遊戯王GX ~氷結の花~   作:大海

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いよっしゃー。
十五話行きますじゃ。
今回もちょっとした新展開があるので、楽しんで頂けたらなと思います。
じゃ、行ってらっしゃい。



第十五話 最後の試練、そして真実

視点:梓

「どこに行く気だ?」

 私の前を歩くレイヴンに尋ねたが、答える気は無いらしい。いつも見せる不敵な笑みを見せながら、ただひたすら雪山を登っていくだけ。

 この男はいつもそうだ。いつも見せる笑顔の裏に、決して見せることの無い思惑を込めている。魔轟神だが、ある意味最も人らしい傾向だな。どこかの男によく似ている。本音の全てを、喜の感情の顔で隠し通そうとする部分が。

 

 そして辿り着いたのは、雪山の頂上。見れば、氷結界を囲んでいる、三つの山の一つだ。ここから氷結界の里が見えている。

「こんな場所で何をしようと?」

「……見ろ」

 初めて声を出したかと思えば、遠くの方を指差している。

 あれは……

「紫……違う、あれは……」

「君もよく知っているな」

「ああ。こんな場所で一人、何をしている……」

 私や、もう一人の私の着ていたものと同じ、赤紫色の『水影装束』。その色とは対照的な、二組の青い髪を揺らしながら、アズサは首をあちこちに向け、頂上の同じ場所を往復している。

「なぜこんな場所にいるのか、君なら分かるはずだ」

 確かにな。だが、あの女が、な……

「見つけ出すだけでもこのざまか。まるで見込みは無い……」

 ……

「……ちっ」

 

 キン……

 

「どうする気だ?」

 レイヴンの質問に、いちいち答えてはいられない。

 刀の柄に手を掛け、抜く。

 

 ドバァア!!

 

 

「!!」

 

 私の抜刀は風と衝撃を起こし、地面に積もる雪を舞い上げる。

 普通なら地面へと落ちるだけの雪、その一部が、何も無い空間で静止している。

 その雪を見て、アズサの顔は困惑から、歓喜へと変わった。そして、その雪の前に跪き、両手を合わせ祈りを捧げ始めた。

「優しいな。君も」

「黙れ」

「ふふ……」

 あの女が死のうが知ったことではない。死にたいと願うなら、それを手伝けしたところで何ら問題は無い。

 

 カァアアアアア……

 

 そこから徐々に姿を現したのは、氷漬けの遺体。

「ほう、あれは『グルナード』か」

「グルナード……?」

「氷結界の虎将にして、氷結界最強の戦士だ。年齢こそ他の二人の虎将よりだいぶ若いが、その戦闘力と、何より戦士達の統率力では歴代の戦士を遥かに凌ぐらしい」

「ほう……」

 そしてそのすぐ後で、その遺体の後ろに、巨大な青い虎の姿。

 またアズサは祈りを捧げる。その直後、

 

 カァアアアアア……

 

 私を、そして恐らくもう一人の私をも包んだのであろう光。それに包まれ、アズサは姿を消した。

 なるほど。私はああして試練を受けたのか。遺体と同じように、アズサの肉体は消えたわけではない。見えなくなっているだけでそこに残っている。

「まさか、このまま舞姫を連れていく気か?」

「それは無い。今の舞姫は言わば、試練のために肉体と精神が別れた状態だ。無理に体を遠くへ持っていけば、彼女の精神は戻らず、君達の言葉で言う所の、植物状態になるのが落ちだろう」

「なるほどな……」

 だがいずれにせよ、アズサごときが試練に勝てるとは思えん。試練に敗れた者が最終的にどうなるか、アズサは言わずとも分かるだろうと言っていたが、さて、実際にはどうなることか……

 

 

 

視点:アズサ

 

 ガキッ!!

 

「うぅっ!!」

 ヴァルキュルスと戦った時と同じ。さっきから向かっては飛ばされて、また向かっても飛ばされて、それの繰り返し。

「はぁ……はぁ……」

 もう装束もボロボロだ。少しだけで良いから梓達みたいな力が欲しいなって着てみたけど、まあ当然、格好を真似ただけで強くなれる訳が無い。クナイとか手裏剣とかも、投げてみても三本に一本は見当違いの方向に飛んでいく。クナイを手に持って使ってみても、いつもの輪刀とは全然勝手が違う。紫は一つも使わなかったし、青は一発で使いこなしてたってハジメ達から聞いたけど、僕はダメダメだな。

『……』

 何だか、グルナードも呆れてるみたいだ。

 そりゃそうだよね。普通虎将の試練に挑戦できるのなんて、氷結界でも選りすぐった戦士達だけのはずだもん。それが今じゃ、僕みたいなザコまで試練を受けなきゃいけないような状態。戦士なんて呼ばれる人達は、何年も前にいなくなってるからな。

 本当、僕自身、ここにいることが恥ずかしいって思えてくる。

「……けどさ……」

 僕が弱いってことは分かってるんだけどさ、それでも、弱かったりザコだったり、それだって、何にもしなくて良いって理由にはならないよね。何より、したいことをしない方が良いって理由には、絶対にならない。

「僕は、青を助けにいかなきゃダメなんだ。紫に笑ってもらうためにさ」

 もっとも、それが今すぐできる状態じゃないからここにいるわけだけど。

「僕が君を倒して、虎将になれれば、少しはマシになれるだろうし……」

 何より……

「そうすることができたら、僕もようやく、あの二人みたいになれるだろうしね」

 今まで名前が同じってだけで、あの二人ほど僕ができることなんて無かった。同じになりたくたって、精々今みたいに、格好を真似るくらいしかできない。

 それでも、諦めたくない。あの二人と同じでいたい。紫の、隣に立ってたい。

「だから僕は……絶対に……負けられない」

 いつもの輪刀を両手に構えて、グルナードに向かう。

 うん、やっぱ使い慣れた武器が一番だな。どうせまた吹っ飛ばされるんだろうけど、何度でも吹っ飛んであげるよ。君を倒して虎将になるまで、何度だってさ。

 

 

 

視点:外

 向かってくる少女を見つめながら、グルナードは手を目の前にかざす。その瞬間、氷でできた剣が少女に向かっていく。直接手を下さずとも、この氷の剣を操ることで敵を倒せるのがグルナードの力。だが少女はそれらを輪刀で砕いていきながら、徐々自分に近づいてくる。

 その懸命な少女の姿に、グルナードが感じたのは、哀れみだった。

 本来、舞姫は虎将の試練を受けるような人間ではない。もちろんある程度の戦闘力も求められる存在ではあるが、虎将の試練という、最強の力を得られるほどの力を求められるほどではない。だと言うのに、この少女はそんな物は関係無いとばかりに、一気呵成に自分へと向かってくる。

 先程から何度も氷の剣に阻まれ、後ろへと吹き飛んでいると言うのに、その目に浮かぶ闘志は、魂は、決してへこたれることは無い。

 虎将の魂としてここに残され、本物でも無いのに試練を与える者としてだけ存在を求められ、そして今、自分に向かっているのが、大した力を有することもできていない、未熟とすら呼べない舞姫の少女。

 何もかもが哀れだった。少女の弱さが。こんな少女でなければ戦えないほど弱くなってしまった里の弱さが。それほどまでに弱体化した氷結界が。

 あらゆる弱さを体現したような存在である目の前の少女が、哀れでならなかった。

「だぁあああああああああ!!」

 だが、その少女も、先程に比べれば自分に近づいてきている。直前まで、十本も砕けば後ろへと吹き飛ばされていたというのに、クナイを輪刀に持ち替えただけの今は、三十本、四十本と砕いていきながら、向かってくる剣も全て防ぎ、砕き、自分に近づいてくる。

「もう少し……もう少し……」

 そう自分に言い聞かせ、向かってきている。その目には、グルナード自身の姿しか映っていないように見える。

「もう少し……もう少し……」

 グルナードとの距離は、今や三メートルほどだろうか。

 近づいていく度、氷の剣は数も、威力も増していくというのに。輪刀を正確に操り、攻撃を繰り出し、少しずつ少しずつ、近づいてくる。

「もう少し……もう少し……」

 残り二メートル。

 ずっと動かしている、輪刀を握る手には血が滲み、水影装束はボロボロに切り裂かれ、顔には幾つもの傷ができている。

「もう少し……もう少し……」

 残り一メートル。

 グルナードは驚嘆していた。先程まで弱々しい、哀れみしか感じられなかった姿が、なぜか、強大な力を有する、強者の姿へと変わっていく。

「もう少し……もう少し……」

 そして遂に、全ての剣を砕き、グルナードの目の前に。

「うわああああああああああああ!!」

 

 ガッキィ!!

 

『……』

「くぅ……」

 背中に背負っていた氷の大剣を抜き、少女の輪刀を受け止める。見た目こそ先程から作っていた氷の剣がただ大きくなっただけのように見える剣だが、ずっと背中に背負っていたことで、自身の魔力を長い間、直に受け続け、強化され続けた、グルナードにとって最強の剣。

 そして、それを抜かせた少女が今、目の前に立っている。

『……』

 グルナードは直前までの自分の考えを恥じた。

 この少女は弱者ではない。十分に強い、強者と呼ぶにふさわしい。

 だが、

 

 ガキッ

 

「うぅ!!」

 ただ強いだけでは虎将にはなれない。虎将として、そんな簡単に力を譲るわけにはいかない。

『……』

 先程と同じように、無数の氷の剣を作り出す。

 だが、今度は彼女の道を阻むためではない。彼女に、とどめを刺すために。

『……』

 氷の剣を、少女を囲むドーム型になるよう操り、全ての切っ先を少女へ向ける。

 せめて最後はこれ以上苦しまないように。

 そんな祈りを籠めながら、最後に、手を下へ振った。

 

「もう少し……もう少し……」

 ダンッ!!

 

『……!!』

 だが、剣が向かってきた途端、その剣のドームから抜け出し、自分へと向かってきた。だがそれは、今までに無かった速度。人間にはあり得ない速度。

『っ……!!』

 慌てて氷の剣を作りだすが、精製が完了する前に、少女はそれらを通り越してしまう。

 

 ガッキッ

 

 先程と同じ、氷の大剣でその攻撃を受け止める。だが先程とは明らかに違うのが、もしあらかじめ抜いて手に持っていた状態で無く、先程のように背中に背負っていた状態なら絶対に間に合わなかったであろうその速度。

「もう少し……もう少し……」

『……!』

 そこまで近づいてきて、初めてその変化に気付いた。

 剣のドームの中にいた時まで、青く光っていたはずの瞳が、いや瞳以前に、眼全体が、赤く光っていることに。

「もう少し……もう少し……」

 そして、それもまた信じられない光景だった。

 だがその光景を目の当たりにした瞬間、大剣にヒビが入る。自分にとっての最強の剣が、徐々に悲鳴を上げている。その事実に、グルナードは驚愕を隠せずにいた。

「もう少し……もう少し……」

 

 バキバキバキ……

 

 ヒビは徐々に大きくなっていく。そして、その信じられない光景も、徐々に大きくなっていく。

「もう少し……もう少し……」

 

 ガッキィイイイイイ

 

 まるで剣の悲鳴だった。

 先程までの氷の剣と同じように、最強の剣は砕かれ、タダの氷へと姿を変えた。

「もう少し……もう少し……」

 そして、同じ言葉を繰り返す少女もまた、自分の目の前に。そこで、輪刀を振り上げた。

「私を待ってて……梓……」

 

 ……

 …………

 ………………

 

 

 

視点:梓

 アズサの姿が消えて、二十分ほど経ったように思えるが、未だ姿は見せない。

「レイヴン、これ以上は待つだけ無駄だ」

 結局何のためにここへ来たのかは知らんが、どの道アズサに関係することなら、アズサがいなくなった以上終わったはずだからな。

「……いや、そうでもないらしい」

「なに?」

 言葉を返した瞬間、目の前には、先程まで無かったはずの光景。

「ほう……」

 直前まで消えていたはずのアズサの姿がそこにあった。まさか、あの女が試練を乗り越えるとはな。

 

「……う!!」

 

「……?」

 突然、アズサは両肩を抱えながら、また跪いた。

 そして、

 

「うわああああああああああああああああああああ!!」

 

「……!」

 悲鳴を上げながら、地面をのたうっている。どうしたと言うんだ?

「行くぞ」

 また、レイヴンの声。

「これが狙いか」

「私も彼女が虎将の試練を乗り越えるとは思っていなかった。だが、彼女が虎将の力を手にしたというなら、それはそれで好都合だ。もっとも、その力は彼女を拒否しているようだがな」

「……」

 そういうことか。

「随分と、悪趣味だな」

 だが、ようやくこの男がアズサに固執する理由が分かった。

「ふふ……」

 

 

 

視点:アズサ

 痛い……痛い痛い痛い……

 何これ……こんなの、あの二人には無かったはずだよ……

 二人とも普通にしてたし、前よりずっと強くなってた……

 なのに、何で、僕の体は、こんなに痛いの……

 

「どうやら、虎将の力が君を拒絶しているようだな」

 ……!!

「レイヴン……」

 最悪だ。こんな時に、よりによってこんな奴に……

 けど……

「青を返して!!」

 青のこと、まずは取り返さないと。

「おかしなことを言う。彼は自分の意志でこちらへとやってきたのに」

「あんたが何かしたんだろう!! そうじゃなきゃ、青がそんなことするわけ……!!」

「無いと言えるのか?」

「は……?」

「君は、彼のことをそこまで分かっているのか?」

「何、言ってるのさ……」

「君はそこまで彼のことを理解しているのか? いやそもそも、君は人間のことをそこまで理解しているというのか?」

「なに、言ってるの……?」

 訳が分からない。この男は、何が言いたいのさ……

「まあ良い。私は君を迎えにきた。さあ、私と共に行こう」

「ふざけるな!!」

 

「アズサー!!」

 

「っ!!」

 この声、紫?

「アズサー!!」

 間違いない、紫だ。でも、何で……

「ほう、どうやら人間の仲間も迎えにきたようだな」

 だから何それ……

「アズサ!!」

 僕が聞き返そうと思ったら、紫の浴衣を着た、梓が僕の前に立ってる。

「アズサ!!」

 僕のことを呼びながら、近づいてきて、倒れてた僕の体を抱き上げてくれた。

「梓……来て、くれたの……?」

「当たり前ですよ。こんな無茶なことをして、死なないで良かった……」

「……無茶って言葉、君にだけは言われたくないかな……」

 何でだろう。紫の顔見た途端、痛みが吹き飛んじゃったよ。

 そんな梓の笑顔を見た後、ハジメとカナエも来てくれた。

 梓は僕を二人に任せると、レイヴンの前に。

「レイヴン、アズサに何をしたのです?」

 今まで見たこと無いくらい、怒ってる。

「結論から言えば何もしていない。攻撃も、魔法も、指一本触れてさえいない。私達はただ、彼女が虎将の試練を乗り越える所を傍観していただけだ」

「試練を、乗り越えたのですか? アズサが……」

 驚いてる驚いてる。ハジメにカナエも。頑張ったかいがあったよ。

「それで……しかし、それだけでこんな状態になるなど……」

「事実なのだから仕方が無い。私はただ、彼女を迎えに来ただけだからな」

「ふざけるな!!」

 紫は声を上げながら、レイヴンに向かっていった。何か、紫らしくない。

 

 フッ

 

 けど、レイヴンの顔に向けられたはずの拳は、何でかレイヴンに当たらずに、梓の体は前に倒れ込んだ。

「バカな、確かに当てたはず……」

 僕も見てた。確かに当たったよ。なのに何で……

 

「貴様では、レイヴンは殺せない」

 

『!!』

 この声、紫と同じ、だけど、冷たくて、尖ってる感じの声……

「梓、さん……」

 紫がその名前を呼んだ。

 最後に水影装束を着た状態で別れた青梓は、今は新しい青い着物を着て、こっちを見てる。

 

 

 

視点:梓

「梓さん……あなたは、本当に……」

「貴様が望んでそちらにいるように、私も、望んでこの男と共にいる」

 レイヴンの隣に立ちながら、もう一人の私にそう言った。

「目的は何です?」

「ハジメ達から聞いていないのか? 三匹の龍を手に入れる。それが私の目的だ」

「そのために、舞姫であるアズサを?」

「何を言っている?」

 舞姫がどんな存在かは知らんが、そんなことは関係無い。

「私はレイヴンの望みのままに、ここへ来ただけだ」

「レイヴンの、望み? 何を……?」

 あまり言いたくない事実だが、な。

「レイヴンは、連れ戻そうとしているだけだ。最後の一人を」

「最後の一人?」

「そうだ。三神将と共にもう一人だけ生き残っていた魔轟神。そして、三神将も滅んだ今、世界にただ一人となった、最後の魔轟神を」

「最後の魔轟神……」

「ちょっと待って。生き残った四人の魔轟神て、三神将と、レイヴンの四人のはずじゃ……」

「違う」

 アズサの言葉を遮ったのは、レイヴン。

「私は、既に死んでいる」

「は?」

 

 キンッ

 スパァ

 

『……!!』

 理解できていないアズサ達にも分かりやすいよう、私は刀を抜き、レイヴンを切り裂いた。

「……」

『!!』

 だが、レイヴンは斬られるどころか、刀は体を通り過ぎただけ。

「見ての通り、私は単なる霊体に過ぎない。何かに触れられるのは、そうしたいと強く思った時だけだ。普段は疲れるのでこの状態だがな」

「じゃあ、その最後の一人って……」

「言ったはずだ。迎えにきたと」

 アズサを見ながら、レイヴンは、彼女に呼び掛けた。

「さあ、帰ろうではないか。魔轟神の巫女よ」

 

「……は?」

 アズサ以外の視線が、全員アズサに注がれる。

「何言ってるの? 魔轟神の巫女って、僕が最後に倒した女の魔轟神のことじゃん……」

「逆だ。舞姫は魔轟神の巫女に殺され、巫女は新たに舞姫の記憶と姿を得、氷結界に加わったのだ」

「ふざけたこと言わないでよ!!」

 今までに無い、かなり取り乱した姿。

「僕が魔轟神なわけ……!! わけ……あれ?」

 だが、否定していたアズサの顔は、突然疑問に変わった。

「待って……何この記憶……僕は、こんな記憶、知らない……」

「ようやく魔轟神としての記憶が戻ったらしいな」

 記憶か。ずっと忘れていたとは、哀れな女だ。

「ちょっと待って、なに、何なの、私は……私? 僕? あれ……?」

「まだ信じられないなら、分かり易くしてあげよう」

 レイヴンはそう言いながら、アズサへ手をかざした。

「うぅ……!!」

 その瞬間、今まで以上にアズサの顔が歪んだ。

「なに、これ……ちょっと、まって、これ……」

 まず目が赤くなった。その次に肌全体が白くなり、髪も黒く染まっていく。

「アズサ、お前……」

「うそ、アズサ……」

 ハジメとカナエが、彼女から手を離しながら名前を呼ぶが、その声は、真にアズサを呼んではいない。

「アズサ……」

 もう一人の私も、目を見開き、驚愕に顔を染めている。そんなもう一人の私が名前を呼んだ時、彼女の背中からは黒い羽が生えた。

 

「いや……いやぁあああああああああああああああああ!!」

 

「梓、見ないでええええええええええええええええええええええええええ!!」

 

 

 その悲鳴を最後に、ハジメとカナエの間に座っていた、アズサと呼ばれ、人間の姿をしていた少女は、服装をそのままに、黒い羽を舞い上げながら、レイヴンと同じ、魔轟神の姿となった。

 そして、黒い羽の舞うその空間の中で、レイヴンは少女に手を差し出す。

「さあ、私と共に帰ろう。魔轟神の巫女、『グリムロ』よ」

 

 

 

第二部 完

 

 

 

 




お疲れ様~。
つ~ことで、アズサの正体はグリムロでした~。
ベタベタな展開でごめんなさいね~。
ともかくこれで、第二部終了します。
次は第三部、『氷結界の龍争奪』編で会いましょう。
次はいつになるかな~。
まあなるだけ早く上げれるよう頑張るよ。
それまで待っててね~。

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