遊戯王GX ~氷結の花~   作:大海

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待ってたか知らんが第十話。
楽しんでとしか言いようがないよね。
行ってらっしゃい。



第十話 試練と私怨

視点:あずさ

 わたしは今、制裁タッグ決闘の観戦中です。

 十代くんと翔くんの相手は、迷宮兄弟。伝説の決闘者って呼ばれてる武藤遊戯や城之内克也と戦ったこともある凄腕の決闘者。

 そんな二人に苦戦は必至……

 

 そう思ってた時期がわたしにもありました。

 十代くんも翔くんも、迷宮兄弟が何かする度にそれを封じて、次の自分のターンにはそれを完全に処理しつつダメージを与えてる。迷宮兄弟も必死に反撃をしようと色々やってるけど、さっきからそれが全部裏目に出ちゃってる。

 それでも何とか『ゲート・ガーディアン』を呼び出したけれど、十代くんの『攻撃の無力化』で攻撃を封じられて、翔くんの『シールドクラッシュ』と『スパークガン』のコンボで呆気なくやられちゃった。『ダーク・ガーディアン』を呼んだ時には、迷宮兄弟は涙目になってたし。正直見てられなかったよ。それも返しのターンで、『パワー・ボンド』で融合した『ユーフォロイド・ファイター』に攻撃されて、そのままライフをゼロにされちゃったし。

 それでいざ終わってみると……

 

 

十代・翔

LP:8000

手札:十代4枚・翔3枚

場 :モンスター

   『ユーフォロイド・ファイター』攻撃力7400

   魔法・罠

    無し

 

迷宮兄弟

LP:0

手札:迷0枚・宮0枚

場 :モンスター

   『ダーク・ガーディアン』攻撃力3800

   魔法・罠

    無し

 

 

 あれだけの相手にダメージゼロって……

 

『わああああああああああああああああああああああああ!!』

 

 大歓声が起こってる中、迷宮兄弟は号泣しながら帰っていっちゃった。

 

「お二人とも、素晴らしかったです」

 二人がこっちに来たところで、隣で一緒に見てた梓くんが二人に話し掛けた。

「本当に凄いよ! ノ―ダメージで勝っちゃうなんて!!」

「梓さんと約束しましたから。絶対に勝つって」

 そうだね。約束は守らないといけないもんね。

「次はあずさの番だ。負けるんじゃねーぞ!」

「うん!!」

 

 返事をして、十代くん達が離れた直後、

「梓くん」

 わたしは小声で、梓くんに話し掛けた。

「はい?」

 梓くんが返事をしてわたしを見る。

 うぅ、改めて考えると恥ずかしい////

 ……でもわたしは答えを見つけて、それを伝えるって決めたんだ。

 だから……

「えっとね、私が勝ったら、その……あの滝壷に来てくれる?////」

 うぅ、顔が熱いなあ……でも、そんなわたしの顔を、梓くんは黙って見てる。そして、

「分かりました。待っていますね」

 その返事で、わたしも一気に気が引き締まる。

 

「よぉーし……」

 気合を入れて、決闘場に立った! んだけど……

「えっと、わたしの相手は?」

「少し到着が遅れていますノーネ。もう少し待ちますーノ」

 ……こう言うの、出鼻をくじかれるって言うのかな。

 せっかく気合入れたのに。はあ……

 

「到着しましたノーネ」

 

 よし! もう一度気合を入れ直して、よっしゃこい!!

 そう思った時、目の前に立ったのは、長髪で、白い着物姿の、凛々しい顔つきの男の人。

「君が私の相手か?」

「あ、はい!」

 顔は凛々しいけど、その笑顔と口調はとても爽やかだ。

 

 ガタッ

 

 急に、後ろからそんな音が聞こえた。振り返って見てみると、梓くんが座ってたイスを倒して、この人を凝視してる。

 

「……シ……」

 

 何か呟いてる? そう思って、耳をすませ……

 

「シィイイイエェエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエン!!」

 

「っ!!」

 そんな絶叫が聞こえた次の瞬間には、梓くんは刀を抜いて、目の前の人に斬りかかった!?

 

 ガッキッ!!

 

「ふふ……」

 けど、目の前の人も刀を抜いて、それを受け止めた。

 

「相変わらず、速さはあるが腕力がまだまだだな」

「ちぃ!!」

 

 そんな会話が聞こえた瞬間には、梓くんは弾き返されて、客席まで飛ばされちゃった!!

 みんなが驚いてる中上手く受け身を取って、普通に立ち上がってまた向かっていく。いつもの紫色のオーラがかなり強い!!

 

「無駄だ」

 

 やっぱり平然とその刀を受け止めて、また飛ばした。今度は梓くんは着地に失敗して、そのまま倒れちゃった!!

「梓くん!!」

 呼んでみたけど、梓くんは聞こえてないみたい。ただあの人だけを見てる。

 

「おいやめろ!! 梓!!」

「梓さん、一体どうしたんスか!?」

 

 あの夜と同じように、十代くんと翔くんが梓くんを押さえた。けど、

 

「邪魔をするなぁあああああああああああ!!」

 

 紫のオーラがなお更強くなって、その衝撃で二人が吹き飛んじゃった!!

 その直後にまた向かっていったけど、梓くんの斬撃は全部受け流される。壁とか床にはもうかなりの数の斬り跡ができて、イスとかいくつも真っ二つに斬られてる。なのに、その人は傷どころか服さえ乱れてない。

 梓くんは姿を消しては斬り付け、消えては斬り付けを繰り返してるのに、一太刀もまともに当たってない……

 

「あれ、梓さん、だよな……?」

「信じられない……本当に、梓さんなの……?」

「あの梓さんが……まさか、あの森の木も梓さんが……?」

 

 周りからはそんな声が聞こえる。いつもとは全く違う梓くんの姿。それを考えれば当然の反応だよ。

 そしてしばらく二人が戦った後、梓くんは、あの夜と同じように構えた。

 

「刃に咎を!!」

 

「鞘に贖いを……」

 

 その声の方を見ると……梓くんと同じ構え!?

 梓くんは大声を上げながら、向かっていった。そして、二人の刀が……

 

 ガッキィィィィィィィィィィィィィィィィ!!

 

『うわぁ!!』

『きゃー!!』

 

 刀が交わった瞬間、衝撃波が起きた!! 今にも会場が壊れそうだよ!!

 お互いに互角……だと思ったけど、徐々に、梓くんの方が押されてる。その人はそれに余裕を見せながら、梓くんに手を伸ばすのが見えた。

 そして、

 

 バキッ

 

 梓くんの刀が折れた!!

 

 ドゴォッ

 

 同時に梓くんは吹っ飛んで、壁に叩き付けられた!!

「梓くん!!」

 返事は無い。

 土埃が晴れた時、梓くんは壁にもたれながら気絶してた。直前の音の通り、壁は大きくへこんでる。

 

「これが貴様の罪だ……てな」

 

「よくも……」

 もう制裁決闘とか、どうでもいい……

 ただ、梓くんをこんな目に遭わせたこと、それが許せない!

 ()は無意識のうちに、手甲を両手に着けてた!!

 

「うわぁああああああああああああ!!」

 

 ガァァアアアアアアアン!!

 

 さっきの梓くんと同じように、刀で受け止められる。

「梓とは逆だな。腕力はあるが、遅すぎる」

 そのまま振り払われて、梓くんみたいに壁に投げられた! それでも床を殴ってブレーキを掛けたお陰で、床はえぐれたけど何とか止まった。

 

 ベリベリベリベリ……

 

 そのまま鉄製の床を引っぺがして投げつける。

 でも、それさえも斬っちゃう。

「まあ待て。君は私と決闘するんだろう?」

 そう余裕で話し掛けてくる。さっきまで爽やかだって感じたその顔が、今はかなりムカつく……

「やるなら早く始めよう。君も、私に勝てないことくらい分かってるだろう」

 くっ……確かに、今の私じゃこの男には勝てない……

「だが、決闘ならまだチャンスはある。そうだろう?」

 こんの……

 

 ドゴォオオオオオオッ!!

 

 勝てないのもムカつくし、こいつの言ったことが事実なのがもっとむかついた。だからその怒りに任せて、床を本気で殴った。床が軽く陥没して、天井から埃が落ちた。

「やってやる……私があんたを倒す!!」

 その言葉と同時に、お互いに決闘ディスクを展開した。

 

『決闘!!』

 

 

あずさ

LP:4000

手札:5枚

場 :無し

 

LP:4000

手札:5枚

場 :無し

 

 

「先攻は私、ドロー!」

 

あずさ

手札:5→6

 

「私は『六武衆-ザンジ』を召喚!」

 

『六武衆-ザンジ』

 攻撃力1800

 

「更に装備魔法『漆黒の名馬』をザンジに装備! 守備力を200ポイントアップさせ、装備モンスターが破壊される時は変わりにこのカードを破壊する!」

 

『六武衆-ザンジ』

 守備力1300→1500

 

「カードを二枚セット、ターンエンド!」

 

 

あずさ

LP:4000

手札:2枚

場 :モンスター

   『六武衆-ザンジ』攻撃力1800

   魔法・罠

    装備魔法『漆黒の名馬』

    セット

    セット

 

 

 正直かなり怒ってるけど、それで戦略が荒くなるような間抜けなことはしない。

 梓くんのためにも、ついでに退学を防ぐためにも、絶対に倒す!!

 

「さてと、私のターン、ドロー」

 

手札:5→6

 

「私は『真六武衆-カゲキ』を召喚」

 

『真六武衆-カゲキ』

 攻撃力200

 

「それ、梓くんの使ってた!?」

「そう。君なら見えてたろ。ちょっと借りた」

「梓くんをあんな目に遭わせた挙句、デッキまで……絶対に許さない!!」

「まったく。最近の若者は怒りっぽいよな。カゲキの効果。このカードが召喚に成功した時、手札の六武衆一体を特殊召喚する。『真六武衆-シナイ』を特殊召喚」

 

『真六武衆-シナイ』

 攻撃力1500

 

「更にフィールド上にカゲキ以外の六武衆がいる時、このカードの攻撃力は1500アップ」

 

『真六武衆-カゲキ』

 攻撃力200+1500

 

「そして場にシナイがいる時、このカードは特殊召喚可能。『真六武衆-ミズホ』」

 

『真六武衆-ミズホ』

 攻撃力1600

 

「ミズホの効果。一ターンに一度、フィールド上の六武衆をリリー……生贄に捧げ、相手フィールド上のカード一枚を破壊。カゲキを生贄に、ザンジを破壊」

 カゲキが光になった瞬間、ミズホがこっちに向かってきた。

「『漆黒の名馬』の効果発動! 装備モンスターが破壊される時、変わりにこのカードを破壊する!」

 ザンジの乗ってた名馬が、ザンジの身代わりになって斬られる。

「カードを伏せてターンエンド。さあ、君のターンだ」

 

 

LP:4000

手札:2枚

場 :モンスター

   『真六武衆-シナイ』攻撃力1500

   『真六武衆-ミズホ』攻撃力1600

   魔法・罠

    セット

 

あずさ

LP:4000

手札:2枚

場 :モンスター

   『六武衆-ザンジ』攻撃力1800

   魔法・罠

    セット

    セット

 

 

 何なのこいつ? ミズホの効果を不発に終わらせただけじゃん。ただのミス? それとも……

「私のターン!」

 

あずさ

手札:2→3

 

 このカード……

 梓くん、力を貸して!

「魔法カード発動! 『紫炎の狼煙』!」

「おお……」

「デッキから、レベル3以下の六武衆と名の付くモンスターを手札に加える。『六武衆-ヤイチ』を手札に、そしてそのまま召喚!」

 

『六武衆-ヤイチ』

 攻撃力1400

 

「このカードは場にヤイチ以外の六武衆がいる時、相手の場のセットされた魔法・罠を破壊できる。その伏せカードを破壊!」

「カウンター罠、『六尺瓊勾玉(むさかにのまがたま)』発動」

 ヤイチが飛ばした矢の先に、緑色の勾玉が現れた。

「自分フィールド上に六武衆がいる時に相手がカードを破壊する効果を発動した時、それを無効にして破壊する。ヤイチを破壊」

 男が言うと同時に勾玉が光って、ヤイチはその光に呑み込まれた。

「く……バトル! 『六武衆-ザンジ』で『真六武衆-ミズホ』を攻撃! 照刃閃(しょうじんせん)!」

 ザンジとミズホの刀がぶつかって、最後にはザンジがミズホを切り裂く!

 

LP:4000→3800

 

「これでターンエンド!」

 

 

あずさ

LP:4000

手札:2枚

場 :モンスター

   『六武衆-ザンジ』攻撃力1800

   魔法・罠

    セット

    セット

 

LP:3800

手札:2枚

場 :モンスター

   『真六武衆-シナイ』攻撃力1500

   魔法・罠

    無し

 

 

「まだまだだなぁ。梓のカードを使っておいてその程度か?」

「く……そういうあんたは随分下手糞だけど、余裕のつもり? まさか素なわけ?」

「さあて……」

 ただ笑ってる。考えが読めない。その人を舐め切った態度が本気でムカつく……

「私のターン」

 

手札:2→3

 

「そうだな。少しだけ本気を出すか。永続魔法『六武衆の結束』発動」

 くっ!

「効果は知ってるだろうから説明は省略。手札から『真六武衆-エニシ』を召喚」

 

『真六武衆-エニシ』

 攻撃力1700

 

『六武衆の結束』

 武士道カウンター:0→1

 

「そして、こいつは私の場に六武衆がいる時、特殊召喚できる。『真六武衆-キザン』」

 

『真六武衆-キザン』

 攻撃力1800

 

『六武衆の結束』

 武士道カウンター:1→2

 

「結束を墓地に送り二枚ドロー」

 

手札:0→2

 

「速攻魔法『六武衆の理』発動。フィールド上の六武衆を墓地へ送り、墓地から六武衆一体を特殊召喚する。私はシナイを墓地へ送り、カゲキを特殊召喚。場にカゲキ以外がいるから攻撃力1500ポイントアップ」

 

『真六武衆-カゲキ』

 攻撃力200+1500

 

「そしてエニシとキザンはそれぞれ、自信以外の六武衆がフィールドに二体以上いる時、攻撃力をアップさせる」

 

『真六武衆-エニシ』

 攻撃力1700+500

『真六武衆-キザン』

 攻撃力1800+300

 

 くぅ、まさか、一ターンでこれだけのモンスターを……

「さてと……バトル。キザンでザンジを攻撃。漆凱(しつがい)の剣勢」

「うぅ……」

 

あずさ

LP:4000→3700

 

「ザンジの効果はそっちから攻撃した時からしか発動しない。ていうか、そもそもザンジ以外の六武衆がいないと発動しないしな」

 分かってるよそんなこと。

 けど、『真六武衆』は仲間がいて力を発揮するのは『六武衆』と同じだけど、一体一体のスペックが高すぎる。ほとんどが一体でも戦えるカードばかり。

 本当に、何なのあのカード郡……

 

「真六武衆が気になるか?」

 私の考えを読んだみたいに、そう話し掛けてきた。

「教えてやらんこともないが、気付いてるんじゃないのか? 真六武衆の正体」

 正体……

 確かに、まだ確かめたわけじゃないから、確信には至ってないって感じだけど……

「だが今は決闘中だ。一応君の退学が賭かってるからな。集中しろ」

 そんなこと!

「あんたに言われるまでもない!!」

「あっそ。じゃあ改めて、バトル。カゲキでダイレクトアタック」

「うっ!」

 

あずさ

LP:3700→2000

 

「終わりかな? エニシでダイレクトアタック」

「罠発動! 『ドレイン・シールド』! 相手の攻撃を無効にして、その攻撃力分のライフを回復!」

 

あずさ

LP:2000→4200

 

「まあいいや。セットしてターンエンド」

 

 

LP:3800

手札:0枚

場 :モンスター

   『真六武衆-キザン』攻撃力1800+300

   『真六武衆-エニシ』攻撃力1700+500

   『真六武衆-カゲキ』攻撃力200+1500

   魔法・罠

    セット

 

あずさ

LP:4200

手札:2枚

場 :モンスター

    無し

   魔法・罠

    セット

 

 

「どうせやるなら本気出したら? やる気無いの?」

「そのやる気の無い私に、君は押されてるようだけど?」

 この……

 でも、確かにそうだ。決闘が始まってから今まで、ずっとこいつからはやる気が感じられない。ちょっとは本気を出すって言ってた今だって、本当にちょっとだ。

「分かった。ならそのやる気の無い状態のあんたを倒す! 私のターン!!」

 

あずさ

手札:2→3

 

「『強欲な壷』発動! カードを二枚ドロー!」

 

あずさ

手札:2→4

 

 ……いくよ、梓くん!

「二枚の永続魔法発動! 『六武衆の結束』! そして、『紫炎の道場』!」

「そのカードもか」

「罠発動! 『諸刃の活人剣術』! 墓地の六武衆二体を特殊召喚! ザンジとヤイチ!」

 

『六武衆-ザンジ』

 攻撃力1800

『六武衆-ヤイチ』

 攻撃力1400

 

『六武衆の結束』

 武士道カウンター:0→1

『紫炎の道場』

 武士道カウンター:0→1

 

「手札の『六武衆の侍従』を守備表示で召喚!」

 

『六武衆の侍従』

 守備力2000

 

『六武衆の結束』

 武士道カウンター:1→2

『紫炎の道場』

 武士道カウンター:1→2

 

「結束を墓地に送って効果発動! カードを二枚ドロー!」

 

あずさ

手札:1→3

 

「魔法カード『天使の施し』! カードを三枚ドローして、二枚を捨てる。速攻魔法『六武衆の理』! ヤイチを墓地に送って、墓地の『六武衆の露払い』を特殊召喚!」

 

『六武衆の露払い』

 攻撃力1600

 

『紫炎の道場』

 武士道カウンター:2→3

 

「露払いの効果! フィールド上の六武衆を生贄に捧げて、相手のモンスターを破壊! ザンジを生贄に、……よし、カゲキを破壊!」

「ふふ……」

 二体が破壊されるのを黙って見てる。あの余裕が気になるしムカつくけど、このまま押し切る!

「『紫炎の道場』の効果! このカードを墓地に送って、このカードに乗った武士道カウンターの数以下のレベルの六武衆、または紫炎と名の付くモンスターを呼び出す! レベル3の『六武衆の御霊代』を特殊召喚!」

 

『六武衆の御霊代』

 攻撃力500

 

「更に、墓地の六武衆、ザンジとヤイチを除外! 『紫炎の老中 エニシ』を特殊召喚!」

 

『紫炎の老中 エニシ』

 攻撃力2200

 

「最後に、このカードはフィールド上に六武衆がいる時、特殊召喚できる! 『六武衆の師範』!」

 

『六武衆の師範』

 攻撃力2100

 

「バトル! 『紫炎の老中 エニシ』で、『真六武衆-エニシ』を攻撃!」

 同じ名前の二人が互いに刀を抜いて、ぶつかり合う。攻撃力が上の紫炎の老中が、真六武衆を呆気なく倒した。

 

LP:3800→3300

 

「次に、『六武衆の師範』、『真六武衆-キザン』に攻撃! 壮凱(そうがい)の剣勢!」

 このバトルも同じ。攻撃力の高い師範が普通に勝利。

「『六武衆の露払い』と、『六武衆の御霊代』でダイレクトアタック!」

 

LP:3300→1200

 

「やるねぇ……」

「メインフェイズ、御霊代を露払いに装備! ターンエンド……!」

「せっかくだ。盛り上げていこうか。エンドフェイズに罠発動。『究極・背水の陣』」

 !! そのカードは!?

「私のライフを100にして、墓地の六武衆を可能な限り特殊召喚する。真六武衆、もう一度集合だ」

 

『真六武衆-キザン』

 攻撃力1800+300

『真六武衆-エニシ』

 攻撃力1700+500

『真六武衆-カゲキ』

 攻撃力200+1500

『真六武衆-ミズホ』

 攻撃力1600

『真六武衆-シナイ』

 攻撃力1500

 

「うっそ……ここで?」

 ていうか、私ったらまた……ヤイチの効果を発動するの忘れてた……

 

 

あずさ

LP:4200

手札:0枚

場 :モンスター

   『六武衆の師範』攻撃力2100

   『紫炎の老中 エニシ』攻撃力2200

   『六武衆の侍従』守備力2000

   『六武衆の露払い』攻撃力1600+500

   魔法・罠

    ユニオン『六武衆の御霊代』

 

LP:100

手札:0枚

場 :モンスター

   『真六武衆-キザン』攻撃力1800+300

   『真六武衆-エニシ』攻撃力1700+500

   『真六武衆-カゲキ』攻撃力200+1500

   『真六武衆-ミズホ』攻撃力1600

   『真六武衆-シナイ』攻撃力1500

   魔法・罠

    無し

 

 

「さーて、私のターン」

 

手札0→1

 

「君なら分かるだろう」

 男はその言葉の直後、モンスター達に目を向ける。私もそっちを見た。

 

 ……何て言うか、うまく言葉にできないけど、確かに感じる。彼らが向かい合いながら、お互いに感じてる感情。私のモンスター達が懐古。そして、真六武衆達は、先見?

「やっぱり、真六武衆って……」

「そういうこと。今君のフィールドに並んでるカード達。属性が変わったのもいるが、そいつらの現役時代が、この真六武衆だ」

 やっぱり、思った通りだ。

 ……あれ? だとしたら、

「じゃあ、残りの一人は? 闇属性の真六武衆は誰?」

「それも君なら、きっとすぐに分かる」

 は?

「さあ、授業はここまで」

 そう言って、男は手札に手を伸ばした。

「(……抵抗はあるが、)魔法カード『強欲な壷』を発動し、デッキからカードを二枚ドロー」

 

手札:0→2

 

「……『天使の施し』発動。カードを三枚ドロー、手札から『六武衆の影武者』と『六武衆のご隠居』を墓地へ送る。そして、まずはミズホの効果。一ターンに一度、フィールドの六武衆を生贄に、相手の場のカードを一枚破壊。私はシナイを生贄に、君の場の御霊代を破壊」

 ミズホがまた消えて、ユニオン状態の御霊代をあっという間に成仏させた。

 一ターンに一度だけど、あっちは魔法・罠も破壊対象なんだ。

「シナイには生贄に捧げた時、墓地のシナイ以外の六武衆を手札に加えられる効果がある。この効果で、墓地に送った『六武衆のご隠居』を手札に加えておこう」

 

手札:2→3

 

 御霊代……いや、シナイだっけ。今も、それに昔も、仲間のために身を捧げてたんだね。

「さてと、バトルだ。まずは、『真六武衆-キザン』で、『六武衆の師範』に攻撃。漆凱の剣勢」

「迎え撃って師範! 壮凱の剣勢!」

 また、二人の刃がぶつかる。そして、今度は攻撃力が同じだから、両方倒れた。

「ここでエニシの効果。墓地に存在する六武衆二体を除外し、フィールド上のモンスター一体を手札に戻す。墓地のシナイとキザンを除外。君の場の侍従を手札に戻してもらう」

 侍従が手札に!

 これが、真六武衆のエニシの効果。破壊じゃなくて、コストを払ってのバウンス。しかもバトルフェイズに発動ってことは、ほぼいつでも発動できるってこと。

「『真六武衆-エニシ』で、『紫炎の老中 エニシ』とバトル。斬光閃(ざんこうせん)

 またさっきと同じ。二人の刃が交わって、相打ち!

「さて、空気が読めず申し訳ないが、私も一応は勝ちたいからな。カゲキで露払いを攻撃。雷刃四方破斬(らいじんしほうはざん)

 ミズホ、じゃなくて、カゲキに倒される露払い。

 確かにちょっと空気は読めてないけど、勝つためなら当然の選択。

 

あずさ

LP:4200→4100

 

「最後にミズホでダイレクトアタック。瞬切華(しゅんせっか)

 くぅ……

 

あずさ

LP:4100→2500

 

「まあこんなところか。最後に二枚伏せてターンエンド」

 

 

LP:100

手札:1枚

場 :モンスター

   『真六武衆-カゲキ』攻撃力200+1500

   『真六武衆-ミズホ』攻撃力1600

   魔法・罠

    セット

 

あずさ

LP:2500

手札:1枚

場 :モンスター

    無し

   魔法・罠

    無し

 

 

 まずい。相手のライフはたったの100。あの二体の攻撃力を超えるモンスターを召喚できれば勝てるけど、私の手札には侍従が一枚。このドローで引けなければ、私は負ける。

 いや、仮に引けたとしても、あの二枚の伏せカード、それで防がれたらそれまで……

 

「それでも、引くしかないよね……ドロー!」

 

あずさ

手札:1→2

 

 ……

「どうだった?」

 ……うん。

「このターンで、あんたを倒す!」

「ほぉ……」

 逆転行くよ!!

「まずは、手札の『六武衆の侍従』を召喚!」

 

『六武衆の侍従』

 守備力2000

 

「そして、魔法カード『死者蘇生』! 墓地の『六武衆の露払い』を特殊召喚!」

 

『六武衆の露払い』

 攻撃力1600

 

「露払いの効果! 侍従を生贄に、あんたの場のミズホを破壊する! さっきのお返しだ!」

 さっきとは逆に、露払いの脇差しに、ミズホが刺される。

「これでカゲキの攻撃力は元に戻る!」

 

『真六武衆-カゲキ』

 攻撃力200

 

「ふふ……」

 また笑ってる。あの伏せカードか? けど、もう他に手は無い!

「いくよ! バトル! 『六武衆の露払い』、『真六武衆 カゲキ』に攻撃! 疾切華(とうせっか)!!」

 向かっていく露払い。笑っている男。結果は……

 

「お見事」

 

 露払いが、確かにカゲキを刺した。

 

LP:100→0

 

 

「か、勝った……」

 勝ったことに安心して、思わずひざを着いた。

 けど、勝ったのに、十代くん達の時とは違って、周りはとても静かだ。

 疑問に感じて周りを見てみる……

 その時初めて気付いた。生徒も先生もみんな、私達に怯えてる。

 

「強いな。君」

 

 男の声。そっちを睨みつける。私はまだ、この男を許してない……

 あれ?

「その手札……」

「ん? ああこれ? 前のターンにシナイの効果で手札に戻した『六武衆のご隠居』だけど」

 ……前のターン、まだ通常召喚はしてなかった。つまり、そいつを召喚していれば、ミズホが破壊されても御隠居が場に残って、カゲキの攻撃力が下がることはなかった……

「まあ、仮にこいつを召喚したとしても、師範を呼ばれれば終わってたからな。どちらにせよ君の完全勝利だったさ」

 ……

 こいつ……どこまで人のことをバカにして……!!

「そう睨むな。一応褒めてるんだ。なるほど梓が惚れるのもよく分かる」

「!!」

 な、急に何言ってるの、この男!?

「あいつのことなら大体知ってる。まあいい。こいつは返しておいてやってくれ」

 そう言って差し出してきたのは、梓くんの使ってた、紫色のデッキケース。私はそれを、無言で受け取った。

「一つだけ聞かせて欲しいんだが……」

 今度は質問?

 

「梓は、今でも自分をゴミだなんて思ってるのか?」

 

 な!!

「何でそのこと……」

「はあ……やっぱりな。まあ、あいつのことだからそうかとは思ってたんだが……」

 私の答えに、男は表情を曇らせる。

 知ってたの? 梓くんのこと? 知ってるの? 梓くんのことを?

「君は梓の恋人だろう?」

 こ!!

 その言葉に、こんな時なのに、顔が熱くなる。

「君以外にも、仲間はいるのか?」

 それは、本当に梓くんを心配しているのが分かる顔だった。だからか、許せないって思う存在なのに、無言で頷いてた。

「ならよかった。悪いが、あいつのことは頼む。あいつには、心の支えになってくれる存在が必要なんだ。私がそうなれればいいんだが、あいつの中の私は、さっき見た通りだからさ。今は君達がそうなら、あいつのこと、支えてやってくれ」

 そう話す顔は、まるで親みたいな、けどちょっと違う、とにかく本当に梓くんを思いやってる、そんな顔だった。

「あんた一体……」

 

「……うぅ」

 

 っ!!

 確かに聞こえた。そっちを向くと、梓くんが動いてる!

 

「じゃあ、後は頼むぜ」

 

 その声がした直後、男の方を向いた時、もういなくなってた。

 気にはなったけど、私はもう一度梓くんの方に向き直り、急いで駆け寄った。

 

 ……

 …………

 ………………

 

視点:男

 あれが平家あずさか。楽しめる奴だった。危うくルールを無視して切り札を使っちまうところだった。

 私が最後に伏せていた二枚の伏せカード。エンドフェイズに破壊される変わりに墓地の六武衆を特殊召喚する『六武衆推参!』。そして、『緊急同調』。

 まあ、ここでのルールは分かってるから使わないがな。

 だが、梓のことだ。もし次に出会ったら、間違い無くデッキの封印を解いてくるだろうな。まあ、その時は私も本気を出すしかないか。それが、あいつに答える唯一の方法だもんな。

 

 ……

 

 梓……

 

 ……

 …………

 ………………

 

視点:あずさ

「梓くん、梓くん」

 目を覚ましそうになってる梓くんに、そう何度か声を掛けた時、やっと目を覚ました。

「梓く……」

 安心した直後、

 

 ヒュッ

 

 梓くんの手が、わたしの顔に向かって飛んできた!?

 

 パシッ

 

 とっさにわたしも手を出して、梓くんと手を握り合う形になる。

 

 ググググ……

 

 え、うそ!

 押してくるから、わたしも負けないよう押し返してる。腕力も握力も、わたしの方が強い……はずなのに、こっちの方が、押されてる!?

 むしろ、前に押すたびに、逆にこっちへ押される形になってない? だからって、力を抜いても普通にこっちへ押されるだけだし……

 そうやって押し合ってるうちに、ついに私がひざを着いて、梓くんが立ち上がり、上になって、そして……

 

 ガタン!!

 

 手を握り合ったまま、わたしは床に叩き付けられた。

 

「刀の無い私なら……丸腰の私なら……直前まで気絶していた私なら、簡単に殺せると思ったか!?」

 

 突然そんなことを叫ばれた。わけが分からないうちに、梓くんは辺りを見渡す。

「奴は!? どこだ!!」

「……もう、行っちゃったよ……」

 押さえられながら、何とかそう答えると、梓くんはやっと手を離してくれた。そして、決闘場のど真ん中まで歩いて、そこで立ち止まった。

 

 

「シエン……」

 

「貴様だけは許さなぁぁああいぃ……」

 

「えぇええええええええええええええええええええぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ……」

 

 

 ……

 …………

 ………………

 

 その悲鳴を最後に、梓くんは、アカデミアから姿を消した。

 

 

 

 




お疲れ~。
次から多分、新展開。まあそう呼べるほどのあれかは分からんけどね。
ちょっと待ってて。

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