遊戯王GX ~氷結の花~   作:大海

117 / 175
のほほほ~い。
修学旅行の二日目、行くでよ~。
行ってらっしゃい。



第五話 童実野町で

視点:星華

「……」

 現在、私はホテルの廊下を歩いている。

 童実野町でもトップクラスの最高級ホテルだ。オベリスクブルーは、このホテルでそれぞれ個室、ラーイエローは温泉旅館、オシリスレッドは河原でキャンプ、らしい。

 相も変わらずあからさまな格差ではあるが、今更そのことをとやかく言う気は無い。ブルー生徒のほとんどは美白してしまっているしな。

 まあそんなことはどうでもいい。私がそんなホテル内の廊下を歩いていて、目指しているのは……今更言うまでも無いだろう。

 なぜ目指しているか。それは、集合時間にここに着いて、食事をした後のことだ。

 部屋に戻る前、梓に声を掛けられて、こう言われた。

 

「入浴を済ませた後で、私のお部屋まで来て下さいませんか?」

 

 で、言われた通り風呂に入った後で、こうして奴の部屋を目指し歩いている、というわけだ。

 ……それにしても、わざわざ風呂の後で呼び出すとはな。

 まあ、梓としては、一度部屋でのんびりした後でゆっくり来てほしい、ということなのだろうが……

 それにしても、風呂の後、か……

 さっきも言ったが、ここではオベリスクブルーの生徒は全員個室をあてられている。

 なので、私もそうだが、今、梓の部屋には、梓一人しかいない。

 梓しかいない、高級ホテルの個室。そして、風呂の後。

 これが意味する所というと、それは、やはり……

 

 

 

視点:外

 星華は言われた通り、梓の部屋に辿り着いた。

 ドアを二回叩く。中から返事が聞こえた。慣れ親しんだ、艶やかな男子の声だった。

 ドアが開く。すると、やや湿り気を帯びた湯の蒸気の香りが鼻腔をくすぐった。

 ドアを開いたその少年は、白のバスローブに身を包み、やや湿った体から湯気を漂わせ、水気を帯びた長い髪を揺らしながら、笑顔で星華を出迎えた。

 星華の手を引き、部屋に引き入れる。

 それだけでも、星華の心臓は早鐘を打ち、顔は、自身でも真っ赤と分かるほどに上気した。

「何を期待しておられるのですか?」

 言いながら、梓はその笑顔を振り返らせ、星華と目を合わせた。

 その顔が高揚しているように見えるのは、風呂上がりなせいか、それとも……

「けど……もし、期待をしてくれているなら、今夜はぜひ、その期待にお答えしたい」

 そんな柔らかな声を発しながら、星華を引いてやってきたのは、ベッドルーム。

 一人部屋であるためサイズは普通だが、それでも、人二人が並んで寝るには十分な大きさのベッドだった。

 そこに、梓は腰掛けると、星華を見上げた。

 その目は、その表情は、目の前に立つ少女のことを、心の底から求めている。

「星華さん」

「な、なんだ……?」

 そんな顔を見せつつ、梓は、切なげで、そして、愛おしげな声で、言葉を紡いでいく。

 

「……私のことを、もらってくれませんか?」

 

「……え?」

「今日の決闘で、気付きました……私にとっての最愛の女性は、星華さん、あなただった」

「梓……」

「あなたには、今日まで多くのものを頂いてきました。できれば、お返しがしたい。けど、私にできること……私が、あなたに差し出すことができるものなど、せいぜい、この身くらいです……」

 申し訳なさそうに、それでも、僅かな期待を込めた思いを声に出しながら、自らのバスローブの紐をほどく。

「こんな、穢れに穢れてしまった身でも、それでも私は、あなたに全てを捧げたいから。だから……」

 そして、紐を取り去り、胸元を開く。そこから、雪のように白く、雪のような艶めきを見せる、純白の美肌が露わになる。

 いつも見てきたその肌は、女帝の身である星華にとっても驚くほどきめ細かく、艶やかで、そして、艶めかしい。そんな肌に包まれた、美しい肢体。

 そして、今までとの最大の違いは、その全てが星華に向けて、捧げられている、ということ。

 

「……今夜は……朝まで、眠らせないで、ほしい、です……」

「梓……」

「……水瀬梓を……食べて下さい……」

「……」

 

 梓の言葉で、星華の中でかろうじて繋がれていた理性という名の鎖は、完全に砕かれた。

 理性を振り払い、あふれ出た衝動に身を任せ、ベッドの上の梓に覆いかぶさる。

 力では星華に遥かに勝っている梓は、それに抵抗を示すことは無い。

 むしろ、向かってきた星華を快く迎え、抱き締め、自らも、ベッドの上に倒れ込んだ。

 

「星華さん……」

「……」

「……優しくして……」

 

 

(任せろぉ、梓ぁ//// 私も全くの未経験だが、痛くないよう善処しよぉぅ//// あぁ、この場合、初めてで痛い思いをするのは女の私かぁ?//// まぁ、どちらでも良い//// お姉さんに全て任せておけぃ////)

(うっへへへへへへへ//////// うへへへへへうへ////////)

 

 脳内での妄想を爆発させつつ、その末に辿り着く未来に期待を寄せ、それが外見に表れる。

 その結果、

 

(うお! なんだ星華さん、キモ!)

(何か、変な物でも食べたのか……?)

(精力ってやつか……)

(人類の夜明けだわ、これは……)

 

 廊下ですれ違う生徒、一般客。その全員が、顔を赤くし、鼻の下を伸ばし、涎と鼻血を垂れ流し、黒目を上に向け、体全体をウネらせ歩く、星華の姿に、ドン引きしていた。

 

(梓ぁ~あぁ//// 今すぐ行くから待っていろぉ~おおぉ~ほほぉ~//// うっへへへ////)

 

 

 そうこうしているうちに、梓の部屋の前に辿り着いた。

 途中、涎と鼻血が出ていたことに気付き、慌てて拭い取った。そこで、身だしなみを確認し、ついでに、勝負下着で決めていることを確認して、ドアを叩いた。

 中から返事が聞こえた。慣れ親しんだ、艶やかな男子の声だった。

 ドアが開く。すると、やや湿り気を帯びた湯の蒸気の香りが鼻腔をくすぐった。

 ドアを開いたその少年は、青色の浴衣に身を包み、やや湿った体から湯気を漂わせ、水気を帯びた長い髪を揺らしながら、笑顔で星華を出迎えた。

 星華の手を引き、部屋に引き入れる。

 それだけでも、星華の心臓は早鐘を打ち、顔は、自身でも真っ赤と分かるほどに上気した。

「何を期待しておられるのですか?」

 言いながら、梓はその笑顔を振り返らせ、星華と目を合わせた。

 その顔が高揚しているように見えるのは、風呂上がりなせいか、それとも……

「けど……もし、期待をしてくれているなら、今夜はぜひ、その期待にお答えしたい」

 そんな柔らかな声を発しながら、星華を引いてやってきたのは、ベッドルーム。

 一人部屋であるためサイズは普通だが、それでも、人二人が並んで寝るには十分な大きさのベッドだった。

 そこに、梓は腰掛けると、星華を見上げた。

「星華さん」

「な、なんだ……?」

 

「……カードは、持ってきて下さっていますか?」

 

「……え?」

 妄想とは違う言葉が聞こえ、星華は間抜けな声を出してしまう。

 しかし、確かにカードを持ってくるようにと言われていたことを思い出し、すぐに懐から、カードを取り出した。

「見せて下さい」

 すぐに従い、カードを手渡す。

 それを受け取った梓は、一枚一枚、真剣な目付きで確認していく。

 その視線は直前まで見せていた、女のそれではない、決闘者としての鋭さがあった。

「……」

 そんな梓の様子に、星華は妄想とは別の意味で、心奪われていた。

 どんな決闘者であろうと、強者であるほど、カードと相対している瞬間が最も美しい。それを、再認識させられる光景だった。

 そして、そんな姿に見惚れていたところで、

「……ふむ。特に問題は無いようですね。とりあえずは普通のカードのようだ」

 そう、梓は声を出し、再び星華に視線を向けた。

「……座ってはいかがですか?」

「え? ……あ、ああ……」

 慌てて星華は、梓の隣に座る。そんな星華と目を合わせ、言葉を掛けた。

「星華さん」

「なんだ?」

「星華さんは、このカード達と共に闘っていく意志はありますか?」

「それは……」

 言われて、星華は梓の手のカードを見る。

 『A・O・J(アーリー・オブ・ジャスティス)』。『ジェネクス』。そして『A(アーリー)・ジェネクス』。

 突然二人の前に敵として現れ、そして、星華を選んだというそれらのカード達。

 実際、現れた時は、そして今も、どうすべきかは分かっていない。

 だから、改めて言葉で尋ねられて、考える。

 その答えは……

「もちろんだ」

 答えはすぐに……いや、すでに出ていた。

「なぜ私を選んだのかは知らんが、私自身、こいつらには興味がある」

 決闘者である以上、未知のカードがあれば心惹かれ、魅力を感じたカードを使ってみたいと思うのは当然。このカード達を見た時から、その気持ちはあった。

(それに……)

 それに、それ以上に星華が考えているのは……

(ずっと思っていたんだ。私もいい加減に、お前達と同じ土俵に立ちたいとな……)

 『シンクロモンスター』という、この時代には存在しないという力を振う、(あずさ)達。

 カードそのものが力の差を生むとは思わない。だがそれでも、二人にはあって、自分には無いその力が、いつも自分との明確な差を突き付けているように見えていた。

 今の実力で、梓の隣に立つ資格は無い。そう思ってさえいた。

 だから、今より更に強くなれるなら、未知のカードであろうと手を伸ばしたい。

 ただ、愛しい梓のそばにいたいがため、星華は、その力を欲した。

「……分かりました」

 そして、そんな星華を見た梓は、頷きながら、手元のカードを広げていく。

「では、早速デッキを組んでみましょうか?」

「……む? 今からか?」

「ええ。今からです」

 聞きながら、時計を見てみる。時刻はもうすぐ、夜の九時を回ろうとしている。

「幸い、星華さんは元から機械族デッキを使っているので、それらのサポートカードは豊富に揃っておいででしょう? なら、方針さえ決めればデッキはすぐに完成するでしょう」

「それは、まあ……」

「しかし、実際に使いこなせるかは別です。何より、星華さんは、シンクロ召喚に関しては素人ですから」

「素人……まあ、そうだが……」

「なので、私があなたをご指導させていただきます」

 笑顔で問い掛けながら、カードを見ていた。

 それは楽しそうながら、なぜか、狂気を孕んでいるようにも見える。

「……なあ、梓」

「はい?」

 そんな梓を諌めるため、星華は声を掛けた。

「その……教えてくれるのはありがたいが、何も今でなくともよくはないか? 修学旅行から帰った後とかでも……」

「なにをおっしゃる?」

 言葉を返した途端、梓は顔を近づけた。

「デッキの方針を決め、組み込むカードを決め、実際に組んで、デッキを組んだ後にも実際に回して動きを確かめねばなりません。それでカードの要不要を確認しつつ、デッキを仕上げ、何よりシンクロを使いこなさねば話しになりません。そのためには、早く動く必要有り、でしょうに?」

「……お、おう……」

 言っていることは正論ではある。実際、今梓の言ったことは、プロ決闘者でも難しいことなのだから、時間がある時にやるべきをやる、というのは納得できる。

「星華さん」

 そう、納得はした星華に、梓は呼び掛ける。

 そして、満面の笑みを見せた。

 

「……今夜は……朝まで、眠らせませんよ……」

「あ、朝まで……?」

「そう怖がらないで。何も取って食うことはしません」

(むしろ食われたくて来たのに……)

 

 その顔は、確かに満面の笑みだった。それなのに……

(……なぜだ? なぜ、梓の顔が段々、鬼に見えてくるのだ……?)

 

「大丈夫です。星華さん……」

「……」

「優しくしますから……」

「……お、おう……」

 

 この夜、ホテルの清掃係やボーイ、他の宿泊客達は、このホテルのとある一室から、まるで鬼か悪魔でも前にして脅える、少女の呻き声を一晩中聞いたらしいが、それはまた、別の話しである。

 

(それにしても……翔さんに剣山さんは、無事に十代さん達と合流できたでしょうか……)

 

 

 ――同じ頃、河原のレッド寮テントでは……

 

「翔くぅううううううん!! 私の翔くぅううううううううううん!! 翔君は何処へえええああああ!? 隠れとらんと出てきてちょんのまああああああああああ!!」

 

 同じテントにいるはずの翔が姿を消してしまったことで、ももえは正気を失い、方言を狂わせつつ泣き喚いていた。

 

「(ボリボリ)翔……翔……丸藤翔……(ボリボリ)こっちのニンニクはう~まいぞ~……あっちのニンニクはしょ~ぼいぞ~……(ボリボリ)来い……(ボリボリ)来い……(ボリボリ)翔よ来い……(ボリボリ)」

 

 カミューラは正気を失い、何やら自作した歌を不気味に口ずさみながら、ひざを抱えた左手に十字架を握り、右手には木製の杭を持ち、それを楊枝代わりに山盛りの生のニンニクをボリボリ食していた。

 

『翔さ~ん……翔さ~ん……翔さんの翔さんによる翔さんのための翔さ~ん……ちちんぷいぷい……何妙法連……エコエコアザラク……南無退治退避……和を以て尊しと為し……Yes we can.……ハイルヒットラー……エクスペクトパトローナム……日本鬼子……手九魔苦真夜魂……呼刃零手飛美出手邪邪邪邪安……』

 

 カードごと翔の元から離れてしまい、十代に回収されたことで彼らと合流したマナは正気を失い、両手に和紙を飾った杖を持ち、白無垢に着替え、頭に蝋燭二本を巻きつけつつ、諸国の魔法の呪文を翔に向けて発していた。

 

『……』

 そして、そんな三人、ほとんどの者から見て二人の様子を、十代や三沢、キャンピングカーで寝泊まりをするエド、差し入れを持ってきてくれた『武藤(むとう) 双六(すごろく)』、そして、偶然出会って意気投合し、夕飯をご一緒した『岩丸(いわまる)』と『炎丸(ほのおまる)』達は、真顔で眺めていた。

 

 ……

 …………

 ………………

 

 

「さぁ~てと~……」

 修学旅行二日目。

 ホテルを出たあずさは、街の中を歩いていた。

 一日目は、斎王を手伝ったり、エドと一緒に見て回ったりしているうちに時間を潰してしまった。

 元々、特に行きたい場所やしたいことがあったわけでもなかったので構わなかったのだが、一日目が終わるという時になって思い出し、二日目の今は、新たに行きたい場所を目指していた。

「……あ」

 ホテルからその場所へは、そう遠い距離ではない。歩いて二十分ほどで辿り着いた。

 

「……おや!」

 

 そして、その人物も、あずさに気付いたようだった。

 あずさはそんな、目の前に立つ女性に向かって手を振り、走る。

「マーサさーん!」

 満面の笑みで名前を呼びながら、その身に飛び込み、抱き着く。

 女性、マーサはそれを快く受け止め、抱き締めた。

「お久しぶり~」

 いつもの調子で声を上げつつ、顔を向かい合わせる。

 赤紫色の服を着た女性は、抱き着いたあずさが見上げるほどの身長だった。

 髪は長い黒髪を流しているが、全身の褐色の肌と顔立ち、そして名前から、ネグロイドであることが分かる。

 歳の頃は三十台前半。体型はスリムに痩せているが、そんな体型以上に豪快で豪胆な気性が、その凛々しい顔から、そして、全身からにじみ出ている。

 腰に両手を当てつつ大笑いする姿を想像すれば、これ以上様になる女性もそういまい。

 そんなマーサもまた、あずさとの再会を心から喜び、歓迎していた。

「よく来たね、あずさ。相変わらずデカいおっぱいしちゃって。学校はどうしたんだい?」

「修学旅行でこっちに来たんだ~。ゾラさんはお元気ですか?」

「ああ! 元気も元気。証拠に今度、時計職人の若造と結婚するってさ」

「本当!? うわぁ~、学校が忙しいから結婚式には出られそうにないやぁ~……」

「あっはははは! アタシがあんたの分も祝っておくさね」

「おねがいしま~す」

 

 そんなふうに楽しく会話をした後で、あずさは、マーサの働いている幼稚園へ迎えられた。

 本来なら、何人もの子供達の声が聞こえるはずだが、今日は休園日らしく、子供の姿は一人も無い。

 そんな静かな幼稚園の中で、あずさは、そこの責任者を勤めているマーサを手伝った。

 子供達の遊具の手入れや、絵本、玩具等の整理に始まり、食器や道具の整理、清掃、花壇や運動場の草むしり等。

 小学校に入る前の子供達のための施設である以上、あずさにとっては何もかもが小さく、狭い。

 小さな頃はあれだけ大きいと思った施設を周り、手入れしていくと、それらを使う子供達の気持ちになれる気がしてくる。

 この瞬間は、あずさは、生きている今を忘れることができた。

 

「ありがとうね、あずさ」

 全ての作業を終えたところで、マーサはあずさを呼び、テーブルに座らせた。

 テーブルに置かれた冷たい麦茶と甘いクッキーが、あずさの努力を労ってくれた。

「いやぁ、やっぱ、たまにここで働くのは楽しいや」

「そうかいそうかい。ちょっとは気が晴れたみたいで、良かったよ」

「……へ?」

 突然のマーサの言葉に、あずさは聞き返した。

 マーサは、全てを見透かしているという目を向けていた。

「長い付き合いだからね。なんでここに来たかくらい分かるさ。失恋を忘れるにはこき使われるのが一番だって、教えたのは私だよ」

「あ、あはは……」

 ごまかすように苦笑しつつ、麦茶をぐびりと飲む。

 飲み干したところへ、マーサはおかわりを注いだ。

「まあ、無理に聞き出す気は無いからね。でも、相談くらいには乗るから、いつでも遊びにきなよ」

「……うん。ありがとう……」

 

 汗水流して働いて、好きな人との時間を共有する。

 実際、そうすることでいくらか気持ちは楽になった。

 それでも、何も解決することは無く、心の整理さえつくことは無い。

 かと言って、人に相談できるようなことでもなし、相談しようにも、事情は複雑すぎる。

 気晴らしと気休め以上の意味は無いと分かっていながら、それでもあずさは、ここへ来たかった。

 単純に、久しぶりにマーサと会いたかったから。

 そして、そんな物でも縋りたくなるくらいに、あずさの中の切なさは、大きなものになっていた。

(……でも、わたしが今感じてる辛さなんて、君に比べたら、チッポケだよね……)

 意中の男を思い浮かべ、そう言い訳し、心を騙す。

 そうしていなければ落ち着かなくて、思わず誰かに頼りたくなる。

 そして今は、マーサに縋りたい気持ちを必死に抑えつつ、縋ることが許される部分だけ、縋っていた。

「このクッキー美味しいね」

 そう、言葉を発し、再び心を騙した。

 だが、どれだけ心を騙しても、心から消せないものはある。

 もっとも、それを消すことなど、一生掛かっても不可能であることは、あずさは既に、自覚していた。

 

(梓くん……今、何してる……?)

 

『……』

 

 ……

 …………

 ………………

 

「ふぁ……ぁ……」

「大丈夫ですか? 星華さん」

 ところ変わって、童実野町の、とある一角。

 そこで、梓と星華の二人は、いつもと同じように並んで歩いていた。

 眠そうに真っ赤な目を擦りつつ、欠伸をする星華と、まるで平気な顔をしている梓。

「……気にするな。デッキの構築で完徹するなど、決闘者にはよくある話だ……」

 だからこそ、遊ぶ体力が必要な修学旅行中にはしたくなかったな。

 そう思いつつ、声には出さずにいた。

「けど、おかげでデッキは完成しました。シンクロ召喚も物にしたようですし、後は、実戦を重ねるだけです」

「実戦か……それができる相手が、どれだけいるだろうな……」

「……そうですねぇ」

 そんな指摘には、梓としても苦笑を禁じ得ない。

 シンクロもチューナーも存在しない現在で、シンクロ召喚を使うのは立派な反則技だ。

 (あずさ)らはそれらを使わずとも十分に勝てる実力を持っているし、そうでなくとも、よほどのことが無い限り使用は控えている。

 アカデミアでは既に公となっているものの、幸い、外部に漏れた様子は無い。

 だからこそ、滅多なことでは使えない。ゆえに、実戦経験を積むのは無理がある。

「まあ、私もおりますし、そのことは追々考えましょう……と、着きましたよ」

 会話をしているうち、梓は足を止め、正面を指差した。

 一日目で主立った名所を巡った後で、二日目に二人が目指し、そして辿り着いた場所。

「あれが、『海馬ランド』です」

 

 

「『海馬ランド』は、『海馬コーポレーション』社長『海馬瀬人』が作り出した一大テーマパークだ。最新の技術の粋が集まった夢の遊園地だぞ。社長の方針によって、恵まれない子供達は全員、恵まれない分だけ無料で遊べちまうんだ」

 

「……そんなことは誰でも知っている。いきなりどうした、天上院君……?」

 

 

「だが、今は閉園しているようだぞ?」

 人の姿どころか、人の気配さえしない遊園地を見ながら、星華は残念そうに言った。

 しかし梓は、笑っていた。

「では、こっそり入ってしまいましょう」

「……なに?」

 大よそ梓らしくない、悪戯っぽい発言に、つい聞き返す。

 だが聞き返した直後、星華の身は抱き上げられていた。

「お、おい待て梓、こっそり入るって、監視カメラや感知システムやらのセキュリティがあるだろう。警報が鳴って通報されるぞ」

「そうですね。ですから堂々と入ります」

「は? 堂々と?」

 再び聞き返した時、梓は、階段を上っていた。

 はて、こんな所に階段などあったろうか?

 そう思いながら、梓の足もとを見てみる。

「……え? 階段?」

 梓は確かに、階段を上っていた。透明だが目に見える、ガラスのような長方形の立体が階段状に並び、梓の足を支えていた。

「階段ではなく、結界ですがね……このまま堂々と、上から入ってしまいましょう」

 優しい声でそう話しかけながら、一歩一歩、上へと上っていく。

 当たり前だが一歩進むごとに高度は増していき、地上からは離れていく。

 手摺りなど無く、足場の結界はガラスのように透けているため、下を向くと地上までの高さが丸見えになる。普通なら、それだけで大抵の人間は恐怖するだろう。

 だが、今の星華の場合、

(あ……なにこれ、ヤバい……すごい、癖になりそう……////)

 腹の上に置いておいた両手を、梓の首に絡め、力を抜き、その身を委ねていた。

(……まさか私が、お姫様抱っこされる日が来るとは……)

 アカデミアに入学した日から今日まで、女帝として君臨する毎日を送ってきた。

 それは、誰にも美しさを認められる日々ではあったが、同時にその長身に加え、高尚かつ男勝りな性格のおかげで、女の子ではなく、男以上の男前として扱われてきた。

 そんな性格だから、お姫様抱っこなどされないだろうし、そもそも似合わないだろうな。そんなふうに、自他共に声には出さなくとも潜在的に感じていた。

 それを梓は、そんなことを、そもそも考えるよりも完全に無意識でやっているだろう。

 似合う似合わないではなく、必要があるからやっている。それ以上でも以下でもあるまい。星華もそのくらいのことは、長い付き合いで分かっている。

 分かっていても、一生無いと思っていたその心地良さは、星華の想像の遥か上だった。

(梓の顔が近い……下からのアングルが溜まらん……梓の腕、細い割に力強くて……)

(やべぇ//// 何これぇ//// めちゃめちゃ気持ち良ぇ……////)

 女帝キャラと口調を、完全に崩壊させるほどの威力だった。

 

 そして、そんな星華を抱っこしている、梓はと言うと……

(星華さん、また体重増えましたか?)

 そんな、本人が聞けば打ち合い……否、撃ち合いは必至なことを思考していた。

 

 

 

視点:星華

 

 うっひょぉほほほぉはぁ~////

 

「……さて、着きましたよ」

 

 ほぉぁ~ははははぁ……////

 

「星華さん?」

 

「ふぁっ!」

 力が完全に抜けきっていた、そんな私の耳に、そんな声が届いた。

「大丈夫ですか? 徹夜が響いているなら戻りますが……」

「いや、大丈夫、大丈夫……」

 返事をしながら、周囲を見ると、確かに、私達は既に海馬ランドの中にいた。

 中心広場のような場所だろう。

 周囲を見渡せば、噴水やアトラクション、施設等を見渡すことができる。

 本来なら大勢の人間でごった返しているであろうその空間も、無人であることでその本来の広さがうかがえる。

 人が集まるための広さを備えたその場所の、無人と言う姿には一種の哀愁が漂う。

 そんな場所で、抱っこされた状態で二人きりで立っていると、まるで自分達が最後の人類なのでは……そんな錯覚をするほどだ。

「……降りないのですか?」

 今更ながら、梓からそんな質問が聞こえてきた。

 まあ、普通なら降りるべき場面なのだろうが……

「その……良ければ、もう少しだけ……」

 ああ……自分で言っていて恥ずかしいが、この心地良さは、今手放すには惜し過ぎる……

 

「残念ですがそれは不可能です」

 

 と、突然梓の声色が変わった。と同時に、抱っこされていたこの身が、上に放り投げられて……

「……て、おいっ!」

 そんなに抱っこが嫌だったのか!?

 と、考えた直後だった。

 下の方から、サラサラと草の揺れる音が聞こえた。

 と同時に、バサリ、と、ひときわ大きな音が聞こえ、そちらを見ると、草の緑色から、巨大な何かが飛び出してきたのが見えた。

「なんだ……!」

 

 ガキッ……!

 ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ……

 

 そんな音が聞こえた瞬間、宙に浮いていた私の身が、突然何かの上に乗った。

 何かと思えば、これはさっきまで梓が昇っていた、透明な結界だ。

 そんな結界の上で四つん這いになりながら、異様な金属音が響く下を覗く。

「なんだ……?」

 

「どちら様でしょう?」

「……ブシュルルル~……よく受け止めたなぁ……」

 

 梓と対峙しているのは、一言で言えば、異様な巨漢だった。

 梓の倍近く、私よりも遥かに長身、かつ、巨大な横幅を持ったその男は、顔は目と口の部分を開けた紙袋で隠している。服装はボロボロのジャージを着ているが、今にも破れそうなほどにぴっちりとしていて、まくった袖からは丸太のような二の上を覗かせている。

 そして、そんな野太く硬い、傷と火傷にまみれた両腕には、大きいのに腕のせいで小さく見える、巨大なチェーンソーが握られている。

 そんなチェーンソーの一撃を、梓は、愛用する光の刀で受け止めていた。

 

「姿は隠していても、有り余るほどの殺気ですぐに気付きましたよ」

「グヘヘヘ……面白れぇ……」

 

 二人で何か会話をした直後、巨漢はその太い腕を振るった。梓はその勢いで、かなり後方まで吹っ飛ばされた。

 あの男、平家あずさには遠く及ばないまでも、見た目に違わぬ怪力のようだな。

 

「それで? どちら様かと聞いたのですか?」

「グヘヘヘ……」

 

 梓の質問に対して、男は不気味に笑いながら語り始めた。

 

「グヘヘヘ……名前なんかとっくに忘れちまったよ。まあ童実野町じゃあ、『切り刻む男(チョップマン)』と呼ばれてた時期もあったがよぉ~……」

 

「チョップマンだと!?」

 その名前を聞いて、思わず結界から飛び降りた。

「お知り合いですか? 星華さん」

「私にこんな知り合いはいない。だが、チョップマンという名前は知っている」

 聞いてくる梓に答えるため、記憶をまさぐった。

「今から、十年ほど昔か……童実野町の湖にあるキャンプ場で起きた事件だ。当時、キャンプ場を訪れていたボーイスカウトの少年十人が、一晩のうちに一人残らず惨殺されていた。聞けば、その遺体は全員、どんな名医にも遺体の復元が不可能なほどバラバラに切り刻まれていたらしい」

「バラバラに切り刻まれて……私ではありませんよ!」

「分かっている! お前も私も今よりずっとチビだった時の話しだ!」

 ……と言いつつ、梓なら犯人だと言われても納得できる、と感じたのは内緒だ……

「まあそんな事件が起きて、世間はその犯人を『切り刻む男』……『チョップマン』と呼び恐れた。その犯人は未だに捕まっておらず、十年経った今でも、物好きの間で語り継がれているが……まさか、こいつがな……」

 

「グヘヘヘ……」

 

 男は、相変わらず不気味な笑い声を上げていた。

「グヘヘヘ……教えてやるよぉ。俺はなぁ、その昔、海馬コーポレーションの社員だったんだぜぇ……」

「嘘おっしゃい」

 梓は冷たくそう返したが、男はなお更笑い声を上げる。

「まあ、信じなくても良いがなぁ……残酷な心を持つ者は有能な人材になるなんて言われてよぉ、そんな社長が言う通りに、真面目に働いてたんだぜぇ……」

「ほぉ、それはすごい……」

 梓はまるで相手にしていない。そんな梓に向かって、男は勝手に続きを語った。

「なのによぉ……俺は真面目に働いてただけなのによぉ……見ろよ、この腕! この火傷ぉ!!」

 そう言いながら、男が上げた二の腕には……さっきから見えてはいたが、醜い火傷が刻まれている。傷の様子からして、おそらく、隠している顔も似たようなことになっているのだろうな。

「俺がこうなっちまったのもよぉ……全部この会社のせいなんだ……おまけに俺をこんな体にしておいて、なんの保証も労災も無しに突然解雇だぁ……だから入院してる間によぉ、決めてたんだ。絶対にこの会社に仕返ししてやるってよぉ……あの社長が作った遊園地でよぉ、何人も子供を殺せばよぉ、会社の評判はがた落ちになるだろうなぁ! それに俺も、久しぶりに人間を切り刻めるしなぁ!!」

「……安直な思考ですね……」

 まったくだ。本人に復讐できないものだから、無関係の人間、それも力の無い子供を標的にするなど、弱者以下のクズの発想だ。

「だから今日を実行日に決めてたのに、あいにくの休みでよぉ……大勢殺さねぇと意味無ぇから帰ろうかとも思ったが、人間が二人もいりゃあ我慢できねぇよぉ……」

 結局はただの殺人癖か。そんな男は、チェーンソーを梓に向けた。

「お前達、切り刻みてぇ~……」

「お断りします。貴方ごときに斬られる私ではありません」

 そう言いつつ、鞘に納まった刀を左手に、男を見据えていた。

「……確かに、こいつぁ……」

 梓から視線を外して、両手に持つチェーンソーを見た。

 私もそれで初めて気付いたが……ソーにいくつも着いているはずの小さな刃が全て、ボロボロに砕けてしまっている。

「さっき見えたが、こんなにボロボロにしておいて、刀の方は折れてねえどころか刃こぼれ一つ無ぇ……相当な業物(わざもの)だな、そりゃぁ……」

 男はそう言うと、壊れたチェーンソーを足もとに捨てた。そして、背中に背負っていた、巨大な鉈を取り出した。

「俺の人間を切り刻むキャリアはよぉ、剣道から始まったんだよぉ……お前を切り刻んで、その刀もらうぜぇ……」

「……欲しいなら、奪ってごらんなさい……」

 鉈を両手に持ち、正眼の構えを作る男と、左手の刀をかざしてみせる梓。

 二人が向かい合い、お互いの動きを見ている。

 ……第三者の私の目から見れば、男は隙だらけだ。

 私と男の距離は十メートルほど。外しようがない距離だ。

 梓には悪い気がするが、この男は明らかに危険だ。勝負にこだわることなく、さっさと終わらすべき……

 

 ブンッ

 

 私が銃を抜こうと思ったその時、男は両手を振り、鉈を梓に向けて投げつけた。

 そして……

「……え?」

 私が梓を見ている間に、男は、私に向かって走っていた。

 

「バァカがぁあああああああ!! 弱え方から切り刻むのが良いに決まってるだろうがあああああああああ!!」

 

 その両手には、いつの間にやら巨大な斧が。

 この男、鈍重に見えて、動きが素早い。

 いかん、銃が、間に合わん……

 

 ガッッ

 

「な、なにぃ……!」

 と、私が命を諦めたその瞬間、既に、梓が目の前にいた。

 男の振り下ろした巨大な斧の、先端部分を、左手の刀の柄で受け止めている。

「本当に分かり易い……お見通しです」

 言い放つと同時に、刀を押し、斧を押し返す。そして……

 

 バシッ!

 

「がは……!」

 それは正に、目にも止まらぬ速さだった。

 刀が納まったままの鞘で叩く。まるで鞭のような音を響かせたその威力で、男の体は大きくのけ反った。

 

 バシバシバシバシバシッ!

 バシバシバシバシバシッ!

 

「ぐお! がっ! ごああああああああ!!」

 

 叩かれた部分の服は全て破れ、その下には、真っ赤な叩かれ痕がびっしりと刻まれている。

 時間にして三秒以内。その間に、二十以上の音を響かせた。

「あなたごとき、斬る価値も無い……」

 そして、何度か叩いた後で、梓は私の方へ歩いてきた。

「さあ、行きましょう星華さん」

「……え?」

 思わず聞き返してしまった。かなりの威力があったとは言え、チョップマンはまだピンピンしているというのに……

 

「逃がすわけ無えだろうがあああああああ!!」

 

 やはり! チョップマンは再び斧を振り上げ、私達に向かってくる……

 はずだったろう。

 

「……あ、あれ?」

 チョップマンは、そう間抜けな声を出した。

 斧を振り上げ、前へ足を踏みしめた、そんな体勢を作っておきながら、その場から全く動いていない。

「な、なんだ……体が、動かない……」

「よく見てごらんなさい」

 梓のそんな指摘を受け、男は、視線を下に向けた。すると、

「な、なあああああああああ!?」

 私も見ると、納得できた。

「凍って……俺の、俺の体が、凍って……」

「刀に冷気を込めて叩きました。直に全身、氷漬けになりますよ」

「なあああああああああんだとおおおおおおおお!?」

「ご安心なさい。百年もすれば氷は融けます」

「百年てお前……」

「それに、凍っている間も、思考は眠ることなくそのままですから、冷たく凍った体で、存分にこの会社のことを怨んでいなさいな……もっとも、百年経つ前に、誰かに触れられて倒れたり、その衝撃で砕けたりするかもしれませんがねぇ」

 さり気なく怖ろしい言葉を残して、梓は、私の手を引いて、歩きだした。

 

(ふざけんな……)

(会社に全身焼かれた後は、ガキに全身氷漬けだと……)

(こんな……こんなぁああああああああ……)

 

 ――うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ……

 

 ド オ ー ン

 

 

 

視点:外

 

「チョップマンは、2度と動くことはなかった……意識以外を氷漬けにされ、100年間海馬ランドにたたずむのだ。そして、死にたいと思っても死ねないので――そのうちチョッピーは、考えるのをやめた」

 

「天上院君、いきなり何を言っている?」

 

 

「さて、行きましょうか」

 チョッピーを氷漬けにした後で、梓は、星華にそう声を掛けた。

「行くって、どこにだ?」

「先程、男を叩いていた時、チラリとですが、十代さんとエドさんの姿が見えました」

「なに?」

「何事か分かりませんが、酷く慌てている様子でした。行ってみましょう」

「あ、ああ……」

 直前まで、凶悪犯と対峙していたとは思えぬほど冷静に、二人は歩きだした。

 

「ここ、でしょうか……」

 梓が見たと言う、二人の走っていった方向へ進み、辿り着いたのは、固く閉ざされた、武骨なシャッターが閉められた施設だった。

「……星華さん、下がっていて下さい」

 言いながら刀を取り出し、シャッターを斬り刻もうと構えを取る。

 しかし、

「待て、梓」

 それを、星華が制止し、前に出た。

「私に任せろ」

「星華さんに?」

「何でも壊せばいいと言うものでもない。状況に合わせ、時にはスマートに行くべきだ」

「すま……ほ? すまほ?」

「『スマート』だ。なんだ『すまほ』とは? そんな言葉は無い」

「……いつの日か、誕生する言葉かもしれませんね。そう遠くない未来に……」

 などと、余計な会話をしている間に、星華はノートパソコンを取り出し、そのアダプターをドアに繋いだ。

「ふむ……さすがは海馬コーポレーションのセキュリティシステム。中々厄介だが、私の手に掛かれば……よし」

 その声と同時に、シャッターから電子音が響く。同時に、閉じていたシャッターは上へ開いていく。

「すごーい! 私にはとてもできません!」

「ふふん……もっと褒めてくれてもいいぞ」

 ノートパソコンをしまいつつ、視線を梓から、シャッターの向こうへ移す。

「よし、行くか」

「はい」

 中に何があるかは知らないが、遊園地にそんなおかしなものは置いていないだろう。

 そう気軽に思いながら、奥へと入っていく……

 

「な、なんだ!?」

「うわあ!」

「これは……あ、梓! う、うおお!?」

 

「星華さん!」

 

「梓ああああああああああああああ!!」

 

 

 

 




お疲れ~。

さて、二人に何があったのか。
どんなことになることか。
その答えは、次話まで待ってて。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。