内容はタイトルから大体分かるろ~。
しかし俺にはこれしか言えん。
行ってらっしゃい。
視点:外
『……』
「……すみません」
『……』
「私は、あなた方を……」
『……』
「……そうですね。分かっています。それは、とても嬉しいことです」
『……』
「……そうですか。そう言って下さいますか」
『……』
「……私も、楽しかった」
『……』
「……はい。ありがとうございます」
『……』
「慰めてくれるのですか」
『……』
「ありがとう」
『……』
「ええ。もう大丈夫です」
『……』
「構いませんよ。いらっしゃい」
『……』
視点:あずさ
「明日香ちゃんて、眉毛濃いよね」
「ええ。実はこれ……」
ペリ
「奈良漬なの」
「ほぉー!!」
ガバ!
何だろう……物凄く嫌な夢を見ちゃったような……
お陰で目が覚めちゃったよ。昨夜あんなことがあったからかな?
あの後、わたし達はとりあえず倒れてた明日香ちゃんを運んで、タイタンは目が覚めた後でボコボコにして追い返した。と言っても、手甲は着けずに、手加減したんだけどね。
その後すぐに帰って寝たんだけど……
そう言えば、梓くんは大丈夫かな……
コンコン
ん? まだ朝早いのに、誰だろう。
……
…………
………………
視点:十代
「俺達が退学!?」
俺、翔、あずさの三人が朝から呼び出されて、言われたのはそんな内容だった。
『あなたたちーが、立ち入り禁止の廃寮に入ったことは分かっていますノーネ』
『そこで、お前達三人を退学にすることが決定した』
そんな……
「ちょっと待ってくれって! たった一回入っただけでそれはねーだろう!!」
『ルール違反を犯したあなた達が悪いノーネ!』
ぐぅ、そりゃルールを破ったのは悪かったけどさ……
「じゃ……じゃあ、私達にチャンスをくれませんか?」
隣で小さくなってたあずさがそう言った。
『チャンスですか……うむ。良いでしょう』
『校長!』
『彼らはまだ幼い。たった一度のルール違反で退学と言うのはいささか酷な物があります』
『そ、それもまあ、そうなノーネ』
……
…………
………………
そんなわけで、あずさの言葉のお陰で、学園で用意した相手に俺と翔がタッグ決闘を、あずさが個人で決闘をすることになった。それに勝ったら退学は無しになるってわけだ。
「まさか、私のせいでそんなことになっているなんて……」
明日香が俺達を見ながら、悲しそうにそう言った。ちなみに明日香と梓が何事も無いのは優秀なブルー生徒だから、隼人は建物の陰に隠れてて見つからなかったかららしい。
「気にするなよ明日香。俺と翔のタッグなら負けねーよ」
「その自信はどこから来るんスか……」
翔は偉く落ち込んでるなあ。
「大丈夫だって。俺とお前のタッグなら無敵だ。あははははは」
翔の決闘は見たこと無いけど、まあ何とかなるだろう。
「よし! じゃあ早速俺と特訓決闘だ!」
そう言って、翔の手を引いて教室を出ようとした時だった。
「あれ? 梓くんがいない」
あずさがそう言った。そう言えば、たった今まで一緒に話してたのにいなくなってる。
「梓なら、たった今トイレに行くって出ていったわ」
明日香が教えてくれた。
「そっか。トイレか」
『………………………』
『まさか!!』
「わたし達は現在校長室に向かっています!!」
「何言ってんだよあずさ!! 急ぐぞ!!」
そうこうしているうちに校長室に辿り着いたけど……
な、何だこりゃ!? ドアが、真っ二つに斬られてやがる!! こんなことができる奴なんて、一人しかいねえ!!
「校長!!」
呼びながら中にはいると、校長は呆然と椅子に座ってた。その前には、ドアと同じで真っ二つになった机が。
「ああ、君達か……」
あずさがすぐに校長に近づいた。
「先生! ケガ無いですか?」
「ええ、何とか……」
「梓が来たんだろ!? 水瀬の方!!」
「ええ。まさか、彼にあんな一面があったとは、普段の姿からは想像もできませんでした」
「梓はどうした? どこへ行ったんだ!?」
「私から倫理委員会の居場所を聞き出すと、すぐに出ていきました」
「まさか、教えちまったのか!?」
「申し訳無い。嘘を言っても彼には通用せず、御覧の通り机を斬られて脅され、つい本当のことを……」
「それで、場所は!?」
……
…………
………………
視点:倫理委員会委員
カタカタ……
カタカタ……
カタカタ……
キンッ
私が仕事でPCを叩いていた時、静かな音が突然響いた。はて、何かの金属音のようだったが……
「貴様か……」
今度はそんな、暗い少年の声。何事かと見てみると、そこには青い着物を着た、少女のような顔をした少年が、日本刀を片手に私を見ている。
こいつは確か、水瀬梓。噂は聞いている。
「こんな所に何の用だ? ひとまずその物騒な物をしまえ」
そう言ったが、水瀬梓は無視して徐々に近づいてくる。
「おい! 聞こえな、あっ……」
私が言い切る前に、いつの間に抜いたのか、日本刀を私に突きつけた。しかも、喋っている最中の口に、刃の先を挿し入れる形でだ。
「私の友を退学にしようとしている者、それは貴様かと聞いている……」
退学と言うと、遊城十代達のことか?
それを理解したと同時に、こいつの目を見た時、感じた。この男、本気で私を……
「あが、あが……」
返事をしたいのだが、口に刀を入れられていて喋れない。下手をすれば、刀で口を切ってしまう。
「……」
そんな私の姿を見かねて、水瀬梓は日本刀を口から離し、そのまま鞘に納めた。
「……いや、私ではない。もっと上の人間からの命令だ」
「そうか。なら、そいつのもとへ連れて行け……」
「断る。そんなことはできない」
「そうか。ならば、できるようにするまでだ」
そう言って、また刀に手を掛ける。
「私を殺そうとしても無駄だぞ。ここには私以外にも、多くの倫理委員会のメンバーがいる。私がこのボタンを押せばすぐに……」
その時、私は疑問を感じた。そうだ。ここに来るまでにも、多くの倫理委員会メンバーがいたはずだ。なのに、日本刀などという明らかな危険物を持ったこの少年が、なぜここまでやってこれた?
「倫理委員会? そんな者は一人もいなかったぞ。もっとも、何匹もの番犬がうるさく吠えていたから、黙らせたがな……」
その言葉で、私は確信してしまった。
倫理委員会は、目の前に立つたった一人の少年に、壊滅させられたのだと。
「貴様はどうする? 犬共と共に眠るか? それとも永久とわの眠りに着くか?」
その言葉に、私はただ震えていた。
執行部は私も含めて全員、毎日厳しい訓練をこなし、肉体を鍛えている。中には実戦を経験した者も少なくない。それを、たった一人の、私より遥かに
水瀬梓は静かに私の隣に立ち、耳元に口を近づけた。
「上の者とやらの居場所を……刹那だけ待ってやる……」
「言え!!」
「っ!!」
耳元での叫び、怖い……
だが、ここまでのことをされて、私も黙っていられるわけが無い。怒りと使命感が、恐怖を上回った。
「はああああああああああ!!」
大声を上げながら、顔面へ放った右の拳。
ガシッ
不意を付いたパンチだった。速度もタイミングも、完璧だったと自負できる。なのに、水瀬梓はそれを、顔に当たる寸前で受け止めた。
そして、握っている私の拳を、徐々に締め付け……
「ぐ、うぅぅ……」
かなりの握力で握られている。握られただけで、私は痛みにひざを着き、顔を伏せてしまった。
「私に拳を向けられる女は、この世に一人しかいない!!」
最後にそんな言葉を聞こえた……
その直後だった。
「梓くん!!」
女子の声、か? 痛みで上手く聞こえなかったが、その声の直後、急に痛みが引いた。
「何やってるの!?」
今度は完全に痛みが無くなり、私の手が離されたことが分かった。見ると、水瀬梓は入口の方を見ている。そこに立っているのは、退学を言い渡された平家あずさと遊城十代、その他の計五名。
「私は許さない。あずささんを……友たちを傷つける者、悲しませる者、苦しめる者、それら全てを許しはしない!!」
やはり、あいつらのためか。普通ここまでするか……
「だからって、こんな大暴れしちゃダメだよ!! むしろ梓さんが退学になるっスよ!!」
「そうだ!! 一応全員無傷で気絶させただけだったみたいだけど、お前本気で殺す気だったろう!?」
「当たり前だ!! 私は許さない。友を傷つけること、私はそれを最も憎む!! 退学も決まりも興味は無い!!」
「バカ野郎!! いくらお前が許せねえからって、お前のやってることは許される行為じゃねーだろう!!」
「そんなことは百も千も承知だ!! ならば、貴様らは悔しいと思わんのか!? 決まりを破ったことを罰せられるのは良い。こちらも許されない行為をした。その罰は受けて然るもの。だが、その瞬間に存在を全否定され、居場所を奪われ捨てられるのだぞ!! 誰かを傷つけたわけでも、誰かに損害を与えたわけでも無い!! ただ入っただけだ!! たったそれだけの行為で、弁解の余地も、償う暇さえ与えられず、与えられたのは、屈辱と羞恥に彩られた試練のみ!! それを!! 貴様らは黙って受け入れると言うのか!?」
「受け入れるよ!!」
水瀬梓の絶叫の直後、平家あずさが叫んだ。
「私も、十代くんに翔くんだって受け入れてるよ!! だから、これから強くなろうって、君が言った試練を乗り越えようって頑張ってるんだよ!! 決闘に勝てば、退学は無くなる!! そのために頑張れば良いんだよ!!」
「負ければどうなる!?」
今度は水瀬梓が叫ぶ番だった。
「特訓し、力を付け、全力を出す。それで負けたとしても貴様らはそれで満足だろうな!! だがその瞬間、何もできないまま私は全ての絆を奪われるのだ!!」
そう叫ぶと、今度は急に、下を向いた。
「どうやって生きたらいい……どうしたら良かったんだぁあ!?」
水瀬梓は、最後にそう泣き出しそうな声で叫んだ。
「梓くん……」
「梓……」
また二人が声を出した。
二人だけではない。私も、そして、この場にいる全員が同じ思いだろう。
ただ友を傷つけられたことが許せなくて、友がいなくなることも受け入れられず、そのことに怒り、ここまでのことをする。
何と言うべきか、どこまでも、悲しいほどに純粋な男だ。
「梓くん」
そんな優しい声で水瀬梓に話し掛けたのは、平家あずさだった。水瀬梓の手を取り、笑顔を見せている。
「大丈夫だよ。わたし達、絶対に負けないから」
先程まで梓を見ていた顔とは打って変わった、とても優しい笑顔だった。
「約束するよ。わたし達、絶対に勝つよ。誰も、梓くんの前からいなくなったりしないから。ねえ、十代くん、翔くん」
入口にいる、遊城十代と、丸藤翔に話し掛けた。すると二人とも、決意を新たにしたように、笑顔を浮かべた。
「もちろんだぜ! さっきも言っただろう。俺と翔のタッグなら無敵だってさ!」
「……正直、自信なんて無かったし、本当は決闘が怖かった。けど、そんな梓さんにそこまで思ってもらえて、無下にはできないっス。だから、僕も勝つよ」
ここに来て、終始不安げな顔をしていた丸藤翔の顔が一変、決意のこもった顔を浮かばせている。
「だから梓くん、帰ろう」
また笑顔を向けて、優しく話し掛けている。
「……」
水瀬梓は、その笑顔をジッと見ていた。
しばらくそうした後で、私の方を見た。
「……数々のご無礼、申し訳ございませんでした」
それは、直前までの顔とは打って変わった、本当の少女に思える、男の
「あ、いや、幸い死傷者は無さそうだし、まあ、ここは大目に見てやろう////」
そう返事をすると、顔を上げて、また私の顔を見てきた。そして浮かべる、笑顔。
「また改めて、お詫びに参ります」
か、可愛い////
その言葉を最後に、仲間達と共に出ていった。
さて、全員が去った後で、私も部屋を出てみたが……
な、何という!?
少なくとも二十人以上はいるはずの、水瀬梓よりも軽く倍はある体格の男達が、厳しい訓練を共に耐えてきた精鋭達が、一人残らず、気絶させられている。
男の娘であるということからの油断を差し引いても、これは由々しき事態だ!
片手でいなされた私もそうだが、あんな……
たった一人の……
可愛い男の娘に……////
ではなく、これは、許されない!
「ほら、起きろお前達!」
たった一人の男子生徒にこの
しっかり鍛え直さねば!!
お疲れ~。
ちなみに倫理委員会のイメージは大海の勝手なそれだからな。
あれで合ってんのか分かんないし。アニメの記憶も曖昧だし。
まあ楽しんでもらえりゃそれでいいさ。
んじゃ次話まで待っちょれ。