!!」
「そして、水瀬梓を捨てた!!」
「これだけ捨てたのに、なぜ!! なぜ届かない!? まだ足りないというのか!? これ以上、私が何を捨てれば届いたと言うのだ!?」
「梓……」
「梓さん……」
『……』
それは、ゴミではなく、人間として初めて吐露した、梓の本心の叫び。
そしていつの間にか、氷で作られたはずの般若の目から、真っ赤な血を流していた。
『……』
「当たり前だよ」
そんな梓に、あずさが、話し掛ける。
「そんなに何でもかんでも、大事なものも、見つめなきゃいけないものも全部捨てて、勝てるわけないじゃん」
「なん……だと……」
「捨てるってことはさ、手放しちゃうってことなんだよ。手放しちゃうってことはさ、二度と手が届かなくなっちゃうってことなんだよ」
「何が言いたい……?」
「分からないの? 君が邪魔だとか、不必要だとか考えながら何かを捨てる度に、君の手はどんどんシエンから離れていった。近づきもしないで手をいくら伸ばしたって、一生届いたりしない。だから、今のままの君じゃ、一生シエンを殺すことなんてできないよ!」
「く、黙れ……捨てなければ何もできなかった。何もできないから捨てるしかなかった!」
「捨てることでしか手を伸ばすこともできないのが見て分からないのかあああああああ!!」
「梓……」
『……』
「だったら教えてあげる。全部捨てちゃったら、最後はどうなるのか。シエン!!」
『おお!!』
返事をしたシエンは、光る刀を、目の前にかざした。
「あ、あぁ……」
『覚悟は……とっくにできてるよな。お前がここに来るまでにしてきたこと全部、無にする覚悟はな』
「く、うぅ……」
「速攻魔法発動!! 『禁じられた聖杯』!! フィールド上のモンスター一体の効果を無効にし、攻撃力を400ポイントアップさせる!!」
「それが正真正銘、最後なんだね……シエンの効果発動! 一ターンに一度、相手の魔法・罠カードの発動を無効にして破壊する!」
トリシューラの頭上に現れた杯が、音を立てて砕け、梓の頭上に水を降らせた。
「分かった? 全部捨てたら、何もかもなくなって、最後には何も残らない。当たり前のことだけど……」
「シエン!!」
『おお!!』
「うあ、あぁ……」
輝く刀を構えるシエンを前に、ただ、立ち尽くすしかなかった。
「嫌だ……私は……」
「
あずさの声が響いた時、シエンの刀が、トリシューラに向かっていく……
「あああああああああああああああああああああああああああ!!」
――私は……
――今日まで……
――何の……
――ために……
梓
LP:50→0
その瞬間、見えた。それは、今まで失い、犠牲にしてきたもの全て。
居場所であった氷結界。
家族だと言ってくれた白髪の男女。
戦友であり、親友であった青髪の少女。
憎しみも復讐も知らない、純粋な、だからこそ憧れた、
そして、最も愛した人の背中……
(お父さん……)
(おとう……さん……)
虚空に向かって伸ばされた、何も掴むことのない、梓の手。
何も、掴むことなく……
バタッ
……
…………
………………
「……」
「どうして、動かないんだ?」
地面に倒れたまま、動かない梓の姿に、十代が、そう尋ねた。
「シエン……」
「ああ。思った通りだ」
「え、何なの?」
明日香の質問に、シエンは、はっきりと答えた。
「梓の命は、もう助からない」
『っ!!』
その言葉には、全員が目を見開いた。
「助からないって……どういうこと!?」
「何でだよ!? 決闘に勝てば、梓は戻ってくるんじゃなかったのかよ!?」
「……未来でもな」
迫ってくるメンバーを静止しながら、シエンは、続ける。
「梓に、憎しみの心を持って、決闘を挑んできた奴らがいた。そしてそいつらも、闇の決闘をけしかけて、今日の梓のように、禁止カードを使ってきた。そして、それを梓は打ち破った。その結果、二人は消滅して、そのまま戻ることは無かった」
「消滅って、そんな……」
「こうなるって、分かってたのか……あずさも?」
「……」
あずさは、答えない。ただ、その表情が、答えだった。
「そんな……そんなことって……」
悲しげな表情のまま、あずさは答える。
「……どの道、そんなことで、止められる決闘じゃなかったでしょう」
「……」
『……』
「……うぁ……」
『……!!』
ずっと無言だった梓が、初めて声を出した。
「……わ……たし、は……」
「何だ? 梓……」
消え入りそうなその声に、全員が耳を澄ませた。
「私は……結局……なにも……成せなかった……」
「足掻いて……もがいて……のたうって……ただ、醜いだけだった……」
「挙句の果てが……こんな最後か……何も残らない……何も残せない……無駄な……生と、死……」
「これが……ゴミの……最後か……」
「梓……いい加減にしろよ!!」
十代が叫んだ。
「十分すげえじゃねーか!! よくやったじゃねーか!! これ以上は無理ってくらい、誰にも真似できないことをお前は今日までやり遂げたじゃないか!! ゴミにそんなことができるわけねーだろう!!」
「そうだよ!!」
翔もまた叫ぶ。
「ここまでして自分を否定することないでしょう。ただ、自分を認めればいい。僕にもできたことを、あなたができないはずないのに……」
「……」
「もう……いい……」
叫び声は、既に届いていなかった。
「もう……疲れた……」
『……』
「……」
般若の面を光らせながら、空に向かって、穴の開いた手を伸ばす。
「私は……」
「何よりも愚かで……何よりも無様で……何よりも醜くて……」
「そして……何よりも劣悪だった……世界一不要な……ゴミ……」
そして、その言葉の直後、
パキパキパキ……
『……!!』
体が徐々に、凍っていった。
「ごめんなさい、皆さん……」
「私なんかが……」
「生まれてきてしまって……」
パリィン……
「梓!!」
「梓さん!!」
「梓!!」
「梓!!」
それはまるで、梓本人のように、儚く、弱々しく、だが強く、美しかった、そんな音だった。
そんな音と共に、着物も、デッキも、決闘ディスクも、そして、梓も、全てが、砕け散った。
「……何なんだよ、これ……」
最初に十代が、叫んだ。
「こんなのありかよ!! 梓!!」
「こんなのってないよ……」
そして翔が、嘆いた。
「梓さんはただ、誰よりも、人間らしかっただけなのに……」
「ここまでしておいて……」
今度は明日香が、嘆いた。
「これだけのことをしてもまだ、あなたは、自分がゴミだって、言い張る気なの……梓……」
「……バカだよ、お前は……」
万丈目が、呟いた。
「妥協することも、諦めることも、そして、助けを求めることもせず、ただ真っ直ぐに、止まることなく突き進み、挙句、命を落として……本当に、誰よりも人間らしい、大した大馬鹿野郎だ!!」
『……』
万丈目の絶叫を最後に、沈黙が流れる。
振り返ってみると、時間は一時間と経っていない。
最終的な被害は、七星門の鍵を二本。そして、こちらが守る残りの鍵も、二本。
だが、そんなもの以上に失いたくなかった物を、たった今、彼らは、失ってしまった。
「……」
そんな様を、あずさは、黙って見つめていた。
「……」
黙って見つめながら、彼らを置いて、滝壺へと歩いていった。
「……」
滝壺を前に、何も言わず、動くことなく、ただ、流れゆく水を眺める。
『……』
そんな梓の前に、シエンが姿を現した。
『……』
「……(コク)」
無言のまま頷き、ディスクからデッキを取り出した。そして、その中から取り出した一枚、『真六武衆-シエン』のカード。
「……」
ビリ……
彼との約束通りに、そして彼の望み通りに、二枚に破く。
破いた瞬間、シエンは透明になっていき、やがて、消えた。
消えた直後、シエンの闇から生まれた決闘ディスクも、そして、あずさの中に宿った力も、全て消えた。
「……」
破いた後、もう一度手に持っているデッキを見る。
「……」
バラァ……
滝壺に向かって、全てばら撒いた。これで、このデッキを二度と使うことは、無くなった。
「……」
「あずさ……」
あずさの姿を、十代達は遠巻きに見ていた。十代が近づこうとしたが、
「……」
「明日香……」
「……一人にしてあげましょう」
「……」
『……』
明日香のその言葉に、誰も異を唱える者はいない。
そのままあずさを残して、その場を後にした。
視点:あずさ
「……」
―「私とお付き合いして下さい!!」
―「……はい?」
―「私の恋人になって下さい!!」
―「……へ?」
―「私をあなたの恋人にして下さい!!」
―「……」
―「えぇ~えぇー!!」
「……」
―「もう遅いので、女子寮までお送り致します」
―「え? 良いよ、悪いよ……」
―「お送りさせて下さい。あずささんのような素敵な方を、一人で歩かせるのは心配ですから」
―「/////////」
―「す、すみません! 失礼なことを……」
「……」
―「あずささんは、気痩せする人なのか、見た目以上に胸が大きいですからね」
―「な、ちょ、いきなりなに言うの!?////」
―「ちなみに大きさはどのくらいで?」
―「いや、それは……////」
―「大きさは?」
―「だから、それは……////」
―「どのくらいで?」
―「……F////」
―「正直にお願いします」
―「…………G/////」
―「よろしい」
―「よろしいじゃないよ!! 言わせないでよ恥ずかしい!! ていうか何で私のカップ数分かったの!?/////」
―「今までも着付けの経験はありましたから、見れば大体は分かります」
―「じゃあ何で聞くかな!?/////」
―「恥ずかしがるあずささんが可愛らしくてつい////」
「……」
―「私は許さない。あずささんを……友たちを傷つける者、悲しませる者、苦しめる者、それら全てを許しはしない!!」
―「特訓し、力を付け、全力を出す。それで負けたとしても貴様らはそれで満足だろうな!! だがその瞬間、何もできないまま私は全ての絆を奪われるのだ!! 」
―「どうやって生きたらいい……どうしたら良かったんだぁあ!? 」
―「……大丈夫だよ。わたし達、絶対に負けないから」
―「約束するよ。わたし達、絶対に勝つよ。誰も、梓くんの前からいなくなったりしないから」
「……」
―「……怖かった……もし、またあずささんを傷つけてしまったら、私は……二度と……立ち直ることはできない……」
―「え……?」
―「……すみません。私がこんなことを考えるのはおこがましいことです……しかし、あなただけは……何があっても、絶対に傷つけたくない……例えボクでも、あなたを傷つけることだけは許せない……私は……あなたを……」
―「梓くん……」
―「大丈夫だよ~。わたしの強さは、梓くんが一番知ってるじゃん」
―「……はい……」
―「ね。もしまた梓くんが変わって、襲われたとしても、そんな簡単にやられたりしないよ」
―「……はい……」
―「だから泣かないで。わたしはいつだって……」
「……」
―「梓くんの味方だよ」
「……」
―「……ありがとう……」
「……ぅっっ……」
ググ……
「ぅ……ぅ……ぅぁ……」
ググ……
「ぅぅ……ぁ……ぁぅ……」
「……」
……
…………
………………
視点:外
後日、平家あずさは退学届を提出し、アカデミアから去っていった。
その直後、学園祭、最後のセブンスターズの出現、そして三幻魔の出現と、目まぐるしい日々が続いたことで、いつからか、二人の
そして、十代達の卒業の日まで、そしてそれ以降も、アカデミアで二人の
完
お疲れ~。
梓のことを肯定せず、否定しまくった結果、梓は自分をゴミと見なしたまま逝き、蘇らせる意味も無い。
そんなエンディングでした。
他にもバッドはあるから、興味があればどうぞ~。
じゃ、次話まで待ってて。