今度はクリスマスらしく書けたかなぁ。
まあそれは読んで判断しとくれや。
んじゃ、いってらっしゃい。
視点:梓
梓さんと、お互いという存在について分かり合った後で、私達は、私の部屋まで来ました。私や、あずささんの時のように、途中で妨害されることはありませんでした。おそらくあずささんを決闘で足止めしている間に私を連れ出す、そんな陳腐な思惑だったのでしょうよ。
そう考えれば、決闘で彼女達を追い返したあずささんに対し、脅して追い返した私はいかがかとは思いますが……
それでも今重要なのは、昨日望んだ通り、あずささんと二人きり、ということです。
「お~、すごぉ~い……」
私が作れる限りの料理を見て、あずささんは、感嘆の声を上げて下さった。
「やっぱすごいなぁ。これだけの料理を、たった一人で作っちゃうんだからさぁ」
「そんな……あずささんも、やろうと思えばできますよ」
「へぇ~、こんなの作れるようになるのに、何年修行しなきゃいけないんだろう……」
「私は……修行、というか、習ったのは一年ほどで、あとは、ひたすら経験を積んでいった感じですね。どうせ、私の作る料理など、私以外に食べる人はいませんでしたし。アカデミアに来る少し前には、作る必要自体なくなりましたし」
「……」
あら? いつもの調子で言っただけなのに、なぜか顔色が優れませんね。
「……まあそれはいいや。じゃあ、わたしからは、はいこれ」
と、言いつつ、荷物の中身を取り出しました。そこから出てきたのは、
「おぉ……」
昨日言っていた通り、一般的なイメージ通りの、フライドチキンと、苺を使ったクリスマスケーキです。
「そういえば梓くんて、今までクリスマスは何してたの?」
「それは……」
この際、白状すべきですね。
「少なくとも水瀬家には、クリスマスを祝う、という習慣は無かったものですから。今のように、誰かにお招きをいただいた、という経験もありませんし、テレビ番組などでどういうものである、ということを知っていた、という程度でしかありません」
更に言えば、中学時代でも、クリスマスに学校やクラス内で何かしらの催しがある場合は、私だけは省く、ということが常でした。まあ、仮に何かしらに招かれたところで、水瀬家の人間は間違いなく許さなかったでしょうが。クリスマスがどうこうではなく、私が何か楽しいことをすること自体、絶対に許さないという人達でしたので。
「じゃあ、これが梓くんにとってのクリスマス初体験だね」
「そう、なりますか……」
「……けど、それなら、ブルー寮のパーティの方がよかったんじゃない?」
あずささんはそう言ってくれておりますが、それは逆です。
「いいえ。確かにきちんとしたパーティも良いかもしれませんが、私としては、あずささんとご一緒できる時間こそが、何物にも勝るクリスマスプレゼントだと考えております」
「そ、そっか……////」
少々大げさ過ぎましたか。しかし、それでもこれが、私の正直な気持ちですから。
重ねて白状しますが、クリスマス、という行事自体、私はそれほど特別なものとは思っていない。ただ、あずささんと一緒にいられる、そのための口実が欲しかっただけです。
「……じゃ、じゃあ、せっかくだし、二人じゃあんまり盛り上がらないかもだけど、せっかくだからお料理食べよ」
「はい」
「じゃ、じゃあ、取り敢えず、気分だけでもってことで、これ……」
「これは?」
「クラッカー。この紐を引っ張って、お祝いの音を鳴らすんだよ」
「ほほぉ……」
「ああ! 料理に向けないで……」
パン!
「おお! ……ん?」
「あっちゃあ……料理に、クラッカーの中身が……」
「中身が飛び出すのですか……すみません……」
「ううん。リボンとか紙吹雪は避けて食べよう」
という具合に、クラッカーを鳴らしたところで、二人だけのパーティが始まりました。
もちろん、最初にあずささんの言った通り、二人だけなので、それほど盛り上がるようなことはしません。料理を食べながら、普通にいつもしているようなお話しを楽しむ、ということくらいです。
人によっては、そんなことの何が楽しいのかと、疑問に思う光景かもしれない。ですが、それでも私は、とても楽しかった。
大切な、心から愛する人と、二人で用意したお料理を食べながら、たくさんお話しをする。あずささんはとても楽しい人で、お話ししていて退屈はしない。あずささんも、私の話すことが可笑しいと笑ってくれる。そして、その笑った顔が、とにかく眩しくて。
正直、今でも時々信じられなくなる。これほど素晴らしい女性を、私が独占してしまってもいいものかと。長年
だけど、そんなことを言えば、あずささんは怒ってしまう。怒った顔も大変可愛らしいけれど、そんな私に対して怒って下さるほど、彼女も私を愛してくれている。
もしかしたら、私は彼女に選ばれた人間として、一生、自信を持つことはできないかもしれない。ですが、彼女が受け入れてくれる限り、私は、彼女と共に有り続けます……
「あ、そうだ!」
料理が無くなった頃、あずささんが、そう声を出しました。
「どうしました?」
「梓くん、これから外行こうよ」
「これからですか?」
今はもう、夜も更けた頃ですが……
「そ。これから。今からわたし達で、決闘アカデミアにクリスマスプレゼントしよう」
「はぁ……アカデミアに?」
「そう! わたし達にしかできない、特別なプレゼントをさ!」
そう、叫ぶほどに声を上げたあずささんの顔は、一つの思いつきに希望を見出す、子供の顔そのままでした。
……
…………
………………
視点:外
その頃、レッド寮の食堂では……
「さあ、みんな一斉に呼ぶわよー! せーのっ!」
『ショウ子ちゃーーーーーーーーーーーん!』
「はーい」
レッド寮生の歓声の下、ブルー寮の時と同じく、ミニスカサンタの姿をしたショウ子ちゃんが現れた。
『うおおおおおおおおおおおおお!! ショウ子ちゃああああああああん!!』
それは、かつての学園祭に現れたエクスと同じくらいの、いや、もしかしたらそれ以上の歓声を、ブルー寮に、そして、このレッド寮に生んだ。
ショウ子ちゃんの輝く笑顔に、男子生徒達は悶え癒され、透き通るほどの可愛らしい声に、その身を震わせ、体温を上昇させる。彼らにとって、ショウ子ちゃんという存在が、正しくアカデミアの天使と受け入れられた瞬間だった。
だが、そんなアカデミアの天使の存在を、受け入れることができない人間が、約一名……
(なんでいつも顔を合わせてるのに、誰も気付かないの……? 僕は丸藤翔だよ! 元レッド寮のドロップアウトボーイの丸藤翔なんだよー!!)
誰あろう、ショウ子ちゃん自身は、天使の笑顔とは裏腹に、そんな光景と、自身の痴態から、内心では絶叫しながら、一時の破滅願望に囚われてしまっていた……
そして、そんなショウ子ちゃんの姿を、同じく食堂へ来ていた十代、万丈目らは、遠巻きに見守っていた。
「おおー、やっぱ翔のやつ、めちゃめちゃ可愛いぜ」
「うむ……おまけにノリノリだ。袋から取り出したブロマイドを満面の笑みで配っている」
「う~ん……可愛いとは思うけど、やっぱ複雑ザウルス」
「ああ。正体を知っている身としては、どうしてもな……」
(……あ、三沢君、いたの?)
(ずっといた!)
声を潜める翔と三沢のやり取りを見ながら、一人、その光景に笑顔を浮かべぬ者もいた。
「……ねえ、十代?」
「なんだ明日香?」
「気になってたんだけど……十代って、ショウ子ちゃんみたいな子がタイプなの?」
「タイプ? 何のタイプだ?」
「それは、だから、何ていうか、その……」
と、明日香は十代からの言葉に、言葉の意味をどう伝えるべきか、考える。そして、上手く言葉が見つからず、テーブルに置かれた瓶を一口。
「酒! 飲まずにはいられないっ!」
「それジュースな」
と、アカデミアの天使、ショウ子ちゃんの笑顔による癒しに、レッド寮が包まれている中で、彼らの宴は続いた。
……
…………
………………
いやぁ~、明日香に翔も大変だねこりゃ……
「あ……」
「あ……」
あん?
「外……」
「よりによって、なぜこんなところに……」
あらお二人さん。奇遇ね。
月が高く上った頃、二人の
いつの間にレッド寮を抜け出したの? 俺が来た時にはおらなんだけど?
「あなたの知らない間にですよ」
あーそうなの。ほんで今はこの上に用があるってわけ。
「……ていうか、どうせ全部分かってるんだから、いちいち言わなくてもいいでしょ」
なんのこと?
「……」
まあ、何でもいいけれど。
しかし……やっぱりここは、お約束ということで二人の邪魔するべきかな……
「今までも散々わたし達のこと引っ掻き回してきたのに、ここでも邪魔する気?」
だってー、決闘が全くないのもまずい気がするしー。第一、俺だって見てるばっかで退屈だしー。
「はぁー……」
「はぁー……」
へぇ~えぇ~ぁ(※欠伸)
まあ別に無理にとは言わないけど。決闘無しでも上手いことまとめることくらいできるし。
「そりゃあそうだよね。この先でわたし達が何するか、あんたは知ってるんでしょう?」
知ってるというか決めてあるというか……
まあいずれにせよ、ここで決闘が一つも無いままそうさせちゃ、盛り上がりに欠けるとは思ってるさね。
「……じゃあいいよ。わたしが行く」
「あずささんが?」
「うん。わたしが行く」
わー。あずさちゃんだー。
「こないだは敗けたけど、今回は勝たせてもらうからね」
勝てるかなー?
「あずささんが、敗けたのですか?」
「う、うん……」
つっても、まだ『真六武衆』を手に入れて無かった頃だけどね。
「……時間が惜しいからね。速攻で終わらせてあげるよ」
と、気合いを入れながら、両手に闇の手甲を出現させる。そして、それを目の前に重ねた時、闇は一つとなり、やがて、左手に装着された決闘ディスクと変わった。
……速攻ねえ。まああずさちゃんならできるろうね。
んじゃ、俺も速攻目指すかぁ~ねぇ。
「さあ、準備はいい?」
オッケーよ。
では……
戦いの殿堂に集いし決闘者達が!
「……え? なに? 急に叫んで、どうかしたの?」
……いや、なんでもない。んじゃ始めよう。すぐ始めよう。
「う、うん……」
『決闘!!』
外
LP:4000
手札:5枚
場 :無し
あずさ
LP:4000
手札:5枚
場 :無し
さぁて、今回も先行は俺だし、まずはちゃちゃっと下準備といくかね。ドローフェイズ、スタンバイフェイズは何もせずメインフェイズ、俺は手札からま……
「ちょ! カードドローは!?」
カードドロー?
……ああ、いけねいけね。ドローフェイズでドロー。
外
手札:5→6
「大丈夫ですか? 決闘の基本であるドローも忘れるだなんて……」
なはははは、色々あんだよ。色々……
では改めて、魔法カード『炎熱伝導場』を発動。デッキから、『ラヴァル』と名の付くモンスター二体を墓地へ送る。俺はデッキから、『ラヴァル炎火山の侍女』、『ラヴァル炎湖畔の淑女』を墓地へ送る。
この時、『ラヴァル炎火山の侍女』の効果発動。墓地に侍女以外のラヴァルが存在する時にこのカードが墓地へ送られた時、デッキからラヴァルと名の付くモンスターを墓地へ送る。
俺はこの効果により、二枚目の『ラヴァル炎火山の侍女』を墓地へ。でもって二枚目も効果発動。デッキから三枚目の侍女を墓地へ。更に更にぃ、三枚目の侍女の効果により、デッキから『ラヴァルのマグマ砲兵』を墓地へ。
「うぅ、墓地にモンスターが五体も……」
モンスターをセット。カードを二枚セット。これでエンド。
外
LP:4000
手札:2枚
場 :モンスター
セット
魔法・罠
セット
セット
「いきなり墓地にあれだけモンスターを送るなんて、絶対に
あずさ
手札:5→6
「永続魔法発動『六武の門』、『六武衆の結束』、『紫炎の道場』! そして、相手の場にモンスターが存在する時、手札の『六武衆のご隠居』を特殊召喚」
『六武衆のご隠居』
レベル3
守備力0
『六武の門』
武士道カウンター:0→2
『六武衆の結束』
武士道カウンター:0→1
『紫炎の道場』
武士道カウンター:0→1
「更に速攻魔法発動『六武衆の荒行』! デッキからご隠居と同じ攻撃力を持つ、チューナーモンスター『六武衆の影武者』を特殊召喚」
『六武衆の影武者』チューナー
レベル2
守備力1600
『六武の門』
武士道カウンター:2→4
『六武衆の結束』
武士道カウンター:1→2
『紫炎の道場』
武士道カウンター:1→2
「この瞬間、『六武衆の結束』を墓地へ送って、効果発動。デッキから、カードを二枚ドロー」
あずさ
手札:1→3
「更に『六武の門』の効果。武士道カウンターを四つ取り除いて、デッキから『真六武衆-キザン』を手札に加える」
『六武の門』
武士道カウンター:4→0
あずさ
手札:3→4
「ここで、レベル3の『六武衆のご隠居』に、レベル2の『六武衆の影武者』をチューニング」
「紫の獄炎、戦場に立ちて
「シンクロ召喚! 誇り高き炎刃『真六武衆-シエン』!!」
『真六武衆-シエン』シンクロ
レベル5
攻撃力2500
『六武の門』
武士道カウンター:0→2
『紫炎の道場』
武士道カウンター:2→3
「『紫炎の道場』の効果! このカードを墓地へ送って、デッキからレベル3の『真六武衆-ミズホ』を特殊召喚!」
『真六武衆-ミズホ』
レベル3
攻撃力1600
『六武の門』
武士道カウンター:2→4
「魔法カード『紫炎の狼煙』発動。デッキからレベル3の『真六武衆-カゲキ』を手札に加えて、通常召喚」
『真六武衆-カゲキ』
レベル3
攻撃力200+1500
『六武の門』
武士道カウンター:4→6
「カゲキの効果により、手札の『六武衆-ヤイチ』を特殊召喚」
『六武衆-ヤイチ』
レベル3
攻撃力1300
『六武の門』
武士道カウンター:6→8
「ヤイチの効果。自分の場にヤイチ以外の六武衆がいる時、このターンの攻撃を放棄することで相手の伏せた魔法、罠を破壊できる。左側のカードを破壊」
んじゃ、破壊される前に使おっかな。永続罠『ブレイクスルースキル・スキル』。相手フィールドのモンスター一体の効果を、ターン終了時まで無効にできる。こいつをミズホに対して使う。
「当然、シエンの効果で無効にして破壊!」
だろうよ。
「『真六武衆-ミズホ』の効果。ヤイチをリリースして、残った伏せカードを破壊するよ」
……速攻魔法『エネミーコントローラー』。この効果により、シエンを守備表示に変更。
「マジで……?」
『真六武衆-シエン』
守備力1400
『月の書』使え、とか言うな。
「言わないよ……けどまあ、これで安心して展開できる。『六武の門』の効果で、デッキから『六武衆の師範』を手札に加える。そして、自身の効果で特殊召喚」
『六武の門』
武士道カウンター:8→4→6
『六武衆の師範』
レベル5
攻撃力2100
「そして、自分フィールドに二体以上の六武衆がいることで、『大将軍 紫炎』を特殊召喚」
『大将軍 紫炎』
レベル7
攻撃力2500
「ふあぁ……」
「……ちょ、梓くん! 今欠伸した!?」
「すみません……正直、長い上に最初の手で、見なくとも大よそどう動くかが分かるので、つい……」
「うぅ……」
まあなぁ。俺としてもずっと同じで、ぶっちゃけ書くの飽きてきてるんだよね。
「それを飽きさせないよう工夫するのがあんたの仕事でしょうが!」
無茶言うな。これだけパターンが決まってるデッキで、どんな工夫しろと? そりゃ六武衆以外の要素も混ぜてるけど、今回は出してないじゃない。
対戦相手を変えるくらいしか工夫のやりよう無えってんだ、バーカ。
「むむむむ……ふん! いいよ。どうせこのターンで終わるんだからさ」
『真六武衆-ミズホ』
攻撃力1600
『真六武衆-カゲキ』
攻撃力200+1500
『六武衆の師範』
攻撃力2100
『大将軍 紫炎』
攻撃力2500
『真六武衆-シエン』
守備力1400
「シエンだけ守備表示なのが凄く間抜けに見えるけど……バトル! 『六武衆の師範』で、そのセットモンスターを攻撃。壮鎧の剣勢!」
通す。そしてこの瞬間、破壊されて墓地へ送られた『ラヴァルの炎車回し』の効果発動。デッキから二体のラヴァルを墓地へ送る。デッキから『ラヴァル炎樹海の妖女』と、二枚目の『ラヴァルのマグマ砲兵』を墓地へ送る。
「また墓地肥やし……けど、これで終わりだよ! 『真六武衆-ミズホ』で、外にダイレクトアタック!」
手札から、『速攻のかかし』を墓地へ送って効果発動。バトルフェイズを終了。
外
手札:2→1
「げ! そんなカード握ってたの……なら私は『六武の門』の効果で、デッキから『六武衆-ザンジ』を手札に加える」
『六武の門』
武士道カウンター:6→2
あずさ
手札:1→2
「ターンエンド」
あずさ
LP:4000
手札:2枚
場 :モンスター
『真六武衆-ミズホ』攻撃力1600
『真六武衆-カゲキ』攻撃力200+1500
『六武衆の師範』攻撃力2100
『大将軍 紫炎』攻撃力2500
『真六武衆-シエン』守備力1400
魔法・罠
永続魔法『六武の門』武士道カウンター:2
外
LP:4000
手札:1枚
場 :モンスター
無し
魔法・罠
無し
やーっと俺の番だわ。俺のドローフェイズ、ドロー。
外
手札:1→2
スタンバイ、メインフェイズ、俺は魔法カード発動。『ブラックホール』。
「……え?」
通すか?
「通すわけないでしょう!! 『真六武衆-シエン』の効果! 相手の発動した魔法・罠カードの効果を無効にして破壊する!」
ぶー……
俺は魔法カード『真炎の爆発』を発動。
「『真炎の爆発』?」
自分の墓地の、守備力200の炎属性モンスターを、可能な限り特殊召喚する。カモーン。
『ラヴァル炎火山の侍女』チューナー
レベル1
攻撃力100
『ラヴァル炎樹海の妖女』チューナー
レベル2
攻撃力300
『ラヴァル炎湖畔の淑女』チューナー
レベル3
攻撃力200
『ラヴァルのマグマ砲兵』
レベル4
攻撃力1700
『ラヴァルのマグマ砲兵』
レベル4
攻撃力1700
「な……! 一気に、モンスターが五体も……!」
お前がそれに驚くか?
「う……」
「……しかも、うち三体はチューナーモンスター。つまり、狙いはシンクロ召喚……」
そう。あとこれだけは言わせてもらうけど、このラヴァルのチューナー三姉妹、淑女が長女、侍女が次女、妖女が三女だからね。
「……その情報いるの?」
いる。てことで……
レベル4の『ラヴァルのマグマ砲兵』に、レベル1の『ラヴァル炎火山の侍女』をチューニング。
シンクロ召喚! 『ラヴァル・ツインスレイヤー』!
『ラヴァル・ツインスレイヤー』シンクロ
レベル5
攻撃力2400
更に、レベル4の『ラヴァルのマグマ砲兵』に、レベル2の『ラヴァル炎樹海の妖女』をチューニング。
シンクロ召喚! 『ラヴァルバル・ドラグーン』!
『ラヴァルバル・ドラグーン』シンクロ
レベル6
攻撃力2500
「シンクロ召喚を二回……けど、その二体だけなら、まだ耐えることができるよ。真六武衆は守備表示だから破壊されちゃうけど、大将軍は超えられないし」
甘い。第一、倒せなかろうとこのターンで終わらせりゃ同じことでしょ。
「は? このターンで?」
そ。まずは、『ラヴァルバル・ドラグーン』のシンクロ素材になった『ラヴァル炎樹海の妖女』の効果。このカードがフィールド上から墓地へ送られた時、自分フィールド上のラヴァルモンスターは全て、墓地のラヴァルモンスター一体につき攻撃力を200ポイントアップさせる。
俺の墓地には、『ラヴァル炎樹海の妖女』一体、『ラヴァルのマグマ砲兵』が二体、『ラヴァル炎火山の侍女』が三体の、合計六体。よって、俺のフィールドのモンスターの攻撃力は合計1200上昇。
『ラヴァル炎湖畔の淑女』
攻撃力200+200×6
『ラヴァル・ツインスレイヤー』
攻撃力2400+200×6
『ラヴァルバル・ドラグーン』
攻撃力2500+200×6
「攻撃力が、1200も!?」
更に、『ラヴァルバル・ドラグーン』の効果。一ターンに一度、自分のメインフェイズにデッキからラヴァル一体を手札に加えて、その後手札のラヴァル一枚を墓地へ送る。
俺はデッキから『ラヴァル・フロギス』を手札に加える。
でもって、手札はこの一枚だけだからこのまま『ラヴァル・フロギス』を墓地へ送る。
「……え? 意味ないじゃん」
あるんだなこれが。『ラヴァル・フロギス』の効果。このカードが墓地へ送られた時、自分フィールド上の全てのラヴァルの攻撃力を500アップさせる。
『ラヴァル炎湖畔の淑女』
攻撃力200+200×6+500
『ラヴァル・ツインスレイヤー』
攻撃力2400+200×6+500
『ラヴァルバル・ドラグーン』
攻撃力2500+200×6+500
「また、攻撃力アップ!?」
これで準備オッケー。バトル。まずは攻撃力1900になった、『ラヴァル炎樹海……違うは、炎湖畔の淑女』で、『真六武衆-ミズホ』を攻撃。
「うぅ……!」
あずさ
LP:4000→3700
続いて、攻撃力4200になった『ラヴァルバル・ドラグーン』で、『真六武衆-カゲキ』を攻撃。
「くぅあ……!」
あずさ
LP:3700→1200
攻撃力4100の『ラヴァル・ツインスレイヤー』で、『真六武衆-シエン』を攻撃。
「……え? なんで守備モンスターのシエンを……?」
墓地に三体以上のラヴァルが存在する時、このカードは貫通効果を得る。
「うそおお!?」
あずさ
LP:1200→0
「そんな……」
ダメ押し。
「え?」
自分の墓地にラヴァルが二体以上存在する時、守備表示モンスターを攻撃したこのカードはもう一度だけ続けて攻撃できる。
「ええええええええええええ!?」
てことで、ツインスレイヤーで、『大将軍 紫炎』を攻撃。
「うぅぅぅああああああああ!!」
あずさ
LP:-1500→-3200
すっきり。
「……何もあそこまでする必要はなかった。なのに……!」
……それ、梓にだけは言われたくない。
「黙れ! 貴様……!」
きゃー。逃っげろー。
「待て! ……な、何だこれは……?」
遊戯王GX ~氷結の花~
KONAMI
「なぜだ……なぜそのような目で私を見る……?」
「この期に及んでまだ私を観するというのか……? それは怠惰だ、許しはしない……私を肯定しようとする、貴様だけは絶対に許さない……!」
『フィッシュボーグ-ガンナー』
『キラー・スネーク』
『処刑人マキュラ』
『サイバーポッド』
『ファイバーポッド』
『現世と冥界の逆転』
『氷結界の龍 ブリューナク』
『シュトロームベルクの金の城』新規カード
他
「これでもまだ!! 私のことを愛そうと言うのかああああああああ!!」
「遊戯王OCGデュエルモンスターズ、
「丸月閥日……脅え震え、恐怖しながら待っていろ!!」
「
KONAMI
遊戯王GX ~氷結の花~
視点:梓
……くそ、CMで目くらましとは、完全に逃げられた。こうなってしまっては、私でも追うことは不可能だ。
「……」
こうなっては仕方がない。奴よりも、敗北したあずささんの方が重要だ。
「あずささん、大丈夫ですか?」
「……うん。えへへ。また敗けちゃったよ……」
「この次は勝ちましょう」
「次かぁ。また会えるのかな、あいつ……」
「さあ……」
とは言え、結果的にとは言え、二人の言った通り、たったの三ターン、速攻で終わりました。もう邪魔は無いでしょうし、あとは、頂上へ行くだけです。
「では、行きましょう」
「うん」
ということで、無事、火山の頂上まで辿り着きました。上を見上げれば、空の星々や月の光がよく見えます。
「それで、ここで何を?」
「うん。梓くん、空飛べたよね?」
「いいえ」
「……え?」
普通に答えると、あずささんは、なぜか驚いた顔になりました。
「えって……」
「……だって。前に思いっきり空飛んでたじゃん」
「飛んでなどいません。サイヤ人じゃないんですから。あれは飛んでいたのではなく、虎将の力で空に足場となる結界を作って、そこに飛び乗っただけです。それを繰り返せば、まあ飛んでいたように見えたかもしれませんが」
「……つまり、武空術じゃなくて、月歩ってこと?」
「まあ、それともだいぶ違うとは思いますが、感覚としてはそうですね」
「……あれ? でも走らなくても普通に浮いてなかった?」
「エレベーターと同じです。結界は移動させることができるので、その上に私が乗った状態で移動させただけです。結界から降りたなら落ちますし、走った方が早いので私は走っておりますが」
「ふーん……まあいいや。それで、その結界って、わたしも乗れる?」
「もちろん」
「じゃあさ、結界二枚出して、二人でこの上に浮くことってできる?」
「可能ですよ」
「じゃあ、お願い」
かなり長いやり取りになってしまいましたが、言われた通り、長方形の透明な結界を二枚出現させ、二人並んで火山の頂上から、上へ上へと昇りました。
「まだ上がりますか?」
「……この辺でいいかな?」
今いるのは火山の頂上から見て、ビル七階程度の高さでしょうか。夜なので暗いですが、アカデミアの校舎やレッド寮がよく見えます。
「よーし、行くよー……」
そう言うと、あずささんは、深く沈めた両手に力を込め始めた。すると、その手が真っ赤な炎に包まれ、そして、それを一気に、天に向かって打ち込み……
視点:外
ドン
ドン
ドン……
「え……?」
レッド寮の食堂にて、ショウ子ちゃんの登場に湧いていた頃、外から聞こえた音に、十代が疑問の声を出した。
「どうしたの? 十代?」
「いや、この音……」
「音?」
言われた明日香もまた、耳を澄ます。
ドン
ドン
パチパチ……
「この音は……」
そして、それは二人だけでなく、徐々に、食堂にいる者達全員の耳に止まった。
全員が、正体不明のその音に興味を引かれ、耳を澄ます。窓際にいた十代が窓を開き、そこから外を覗く。すると、そこから見えたのは、
「うおお!」
「なに? 十代?」
「花火だ!」
「花火?」
その言葉で、全員が食堂から、外へと出ていった。
そして、見上げた時、十代の言った通り、空にはいくつもの火の玉が上がり、空中に色とりどりの花々を開花させていた。
「すっげえ……」
「綺麗ね……」
そして、レッド寮だけでなく、すぐにアカデミアの人間全員が気付いた。
ブルー寮、イエロー寮が。
「うわあ……」
「これは……」
「すごい……」
教員達が。
「綺麗なのーネ……」
「クリスマスには不似合いな気もしますが、確かに美しいのでアール……」
「うむ……」
「それそれそれ……!」
そして、その花火を上げている張本人、平家あずさだけは、その花火を楽しむ余裕は無いようで、透明な結界の上で仁王立ちになり、燃え上がる両手を必死に天へと突き出し続けていた。
「素晴らしい……」
そして、梓もまた、そんな花火に照らされながら、その美しさに魅入られていた。
「まだまだ! 一気にいくよ! そーれ!」
そして、ある程度上げた後で、両腕の速度を一気に上げる。次々と、矢継ぎ早に突き出される両手から飛んでいく火の玉。それが一つ残らず天へと昇り、大きく雄大な花を咲かせる。夜にだけ咲く炎の花畑が、アカデミアの空を満開に彩った。
「……よし。では私も」
あずさを見ながら、梓もそう言うと、あずさが今いる場所よりも、更に高く結界を上昇させた。あずさから二十メートルほど離れただろうか。そこで、両手を大きく広げ、空を見上げながら、目を閉じる。
「私からのプレゼントは……」
「……終わった、かな……?」
十代が呟いた通り、花火は矢継ぎ早の連発を最後に、上がることはなくなった。
「綺麗だったわね」
「ああ。誰がやったのか知らないけど、クリスマスに花火っていうのもいいもんだぜ」
「そう、ね……?」
明日香が途中で言葉を切り、再び空に目を戻す。
最初、見間違いかと思った。それは、この決闘アカデミアではありえない光景のはずだったから。だが、改めて見直して、手に触れ、よく見ると、それは見間違いではなかった。
「雪……」
「雪だ」
「雪が降ってる」
「アカデミアの空に、雪が降ってるぞ!」
驚き。そして興奮。その声が、一気に外へ集まっていた生徒達に広がっていった。
「バカな……このアカデミアは年中温暖な気候の島のはずだぞ。第一、空は雲一つ無い晴天だというのに、それが雪など……」
と、三沢は当然の疑問を口にした。しかし、それに答えたのは、万丈目。
「まあ、このアカデミアでこんな真似ができる人間は、一人しかおるまい」
「……なるほど。ということは、さっきの花火も……」
「だろうな。さしずめこれは、あの二人から、俺達アカデミアへのクリスマスプレゼント、ということだな」
「……」
万丈目の言葉を最後に、二人とも、そして、その場の全員が、その口を閉ざした。
疑問に言葉を費やすよりも、答えに思考を巡らすよりも、今はただ、アカデミアにいる限り、見ることは無いと諦めていた光景を、自らの目に焼き付けておきたかった。
「……」
「……? ……」
美しく深々と降り積もる雪を見上げながら、明日香は、無言で隣の十代の手を握った。十代も、最初疑問に感じながらも、その手を握り返す。互いの体温が、手を通じて伝わり合う。冷たい雪を前にしているからこそ、互いの存在という温かさを永遠のものにできると、明日香は思った。
そして、そんな思いや、心を生んでくれた雪を、彼らは、いつまでも眺めていた。
そしてそれは、レッド寮だけではない。直前の花火で胸躍らせていた者達が、今度は直後の雪により、その心を清められる。月の輝く星空の下で、夜を華麗に彩る花火と、夜を清める純白の雪。本来なら、それらは決して、交わることのない光景だった。だからこそ、その奇跡を目にした彼らにとって、筆舌に尽くし難い感動となり、彼らの心に、最高の思い出となって残る。
「すご~い、ホワイトクリスマスだぁ。梓くんて、雪も降らせられたんだね」
「ええ。けど、寒くはないでしょう? 元々の気候が温暖なので」
「うん、平気。雪が降るのに温ったかいっていうのも、変な感じだけど。けどこれだけ温ったかいなら、すぐ溶けちゃうのが勿体ないね」
「ご心配には及びません。誰が作った雪かお忘れか?」
「へ?」
「私が作った雪です。一度地上に積もれば、二日間は意地でも溶けませんよ」
「なにそれぇ~……けどそれなら、明日は雪遊びができるね」
「ええ。きっと十代さん辺りは、いくつも雪だるまを作っているでしょうね。ふふ……」
雪を降らせた後で、梓は、あずさと同じ高さまで結界を下ろし、二人並んで雪を見上げていた。降り注ぐ月光の下、降り積もる雪の景色。
そして、自ら作り上げたものだからこそ、より強く、二人の心に沁みる光景。
「……ねえ、梓くん」
「はい? ……うおぉ!」
あずさは梓に呼びかけると、突然その身を、隣の結界へと投じた。そしてそれを、梓はしっかりと抱き止めた。
「ちょっと、危ないですよ……!」
「大丈夫だよ。このくらいの高さ、落ちても死ぬわけないじゃん。決闘者なんだから」
「……まあ、それもそうか……」
現在の結界の高さは、先程よりも更に上昇し、火山の頂上からビル二十階分だろうか。
そう。この程度の高さなら、落ちても何ら問題は無い。
決闘者だもの。
「それにさ……」
一度、口を閉じ、そして、言う。
「もし、落ちたとしても、梓くんはわたしのこと、助けてくれるよね?」
「……」
満面の笑みで、全幅の信頼と愛情の込められた言葉。そんな言葉を受ければ、答えは決まっている。
「もちろんです。この命に代えても、あずささんをお助けします」
「ありがとう」
一枚の結界の大きさは、人一人が乗るには申し分無いが、二人が乗るには少々狭い。そのため、必然的に二人は密着し合い、抱き合った状態となりながら、再び雪を見上げていた。
「……何だか、不思議だよね」
「何がですか?」
聞き返した梓に、あずさは、答える。
「わたし達が作った、花火と雪。わたしは、炎の力で花火を作って、梓くんは、氷の力で雪を作ってさ」
「ええ……」
「炎と氷の力だよ。それに、使ってる武器も、わたしは闇で、梓くんは光。ここまで真逆なもの持ってるわたし達が、こんなふうに……両思いになるなんてね」
「……」
「ファンタジーやRPGとかだったら、友達どころか大ゲンカしてるくらい真逆だよ。しかも、力や武器とかだけじゃなくて、他にもたくさん……そう思うと、不思議だなってさ……」
「私はそうは思いません」
「へ……?」
あずさの疑問に、梓は、自らの答えを紡いだ。
「お互いに何もかもが真逆で、何もかもが違う。そんなことは当然です。この世に、あらゆるものが同じな人間など、二人と存在しない。お互いに違うから、お互いに、お互いには無い物を持っている相手を知り、時には反発し合い、そして、時に惹かれ合う。もちろん、共通することが多いならそれも惹かれあう理由にはなるでしょうが、それでも二人が同じということにはなりません。ただ、お互いに違う部分が多いか少ないか、それだけです。そしてそれだけが、誰かを好きになる、という理由にはなりません」
「……」
「私は、平家あずささんという、一人の女性を好きになりました。平家あずささんは、格式ある名家の養子である水瀬梓とは全く違う、幸せな一般家庭で育った女性です。出自も性格も、何もかもが違う……そんなあずささんのことを、私は、好きになりました。理由は……正直、今でも分かりません。ただ、一目見た瞬間、この人だ、私にはこの人しかいない、そう感じました。お互いの違いや共通項など、考えたことはありません」
「梓くん……」
「そして、そんな私のことを、あずささんも好きになってくれた。なら、お互いに、それ以上の理屈は不要ではないでしょうか?」
「……うん」
梓の、熱烈な告白に、あずさは、恍惚の、そして、満悦の笑みを浮かべて、頷いた。
「わたしは、水瀬梓くんのことが好きです。世界で一番、大好きです」
「……私もです。私は、平家あずささんのことを、心よりお慕いしております」
「……」
「……」
……
…………
………………
夜の空は冷たく暗く
それを見上げし人の温度は 全てを包む揺り籠となり
出会い重なる二人の心 明日をも照らす光となりて
共に歩みし思いの果てに 聖夜の下に一つとならん
Merry Xmas.
お疲れ~。
……ちょこっと二人をイチャつかせすぎたか?
まあ、ライバルが無くお互いの確執が無きゃこうなるんだけどさぁ。
まあいいや。
てことで、特別編はここまで。次は本編を書いていくでよ。
よければそれまで、ちょっと待ってて。