六話やで~。
いや~大変だったよ~。
何が大変だったかは読みゃ分かるんじゃないかな。
あと、一人懐かしい名前が出てくるよ。だ~れじゃ~ろかい。
てなわけで、行ってらっしゃい。
視点:梓
「うぅ……あぁぁああああああああああああああああああああああああああ!!」
「うぅああああああああぁはぁああああああああああああああうぅ……」
ただ、怒りと悲しみと、後悔の念に苛まれ、涙を流しながら、地面を叩くことしかできない。地面に涙が落ちる。赤い……
「梓くん……」
その時、後ろから私を抱き締める、暖かい感触。
「梓くんのせいじゃない……梓くんだけのせいじゃないから……」
その慰みの言葉が、静かに胸に響く……
私は……
……
…………
………………
それは、数日前のこと……
「梓さん! 今日もお邪魔してもよろしいですか?/////」
「私も////」
「俺も////」
「もちろん。構いませんよ」
麗華さんとの一件以来、私がお茶を点てることが他の生徒の皆さんに広まり、それ以来私のお茶を飲みたいと言う方が増えました。なのでよくこうして声を掛けられ、その方々をお部屋にお招きし、簡単なお茶会を催すようことが増えました。
「ちょうど新作のお菓子を作ったところですので、よろしければ味見をして頂けますか?」
「え? 梓さんがお菓子を!?////」
「はい。やはり男子がお菓子作りというのはおかしいでしょうか?」
「いえ! 全然ですわ!!////」
なら良かった。今日もお茶会が決まりましたね。
「梓さん」
突然、この人達とは違う、男子の声が聞こえてきました。
「はい?」
見ると、そこにはブルーの生徒が一人立っていました。オレンジ色の髪に、ケガでもしているのか白の眼帯を右目に着けています。
「ちょっと頼みたいことがあるんだけど、今は無理かな?」
頼みたいこと……
「皆さんごめんなさい。今日の所は、どうか……」
先にお約束をしておいて心苦しいのですが、彼を放っておくわけにもいきません。
「いえ、気にしないで下さいまし」
「お茶会はまたできますから」
そう、気を落としながらも笑顔で言って下さいました。
本当に、ごめんなさい……
彼女達が離れたところで、改めて彼と向かい合います。
「確か、『
「覚えててくれたんだ」
笑顔で返事をして下さいました。彼はブルー生徒の中で、大変明るい方だという評判です。以前誰かから聞いたお話によりますと……
「はっきり言って明る過ぎる。ギラギラしてる。近づいただけで日焼けするぜ」
とのことでした。そんな明るい性格なので、彼のことを慕う友人も多いとか。
「それで、お願いとは?」
聞いてみましたが、何やら言い辛そうにそっぽを向きました。
「ここじゃちょっと……移動しても良い?」
「もちろん」
そんなわけで、私達は移動しました。
「ん? あれは、梓?」
……
…………
………………
さて、誰もいない教室までやってきました。
「それで、お願いとは?」
「実は……」
井守さんは、何やら背中から取り出しました。黒い……鞭でしょうか?
「これで俺を思い切り叩いてくれ!!」
視点:井守
ああ……ようやくこの日が来た。
水瀬梓。
この人に会って以来、俺はずっと思っていた。
この人に、睨まれたい! 罵られたい! 叩かれたい!
と。無論、彼にこんなことを頼んだところで無理であろうことは分かっている。だからせめて、俺のことを、変態だという引いた目で見て貰いたい。それだけでも俺は満足だ。
彼のような純真無垢な人から、穢れたものを見る目で睨まれる。想像しただけで俺は……
アッーーーーー!!
「……えっと……」
さあ引け! そして俺を睨んでくれ!!
「こ、この鞭で、あなたを叩けばよろしいのですか?」
アッー……ん?
「そ、そう……」
「……分かりました。なぜそんなことをしなければならないかは分かりませんが、私にしかできないことだと言うなら、やってみましょう」
まさかの承諾!? まさか、梓さんはこの手の話題に疎いのか?
だとしたら嬉しい誤算だ。睨まれるだけで良かったが、実際に俺を殴ってくれるなんて。
「では、頼む」
俺は梓さんに向けて背中を向け、四つん這いになる。
さあ、頼む!
「では、参ります」
いざ……
「ダメー!!」
急にドアが開いたかと思うと、そんな絶叫がこだました。そして、叫んだ女子と、天上院明日香さん、イエローの三沢大地、レッドの、丸藤翔だったか? の三人だ。
「梓くん!! ダメだよ!!」
「えーっと……」
く、邪魔しやがって。梓さんもなぜ邪魔されたか分かっていないようだし。
くそ! せっかくのチャンスだったのに。
「私はただ、彼に頼まれたことをしようとしただけなのですが……」
「だからそれがダメなんスよ!?」
「あのね、梓……」
「待て天上院君、俺が話す」
三沢が遮ってきた。まあ、女子に説明させるわけにはいかんわな。そして三沢は梓さんに、今から起ころうとしたことを説明し始めた。
……
…………
………………
「つまり、特定の人物に肉体的、精神的に傷つけられることで性的快楽及び性的解放を得る。えすえす、『えすえむぷれい』とはそういう行為だということですか?」
「……まあ、そういうことだな……/////」
『……//////』
梓さんの分かり易い説明に、三沢も説明していて恥ずかしかったんだな。顔が赤い。残りの三人もな。
「そんな……」
梓さんは顔を伏せ、悲しげな声を上げた。
くっ、まあ当初の予定はこれで遂げられたし、ここは睨みで妥協しておくか。
「……井守さん……どうして……」
よっしゃ来い!! 睨んでくれ!!
「どうして自傷行為など!!」
……は?
「なに……?」
「自傷……」
「行為……」
「何で?」
四人が順に言った。順番は省略。
それよりどうして自傷行為に? まあ、自傷と言えば自傷ではあるが。
そんなことを考えている俺の両肩を持ち、梓さんは迫ってきた。
「自らを傷つけ、その痛みによって解放を得ようなど、そんなことで苦しみから脱しようなどとなんとバカげたことを!? それほどまでにあなたを苦しめる物とは何なのですか!? それは痛みによってしか無くすことのできない物なのですか!? それほどまでに、あなたは今苦しんでいるということですか!?」
『……』
涙を浮かべながら聞いてきてる。
つまりこの人は、単なるSMプレイを自傷行為だと勘違いし、俺がそれほどまでに何かしらのことで苦しんでいる。そういう風に解釈したというわけか。
「いや、梓くん、だから……」
またさっきの女子が何か言いかけたが、これは好機だ。
「ああ、そうさ」
何か言われる前に、先手必勝ってな。
「俺は傷つかないといけないんだよ。そうしないといけない。そうしないと、俺はいつまでたっても前に進めないんだ。そしてそれは、優しい君にしか頼めない!!」
梓さんの肩を取り、諭すように話を始める。
「俺の苦しみは、誰に言ったって理解されはしないだろう。だから、本当は嫌だったけど、君に頼むしかなかった。本当なら自分でやるべきことだけど、怖くてできなかった。誰かにやってもらうしかなかった。そして、優しい君なら、きっとやってくれると思ったから。だから、俺は、君に傷つけて欲しいんだ! そうしないとダメなんだよ!!」
「井守さん……そこまでの覚悟を、なぜ……」
「それは言えない。けど、そうしないとダメだから」
「まさか、その右目も……」
「ああ」
ただの物貰いだがな。我ながら俺もよく舌が回るもんだ。お陰でSMを知らない梓さんもすっかり信用してる。
「……分かりました。私にしか頼めないのなら……」
よし!
「いや、ダメだって!!」
またこの女子かよ。
「あずささん、止めないで下さい。これは、私にしかできないことなのですから」
……この女子、梓さんと同じ名前だったんだな。
でもまあ、梓さんは承諾してくれたようだし、結果オーライってな。
「そりゃ君はそれでいいかもしれないけど、わたしだって、梓くんがエ……じ、自傷行為の手伝いをするなんて嫌だよ! 梓くんが誰かを傷つける所なんて見たくないよ! だから、絶対ダメだよ!!」
一瞬SMって言いかけたな。言葉を選んで必死に止めてやがる。
「分かって下さい、あずささん。私には、彼の気持ちが分かります。痛みでしか証明できない物。悲しくとも、確かにあるのです」
え? 分かる? けど、恐らくSMとは関係無いことだろうな。だとしたら一体……
「じゃあ、えっと……い、井守くん!」
「お!?」
いきなり呼ばれて驚いた!
「わ、わたしと決闘して!!」
「は? なぜそうなる?」
「いくら梓くんが承諾してても、わたしは梓くんがそんなことするのは嫌だから、だから、わたしが勝ったら、この話は無しにして!!」
「……いや、梓さんが承諾した時点で俺はそれを受ける必要ねーだろう」
冷静にそう返すと、あずさはハッとした顔になった。
「……確かに、その手もありましたね」
と、そんな時に梓さんが声を出した。
「私も、本当はあなたを傷つけたくない。けど、あなたはそうすることを望んでいる。承諾はしましたが、本当は今も迷っているのです。だから、その答えを誰かに委ねるのも一つの手段かもしれません」
おいおい、面倒なことになってきたなおい。
「……仕方ない」
このままじゃ、結局睨まれることもできないからな。
しゃーねぇ! やってやるか!!
「うし! さっそく決闘場に移動だ!!」
「おおー!!」
あずさも叫んだ。そんな俺達三人を、残った三人はずっとジト目で見ている。
まあ、傍から見ればアホらしいことこの上無い光景だからな。
視点:あずさ
絶対に負けられない! 梓くんは、わたしが守る!!
のは良いんだけど……
「何なのこれ……」
「すまん。全員俺の友人達だ」
何だか申し訳なさそうにしてるけど……
「ヒルトー!! いっけー!!」
「負けるなー!!」
「すごい人気だね」
ちなみに私の方も、いつの間にやら十代くんに隼人くん、ジュンコちゃん、ももえちゃんが揃ってた。
「……さっさと始めるか」
「うん」
『決闘!!』
あずさ
LP:4000
手札:5
場:無し
井守
LP:4000
手札:5
場:無し
「わたしの先行、ドロー!」
あずさ
手札:5→6
あまり展開してもしょうがないし、まずは守りに徹しよう。
「『六武衆の侍従』を守備表示」
『六武衆の侍従』
守備力2000
「カードをセット。ターンエンド」
あずさ
LP:4000
手札:4枚
場 :モンスター
『六武衆の侍従』守備力2000
魔法・罠
セット
けど、こんな時に何だけど、あの人ってそんなに明るいのかな? 話してても普通だったし、噂ほど明るい人には思えないけど……
「
『
うわ!! なに!?
「
『Year!!』
「
『ヒッ(ル)トー!!』
……
……明る~~~~~……
そう言えば元々帰国子女だって誰か言ってたね。
「
井守
手札:5→6
「
「な!! 英語は分かんないけどそれって!!」
「こいつが
「ぬぅ……素直に『天変地異』って言えば良いじゃん……」
そう言いつつデッキを裏返す。
はっきり言ってピンチだ! あのカードを相手にしたことなんて無いよ!!
う~、デッキトップが丸分かりって、何でか妙に恥ずかしい……
「もう一枚だ。『
え? でも『天変地異』の発動下ってことは……
「デッキトップは『
井守
LP:4000→3500
手札:4→5(『Masked Dragon』)
これって、実質ライフ500で毎ターン二枚のドローってこと!?
「このまま『Masked Dragon』を
井守
LP:3500
手札:1枚
場 :モンスター
『Masked Dragon(仮面竜)』Def 1100
魔法・罠
Continuous Spell『Convulsion of Nature(天変地異)』
Continuous Spell『Archfiend's Oath(デーモンの宣告)』
Set
Set
Set
あずさ
LP:4000
手札:4枚
場 :モンスター
『六武衆の侍従』守備力2000
魔法・罠
セット
「もお~!! 素直に日本語で言えば良いじゃん!! カードもわざわざ英語版で揃えちゃって!! 用語とか英語名とか、発音まで調べてルビ振らなきゃいけない作者の身にもなりなよ!!」
「Ha!! そんくらいする覚悟が無くて小説なんか書けるかよ!! 何の苦労もせずに書ける小説なんざ、読む方にも書く方にとっても面白くも何ともねー!! それに海外版も、円高不況のご時世だから国産よりも安く揃えられるしな!! 恨むなら不景気な世を恨みな!!」
ぬぅ~、そんなこと言われたら何も言えない。
この不景気の世の中が憎い!! 日本政府は何やってるの~!!
「あの二人、何の話ししてるんだ?」
「さあ。前半はなぜだか一言も聞き取れなかったけど、今の日本の景気について話してるようね」
「今不景気っスからね……」
「百年に一度の大不況と呼ばれる昨今……」
「総理大臣はコロコロ変わって……」
「挙句震災でダメ押し……」
「私達、将来就職できますでしょうか……」
『はぁ……』
「???」
「わたしのターン! うぅ、デッキトップがまる見えだよ……ドロー!」
あずさ
手札:4→5(『六武衆の結束』)
(これだけでかなりの情報アドバンテージだよ。けどまあ、条件は同じだし、やっていくしか無いね)
「永続魔法『六武衆の結束』を発動! そして『六武衆-ニサシ』を召喚!」
『六武衆-ニサシ』
攻撃力1400
『六武衆の結束』
武士道カウンター:0→1
「場に『六武衆』がいるから、このカードを特殊召喚するよ。『六武衆の師範』を特殊召喚!」
『六武衆の師範』
攻撃力2100
『六武衆の結束』
武士道カウンター:1→2
「『六武衆の結束』を墓地へ送って、カードを二枚ドロー!」
「この場合は一枚ずつドローしてもらう」
どの道全部知られちゃうじゃん!
あずさ
手札:3→5(『六武衆-カモン』、『諸刃の活人剣術』)
あ、でもこの次のドローで紫炎を引ける。
「このままバトル! ニサシで『仮面竜』を攻撃!
ニサシの剣撃。武骨な見た目だけど以外に素早い。
「『Masked Dragon』の効果! こいつが戦闘破壊された時、デッキから攻撃力1500以下の龍を呼び出す!
『Masked Dragon』
Def 1100
「でも、ニサシは場にニサシ以外の六武衆がいる時、二回の攻撃ができる! もう一度『仮面竜』に攻撃! 風刃
「Special Summon the
『Masked Dragon』
Def 1100
「『六武衆の師範』で攻撃! 壮凱の剣勢!」
「
『Twin-Headed Behemoth』
Def 1200
とことん守備を固める気?
「カードを一枚セット、これでターンエンド!」
「エンドフェイズにActivate the
「!!」
「『
「な!?」
「こいつはあんたのFieldにSetされた二枚のカードを
「そんな!!」
(そうか。内容が分からない一ターン目の手札のうち、判明しているのは『六武衆の侍従』、ニサシ、師範、そしてあのセットカード。結束は前のターンのドローフェイズに引いたカード。正体不明の残り二枚両方が罠だとは考え難い。だとすれば、あの伏せカードは十中八九、『諸刃の活人剣術』)
(やっぱり分かるよね~。非常用の活人剣術が封じられた。もう一枚の最初のターンに伏せた『攻撃の無力化』も使えないや……)
(そういや親戚に一人、学生時代にこいつで一度魂を吸われたって男がいたが……まあフィクションだろうな……)
「ちなみに実際の表記なら、Xingのgは余分なんだぜ」
「へぇー。
「ついでにもう一枚だ! 『
うぅ、また永続罠……
あずさ
LP:4000
手札:4枚
場 :モンスター
『六武衆の侍従』守備力2000
『六武衆-ニサシ』攻撃力1400
『六武衆の師範』攻撃力2100
魔法・罠
セット(封印)
セット(封印)
井守
LP:3500
手札:1枚
場 :モンスター
『Twin-Headed Behemoth(ドル・ドラ)』Def 1200
魔法・罠
Continuous Spell『Convulsion of Nature』
Continuous Spell『Arch fiend's Oath』
Continuous Trap『Xing Zhen Hu(心鎮壺)』
Continuous Trap『Solemn Wishes(神の恵み)』
Set
「My Trun、Draw! 『Solemn Wishes』の効果で回復だ」
井守
LP:3500→4000
手札:1→2(『Horn of Heaven』)
「『Archfiend's Oath』の効果でライフを500払い、デッキトップを宣言」
井守
LP:4000→3500
これで毎ターン、ノーコストで二枚ドローじゃん。
「デッキトップは『
井守
手札:2→3(『Dweller in the Depths』)
「そしてそのままNormal Summon」
『Dweller in the Depths』
Atk1500+600
『龍脈に棲む者』って、分かり辛いけどあんな見た目だったんだ……
「こいつは俺のFieldのContinuous Spellの数だけ、攻撃力を300ポイントアップさせる。
「うぅ……」
あずさ
LP:4000→3300
「この瞬間、Activate the
「え、『徴兵令』!?」
「相手のデッキトップを確認、そいつがNormal Summonオーケーのモンスターなら、俺のFieldにSpecial Summonされる。紫炎のおっさんは頂くぜ!!」
な!!
『大将軍 紫炎』
攻撃力2500
「紫炎のおっさんで師範の爺さんをAttackだ!!」
「うわ!!」
あずさ
LP:3300→2900
「くぅ……」
「最後にカードをSet。End of My Turn」
井守
LP:3500
手札:1枚
場 :モンスター
『Twin-Headed Behemoth』Def1200
『Dweller in the Depths』Atk1500+600
『大将軍 紫炎』攻撃力2500
魔法・罠
Continuous Spell『Convulsion of Nature』
Continuous Spell『Archfiend's Oath』
Continuous Trap『Xing Zhen Hu』
Continuous Trap『Solemn Wishes』
Set
あずさ
LP:2900
手札:4枚
場 :モンスター
『六武衆の侍従』守備力2000
魔法・罠
セット(封印)
セット(封印)
うぅ、あの伏せカード、多分あのカードだし、絶対あれ使われちゃうよ……
「何だか凄いっスね。お互いに手札に何のカードがあるかほとんど分かってるから、その上で取るべき行動を考えながら戦ってる」
「だが実際のところ、あのデッキで闘い慣れている井守の方がかなり有利だ。デッキトップを分かっているとはいえ、あそこまでのプレイングは至難の技だ」
「どの道このままではあずさが危ないわね。戦い慣れていない状況なうえ、手札もばれてるから全然自分の決闘ができていない」
「今相手に知られてないカードって何枚だ?」
「お互い手札に一枚ずつ。勝負を分かつとすれば、その一枚が鍵になるでしょう」
「わたしのターン!」
あずさ
手札:4→5(『六武衆の露払い』)
どうせ知られてるんだし、どうにでもなっちゃえ!!
「えーい、ままよ!! 『六武衆-カモン』を召喚!!」
『六武衆-カモン』
守備力1000
「フィールドにカモン以外の六武衆がいる時、相手の場の表側の魔法・罠を破壊できる!」
「……Activate the
やっぱり……
「『Twin-Headed Behemoth』を
ドル・ドラが『昇天の角笛』で綺麗な音色を奏でた直後、カモンと一緒にゆっくり天へと昇っていっちゃった。
「
『ヒッ(ル)トー!!』
みんなで勝利の雄叫びかな。でも、そう簡単にはいかないんだよね。
「わたしは墓地のニサシとカモンを除外!」
「
「『紫炎の老中 エニシ』を特殊召喚!」
『紫炎の老中 エニシ』
攻撃力2200
「そいつは、残り一枚の手札か!!」
「そう。このカードは通常召喚できないけど、墓地の六武衆と名の付くモンスター二体を除外して特殊召喚できる。そして一ターンに一度、フィールド上のモンスター一体を破壊できる。君の場の……紫炎を破壊だよ!」
うぅ、ごめんね紫炎……
「エニシの効果を発動させたターン、エニシは攻撃宣言できない。私は『六武衆の侍従』に、装備魔法『漆黒の名馬』を装備! 守備力200ポイントアップ! 更に侍従が破壊される時、代わりにこのカードが破壊される!」
『六武衆の侍従』
守備力2000+200
「魔法カード『戦士の生還』を発動。墓地の紫炎を手札に戻すよ。ターンエンド」
「ちぃ」
あずさ
LP:2900
手札:2枚
場 :モンスター
『六武衆の侍従』守備力2000+200
『紫炎の老中 エニシ』攻撃力2200
魔法・罠
セット(封印)
セット(封印)
装備魔法『漆黒の名馬』
井守
LP:3500
手札:1枚
場 :モンスター
『Dweller in the Depths』Atk1500+600
魔法・罠
Continuous Spell『Convulsion of Nature』
Continuous Spell『Archfiend's Oath』
Continuous Trap『Xing Zhen Hu』
Continuous Trap『Solemn Wishes』
(よし。私の手札には『六武衆の露払い』がいる。このカードを召喚して、場に六武衆が二体揃ったところで紫炎を特殊召喚して、露払いの効果で侍従を生贄にして『龍脈に棲む者』を破壊すれば、みんなの総攻撃で勝てる。幸い、エニシの攻撃力は『龍脈に棲む者』を超えてる。井守くんのデッキトップは『火竜の火炎弾』。『デーモンの宣告』で引ける二枚目が侍従かエニシを倒せるカードじゃなかったら、わたしの勝ち!!)
「My Turn、Draw!!」
井守
LP:3500→4000
手札:1→2(『Dragon’s Gunfire』)
二枚目は……『タイラント・ドラゴン』!
やった!! 攻撃力は高いけど呼び出す手段が無い!
「さーて、エニシを呼んで、装備カードを使ったのは良かったが、ワンターン遅かったな」
……はい?
……は! まさか、残りの一枚!!
「勝つための準備は全て整ったぜ!!」
「出るぞ! ヒルトの最強カード!」
「ああ、来るぜ!」
「え、なに? なんスかこの盛り上がり?」
「一体何が?」
「……まさか」
「な、なに?」
「ふ……Activate the
「うぅ……」
あずさ
LP:2900→2100
「そして……Are you ready guys!?」
『Year!!』
「Put ya guns on!!」
『Year!!』
「
『ヒッ(ル)トー!!』
「Acrivate!! The Normal Spell!! 『
「やはり!!」
「うそ! まさか、あのカードを!?」
「呼び出すというのか!?」
え!? 梓くんと明日香ちゃんと……み、三沢くんが驚いてる。なに? なんなの!?
「こいつはField及び
「え? でも、えっと、井守くんの墓地のカードって……て、それでどうやって融合召喚させるの!?」
「分からねーか? My graveyardには三体の『Masked Dragon』と『Twin-headed Behemoth』。そして、Fieldには『Dweller in the Depths』が一体。龍の合計は、五体」
「だから……ん?」
その時、私は何か、重大なことを思い出した。
「あれ? ちょっと待って? えっと、ドラゴン族が五体、それで融合……」
……
…………
………………
んぇ!?
「Ha! やっと分かったか?」
思い出した瞬間、わたしの体がガクガクと震え始める。
「逆境が何だ!! 龍は滝を昇る物だ!! Fieldの『Dweller in the Depths』、Graveyardに眠る三体の『Masked Dragon』、『Twin-headed Behemoth』を除外!!」
五体のドラゴンが、現れたでっかい鏡に吸い込まれていく。
そして、その中から、徐々に現れるのは……
「Fusion Summon!! My
『Five-Headed Dragon』
Atk 5000
「でっか……こ、攻撃力5000てあーた……」
「しっかし、英語のカードを使うのは良いんだが、どうにもこいつの英語名だけは気に入らねーな。まあ英語圏じゃ、
まあ、宗教のこととか色々あるもんね……
……そうやってわたしは、この状況から絶賛現実逃避中です……
「さて、楽しかった決闘、終わりにしようぜ」
そして、わたしの方を見る。
「いくぜ!! 『Five-Headed Dragon』、エニシのおっさんにAttack!!」
五つの口にそれぞれ、エネルギーが溜まる。そして、エニシをジッと見てる。そして、井守くんが、手を上げた。
「
「普通にゴッドって言ってるじゃん!! うわぁーーーーーーーー!!」
あずさ
LP:2100→0
「
……
…………
………………
「ごめん。負けちゃったよ」
「良い決闘でした」
「全然だよ。今思えば、ライフを一ポイントだって削れなかったんだから」
「いいえ。手札もデッキもほとんどが筒抜けのあの状態で、よくあれだけ戦えたものです。そこは自信を持つべきですよ」
「そう、かな……」
「ええ。素晴らしかったですよ」
「……うん。えへへ/////」
梓くんに褒められちゃった。それだけで元気が出てきたよ。
「あずさ」
笑ってる時、井守くんの声が聞こえた。梓くんのことを呼んでるのかと思ったけど、
「良い決闘だったぜ。『Five-God Dragon』を使わされたのは久しぶりだ。最高に燃える決闘だった」
「井守くん……(またゴッドって……)」
そして、右手を差し出してきた。わたしもそれを握る。
パチパチパチパチ
パチパチパチパチ
みんなが握手をしてる。わたし達のこと、称えてくれてる。
「よくやったぞー!」
「まさかヒルトに切り札を出させるなんてな!」
「これからも一緒に頑張ろうぜ!」
暖かい言葉を掛けてくれるみんなに、わたしも笑顔を返した。
……
…………
………………
「さて、約束は約束だ」
「やはり、しなければなりませんか?」
「ああ。そういう約束だからな」
……決闘に夢中で忘れてた。
うぅ、結局梓くんのSMプレイを止められなかった。ちなみにわたしの他には、翔くんと明日香ちゃんが並んで見てます。三沢くんは見たくないみたいで、一人帰っちゃった。
「では、いざ……」
そう言って、鞭を振り上げる梓くん。けど、鞭を持つその右手は、異様に震えてる。
「……やはりできない!! こんな、無意味に人を傷つける行為など!!」
そう言って鞭を下ろす梓くん。この前、わたし達のこと斬滅しようとしなかったっけ?
「頑張れ梓さん! 俺を親の仇だと思って、思いっきりやってくれ!!」
「……親の……仇?」
あれ? 梓くんの顔色が変わった。
「そう! 俺を親の仇だと思え!! 俺を罵り、大いに傷つけるんだ!!」
うぅ、言ってること丸っきり変態だよ。
「親の……仇……」
あれ? 梓くんの雰囲気が、段々……きょ……
ガバッ
「え?」
突然、梓くんは井守くんの襟を掴むとそのまま片手で持ち上げて、耳元に顔を近づけた。何か、段々足もとが地面から離れてるんですけど!!
「殺されると……償いに私に殺されると……刹那だけ待ってやる……言え!!」
ひ!! 完全に凶王化してる!! 何で!? まさか本当に親の仇だと思ってるの!?
「はい……俺は……俺はあなたに、殺されます……」
何だか興奮してる暇ないって声出してる!!
梓くんはそれを聞いた直後、また地面に乱暴に投げつけた!!
バッシゥッ!!
「ぐあ!!」
な、なに今の凄い音!? 梓くんが鞭を井守くんの背中に振りおろした瞬間、教室中に大きな音が響いた!?
「にっくき井守を殺す私、私に殺されるにっくき井守……」
バッシゥッ!!
「見ろ!!」
バシバッシゥッ!!
「憎悪が!!」
バシバシバシバッシゥッ!!
「永劫に!!」
バシバシバシバシバシバシバシバッシゥッ!!
「輪廻する!!」
バシバシバシバシバシバシバシバシバシバシバシバシバシバシバシバシバシバシバシバシバシバシバシバシバシバシバシバシバシバシバシバシバシバシバシバシバシバシバシバシバシバシバシバシバシバシバシバシバシバシバシバシバシバシバシバシバシバシバシバシバシバシバシバシバシバシバシバシバシバシバシバシバシバシバシバシバシバシ……
……
…………
………………
視点:梓
それ以来、井守さんは変わってしまった。
「井守さん……」
「ヒッ! お、おはよう、梓さん……」
その表情には、あの頃のような明るさの面影すら見られない。私に脅え、全てに脅え、ただ恐怖し、全てから逃げている。そんな表情を浮かばせるだけ。
「その……」
「あ、じゃあまた、俺は行くから……」
「……」
あの日以来、何度も話し掛けてはすぐに避けられてしまう。しかもそれだけでなく、あれだけ多くの友達に囲まれていたというのに、今ではその友達すら一人残らず彼から離れていったとのこと。
かつての彼の友人に話しを聞いたところ……
「はっきり言って暗過ぎる。ジメジメしてる。近づいただけでカビが生えるぜ」
などと、今までとは真逆の答えが帰ってきました。
「私は……井守さんの御為、願いを叶えたのではなかったのか? ……それとも、ただ傷つける意味を欲して……鞭を振るったのか……」
「うぅ……あぁぁああああああああああああああああああああああああああ!!」
「うぅああああああああぁはぁああああああああああああああうぅ……」
ただ、怒りと悲しみと、後悔の念に苛まれ、涙を流しながら、地面を叩くことしかできない。地面に涙が落ちる。赤い……
「梓くん……」
その時、後ろから私を抱き締める、暖かい感触。
「梓くんのせいじゃない……梓くんだけのせいじゃないから……」
その慰みの言葉が、静かに胸に響く……
私は……
「私が、あんなことをしたせいで……」
「わたしだって、お互い様だよ。わたしが勝ってれば、井守くんはああならなかった。わたしにだって、責任はあるよ」
「しかし……」
「だから、梓くん一人が苦しむことないよ。悪いのは、わたしも一緒だから……」
「……あずささん……」
暖かい……全てを包んでくれるその温もり。
悲しみも後悔も消えずとも、苦しみを和らげてくれるだけの癒しを与えてくれる……
「あずささん……」
私の愛しい人……
いつの間にか、流れていた涙は赤色から、透明色となっていた。
視点:翔
こうして、井守君はしばらく痛みと梓さんの凶王化でのショックで立ち直れなくなり、一気に暗い性格になった。
けど、あれから半月後には段々元に戻っていき、一ヶ月を過ぎた頃には完全に元の井守君に戻った。ただ、その後も梓さんを怖がって、その度に梓さんは落ち込んでいた。
まったく。故意ではないにせよ、結果的に二人とも不幸になっちゃった。他人の趣味をとやかく言うことはできないけど、そういったプレイもほどほどにっていうことなのかもしれないっスね……
お疲れ様です。
……どうよ? 読みやすいか否かで言えばぶっちゃけどうよ?
紫炎の場違い感を出したくて和名は最初の一回しか出してないんだが、ずっとあった方が良かったかしら。
……まあそれはさておき、お話の中で誰が一番悪かったのかな? 大海には正直分からん。
まああれだ。皆さんも趣味の過多は要注意ってことで。
じゃ、七話まで待っててね。