遊戯王GX ~氷結の花~   作:大海

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九話目や~。
内容はタイトルから大体分かるろ~。
しかし俺にはこれしか言えん。
行ってらっしゃい。



第九話 退学の危機、凶王と帝王 ~凶王~

視点:外

 

『……』

 

「……すみません」

 

『……』

 

「私は、あなた方を……」

 

『……』

 

「……そうですね。分かっています。それは、とても嬉しいことです」

 

『……』

 

「……そうですか。そう言って下さいますか」

 

『……』

 

「……私も、楽しかった」

 

『……』

 

「……はい。ありがとうございます」

 

『……』

 

「慰めてくれるのですか」

 

『……』

 

「ありがとう」

 

『……』

 

「ええ。もう大丈夫です」

 

『……』

 

「構いませんよ。いらっしゃい」

 

『……』

 

 

 

視点:あずさ

「明日香ちゃんて、眉毛濃いよね」

「ええ。実はこれ……」

 

 ペリ

 

「奈良漬なの」

「ほぉー!!」

 

 

 ガバ!

 

 何だろう……物凄く嫌な夢を見ちゃったような……

 お陰で目が覚めちゃったよ。昨夜あんなことがあったからかな?

 あの後、わたし達はとりあえず倒れてた明日香ちゃんを運んで、タイタンは目が覚めた後でボコボコにして追い返した。と言っても、手甲は着けずに、手加減したんだけどね。

 その後すぐに帰って寝たんだけど……

 そう言えば、梓くんは大丈夫かな……

 

 コンコン

 

 ん? まだ朝早いのに、誰だろう。

 

 ……

 …………

 ………………

 

 

 

視点:十代

 

「俺達が退学!?」

 

 俺、翔、あずさの三人が朝から呼び出されて、言われたのはそんな内容だった。

『あなたたちーが、立ち入り禁止の廃寮に入ったことは分かっていますノーネ』

『そこで、お前達三人を退学にすることが決定した』

 そんな……

「ちょっと待ってくれって! たった一回入っただけでそれはねーだろう!!」

『ルール違反を犯したあなた達が悪いノーネ!』

 ぐぅ、そりゃルールを破ったのは悪かったけどさ……

「じゃ……じゃあ、私達にチャンスをくれませんか?」

 隣で小さくなってたあずさがそう言った。

『チャンスですか……うむ。良いでしょう』

『校長!』

『彼らはまだ幼い。たった一度のルール違反で退学と言うのはいささか酷な物があります』

『そ、それもまあ、そうなノーネ』

 

 ……

 …………

 ………………

 

 そんなわけで、あずさの言葉のお陰で、学園で用意した相手に俺と翔がタッグ決闘を、あずさが個人で決闘をすることになった。それに勝ったら退学は無しになるってわけだ。

「まさか、私のせいでそんなことになっているなんて……」

 明日香が俺達を見ながら、悲しそうにそう言った。ちなみに明日香と梓が何事も無いのは優秀なブルー生徒だから、隼人は建物の陰に隠れてて見つからなかったかららしい。

「気にするなよ明日香。俺と翔のタッグなら負けねーよ」

「その自信はどこから来るんスか……」

 翔は偉く落ち込んでるなあ。

「大丈夫だって。俺とお前のタッグなら無敵だ。あははははは」

 翔の決闘は見たこと無いけど、まあ何とかなるだろう。

「よし! じゃあ早速俺と特訓決闘だ!」

 そう言って、翔の手を引いて教室を出ようとした時だった。

 

「あれ? 梓くんがいない」

 あずさがそう言った。そう言えば、たった今まで一緒に話してたのにいなくなってる。

「梓なら、たった今トイレに行くって出ていったわ」

 明日香が教えてくれた。

「そっか。トイレか」

 

『………………………』

 

『まさか!!』

 

 

「わたし達は現在校長室に向かっています!!」

「何言ってんだよあずさ!! 急ぐぞ!!」

 そうこうしているうちに校長室に辿り着いたけど……

 な、何だこりゃ!? ドアが、真っ二つに斬られてやがる!! こんなことができる奴なんて、一人しかいねえ!!

「校長!!」

 呼びながら中にはいると、校長は呆然と椅子に座ってた。その前には、ドアと同じで真っ二つになった机が。

「ああ、君達か……」

 あずさがすぐに校長に近づいた。

「先生! ケガ無いですか?」

「ええ、何とか……」

「梓が来たんだろ!? 水瀬の方!!」

「ええ。まさか、彼にあんな一面があったとは、普段の姿からは想像もできませんでした」

「梓はどうした? どこへ行ったんだ!?」

「私から倫理委員会の居場所を聞き出すと、すぐに出ていきました」

「まさか、教えちまったのか!?」

「申し訳無い。嘘を言っても彼には通用せず、御覧の通り机を斬られて脅され、つい本当のことを……」

「それで、場所は!?」

 

 ……

 …………

 ………………

 

 

 

視点:倫理委員会委員

 

 カタカタ……

 

 カタカタ……

 

 カタカタ……

 

 キンッ

 

 私が仕事でPCを叩いていた時、静かな音が突然響いた。はて、何かの金属音のようだったが……

 

「貴様か……」

 

 今度はそんな、暗い少年の声。何事かと見てみると、そこには青い着物を着た、少女のような顔をした少年が、日本刀を片手に私を見ている。

 こいつは確か、水瀬梓。噂は聞いている。

「こんな所に何の用だ? ひとまずその物騒な物をしまえ」

 そう言ったが、水瀬梓は無視して徐々に近づいてくる。

「おい! 聞こえな、あっ……」

 私が言い切る前に、いつの間に抜いたのか、日本刀を私に突きつけた。しかも、喋っている最中の口に、刃の先を挿し入れる形でだ。

「私の友を退学にしようとしている者、それは貴様かと聞いている……」

 退学と言うと、遊城十代達のことか?

 それを理解したと同時に、こいつの目を見た時、感じた。この男、本気で私を……

「あが、あが……」

 返事をしたいのだが、口に刀を入れられていて喋れない。下手をすれば、刀で口を切ってしまう。

「……」

 そんな私の姿を見かねて、水瀬梓は日本刀を口から離し、そのまま鞘に納めた。

「……いや、私ではない。もっと上の人間からの命令だ」

「そうか。なら、そいつのもとへ連れて行け……」

「断る。そんなことはできない」

「そうか。ならば、できるようにするまでだ」

 そう言って、また刀に手を掛ける。

「私を殺そうとしても無駄だぞ。ここには私以外にも、多くの倫理委員会のメンバーがいる。私がこのボタンを押せばすぐに……」

 その時、私は疑問を感じた。そうだ。ここに来るまでにも、多くの倫理委員会メンバーがいたはずだ。なのに、日本刀などという明らかな危険物を持ったこの少年が、なぜここまでやってこれた?

 

「倫理委員会? そんな者は一人もいなかったぞ。もっとも、何匹もの番犬がうるさく吠えていたから、黙らせたがな……」

 

 その言葉で、私は確信してしまった。

 倫理委員会は、目の前に立つたった一人の少年に、壊滅させられたのだと。

「貴様はどうする? 犬共と共に眠るか? それとも永久とわの眠りに着くか?」

 その言葉に、私はただ震えていた。

 執行部は私も含めて全員、毎日厳しい訓練をこなし、肉体を鍛えている。中には実戦を経験した者も少なくない。それを、たった一人の、私より遥かに華奢(きゃしゃ)な体つきをした少年が、全て壊したというのか……

 水瀬梓は静かに私の隣に立ち、耳元に口を近づけた。

 

「上の者とやらの居場所を……刹那だけ待ってやる……」

 

「言え!!」

 

「っ!!」

 耳元での叫び、怖い……

 だが、ここまでのことをされて、私も黙っていられるわけが無い。怒りと使命感が、恐怖を上回った。

「はああああああああああ!!」

 大声を上げながら、顔面へ放った右の拳。

 

 ガシッ

 

 不意を付いたパンチだった。速度もタイミングも、完璧だったと自負できる。なのに、水瀬梓はそれを、顔に当たる寸前で受け止めた。

 そして、握っている私の拳を、徐々に締め付け……

「ぐ、うぅぅ……」

 かなりの握力で握られている。握られただけで、私は痛みにひざを着き、顔を伏せてしまった。

「私に拳を向けられる女は、この世に一人しかいない!!」

 最後にそんな言葉を聞こえた……

 その直後だった。

 

「梓くん!!」

 

 女子の声、か? 痛みで上手く聞こえなかったが、その声の直後、急に痛みが引いた。

 

「何やってるの!?」

 

 今度は完全に痛みが無くなり、私の手が離されたことが分かった。見ると、水瀬梓は入口の方を見ている。そこに立っているのは、退学を言い渡された平家あずさと遊城十代、その他の計五名。

「私は許さない。あずささんを……友たちを傷つける者、悲しませる者、苦しめる者、それら全てを許しはしない!!」

 やはり、あいつらのためか。普通ここまでするか……

「だからって、こんな大暴れしちゃダメだよ!! むしろ梓さんが退学になるっスよ!!」

「そうだ!! 一応全員無傷で気絶させただけだったみたいだけど、お前本気で殺す気だったろう!?」

「当たり前だ!! 私は許さない。友を傷つけること、私はそれを最も憎む!! 退学も決まりも興味は無い!!」

「バカ野郎!! いくらお前が許せねえからって、お前のやってることは許される行為じゃねーだろう!!」

「そんなことは百も千も承知だ!! ならば、貴様らは悔しいと思わんのか!? 決まりを破ったことを罰せられるのは良い。こちらも許されない行為をした。その罰は受けて然るもの。だが、その瞬間に存在を全否定され、居場所を奪われ捨てられるのだぞ!! 誰かを傷つけたわけでも、誰かに損害を与えたわけでも無い!! ただ入っただけだ!! たったそれだけの行為で、弁解の余地も、償う暇さえ与えられず、与えられたのは、屈辱と羞恥に彩られた試練のみ!! それを!! 貴様らは黙って受け入れると言うのか!?」

「受け入れるよ!!」

 水瀬梓の絶叫の直後、平家あずさが叫んだ。

「私も、十代くんに翔くんだって受け入れてるよ!! だから、これから強くなろうって、君が言った試練を乗り越えようって頑張ってるんだよ!! 決闘に勝てば、退学は無くなる!! そのために頑張れば良いんだよ!!」

「負ければどうなる!?」

 今度は水瀬梓が叫ぶ番だった。

「特訓し、力を付け、全力を出す。それで負けたとしても貴様らはそれで満足だろうな!! だがその瞬間、何もできないまま私は全ての絆を奪われるのだ!!」

 そう叫ぶと、今度は急に、下を向いた。

 

「どうやって生きたらいい……どうしたら良かったんだぁあ!?」

 

 水瀬梓は、最後にそう泣き出しそうな声で叫んだ。

 

「梓くん……」

「梓……」

 また二人が声を出した。

 二人だけではない。私も、そして、この場にいる全員が同じ思いだろう。

 ただ友を傷つけられたことが許せなくて、友がいなくなることも受け入れられず、そのことに怒り、ここまでのことをする。

 何と言うべきか、どこまでも、悲しいほどに純粋な男だ。

 

「梓くん」

 そんな優しい声で水瀬梓に話し掛けたのは、平家あずさだった。水瀬梓の手を取り、笑顔を見せている。

「大丈夫だよ。わたし達、絶対に負けないから」

 先程まで梓を見ていた顔とは打って変わった、とても優しい笑顔だった。

「約束するよ。わたし達、絶対に勝つよ。誰も、梓くんの前からいなくなったりしないから。ねえ、十代くん、翔くん」

 入口にいる、遊城十代と、丸藤翔に話し掛けた。すると二人とも、決意を新たにしたように、笑顔を浮かべた。

「もちろんだぜ! さっきも言っただろう。俺と翔のタッグなら無敵だってさ!」

「……正直、自信なんて無かったし、本当は決闘が怖かった。けど、そんな梓さんにそこまで思ってもらえて、無下にはできないっス。だから、僕も勝つよ」

 ここに来て、終始不安げな顔をしていた丸藤翔の顔が一変、決意のこもった顔を浮かばせている。

「だから梓くん、帰ろう」

 また笑顔を向けて、優しく話し掛けている。

 

「……」

 水瀬梓は、その笑顔をジッと見ていた。

 しばらくそうした後で、私の方を見た。

「……数々のご無礼、申し訳ございませんでした」

 それは、直前までの顔とは打って変わった、本当の少女に思える、男の()な顔だった。悲しげだがそこがまた美しく、つい見惚れてしまいそうになる。

「あ、いや、幸い死傷者は無さそうだし、まあ、ここは大目に見てやろう////」

 そう返事をすると、顔を上げて、また私の顔を見てきた。そして浮かべる、笑顔。

「また改めて、お詫びに参ります」

 か、可愛い////

 その言葉を最後に、仲間達と共に出ていった。

 

 

 さて、全員が去った後で、私も部屋を出てみたが……

 な、何という!?

 少なくとも二十人以上はいるはずの、水瀬梓よりも軽く倍はある体格の男達が、厳しい訓練を共に耐えてきた精鋭達が、一人残らず、気絶させられている。

 男の娘であるということからの油断を差し引いても、これは由々しき事態だ!

 片手でいなされた私もそうだが、あんな……

 たった一人の……

 可愛い男の娘に……////

 

 ではなく、これは、許されない!

「ほら、起きろお前達!」

 たった一人の男子生徒にこの(てい)たらく。私達へのこれからの課題がはっきりした。まだまだ、強くならなければならないらしいな。

 しっかり鍛え直さねば!!

 

 

 

 




お疲れ~。
ちなみに倫理委員会のイメージは大海の勝手なそれだからな。
あれで合ってんのか分かんないし。アニメの記憶も曖昧だし。
まあ楽しんでもらえりゃそれでいいさ。
んじゃ次話まで待っちょれ。

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